2017/06/15
アートコラム/Column

大人が見るべきアニメーション。ジャンルイジ・トッカフォンドが描くブラックユーモアの世界

大人が見るべきアニメーション。ジャンルイジ・トッカフォンドが描くブラックユーモアの世界

ジャンルイジ・トッカフォンドというアニメーション作家を知っていますか?

映像を学んだことのある方なら大抵の人が知っているはず。

カンヌ、ベルリン、ヴェネチアといった様々な映画祭で数多くの賞を受賞する作家さんです。

ユナテッドアローズの企業イメージ広告も担当されていたので、昔のCMや広告イラスト等を覚えている方もいるかもしれません。

知らないという方も、まずはこちらの映像をご覧ください。

Gianluigi Toccafondo 1998 UNITED ARROWS

こちらは’98年に公開されたユナテッドアローズのCM。

今テレビに流れているCMと比べ物にならないくらい、センスが良い。

絵の具の流動性、ブラックユーモアが潜む世界観、魅力的な彼のアニメーションをこのCMに起用したのは、アートディレクター、葛西薫(かさい かおる)さんです

葛西 薫 (かさい かおる、1949年 – )は、日本のアートディレクター。(株)サン・アド取締役副社長。東京造形大学客員教授。北海道札幌市生まれ[1]室蘭市育ち[2]
 
高校卒業後、文華印刷(株)に入社。(株)大谷印刷勤務を経て、1973年(株)サン・アドに入社、現在に至る。
 
アートディレクターとして、サントリーウーロン茶(1982年 – )、ソニーのオーディオ(1979年 – 1992年)、サントリーモルツ(1986年 – )、西武百貨店「日本一の市」(1986 – 1992年)、ユナイテッドアローズ(1997年 – )などの広告キャンペーンを手がける。
出典:wikipedia

毎日デザイン賞講談社出版文化賞ブックデザイン賞などを受賞されています。

手がけた広告、装丁は数知れず。日本を代表するアートディレクターさんです。

 

こちらも合わせて読みたい

『葛西薫の仕事と周辺』-六曜社

修練を積んだタイポグラフィーを底力とするのびやかな画面。
そこに漂う空気の少しの湿り気が見る者を遠くへさそう。
手を動かしながら考えていく、葛西 薫とその作品世界をスキャンする。
サントリーウーロン茶のグラフィックとCMをはじめとする広告や、ブックデザイン、個展などの多岐にわたる作品を「管、スクリュー、物体など」「少年、青年、歌」「デザインのデの字」などの7章に分類。
作品にまつわる沢山の話や文章やスケッチが、のびやかで深い葛西世界を身近にする。
出典:六曜社

ジャンルイジ・トッカフォンドは、このCMで音楽を担当されている中川俊郎さんのCDジャケットもいくつか手がけています。

サントリー黒烏龍茶のCMのあの曲も、中川さんの作曲です。

略歴

ジャンルイジ・トッカフォンド略歴はこちら

1965年サンマリノに生まれる。

ウルビーノ美術学校で学び短編アニメーション作家として、カンヌ、ベルリン、ヴェネチアの映画祭で数多く賞を受賞する。現在はミラノで活動している。

1989年の『La coda 』はトレヴィーゾ、オタワ、ザグレブなど各映画祭で入賞。

その後、『More Cinema, More Europe(1992)』や『Woman Finding Love(1993)』等、企業広告などの仕事も手がけつつ、『La Pista (1991)』や、フランス映画国立センターの依頼で作成した『Le Criminel(1992)』で、数多くの映画祭から評価を受ける。

1999年の『Pinocchio』とともに、日本のユナイテッドアローズの企業CFのための作品がフランスのアヌシー映画祭で入賞。さらに同年には、アートディレクターの葛西薫と一緒に手掛けたユナイテッドアローズの一連の企業広告作品が東京アートディレクターズクラブの最高賞(99年ADCグランプリ)を受賞した。

その後、1999年11月に『ピノッキオの冒険』の絵本を日本のリトル・モアから出版、ブックデザインを葛西薫がつとめた。出版に併せてグラフィックデザイナー小島良平さんのギャラリーT・R・Yにて原画展を開催。

2003年の『La Piccola Russa 』はオタワでBest Independent Narrative Short賞を受賞している。

近年では、リドリー・スコット率いる 「スコット・フリー」のロゴを手がけています。

こちらの映像、映画館で見たという方も多いのでは?

その他に手がけているアニメーション作品についてもご紹介します。

Pinoccio

関連書籍

『Pinoccio』 

誰もが一度は触れたことのある物語、ピノッキオが、暖かく、残酷で美しい魂の物語に生まれ変わった。99年東京ADC賞グランプリを受賞したイタリアの画家・トッカフォンドとデザイナー・葛西薫のコンビが贈る、大人のための贅沢な絵本。
こちらも葛西薫さんが装丁を手がけています。
家に置いておきたい一冊です。

Piccola Russia (2004)

関連書籍

『Piccola Russia』

イタリアの画家で、映像作家であるジャンルイジ・トッカフォンドの最新作品集『小さなロシア』。
小さな頃に祖父から聞いた生まれ育った土地の話が3年の歳月をかけ、情緒溢れる物語となりました。
第二次世界大戦の前、アドリア海に面した内陸部で多くの民は、農業をやめて近くにできた工場で働くことにした。その時代、ロシアは人々の憧れの国だった。ロシアでは民すべてに食べるものが行き渡っている、蛇口をひねるとパンが出てくるらしいという噂が世間をにぎわしていた。内陸に暮らす者にとって、アドリア海を望む海岸線まで出ていくことは、その海の先に憧れのロシアがある……、つまりそれは、夢みることと同義語だった。こうして魅せられてしまった者がこの世で一番の楽しみと思い込んでいることは、ただ売春婦を相手にするだけのことだったりした……。
イタリアのエミリア・ロマーニャ地方、マルケ地方の内陸部には、「小さなロシア」と呼ばれる部落がたくさんあった。
トッカフォンドが育った土地の物語を、独特のタッチで描いた本書は、気鋭・葛西薫のデザインにより、風格のあるステキな作品集になりました。

出典:リトルモアブックス

気になるアニメーションの制作方法について

抽象画のタッチで描かれる彼のアニメーションは、一見空想の世界のようでいて、現実の世界がそこかしこに隠れています

絵本の世界だと甘く見ていたら、不気味なくらいリアルで、恐怖すら感じてしまうのがトッカフォンドのアニメーションの魅力ではないでしょうか。

制作方法としては、写真のコピーを下敷きに描いているんだそう。

写真のコピーを取る際に、原画を意図的に手ずらして歪んだ画像を作成しながら制作することで、

部分的にはすごくリアルに描いておきながら、歪ませたり、伸縮させることで、あの奇妙な画面を作っているんです。

頭では理解できても、やはりそれを構想し、表現する才能はまた別ですよね。

ブラックユーモアが滲む彼の作品を見ると、ドロドロした、人間の裏側を覗いているような気分になります。

アニメーションは子供のためのものと考えがちですが、たまにはこういう洗練されたアニメーションを見てみるのも良いかも知れません。

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