もの派展覧会李禹煥東京現代アート
ART

李禹煥の回顧展がこの夏、国立新美術館で開催!見どころを詳しく解説

リ・ウファン 回顧展

展覧会ポスター

韓国出身で日本を拠点に世界で活動する現代美術家、 李禹煥(リ・ウファン)の大規模な回顧展「国立新美術館開館15周年記念 李禹煥」がこの夏、東京で開催されます。

横浜美術館で2005年に開催された個展以来、東京での開催は初となる待望の大規模個展です。

会期は2022年8月10日(水)〜11月7日(月)まで。

李禹煥の経歴と展示の見どころについて詳しく解説します。

 

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「もの派」を代表する美術家、李禹煥

リ・ウファン 回顧展

李禹煥、フランス、アルル、アリスカンにて、2021年 © StudioLeeUfan, photo: Claire Dorn

1936年、韓国慶尚南道に生まれた李禹煥(リ・ウファン)。

1960年代末から日本で始まった「もの派」を代表する美術家として、国際的に活動する現代アーティストです。

「もの派」

1960年代末から70年代初頭にかけて現われた、戦後における日本の美術動向。自然や人工の素材をほぼ未加工のまま提示した作風を特徴とし、自由に「もの」との関係を探ろうと試みた一連の作家を指す言葉。

 

ソウル大学校美術大学入学後の1956年に来日した李禹煥は、その後、日本大学文学部で哲学を専攻していました。

東洋と西洋のさまざまな思想や文学を意欲的に学び、1960年代から現代美術に関心を深め、 1960年代後半から本格的な制作活動を始めます。

 

「作る」ことを極端に抑えた線と点による抽象画や、石と鉄板を組み合わせた彫刻は、静寂の中に李禹煥の深い精神性と哲学が凝縮されたものです。

そこには「あらゆる”もの”は世界との関係性によって成立し、それのみで存在しているものはない」という李禹煥の思想が反映されています。

 

彫刻インスタレーション作品「関係項」シリーズ

リ・ウファン 作品

《関係項》 1968/2019年 石、鉄、ガラス  石:約80 × 60 × 80 cm、鉄:240 × 200 × 1.6 cm、ガラス:240 × 200 × 1.5 cm 森美術館、東京 Photo: Kei Miyajima

1968年頃より制作された「関係項」シリーズは、主に石、鉄、ガラスを組み合わせた立体作品です。

李禹煥は、ものと場所、ものと空間、ものともの、ものとイメージの関係に着目し、素材に極力手を加えず、ものの位置や空間との関係によって成り立つ彫刻、インスタレーション作品を数多く制作しています。

 

リ・ウファン 作品

《関係項―棲処(B)》 2017年 石 作家蔵 展示風景:「ル・コルビュジエの中の李禹煥 記憶の彼方に」展、ラ・トゥーレット修道院、エヴー、フランス、2017年 © Foundation Le Corbusier, photo: Jean-Philippe Simard

近年発表された彫刻作品では、フランスのラ・トゥーレット修道院で発表されたサイトスペシフィックな作品「関係項― 棲処(B)」(2017年)などが有名です。

 

李禹煥 リ・ウファン 作品

《関係項ー鏡の道》 2021年 石、ステンレス 作家蔵 展示風景:「李禹煥 レクイエム」展、アリスカン、アルル、フランス、2021年 © Claire Dorn, Courtesy Lee Ufan and Lisson Gallery

 

絵画作品「点より」「線より」シリーズなど

リ・ウファン 作品

《点より》 1975年 顔料、膠/カンヴァス 162 × 292 cm 国立国際美術館

李禹煥は幼年期に学んでいた書道の記憶を思い起こし、絵画における時間の表現に関心を強めていました。

1970年初頭から約10年の間に制作されたシリーズ作品「点より」「線より」は、李の代表作として有名です。

 

リ・ウファン 作品

《線より》 1977年 岩絵具、膠/カンヴァス 182 × 227 cm 東京国立近代美術館

リ・ウファン 作品

《点より》 1977年 岩絵具、膠/カンヴァス 182 × 227 cm 東京国立近代美術館

このシリーズで李は、色彩の濃さが次第に淡くなっていく過程を表しており、 行為の痕跡によって時間の経過を示しています。

 

リ・ウファン 作品

《風と共に》 1990年 油彩/カンヴァス 291 × 218 cm 東京国立近代美術館

1980年代から制作を開始したシリーズ「風より」と「風と共に」では、荒々しい筆遣いによる混沌とした様相を現しています。

それ以降、描く行為は極端に限定され、空白と僅かなストロークによる筆跡を特徴とした作風に進化していきます。

 

李禹煥の著作と主な展示歴

李禹煥は芸術作品だけでなく、著述を通して「もの派」を理論的に主導してきました。

1969年には、論考「事物から存在へ」が美術出版社芸術評論に入選。

1971年刊行の「出会いを求めて」はもの派の理論を支える重要文献とされています。

2000年に出版された著書「余白の芸術」は、英語 、フランス語、韓国語などに翻訳されています。

 

近年の主な展覧会は、ボン市立美術館(ドイツ、2001年)、横浜美術館(2005年)、第52回ヴェネチア・ビエンナーレ(2007年)、ブリュッセル王立美術館(ベルギー、2008年)、グッゲンハイム美術館(アメリカ合衆国、2011年)、ヴェルサイユ宮殿(フランス、2014年)、ポンピドゥー・ センター・メッス(フランス、2019年)などです。

 

2010年には香川県直島に安藤忠雄建築設計の「李禹煥美術館」が開館、2015年には韓国に「釜山市立美術館・李禹煥空間」が開館しています。

 

国立新美術館開館15周年記念 李禹煥

リ・ウファン 回顧展

展覧会ポスター

今回開催される回顧展では 、1960年代の最初期の作品から、 彫刻の概念を変えた「関係項」シリーズや静穏な雰囲気を纏った精神性の高い絵画など、代表作が一堂に会します。

李禹煥の作品とその経過、そして性格を多岐にわたって浮き彫りにする回顧展です。

展示の構成は李禹煥自らが担当。彫刻と絵画の2つのセクションに大きく分かれ、それぞれの展開の過程が時系列的に理解できるように展示される予定です。

 

また本展では、国立新美術館の野外展示場に、石とステンレスを用いたアーチ状の大型野外彫刻の新作が披露されます。

2014年、フランスのヴェルサイユ宮殿で李禹煥の個展が開催された際にも、同じステンレスの巨大なアーチ状の野外彫刻「関係項―ヴェルサイユのアーチ」が設営され、大きな話題を呼びました。

2019年には香川県直島町の「李禹煥美術館」に、同じくアーチ状の野外彫刻作品「無限門」が恒久設置されています。

 

「作る」ことを最小限に抑えたもの派を代表する芸術で、多くの人を魅了し続けている李禹煥。

静穏さと詩的な空間、李禹煥の深い精神性が感じることができる回顧展。この夏必見の展覧会です。

 

国立新美術館開館15周年記念 李禹煥

会期: 2022年8月10日(水)–11月7日(月)

休館日: 毎週火曜日

開館時間:10:00–18:00
※毎週金・土曜日は20:00まで ※入場は閉館の30分前まで

会場: 国立新美術館 企画展示室1E[東京・六本木]

観覧料(税込)
一般 1,700円、大学生 1,200円、高校生 800円

展覧会ホームページ: https://LeeUFan.exhibit.jp/
美術館ホームページ: https://www.nact.jp

*兵庫県立美術館にも巡回予定

兵庫県立美術館
2022年12月13日(火)~2023年2月12日(日)

 

 

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