トラヴェリング・ライフ

Travelling life

草間彌生

作品解説
詰め物をした布で作った男根状の突起をびっしりと梯子に貼り付けたソフト・スカルプチュアの作品です。松本の保守的な旧家に生まれ「セックスは汚いもの」と教えられて育った草間彌生は、性的なものに恐怖を抱えて成長することとなります。この「トラヴェリング・ライフ」や「The Man」といったソフト・スカルプチュアの作品は、草間の抱える強迫観念から生まれた作品です。恐怖の対象である性や男根をユーモラスな形で表現し、笑いを誘うことで、恐怖を克服しようとしたのです。ソフト・スカルプチュアとは、布や糸のような繊維や、ゴム、脂肪などの柔らかく可塑性のある素材を使用して制作された彫刻や立体作品のこと。素材の特性から生まれる可変性や刹那性が特徴です。タイトルの「トラヴェリング・ライフ」とは、「旅し続ける人生」「旅の中にある人生」といった意味合いでしょうか。高みへ上ろうとする梯子、グロテスクなようなユーモラスなような男根のオブジェ、無機質な柔らかさ、性への恐怖が絡みつく草間の人生。「トラヴェリング」に込められた意味を考えさせられる作品です。
制作年
1964年
素材/技法
彫刻 ミクストメディア
制作場所
アメリカ
所蔵美術館
    京都国立近代美術館
ジャンル