肖像画

Portrait
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肖像画とはある特定の個人をモデルにして描かれた絵画で、その歴史は古代エジプトまでさかのぼります。エジプトのアル=ファイユーム地方には、葬儀の時の描かれた一般人の肖像画が残されており、これはフレスコ画以外では古代ローマ時代から残っている唯一の絵画です。

西洋で絵画としての肖像画が描かれるようになるのは14世紀中ごろで、ルーブル美術館に所蔵されている「フランス王ジャン・善良王の肖像」が俗人を描いた最初の肖像画とされています。この絵は単に人物の容姿を描いているだけではなく、その人物の性格をも鋭く表現しており、まさに「肖像画」の原点と言えます。

西洋で肖像画が絵画のひとつのスタイルとして確立するのはルネサンス期です。ルネサンス以前は絵画の一部として人物が描かれることはあっても、主体として描かれることはほとんどありませんでした。また、それ以前の肖像はあくまで皇帝や神の姿を描いたもので、「個人」の特徴や存在は絵画のテーマとしては重視されていませんでした。

15世紀の画家たちによって、肖像画はさまざまな観点で描かれ始めます。美の表現をはじめ、英雄像や宮廷画、世俗的な作品など、肖像画のテーマは無限で、写実性を追及した肖像画もあれば、極端に美化された肖像画や逆にわざと醜く描かれる肖像画もありました。
ルネサンス期の有名な肖像画家は、レオナルド・ダ・ビンチ、ラファエロ、ティツィアーノ・ヴェチェッリオ、アルブレヒト・デューラー、ハンス・ホルバイン、ディエゴ・ベラスケス、レンブラント、ジャン・ロレンツォ・ベルニーニなどです。

また、東洋や日本では、肖像画は古くから活発に描かれています。特に中国では肖像画は早くから絵画の主流なジャンルで、日本の絵画は中国の影響を強く受けており、聖徳太子を描いた肖像画「唐本御影(とうほん みえい)」は、唐の時代の肖像画の伝統を引き継いでいる、日本における最初の肖像画です。
やがて日本独自の絵画のスタイル、大和絵(やまとえ)がおこると、似絵(にせえ)という顔かたちを写実的に描くジャンルが登場し、天皇や高僧、武将の肖像画が活発に描かれるようになりました。
関連アーティスト
岸田劉生,ディエゴ・ベラスケス