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李禹煥美術館「Lee Ufan Arles」がフランス・アルルにオープン!設計は安藤忠雄

日本(直島)と韓国(釜山)を経て、世界で3つ目となる李禹煥(リ・ウファン)の美術館「リ・ウファン・アルル(Lee Ufan Arles) 」が2022年4月15日、フランス・アルルに開館しました。

アルルの歴史地区にある17世紀の4階建ての邸宅を改築した美術館は、李禹煥の長年の友人でもあり、直島の李禹煥美術館も手がけた建築家・安藤忠雄によって設計されました。

「もの派」を代表する美術家として世界的に知られている李禹煥の静穏な雰囲気を纏った彫刻や絵画、サイトスペシフィックなインスタレーション作品が恒久展示されています。

 

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ゴッホなど多くの芸術家を魅了する街、アルル

アルルは、南仏プロヴァンス地方にあるローマ時代からの古い歴史を持つ街です。

ローマ時代の遺跡や、オレンジとベージュの古い街並み、ローヌ川の美しい景色を見ることができ、古くからゴッホやゴーギャンをはじめ多くの芸術家たちにインスピレーションを与え、彼らを魅了してきた街として知られています。

 

2010年にはヴィンセント・ファン・ゴッホ財団がオープンし、2021年夏にはコレクターのマヤ・ホフマン(Maja Hoffmann)が設計したフランク・ゲーリー設計のアートセンター「LUMA Arles」がオープンするなど、近年、フランス南東部のこの街には文化施設が次々と誕生しています。

 

李禹煥はアルルという土地が持つ古い歴史に惹かれており、「ローマ文化の宝庫で時間が経つのを忘れてしまうような、街の香りに魅了されています 」と語っています。

 

2021年末には、アルルの世界遺産登録40年周年を記念して、李禹煥の特別展「レクイエム」が開催されました。

李禹煥はローマ時代のネクロポリス(古代の巨大な墓地)にインスピレーションを受け、彼の彫刻が古代石棺と対話するように、ロマネスク様式の教会へ続く道や礼拝堂に作品が点在する形でこの展示を完成させました。

このプロジェクトについて彼は「アルルという土地柄、時空を超えた次元を表現しようと思いました」と語っています。

 

パリ、ニューヨーク、日本を拠点に活動する現代美術家、李禹煥

1936年に韓国で生まれた李禹煥は、現在、パリ、ニューヨーク、日本を拠点に活動している世界的な美術家です。

1960年代に誕生した自然素材や産業素材と、それらを取り巻く空間との関係を探求した戦後・日本の美術動向である「もの派」の中心的存在として知られています。

李禹煥は、鉄板、ゴム板、ガラス板と石、木、水などといった自然や人工の素材をほぼ未加工のまま提示した彫刻やインスタレーション、手を加えることを最小限に抑え、余白の広がりと空間の存在を感じさせる絵画を制作し続けています。

 

2010年には香川県・直島に李禹煥美術館が開館、その後2015年に、韓国・釜山の「釜山市立美術館」敷地内にある「スペース李禹煥(Space LeeUFan)」が開館しています。

 

近年は日本を中心に、ニューヨーク、フランスでも精力的に活動しています。

フランスのギャラリスト、カメル・メヌール(Kamel Mennour)らが代理人を務め、これまでフランス各地で展覧会を開催してきました。また、パリのモンマルトル地区にスタジオも構えています。

 

フランスのアクテス・スッド出版社から初のフランス語による李禹煥の書籍が出版されるきっかけとなった2013年の展覧会「Dissonance」がアルルの街で開催され、その後もヴェルサイユ宮殿での個展(2014年)や、ポンピドゥー・センター・メッスでの展示(2019年)を開催。いずれもフランス国内で大きな話題となりました。

 

設計は安藤忠雄が担当

「リ・ウファン・アルル」は、16世紀の古美術商の家系の邸宅をリノベーションした美術館で、設計は李禹煥の長年の友人でもある安藤忠雄が手がけました。

「安藤のインスピレーションと私のインスピレーションは共鳴している」と語る李禹煥。

安藤忠雄は、香川県・直島にある李禹煥美術館の設計も手がけています。

 

建物の改修の資金調達には、フランスで最も重要な美術財団のひとつ「メグ財団」の元理事であるミシェル・エンリシ(Michel Enrici)をはじめとした多くの友人たちの支援を受け、基金を設立しました。

 

主な恒久展示作品

この邸宅は4階建て、14,500平方メートルの広さで、25近い部屋数から成り立っています。

李禹煥の作品が常設され、1階には10点の彫刻、2階には約30点の絵画、下階には予約制で入室できる3つのサイトスペシフィックなインスタレーション作品が展示されています。

3階には他のアーティストのための仮設展示スペース、レセプションルーム、カンファレンスルームがあり、数々の賞を受賞したフランスのデザイナーであるコンスタンス・ギセ(Constance Guisset)による図書館とショップも併設されています。

 

李禹煥はアルルの空に大きなインスピレーションを受け、安藤忠雄の建築とコラボレーションした壁文字の新作作品「Ciel sous terre(地上の空)」を制作しました。

彼は「ローヌ川の岸壁沿いで空を眺めながら朝の散歩をする瞬間が、私を幸せな気分にしてくれる 」と語っています。

 

事前予約制で鑑賞できるインスタレーション作品「Chemin vers Arles(アルルへの道)」。

室内には砂利が敷き詰められ、その上には湾曲した鏡の板が置かれています。

また、1960年代後半に構想された初期の実験的な作品「ステージ(The stage)」も展示されており、巨大な岩の横にある大きな鉄の壁に遮られた光の輪の中に、観客が足を踏み入れられるようになっています。

 

絵画作品としては、1970年代からのシリーズ「線より(From Line)」から、2000年以降から展開している「対話(Dialogues)」シリーズまで、主に年代順に作品が公開されています。

絵画展示室は、建物に元々あった煙突が見えるようになっており、鑑賞者がより空間内で寛いでもらえるような工夫がされています。

 

絵画や彫刻の間を散策しながら、生命が与えてくれる呼吸や感覚を共有するには、この空間の知性や意味を理解する必要はない 

と語る李禹煥。

リノベーションされた展示空間には、この施設を美術館というよりも「生活の場」として捉えたい、という彼の想いが反映されています。

 

李禹煥作品の他にも、この美術館の修復中に壁の中から発見されたローマ皇帝アントニヌス・ピウスとされる古代の肖像胸像も飾れてていたりと、建物の歴史を感じられる空間となっています。

アルルの街と李禹煥、両方の良さが最大限に感じられる美術館。

ぜひフランスを訪れる際には「リ・ウファン・アルル」をチェックしてみてくださいね。

 

 

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