フレスコ画
fresco
フレスコとは壁に直接絵を描く絵画技法のひとつで、この技法で描かれた壁画をフレスコ画と呼びます。イタリアの教会に見られる壁画の多くがフレスコ画です。イタリア語の「フレスコ=新鮮な、生気のある」という形容詞に由来し、壁に塗った漆喰がまだ生乾きの状態にあるうちに、水または石灰水で溶いた顔料で描く技法です。壁が乾燥する過程で顔料が壁に閉じ込められ、定着します。顔料自体の強く明るい発色が特徴的で、いったん乾くと水に漬けても滲むことがなく抜群の耐久性を示します。しかしやり直しがきかないため、高度な計画と技術力を必要とする技法でもありました。古くはラスコーの壁画なども自然に出来上がった「天然のフレスコ画」現象と言えますし、古代ローマ時代のポンペイの壁画もフレスコ画と考えられています。ルネサンス期に盛んに描かれ、ラファエロの「アテネの学堂」やミケランジェロの「天地創造」「最後の審判」などが有名です。ユーラシアを東へ辿ると、キジルや敦煌の仏教遺跡にも石窟の壁に土や石灰を塗り絵を描いたものが見られ、朝鮮半島の墳墓に見られる技法は、日本の高松塚古墳まで伝わってきています。フレスコの画法は、未乾燥の壁に描く湿式の「ブオン・フレスコ」、乾いた壁を水で濡らし糊の役割をする石灰やカゼインを顔料に加えて描く乾式の「ア・セッコ」、湿式で描いた後「ア・セッコ」で加筆する「メッゾ・フレスコ」の3種類。通常「フレスコ画」と呼ぶのはブオン・フレスコで、メッゾ・フレスコは乾燥する間に描き切れなかった細部描写や修正の為に行われる技法ですが、加筆された部分は堅牢性に劣り、長い年月の間に下のフレスコ画だけが残ることもあります。2層または数層の異なる色彩の漆喰を塗り重ね、一部を掻き落として絵柄を浮き出させるズグラッフィートと呼ばれる技法もあり、これは比較的安価に制作でき耐久性も高いため、外壁にもよく使われる方法です。