2017/07/10

アラーキー写真   
   News    

KaoRiだけじゃない!アラーキーのセクハラ疑惑

 

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荒木経惟(のぶよし)は、1960年代から50年間以上にわたって日本の写真界の第一線で活躍している写真家です。

生まれ育った下町の風景や、そこで生きる人たち、愛する妻、ペットの猫から、過激なヌード、妖艶な花々などエロスを扱った作品と、数多くの写真を残してきました。

写真に共通して、その被写体から強烈なエロス(愛)タナトス(死)が漂う独特の写真世界を確立し、国内外で高い評価を受けています。

2013年に前立腺がんを患い、後遺症で右目の視力を失いますが、御歳78歳を迎える現在も、精力的に活動を続けています。

 

 

 

#me too運動で明らかとなった荒木経惟セクハラ・パワハラ疑惑。

 

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ハリウッド女優の呼びかけを発端に広がり続ける、「#MeToo」の動き。

今まで恐くて誰にも話せなかった、過去に受けたパワハラやセクハラを男女関係なく声を上げよう!とする運動です。日本では、その文化故にか、大きな広がりの兆しが見えず皆が沈黙する中、写真家・荒木経惟にセクハラ・パワハラを受けた女性たちが声をあげました。

この声は、すぐにネットで広がり話題になりました。特に、エロスについて扱っている写真家、かつ名声のある荒木経惟とくれば、ファンにとってもとても悲しい事実です。

また、「#me too」運動について一部の方の中にあれは、女性からの攻撃だ!復讐だ!等、誤解されている方もいます。“me too”、とあるように“協働”を重視してる運動です。

 

彼女たちが被写体としてどのように扱われたのか。

その写真は、名声がある写真家が撮った写真だから評価されるのか、芸術だから何をしても良いのか。

 

 

 

声をあげた3人の女性たち

カメラマンと被写体(モデル)との関係でセクハラ・パワハラが行われたと公表した元モデルたちを紹介します。この公表の中には、自分以外にも被害にあった方はたくさんいる、という内容もあります。

 

モデル・湯沢薫さんが10代の頃、荒木から受けた性的虐待を告白

 

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はじめて声をあげたのは、モデルの湯沢薫さんです。

2017年に自身のFacebookで公表された生地には、10代の頃、荒木氏のモデルの仕事の際、性的虐待を受けたと告白。

当時病院に通うほどの精神的ショックを受け、荒木の作品や顔を見ると今でも吐き気を催すことや、ほかにも被害者がいることを知っていると綴っています。

 

What’s about art ?

この話は真実です。

告白しようかと迷いましたが、現実に起こった出来事であり、Artとは何か?という事を沢山考えました。今が告白するタイミングだと感じたので、投稿します。長文ですが、是非、読んで頂けたら、幸いです。

 

私は若い頃、ファッション雑誌、テレビコマーシャル、ファッションショーなどのモデルをしていました。

19歳の時、有名な写真家である荒木経惟氏と雑誌の仕事を一緒にしなければなりませんでした。

その時、私は荒木経惟氏から性的虐待を受けました

 

その行為はレイプではありません。細かい詳細をここでお話しするのは辛いですが、これは、私にとっては本当に恐ろしい経験でした。

この事件が起こった後、私は精神病院に行かなければならない精神状態になり、何度もセラピーを受け、モデル業を休業しなければならない状態になりました。

私は彼の性的虐待によって、想像以上にとても傷つきました。もし私がお金持ちなら、私は彼を訴えたいと思っていましたが、その時は訴える気力もなく、それを実行するエネルギーもありませんでした。

 

美術館やギャラリーのキュレーターに会う機会があるとき、私はできるだけ、必ずこの話をしてきました。彼の大きな展覧会は現在、東京都写真美術館で行われています。

 

彼の顔の写真と彼の作品を見た後、私は未だに、嘔吐してしまいます。

荒木氏の投稿をfacebookで偶然見てしまい、その後、急速に具合が悪くなり、ここ数日間、発熱と嘔吐という病状に襲われ、寝たきりの情況に陥りました。

この恐ろしい思い出は、私の頭と私の心の中でまだ深く生きています。

 

私は荒木経惟氏の性的虐待の犠牲者が他にもいることを知っています。これは本当の話です。

 

彼は現実には刑務所にいなければならず、彼は犯罪者ですが、多くの人々が彼の作品を愛しています。

私はもし、あなたが彼の作品が好きであれば否定するつもりはありません。ですが、できるだけ多くの人に彼の犯罪行為を伝えたいと強く想い、私はこの真実の話を投稿することに決めました。

この真実の告白は勇気のいることでしたが、皆さんに芸術とは何か?ということを、改めて考えて頂けるきっかけになれば幸いです。有名だからといって、罪を犯してもいいのでしょうか?私はそうは思いません。

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自身が受けた事実とともに、次のように締めくくっています。

「この真実の告白は勇気のいることでしたが、皆さんに芸術とは何か?ということを、改めて考えて頂けるきっかけになれば幸いです。有名だからといって、罪を犯してもいいのでしょうか?私はそうは思いません」

 

 

荒木の長年のモデルを努めたKaoRiさんの告白

 

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2001年から2015年まで約15年にわたって荒木氏の「ミューズ」として作品モデルとなってきたダンサーのKaoRiさん。

 

そもそも、「ミューズ」とは?

芸術を司るギリシャ神話の女神のことです。

そして、彼女らが芸術家にインスピレーションを与えるさまから、同じようにデザイナーや作曲家や写真家などの創作意欲を刺激する女性たちのことを「ミューズ」と表現されるようになりました。

“考える人”で有名な彫刻家・オーギュスト=ロダンや、アーティスト・アンディ=ウォーホルにも「ミューズ」と呼ばれる女性がおり、彼らの作品に多大な影響を与えてきました。

 

被写体との関係性の濃い、極めて私的な写真作品を撮りつづけてきた荒木。

制作者にとって、パートナー的存在であるはずの「ミューズ」であったKaoRiの実態を2018年4月1日 ウェブサービス「note」上で公表しました。

 

信じる信じないに関わらず、me tooも関係なく、彼の作品鑑賞の一つの視点にしてもらえたらそれでもう十分(原文ママ)

 

と前置きを置いてから始まった記事には、写真家・荒木経惟との長年にわたる関係性の内実が記されていました。

そこには、「写真家とモデルで、恋人関係ではなかった」という二人のあらゆる撮影に同意書が存在しなかったこと、荒木作品のために行ったパフォーマンスすべてが無報酬であったこと、ヌード撮影を強いられた過去などが綴られており、「ミューズ」の役割の裏側にあった不均衡な関係性を明らかにしました。

 

そして、こうした経験をふまえ、仕事のスタイルが多様化した現代における契約書の重要性と、

芸術という仮面をつけて、影でこんな思いをするモデルがこれ以上、出て欲しくありません(原文ママ)

と訴えています。

 

約7000字にわたる告白の最後は、関係性や立場に上下をつけず

「お互いがお互いに尊重しあって発展する世の中になりますように」

と締めくくられています。

 

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被写体がいる写真を撮るのであれば、その被写体(モデル)との関係性は写真家にとっては1番大切なことです。例えば、友達に写真を撮ってもらうのと、写真屋さんに行って撮ってもらうのと、どちらが自然な笑顔を出せるでしょうか。もちろん前者ですよね。

つまり、写真家とモデルとの距離感は、その写真に大きく影響するということです。上記で紹介した妻・陽子さんとの日々を綴った「センチメンタルな旅」では、全くカメラを意識していないありのままの陽子さんが素晴らしいですよね。あの表情を作りだし、収めたのは写真家の腕のよさでもあります。

 

その関係性を全く無視し、「ミューズ」という名の“モノ”として扱っていたとされる今回の告白文。

 

当事者にしか分からない当時の状況や、彼女の心の状態より、これが氏への復讐や嫌がらせとは思えません。長い文章ではありますが、事実を知るためにも、そして#me too運動を、セクハラを考えるためにも読んでほしい内容です。

 

 

 

 

 

モデル・水原希子さんの告白

 

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そして、kaoRiさんの告発から勇気を貰った、水原希子さんも2018年4月に自身のインスタグラムで荒木氏からのセクハラを告白しています。

インスタグラムのストーリーという24時間で消えてしまうシステムにアップされました。

 

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この発言を受け、ネット上では資生堂が13年元旦に展開した新聞広告の可能性が高いことがつきとめられます。

   「わたし、開花宣言。」と題した広告で、両胸を手で隠した上半身裸の水原さんが笑顔を浮かべる写真が大きく掲載されています。

このとき、水原さんは22歳。撮影内容、時期ともに水原さんの告白と一致。また、公式サイトによれば、撮影したのは荒木経惟氏で広告のディレクションは、資生堂宣伝部の澁谷克彦氏が担当しており、おそらく資生堂の撮影での被害であることがわかります。

 

この事態を受け、ニュースサイト・J-CASTニュースが資生堂グローバル広報部に取材を依頼。水原さんの告発に関し、資生堂の広告写真との関連を疑う声が出ていることについて、事実確認を求める質問状を送っています。

  以下が 資生堂からの返信文です。

 

水原さんの所属事務所にも事実確認を依頼し、社内での調査も行いましたが、結果として、当社での広告撮影時に起きた出来事かどうかについては分かりませんでした
 
 
重要なことは、写真家と被写体(モデル)との関係性、そしてその現場を作り出す者たちのリテラシーではないでしょうか。
 
 
 
 
 
この告白を受けて関係者の反応

 

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この告白に対し、芸能界や同じ写真業界から様々な反応が上がりました。

2011年に休刊した写真雑誌『Photo GRAPHICA』の編集者だった沖本尚志さんは、同雑誌で担当した荒木の特集「KaoRi Sex Diary」がKaoRiの被害事例として記されたことに、2018年4月9日にFacebookで私見を記しています。

 

 

昨晩、荒木さんのモデルだったKaoRiさんの告白記を読んだ。
https://note.mu/kaori_la_danse/n/nb0b7c2a59b65

衝撃だった。
9年前、当時僕が担当していた写真雑誌で荒木経惟特集を組んだ。そのタイトルは、「KaoRi SEX Diary」だった。。
そう、告白文で批判のひとつとして書かれているのは僕が担当した特集だった。

 

雑誌には、ヌードもストリートスナップも誰かのポートレートも作家が載せたいと思う作品はすべて掲載してきたので、いつかはこういう日が来るのだろうと覚悟はしていた。
でもまさか、KaoRiさんが声を上げるとは思っていなかった。

 

9年前の夏、荒木さんと初めて新宿で会って、特集をやらせてくださいと頼んだとき、すぐに出てきたテーマが「KaoRiで一冊やろう」だった。
次に逢ったとき、荒木さんは500枚近い写真を持ってきて、「全部載せてね」と言った。500枚は全部KaoRiさんの写真だった。

 

KaoRiちゃんとは、特集をやっている最中に何度か逢った。
ほとんど喋らない子で、いつも子供のように屈託のなく笑っていた。
会話はほとんど無かった。

 

一度だけ、雑誌が出来たあとで、どうだったかと聞いたら
ひと言、「よかった」と言って笑った。
じつは、よかったどころじゃなかったんだね。
そう考えると胸が痛む。

 

2年後、僕の雑誌は休刊になったが、KaoRiさんは荒木さんの被写体として、何度も雑誌や写真集に取り上げられ、すっかり二人の関係はいまでも変わらず続いているものだとばかり思っていた。昨晩、告白記を読むまでは。

 

書かれていることはほぼ事実だろう。当事者にしか知り得ない話が多いからだ。つらかったんだろうな。モデルの傍らでバイトしているなんて知らなかったよ。そして、文章も見事で饒舌だった。いろいろ衝撃だった。

 

誤解を恐れずに言えば、僕の荒木さんの写真に対する評価はこれからも変わることはない。今回露呈した事実も、基本的には荒木さんとKaoRiさん二人の間の問題だからだ。

ただ、これから荒木さんの写真を見るとき、その中にKaoRiさんと同じ痛みを抱いた人たちがいることを等しく見出すことになると思う。彼の写真は誰かの犠牲の上に成り立っている、そう思うと、もう気軽に写真を見ることはできないだろう。

無論、僕にも反省はある。
こういう状況を生んだのは、忖度の空気をつくったのは、僕らなのだろうなとも思っているし、責任の一端も多分にある。それは皆が等しく負うべき負の遺産であるし、未来に持ち越してはいけないものだ。

 

そして、僕はいまでも『PHOTOGRAPHICA』の編集者である。
雑誌は無くなったけれど、責任はまだ残っていると思っている。
その一人が口をつぐんでいるのはかつての読者に失礼と思い、FBとtwiterにコメントをポストしました。
長文失礼いたしました。

元PHOTOGRAPHICA編集部 沖本尚志(原文ママ)

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KaoRiが記す内容はほぼ事実と思われるが経済的困窮は知らなかったとし、「僕の荒木さんの写真に対する評価はこれからも変わることはない。今回露呈した事実も、基本的には荒木さんとKaoRiさん二人の間の問題だからだ。」と記し、作品の制作に伴う犠牲は当事者間の問題で評価に影響しないとしています。

一方で、

ただ、これから荒木さんの写真を見るとき、その中にKaoRiさんと同じ痛みを抱いた人たちがいることを等しく見出すことになると思う。彼の写真は誰かの犠牲の上に成り立っている、そう思うと、もう気軽に写真を見ることはできないだろう。

とも記されており、荒木に忖度した責任の一端は自身にもあり「皆が等しく負うべき負の遺産であるし、未来に持ち越してはいけないものだ。」と業界について記しています。

 

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沈黙の荒木経惟

 

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残念なことに、彼女たちへの公式的な反応や、返しは未だにありません。kaoriさんの告白文を見る限りでは、個人的なやりとりも紳士的な態度は見受けられませんね。

そのような中、現在荒木氏は、ニューヨークのセックス博物館にて個展を行なっています。

会場は博物館の2階と3階の2フロアを使用しており、2階では「論争」「戦後日本」「芸術的アイデンティティ」、3階では「強迫と情熱」といったキーワードで作品を掘り下げています。

その中の「論争」では、写真家とモデルの関係を展示。

緊縛ヌードなどの作品は同意に基づく性の解放や親密さを表しているのか、それとも性差別的な女性の「性的対象物化」なのかという問いを投げかけています。

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もしかしたら、これが彼女たちへの返答なのでしょうか。それとも、先が短い人生を自身のサイノウを使い切ることしか考えていないだけなのでしょうか。

 

 

写真家・荒木経惟(のぶよし)とは?

 

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セクハラ疑惑の一方で、荒木経惟とはいったい何者か?

なぜ写真家と評価されているのか?

彼の作品とともに紹介していきます。

 

生い立ち

1940年  東京都台東区 三ノ輪生まれ。

1963年 千葉大学を卒業後、電通に宣伝用カメラマンとして就職。

1964年 写真集「さっちん」にて、第1回太陽賞受賞。

1971年 同じく電通に勤務していた青木陽子と結婚。

    陽子との新婚旅行を写したセンチメンタルな旅を限定1000部で自費出版

1972年 電通を退社。フリーになる。

1990年 「写真論」「東京物語」にて第2回写真の会賞受賞。

1992年 「空景/近景」にて第4回写真の会賞受賞。

1999年  織部賞を受賞。

2008年  オーストリアより科学芸術勲章を受賞。

2011年  安吾賞を受賞。

2013年 毎日芸術賞特別賞を受賞。

 

 

荒木経惟の有名作品

 

  • “アラーキー”を世に知らしめた『センチメンタルな旅』シリーズ

 

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荒木経惟が1971年に自費出版した実質的なデビュー写真集『センチメンタルな旅』

1971年の京都・九州への新婚旅行の道程を撮影したもので、出発から旅先での観光、旅館での性行為の場面などが収録されています。妻・陽子に焦点をあて、その存在を色濃く表した同作品は、観る者の心を揺さぶらずにはおきません。新婚旅行にも関わらず、妻・陽子の瞳はとても静かで、寂しさすら感じます。まさに、“センチメンタル”な旅です。

その後、陽子は荒木にとって、彼の撮る写真にとっても、最も重要な被写体になっていきます。

 

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ース

 

 

  • 「続 センチメンタルな旅 沖縄」(1971)

 

ース

 

 

  • 「10年目の『センチメンタルな旅』」(1982)

 

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  • 「センチメンタルな旅・冬の旅」
 

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妻としても、被写体としての関係も1990年の陽子の死によって突然終わりを迎えます。

1991年、はじまりの『センチメンタルな旅』が『センチメンタルな旅・冬の旅』として再構成され、陽子との最期の日々の写真が収録されます。

後半部の「冬の旅」のパートは陽子が悪性の子宮筋腫で入院してから死を迎えるまでを、日付入りのコンパクト・カメラで撮影した写真日記の体裁がとられており、陽子のポートレイトをはじめ、病院への道程、病室、自宅、葬儀場などで撮影された写真が荒木のコメントとともに編まれています。

夫婦間の私的な物語が普遍的な物語へと昇華されるかのように、同書はベストセラーとなり、後の「私写真」ブームのバイブルともなりました。

 
 

荒木経惟が確立させた“私写真”

 

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荒木氏は「センチメンタル 冬の旅」にて「私写真家宣言」をしました。

 

自分の新婚旅行を撮影したから真実写真だぞ!と言っているのではありません。写真家としての出発点を愛にし、たまたま私小説からはじまったにすぎないのです。もっとも私の場合ずーっと私小説になると思います。私小説こそもっとも写真に近いと思っているからです。

 

私写真とは?

 

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撮影者の身のまわりの事象やプライべートな出来事などを題材とした写真のことをさします。

写真史1970年前後の日本の写真界には、戦後に隆盛を誇ってきたリアリズム写真や、ヴィジュアル・ショックを重視する広告写真の潮流にあらがうかのように、大文字の「私」に頼ることをしない、個々人の私的な立場からのアプローチを試みる写真が次々と現われていました。

このような時代、荒木氏の『センチメンタルな旅』(1971)などは、撮影者自身の私生活を被写体にした写真の代表的な例でありました。そうした傾向の写真を呼ぶための言葉として、小説のジャンルのひとつである「私小説」との類似から、この呼称が使われ始めたとされています。

そして、ごく私的な写真を、作品として昇華させたのが荒木経惟であり、彼が評価されている要因の1つでもあります。

 

 

私写真の境界線、篠原紀信との対立

 

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この私写真を巡って荒木氏と写真家・篠山紀信が激しく対立し、絶縁状態にまでなってしまった話があります。

荒木氏が最愛の妻、陽子さんと出会ってから病の床に臥し他界するまでを撮り続けた「センチメンタルな旅–冬の旅」。この写真集の最後には「棺桶の中の陽子さん(の顔)」の写真が載せられており、この写真をめぐり、篠山紀信と論争します。

篠山 

「そんな不遜な写真集なんか僕は見たくないね・ あなたの写真は一面的じゃないというか、多義性を孕んでいるからこそ面白かったんじゃないですか。本当のこというとこれは最悪だと思うよ。荒木ほどの奴がこれをやっちゃったのはどういうことかと思ったね。

 

 

荒木 「一回妻の死に出会えばそうなる。」

篠山 「ならないよ。女房が死んだ奴なんていっぱいいるよ。」

 

荒木 「でも何かを出した奴はいない。」

 

篠山 「そんなもの出さなくていいんだよ。これはやばいですよ、はっきりいって。」

 

荒木 「いいや最高傑作だね。見てるとミサ曲が聞こえてくるでしょう。」

篠山 「だからつまらないんじゃない。ミサ曲が聞こえてくる写真集なんて誰が見たいと思うの。 あなたの妻の死なんて、はっきりいってしまえば他人には関係ないよ。」

 

荒木 「だからこれは俺自身のためのものなの。なんといっても第一の読者というのは自分なんだから。俺の写真生活はこれで第一ラウンドが終わったという感じがするね。
陽子で始まって陽子で終わったんだな。」

(「波」新潮社 1991年発行の対談の一部抜粋。)

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  • 妻・陽子

 

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多くの時間を荒木氏と過ごし、そして多くの写真のモデルを務めた妻・陽子さん。

彼女は、モデルになる、レンズを向けられる事についてどのように思っていたのでしょうか?

 

私が一人ソファで喘いでいても、私の肉体は単に投げ出された肉体ではなく、彼の肉体としっかり繋がれている肉体なのであり、夏みかんを食べる手が写っている写真では、こちら側にいる彼もやはり夏みかんを食べて、その夏みかんの匂いのついた手のままシャッターを押している情景、とゆーのが私には感じられるのだ。

私が写っていても、そこには彼の姿が色濃く投影されている。私の写真ではなく、私と彼の間に漂う濃密な感情が写っているのである。

(『愛情生活』―「〈ノスタルジアの夜〉ふたたび」より)

 

荒木氏のことを愛されていることが伝わってきます。そして、とても信頼されているようです。

ですので、この2人の濃密な関係が写った、「センチメンタルな旅」は私たちの心を揺さぶるのでしょう。

 

 

現代写真美術館「荒木経惟 センチメンタルな 旅 1971– 2017–」展(終了)

 

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2017年、東京・恵比寿にある東京都写真美術館にて、荒木経惟大回顧展が行われました。連日大勢の人が訪れ、多くの人がアラーキーの世界に酔いしれました。
この展示で荒木氏は、被写体・陽子への思い、そして自身が考える写真についてコメントを残しています。

 

一番いいと思う写真はその時によって変わるんだけど、今だったらソファにもたれかかっている陽子の隣に私がいて、私の膝の上に(愛猫だった)チロがいる写真かな。2人でくだらないテレビを見てさ。幸せな時なのに、孤独感が(陽子の)顔に写っている。それが人間なんじゃないかな。結局、人生はセンチ、写真はセンチメンタルなんだよ。だからやめればいいんだけど、惹(ひ)かれる。生と死が行ったり来たりして、結局ひとりなんだなという。それが写真だというふうに、まちがってるんだろうけど、思っている

 

荒木経惟 

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  • 愛しのチロ

 

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チロとは荒木氏が飼っていた愛猫で、妻・陽子さんがもらってきてから、家族3人で暮らしていました。
そして、陽子さんが亡くなられて、家族2人になってからも彼らはいつも一緒に過ごしました。
 
 
 
猫としては大往生の22歳でこの世を去ったチロ。人間年齢では104歳のおばあちゃんになっていました。
彼女との生活は、きっと陽子さんを亡くして空ばっかり見上げて写真を撮っていた飼い主にとってかけがえのない者だったのでしょう。その気持ちが写真から伝わってきます。
 
 
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さっちん
 
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この作品は、荒木の本当のデビュー作でもあります。
 
下駄屋を営み、アマチュア写真家でもあった父の影響を受け、写真を撮り始めたアラーキー。千葉大学在学中、雑誌『太陽』が主催する太陽賞に『さっちん』でエントリーし、見事に受賞します。

この作品について、インタビューでは次のように話しています。

この日常に犯されつづけてきたアパートの情景と、汗だらだらでとびはねるさっちんたちは、完全に私をとりこにしてしまった。(中略)一年間、いっしょにとんだりはねたりして遊んだ結果、日常のなんでもないことの中にすばらしいドラマがあることに気がついた。そして、さっちんに私を見たのである。

 
 
 

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ありのままの日常を、自分の距離で写す という自分の写真の撮り方を見つけた様子がうかがえます。

これから、日記を綴るように撮り続けてきた作品をまとめては、次々と世に送り出していくわけですが、その基盤を作ったのがこの作品群と言えるでしょう。

 

 

エロスとタナス、荒木経惟が撮る女性

 

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1998年から続く人気連載シリーズ『人妻エロス』。

補正・調整し、画一化された美しさを作り上げようとする現代のグラビア写真に対し、荒木はさまざまな年齢の肉体をむき出しにする女性を銀塩写真に収め続けています。

 

みんな肉体をさらけ出して、『裸を見せちゃうのなんて平気』って顔をしているけど、その一方で『腹をへこませなきゃ』っていう女心ものぞかせていて、その微妙な気持ちも僕の写真には出ちゃうんだよね
そこに写るのは年齢を重ね、ふくよかに脂肪を蓄えた女性の裸体だ。モデルのように均整の取れた体形を誇示する一般的なヌード写真とは違い、「普通は隠したいものもさらけ出す厚かましさと、一方で、人に撮られる恥じらい。そうした色々な要素が混じり合った女の凄(すご)みを暴き出すのが、アタシの写真

 

既存のヌードに対して「女の美しさというのは、そういうものじゃないよということを示したい」という荒木。あるがままの姿を受け入れて新たな美を提示し続けようという姿勢は、今も変わらず挑戦的です。

 

みんな雑誌のグラビアは飽きてきただろう? 形の大きさや良さなど、形にとらわれているけど、ヌードというのは、そういうものじゃないと教える要素も入っている。三段腹だけど撮られても平気だとか、亭主を裏切って脱いでいるのがたくましいと思って撮っているわけじゃないよ。どうせ撮られるなら腹をへこませたいとか、下着は替えてくればよかったとか。そういう恥じらいとずうずうしさなど女の色々な要素が混ざっていて、それを裸にする、暴き出すのをヌードという。こっちの方が写真という意味では上かもしれないよ

 

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まとめ

荒木氏が今まで残してきた数々の作品と、現在の氏へのセクハラ・パワハラ告白されている状況をまとめました。

告白文から考えなくてはいけないことは、“芸術だから”や、“有名な人だから”、といった表面的なコトバだけが一人歩きし、本質を考えることを忘れている状況ではないでしょうか。

沖本さんがコメントしていた通り、今後荒木さんの写真を見るとき、今まで通りには、気軽に写真を見ることはできないでしょう。

 

 

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