ナルシスの変貌

Metamorphosis of Narcissus

サルバドール・ダリ

作品解説
「ナルシスの変貌」は、ナルシストのルーツとも言われるギリシャ神話をモチーフにした絵画で、神話に出てくるナルキッソは水たまりに映る自分の姿に恋をしたとされていますが、水面に映る像を掴むことが出来ず、ナルキッソは痩せ衰え、神は彼を不死の花にした、というのがこの話です。ダリは、このナルキッソを作品の左側で湖を見つめる姿で描いています。その右横には、同じような形態でありながらも、三本の指で持たれた卵という偏執狂的批判的な手法(ダブル・イメージ)を用いて描いています。その卵からは水仙が殻を破り咲いています。左に描かれたナルシスは自己愛によって死を迎えたものの、同時に花として復活したことを描き、自己愛者ナルシスだったダリが、妻であるガラと出会ったことで、ガラがナルシスへと変貌し、ガラとダリがナルシスを通して同一の存在であることを表現した作品です。この作品は、ダリが偏執狂的批判的な手法を用いていた時代の代表作です。
制作年
1937年
素材/技法
キャンバスに油彩
制作場所
アメリカからパリへの帰還中
所蔵美術館