木版画
woodcut, xylograph
木版画とは木製の原版によって作られる凸版画で、彫刻刀などを使用して版面に作り出した凸部にインクを乗せて紙を置き、バレンなどで圧力をかけることで転写する版画のことを言います。制作年の分かる最古の版画は、868年に中国の敦煌で制作された経文に出てくる仏像の木版画です。中国ではすでに7世紀より木版画が始まっていたとされています。日本には8世紀頃に伝えられたとされ、その後独自の発展を遂げました。江戸時代には浮世絵としてたくさんの版画が刷られ、ぼかしや見当など様々な技術が確立されました。西洋では14世紀後半より宗教画として木版画が制作されましたが、15世紀にグーテンベルクにより印刷機が発明されると、プレスでの印刷になりやがて銅板に置き換えられ、木版画から銅版画への道が開けていきました。この点で、東洋の場合とははっきりと辿る道が異なります。 江戸時代に完成された浮世絵版画は、日本を代表する木版画です。複数の版木を用い多色摺り印刷を行っています。現在このような古い版画技法を使った木版画は「伝統木版画」と呼ばれ、他の木版画と区別がなされています。東京目白のアダチ伝統木版画保存財団や京都の竹中木版竹笹堂は、喜多川歌麿や葛飾北斎などの原盤から新しい版木に版を興し、浮世絵の復刻版を制作しています。そのほか新しい試みとして、現代の洋画家にオリジナルの版下を依頼し、復刻版同様江戸時代からの技術で世に送り出すことも行っています。この方法で制作された有名な作品が、草間彌生の「七色の富士」です。学校教育では、小学校四年生から木版画の指導が行われます。現行指導要領の短い時間でも版画の楽しみを知ることができるように、一版多色刷り木版画や彩色木版画など手軽で仕上がりの楽しい木版技法が工夫されています。