CULTURE

LAアカデミー映画博物館でスタジオジブリ、宮崎駿監督の回顧展が開催中!2022年6月5日まで

2021年9月30日にロサンゼルスにオープンした「アカデミー映画博物館」。

そのオープニング企画展として、アニメ監督・宮崎駿に焦点を当てた「宮崎駿展」が開催されています(2022年6月5日まで)。

映画「千と千尋の神隠し」で米国アカデミー賞を受賞し、世界的人気を誇るアニメ監督、宮崎駿。

4年に渡る展示準備を統括したアカデミー映画博物館のキュレーター、ジェシカ・ニーベルが宮崎駿作品の魅力と本展の魅力について語りました。

彼女は今回どのような想いで展示開催にあたったのでしょうか。海外から見た宮崎作品の魅力に迫ります。

 

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トトロの魅力とジブリの魔法

宮崎駿の作品は、圧倒的な世界観と没入感、ユニークなキャラクター・主人公が世界的に高く評価されています。

ジェシカは「となりのトトロ」(1988年公開)の紹介にあたり、スタジオジブリの共同設立者である、高畑勲監督の言葉を引用しました。

 

日本の子供たちは木を見ると、その中にトトロが住んでいるのではないかと期待する。

それが宮崎駿の最大の功績である。

「この映画は、幼い子供の想像力と自然に対する畏敬の念を表現し、それが唯一無二の世界観を形成している」と彼女はコメントしています。

 

少女・千尋の成長を描いた「千と千尋の神隠し」(2002年)は、米国アカデミー賞を受賞した唯一の作品です。彼女は、

宮崎駿が手がけた他の作品も同様に素晴らしいものです。

彼の想像力・技術は桁違いに素晴らしく、唯一無二の才能を持った人物であることを今回の展示で伝えたい。

と展示への意気込みを語りました。

 

4年間を費やした展覧会の構想と準備

ジェシカはスタジオジブリを訪れるため2017年に来日し、展示の構想と準備に4年間もの歳月を費やしました。

 

展覧会のために貸し出されたアートワークは、スケッチ、キャラクターデザイン、アニメーションのセル画など、300点以上。

これらの作品が体験型ビデオインスタレーションなどと共に展示されています。

作品を単に年代順に並べるのではなく、宮崎作品の魅力に迫りたいと考えました。

宮崎駿という人間の持っている哲学、関心事を探りながら、彼の制作プロセスを理解してもらいたい。

と彼女は語ります。

 

ジブリの世界観を体感できる展示空間

展示の入り口には、緑のトンネルが登場。

これは宮崎作品の中に登場する「異世界への入り口」をイメージして作られました。

トンネルを潜った先には、人間と自然の関わり、そして宮崎駿が描く戦争をテーマとした展示が続きます。

 

展示の前半では、宮崎作品の特徴である「美しい自然描写」を取り上げ、後半は「機械・テクノロジー」の描写に焦点を当てた構成となっています。

 

ディズニーとジブリの違い

宮崎作品は、子供向け映画としては珍しく難解なテーマを扱うことで知られています。

宮崎駿の伝記を執筆したことでも知られるメディア研究者 スーザン・ネイピアは、宮崎作品はアメリカの典型的なアニメーション映画とは異なると指摘します。

ディズニーは善か悪。すべてがハッピーエンドという二元論的な傾向を持っているのに対し、ジブリ映画は、グレーな要素を多く含んでいます。

善良な人が理不尽に苦しみ、決して皆がハッピーエンドではない。という曖昧さを持っています。

 

スーザンは、宮崎駿の幼少期のある出来事が、彼の作品に大きく影響を与えたと考えています。

宮崎駿が子供向け映画を作るきっかけとなったのは、第二次世界大戦での経験です。

彼が4歳の頃、米軍の爆撃から逃れるため、家族で東京を脱出しようとした時のこと。燃え盛る街を車で逃げていると、人々が「車に乗せてくれ」と口々に言いました。

その中には子供を連れた若い女性もいて、「どうか入れてください」と懇願していたと監督は記憶しています。

しかし両親は「もう場所がない」と断ったそうです。

 

彼女によれば、宮崎駿はあの時自分が何も言わなかったことを後の人生で後悔し続けていたと言います。

彼がこのトラウマを克服する方法の一つとして、

「私たちは違うやり方をしなければならない、大人たちをより良い考え方に導かなければならない」

と発言する子供たちの物語を書いているのではないかと考えています。

 

圧倒的な観察力と想像力

宮崎駿は幼い頃から絵の才能があり、大学で政治学を学びながらその才能を開花させていきました。

スタジオジブリの鈴木敏夫氏は、「彼が豊かな想像力を持つことができたのは、ずば抜けた観察力があったからだ」と語ります。

建物でも風景でも人物でも、彼がカメラを持って撮影することはありません。

紙に鉛筆でスケッチすることもない。描くのは早くても1年後、あるいは10年後。

本展のカタログに彼はこんなメッセージを寄せています。

 

写真のような描写力は宮崎駿の才能の一つですが、記憶が薄れた時に彼は自らの想像力でその空白を埋め、オリジナリティ溢れる作品を生み出します。

 

ジェシカは最後に、

宮崎駿は人々が尊敬する偉大な巨匠ですが、彼が人々からそのように思われることを望んでいるかどうかはわかりません。

と宮崎駿の心境を代弁しました。

 

映画文化の中心地ハリウッドにオープンしたアカデミー映画博物館。

そのオープン企画展に、日本のアニメ監督の回顧展が選ばれるという喜ばしい出来事です。

現地で見ることが難しい事だけが悔やまれますが、ジェシカをはじめ海外の研究者たちのコメントを見ると、ジブリ作品の見方も変わっていきそうです。

 

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