インスタレーション
installation
インスタレーションとは、ある特定の室内や屋外などにオブジェや装置を置いて、場所や空間全体を作品として観客に体験させる表現手法のことです。ビデオ映像を上映して空間を構成する「ビデオ・インスタレーション」や音響などを用いて空間を構成する「サウンド・インスタレーション」もこれに含まれます。インスタレーションは基本的に一時的(テンポラリー)なものであり、設置場所に固有(サイトスペシフィック)のものです。展覧会期が終われば撤去されてしまい、他の場所への移転や再現も、作品として成立しなくなるため、困難です。そのためインスタレーション作品は、美術館などが作家に依頼して館内に恒久設置したり、展示会ごとに作家の監修のもと場所に合わせて再設置したりといった形を取ります。特定の展示が写真や映像記録として残されて、その写真自体がオリジナルのインスタレーション作品とは異なった魅力を発揮する作品になることもあります。先駆例としてはアパートの一室をまるごと作品化したK・シュヴィッタースの「メルツバウ」が有名です。1950年代末頃のA・カプローを中心とした環境芸術や60年代のR・モリス、C・アンドレをはじめとするミニマリズムなどにより、作品と空間の関わりが表現として注目されるようになっていき、70年代に入ってインスタレーションという概念が一般化されました。作品に使われる素材が特別の価値を持たないというオブジェ概念や、アルテ・ポーヴェラ、シュポール/シュルファス、もの派などの美術運動、反復によって空間を埋めるポップ・アートなども、インスタレーションと関わりの深いものです。現在では展示空間を作品の条件として考えることが一般的となり、特別にこの用語だけ切り離して取り上げることはほとんどなくなりました。ジャンルを超えて様々な芸術表現に浸透していった概念と言えましょう。