ポルト・リガトの聖母

The Madonna of Port Lligat

サルバドール・ダリ

作品解説
「ポルト・リガトの聖母」はピエロ・デッラ・フランチェスカ作の「天使と六聖人と聖母子」を基に描かれた作品で、フランチェスカと構図やポーズは同じものの、ダリの作品では、全体が分離され浮遊された状態で描かれています。この頃のダリはカトリック思想の回帰を始めており、さらに第二次世界大戦によって原子構造に関心を持ち始めた時期でもあったので、作品の中で宗教への回復と科学信仰という矛盾した状態を表現していました。その思想は、聖母マリアとマリアのひざの上に座る幼いキリストの胴体が、それぞれ四角にくり抜かれて、マリアの腕が切断されている部分に表されており、原子力時代の到来と破壊を表現しています。実は、この「ポルト・リガトの聖母」は、1948年に制作されマーケット大学博物館が所蔵している作品と、1950年に制作され福岡市美術館に所蔵されている2作品あります。本作は後期のものですが、2作品は、ほぼ同じ構図で書かれよく似ていますが、大きな違いは後期の作品ではガラを聖母マリアとして描いています。
制作年
1950年
素材/技法
キャンバスに油彩
制作場所
不明
所蔵美術館
    福岡市美術館