ヴェールを被る婦人の肖像

Ritratto di donna (La Velata)

ラファエロ・サンティ

作品解説
ラファエロがその生涯で数多くの肖像画を手がけましたが、その中でも、彼自身としても別格だったといわれているのが『ヴェールを被る婦人の肖像』。通称はラ・ヴェラータと言いますが、これはヴェールを指します。モデルは、ラファエロが命をかけて愛したであろう恋人で、パン屋の娘のフォルナリーナ(パン屋の娘という意味です)。ラファエロは彼女と密かに恋愛関係を続けていましたが、ビビエーナ枢機卿から姪のマリアとの結婚話を持ちかけられてしまいます。成り上がりたい、認められたい、という野心を持っていたラファエロは、フォルナリーナに別れを告げるのです。ところが、ラファエロは彼女を忘れることができませんでした。けれども、フォルナリーナとは結婚できません。その間で悩み、それをこの『ヴェールを被る婦人の肖像』にぶつけました。結ばれないことがわかっていつつも、ヴェールの下に人妻の印の髪飾りを描きこみました。途中で消してしまいますが、婚約指輪も描かれていたといいます。自身の野心と恋との間で葛藤したラファエロの人間らしい傑作といえるでしょう。
制作年
1515年
素材/技法
板に油彩
制作場所
ローマ
所蔵美術館
    パラティーナ美術館