ポストモダン建築建築磯崎新
CULTURE

磯崎新が逝去、ポストモダン建築を牽引した建築家の経歴と代表作品を紹介

2022年12月28日、建築家の磯崎新が老衰のため、那覇市内の自宅で死去しました(享年91歳)。

磯崎新はポストモダン建築をリードし、国際的に活躍した日本人建築家の一人として知られており、1996年にはヴェネツィア・ビエンナーレ建築展金獅子賞受賞を受賞、2019年にはプリツカー賞を受賞しています。

今回は建築業界に大きな功績を残した、磯崎新の経歴と代表作品について詳しくご紹介します。

 

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ポストモダン建築の牽引者、磯崎新

磯崎新は1931年7月23日、大分県に生まれました。

1954年に東京大学工学部建築学科を卒業。

その後は黒川紀章らとともに丹下健三のもとで働き、1963年に「磯崎新アトリエ」を設立しています。

 

広島の原爆と復興

1945年、広島に原爆が落ちた当時、磯崎は14歳でした。

大分の実家から対岸にある広島の惨状を目の当たりにした磯崎。その後、長崎にも落とされた原爆と戦争の記憶は、彼の作品の根幹を成す原体験になりました。

彼は2019年にプリツカー賞を受賞した際にも、戦争について言及しており、

私はグラウンドゼロで育ちました 。建築もビルもなく、街さえもなかった。

だから、私の建築の最初の経験は建築の空白であり、私は人々がどのように家や都市を再建するかを考えるようになりました。

というコメントを残しています。

 

国内外で作品を発表、キューレーターとしても活躍

磯崎は、1980年にロサンゼルス現代美術館(MOCA L.A.)の設計を手がけるまで、約20年近くのキャリアを、日本国内の建築設計に費やしました。

最初期には、大分医師会館の旧館(1960)、大分県立中央図書館(1966)、群馬県立近代美術館(1971)などの設計を手がけています。

1972年には、彫刻家の宮脇愛子と結婚。

1978年には、磯崎新がキュレーターを務め、日本の芸術文化に内在する「間」「寂」などの美意識、空間性、時間性について紹介する「Ma: Space/Time in Japan」展がパリ、ニューヨークを巡回しました。

 

ポストモダン建築の旗手として評価が高まる

80年代に入ると、それまでは合理性と機能美を重視したモダニズム建築が主流だったのに対して、装飾性・過剰性などの回復を目指す「ポストモダン建築」が流行し始め、磯崎新はポストモダン建築の旗手として、国際的に高い評価を得るようになりました。

90年以降は、水戸芸術館(1990)、チーム・ディズニー・ビルディング(フロリダ・1990)、豊の国情報ライブラリー(1995)などの設計を手がけています。

 

ヴェネチア・ビエンナーレ金獅子賞、プリツカー賞を受賞

1996年に参加した第6回ヴェネチア・ビエンナーレ国際建築展では、阪神大震災の廃虚を再現した展示を発表し、金獅子賞を受賞。

2019年には建築界で最も権威のある、プリツカー賞を受賞しました。(磯崎は賞の設立から10年ほど審査員を務めていました。著書『建築家捜し』では審査員の辞任に至った経緯が語られています)

その他にも、王立英国建築家協会ゴールドメダル、スペイン文民功労勲章大十字賞など、国際的な建築賞を数多く受賞しています。

 

磯崎新の代表作品

ロサンゼルス現代美術館(1986年)

磯崎新の海外での初めての作品となったロサンゼルス現代美術館(MOCA L.A.)。

当初は、建築委員会が磯崎新の気に入らないデザインを押し付け、彼自身がマスコミに語るほど複雑な状況になりました。「辞めるか、クビになるか、どちらかしかなかった」と、当時のことを語っています。

建築家フランク・ゲーリーの助言もあり、美術館の評議員会の支持を得て、磯崎新のデザインは実現することになったのです。

美術館の建物は、赤砂岩の赤い石張りの外観が特徴的で、展示スペースがほぼ地下に埋まっています。

周囲の高層ビルに対して低く設計された美術館と、中庭につながるアーチ型のエントランスが目印です。

内部の展示室も、大きな天窓から自然光が入る部屋、人工光を利用して自由自在に光をコントロールできる部屋など、さまざまな試み、工夫が見られます。

 

北九州市立美術館(1987年)

初期の代表作、北九州市立美術館は、時代を超えても美しい建築美を感じることができる作品です。

建物全体はグリッドを基調にデザインされ、ファサードから二本の筒が飛び出した斬新な造形が特徴的。

左右に比翼が伸びたような形から、「丘の上の双眼鏡」の愛称で呼ばれています。

館内からは海や市街地を一望することができるほか、3階のアトリウムには、中世の中庭を思わせる休憩室が配置されています。

 

山口情報芸術センター(2003年)

山口市の中心部にある山口情報芸術センター、通称「YCAM(ワイカム)」。

2003年にオープンしたYCAMは、展示空間のほか、映画館、図書館、ワークショップスペースなどが一体となった総合文化施設です。

山並みのような形状の屋根が特徴的で、周辺の自然豊かな環境と調和しています。

建物内部は、あらゆる場所がアート作品の展示・発表、制作の場として活用できるよう設計されており、高い天井から柔らかい光が注ぎ込み開放的な空間を演出しています。

 

奈義町現代美術館(1994年)

1994年4月25日に開館した奈義町現代美術館、通称「Nagi MOCA(ナギ・モカ)」は、那岐山をバックに斜めに傾いた円筒のオブジェが目を引く、作品と建物が半永久的に一体化した作品です。

荒川修作+マドリン・ギンズ、岡崎和郎、宮脇愛子の3組のアーティストによる、一般の美術館では収集不能とされる巨大作品が常設展示されており、展示空間全体を作品として設計しました。

「太陽」「月」「大地」と名付けられた3つの展示室は、その土地の自然条件に基づいた軸線で構成されています。

 

ハラ・ミュージアム・アーク(1988年)

上毛三山のひとつに数えられる、榛名山麓の緑豊かな高原に位置するハラ・ミュージアム・アーク。

漆黒のシャープな木造建築で、それ自体が作品と言えるような美しい美術館です。

ピラミッド型の屋根を持つ正方形のギャラリーAと、その両翼に細長く伸びるギャラリーB・Cの3つの展示室には、柔らかい自然光が降り注ぎ、現代美術作品の鑑賞に適したシンプルな空間が広がっています。

木・石・和紙・漆喰を用い、書院造を意識した和風の特別展示室「觀海庵」も見どころの一つです。

同美術館では環境に配慮し、太陽光発電も使用しています。

 

水戸芸術館(1990年)

ポストモダン建築の代表作として知られる水戸芸術館は、磯崎新が60歳頃に手がけた作品です。

コンサートホール、劇場、現代美術ギャラリーを備えた複合文化施設で、水戸市政百周年を記念した高さ100メートルの三重の螺旋が空に向かって上昇する塔が目印。

チタンや石などを使用しているため、数十年経っても劣化を感じさせません。

 

ア・コルーニャ人間科学館(1995年)

1995年4月7に開館したア・コルーニャ人間科学館(Domus, Casa do Home)は、スペイン北西部ア・コルーニャ市が運営する科学博物館です。

目の前に広がる海岸の緩いカーブに沿って建てられた建物には、船の帆のようなファサードが付いており、地元で産出される緑色の岩を使用した美しいスレートが特徴的です。

 

カタール・ナショナル・コンベンション・センター(2011年)

2011年12月にオープンしたカタール・ナショナル・コンベンション・センターは、教育・科学・研究・コミュニティ開発を推進するカタール財団が運営する多目的施設です。

砂漠に生息する樹木シドラ(Sidra)をイメージした象徴的なデザインが特徴的。

建物の南側には横幅250メートルの全面ガラス張りのカーテンウォールが広がり、巨大なファサードは、絡み合った2本の木が外壁の天蓋を支えるように伸びている様子を模しています。

 

 

ポストモダン建築の機種として、建築業界に大きな功績を残した磯崎新の生涯は、そのまま日本近現代建築史であるといっても良いもの。

建築作品だけでなく、多くの著書を発表し、自身の建築論を世界に発信し続けました。

ぜひ皆さんも、磯崎新の著書や実際の作品に触れてみてください。

 

 

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