丹下健三建築
CULTURE

丹下健三の有名建築12選!「国立代々木競技場」「東京都庁」などの代表作品を詳しく解説

「世界のタンゲ」と呼ばれ、国内外で活躍した丹下健三(1913-2005)は、20世紀を代表する建築家の一人です。

約30年間、東京大学で教鞭を取り、磯崎新や黒川紀章など、日本を代表する建築家を育成しました。

当時欧米で流行していたモダニズム建築に、日本の伝統的な建築技法を取り入れた人物として高く評価されています。

今回は、日本に現存する丹下健三の代表作品について詳しく解説します。

 

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丹下健三とは?

大阪府堺市に生まれた丹下健三(1913-2005)は、建築家 ル・コルビュジエの作品に感銘を受け、建築家になることを決意します。

東京大学工学部建築学科と同大学院を卒業後、1946年には東京大学の助教授に就任。

のちに多くの優秀な建築家を輩出する「丹下研究室」を設立しました。

 

広島平和記念資料館(1952)や大阪万博会場(1970)の総合設計の企画などを手掛け、文化勲章受章(1980)やプリツカー賞(1987)を受賞しています。

 

丹下健三の代表作品12選

広島平和記念資料館(1952)

初期の代表作である広島平和記念資料館は、1952年8月6日の広島原爆の惨劇を後世に伝えるために作られた平和博物館です。

平和をつくる工場」をコンセプトに、ル・コルビュジェに影響を受けたモダニズム様式で設計しました。

 

資料館の一階部分は壁のない吹き抜けのピロティになっていて、原爆ドームが視界に入ります。

広島平和記念資料館は、戦後の建築物として初めて国の重要指定文化財に指定されました。

広島平和記念資料館

住所:〒730-0811 広島県広島市中区中島町1-2

休館日:12月30日及び31日

公式サイト:https://hpmmuseum.jp/

 

草月会館(1958)

草月会館は、華道家の勅使河原蒼風(てしがわら・そうふう)、構造家の坪井善勝(つぼい・よしかつ)と丹下による共同作品です。意匠設計を丹下研究室が担当しました。

「いけばな草月流」の総本部となっている建物で、1958年に竣工された後、1977年に現在の姿に再建されました。

 

現在の草月会館は、外壁のカーテンウォールに近隣の緑が映るようになっています。

1958年には草月会館を拠点とした「草月アートセンター」が設立され、1960年代のジャズ音楽や現代音楽、演劇、実験映画、アニメーションといった様々なジャンルの芸術家の交流の場となりました。

草月会館

住所:〒107-8505 東京都港区赤坂7-2-21

休館日:土・日・祝

公式サイト:https://www.sogetsu.or.jp/

 

旧倉敷市市庁舎(1960)*現在の倉敷市立美術館

丹下によるモダニズム庁舎の代表作である旧倉敷市市庁舎は、地下1階・地上1階の鉄筋コンクリート造りです。

その外観は「現代の校倉(あぜくら)造り」(古くから蔵や倉庫に使われた建築様式)と呼ばれました。

1980年に市庁舎が新設され、旧倉敷市市庁舎は使われなくなりましたが、日本画家の池田遙邨が倉敷市に作品を寄贈したことをきっかけに、1983年からは倉敷市立美術館として利用されています。

 

改修時の設計を担当したのは、建築家の浦辺鎮太郎(1909-1991)。

浦辺は丹下建築の特徴をできるだけ残しながら、美術館として機能するように設計しました。

旧倉敷市市庁舎(現倉敷市立美術館)は、2020年に国の登録有形文化財に指定されました。

倉敷市立美術館

住所:〒710-0046 岡山県倉敷市中央2丁目6番1号

休館日:月曜日(休日の場合は翌日)

公式サイト:https://www.city.kurashiki.okayama.jp/kcam/

 

東京カテドラル聖マリア大聖堂(1964)

東京カテドラル聖マリア大聖堂は、1899年に建設されたときは木造のゴシック様式の建物でした。

1945年の東京大空襲で焼失しており、ドイツ・ケルン大司教区の支援を受けて、1964年に丹下の設計案により再建。

薄い曲面板からなる建築技法「HPシェル構造」を取り入れたデザインで、上空から見ると建物全体が十字架の形になっています。

 

教会内部は天井まで高さが最高40mもあり、打ちっぱなしのコンクリートの内壁による重量感と相まって荘厳な雰囲気を作り出しています。

2005年に丹下が亡くなった際には、本大聖堂で葬儀がおこなわれました。

ミサや礼拝の時間以外は内部の見学が可能です。

東京カテドラル聖マリア大聖堂

住所:〒112-0014 東京都文京区関口3-16-15

公式サイト:https://catholic-sekiguchi.jp/

 

国立代々木競技場 第1体育館(1964)

丹下建築の中でも特に有名な国立代々木競技場は、東京オリンピック(1964)で水泳とバスケットボールの会場として使われました。

国立代々木競技場の第一体育館は、吊り構造(屋根や建物の重量を、引張力しか作用しないケーブルで支える構造)となっているため、内部に柱がないのが特徴です。

また、自然災害時に屋根の振動を抑えるため「油圧ダンパー」を使用しています。

2021年に国の重要文化財に指定されました。

国立代々木競技場

住所:〒150-0041 東京都渋谷区神南2-1-1

公式サイト:https://www.jpnsport.go.jp/yoyogi/

 

静岡新聞・静岡放送東京支社ビル(1967)

静岡新聞・静岡放送東京支社ビルは、静岡新聞・静岡放送・山梨日日新聞・山梨放送の東京支社が入居しているオフィスビルです。

社会の発展や人口の増加に対応できるよう、途中で増設できる「メタボリズム」(黒川紀章らの若手建築家が始めた建築運動)の構想を取り入れた建築デザインです。

樹木をコンセプトに設計され、当初は銀座方面まで成長(増設)する計画でしたが、メタボリズムの運動が失敗に終わったこともあり、実現しませんでした。

2016年に耐震のための改修工事がおこなわれています。

静岡新聞・静岡放送東京支社ビル

住所:〒104-0061 東京都中央区銀座8丁目3−7

 

駐日ブルガリア大使館(1974) 

駐日ブルガリア大使館は、1974年に丹下が設計を手がけた作品です。

塊感のあるボリュームが、上階に行くにつれて前にせり出す構成が特徴的な建築です。

斜面に沿うよう階段状になっており、周りの住宅街の景色に溶け込むようなデザインになっています。

 

大きな白いボリュームが迫ってくる迫力感がありつつも、不思議と圧迫感がないのはボリュームが分節しているからでしょう。独特な品の良さを醸し出しています。

同じ敷地内にあるブルガリア大使公邸は、建築家・渡辺仁(1887-1973)が設計を担当しています。

駐日ブルガリア大使館

住所:〒151-0053 東京都渋谷区代々木5-36-3

休館日:土・日・祝

公式サイト:https://www.mfa.bg/ja/embassies/japan

 

東京大学本部棟(1979)

東京大学本郷キャンパスにある東京大学本部棟は、1979年に丹下の設計で建設され、現在も大学本部として使われています。

地上12階建ての高層ビルで、四隅に六角形の大きな柱があるのが特徴です。

東京大学本部棟に隣接する第二本部棟(1976)も丹下による設計で、本部棟と似たようなデザインとなっています。

東京大学本部棟

住所:〒113-8654 東京都文京区本郷7-3-1

公式サイト:https://www.u-tokyo.ac.jp/ja/about/campus-guide/map01_01.html

 

赤坂プリンスホテル新館(1983)

赤坂プリンスホテル新館は、1983年に開業した40階建てのホテルで、2011年3月に閉業し解体されたため、現存していません。

丹下の設計した赤坂プリンスホテル新館は、水晶柱をモチーフにした左右対称の建築でした。

ガラスの壁面全体が段々に設計されていたため、すべての客室が2方向に窓がある角部屋になっていました。

鏡張りの大宴会場なども備え、バブル期には「赤プリ」の愛称で親しまれました。

 

東京都庁第一庁舎(1991)

1991年に建設された現在の東京都庁は、第一本庁舎・第二本庁舎・都議会議事堂の3つの棟で構成されています。

丹下はパリのノートルダム大聖堂にインスピレーションを得た建築案で新都庁舎コンペを勝ち抜き、東京のシンボルとなる東京都庁を建設しました。

第一本庁舎の高さは243mで、完成した当時は日本一の高さを誇りました。

 

後期ゴシック様式を取り入れた装飾美のあるデザインは、丹下がこれまで目指してきた機能性を追求するモダニズムとは異なるものでした。

モダニズムに伝統への回帰を促す流れは、欧米で1980年代から始まり「ポスト・モダニズム」と呼ばれます。

東京都庁第一庁舎は、日本初のポスト・モダニズム建築です。

東京都庁第一庁舎

住所:〒163-8001 東京都新宿区西新宿2-8-1

休館日:土曜日・国民の祝日・年末年始(12/29~1/3)

公式サイト:https://www.metro.tokyo.lg.jp/index.html

 

フジテレビ本社ビル(1996)

フジテレビ本社ビルは、丹下が最後に直接指揮をとったプロジェクトで、「お台場のシンボルになる建築」をコンセプトにつくられました。

 

格子状に組まれたビルの上部にある直径32mの球体が最大の特徴で、球体の内部は展望台になっており、お台場を一望することができます。

ビルの外側に設置されたチューブ型のエスカレーターもユニークなデザインです。

フジテレビ本社ビル

住所:〒137-8088 東京都港区台場 2-4-8

休館日:月曜日(祝日の場合は翌日)

公式サイト:https://www.fujitv.co.jp/index.html

 

新香川県庁舎(2000)

香川県庁舎外観

ソース

丹下は香川県庁舎の本館(2000)、東館(旧本館1958)、警察本部庁舎(1996)を設計しており、初期と晩年の作品を間近で見比べることができます。

 

国の重要文化財にも指定された東館は、日本の伝統的な木造建築の技法をコンクリートを用いて表現されました。

一方、2000年に竣工された本館は、白を基調にした軽やかさのある現代的なデザインとなっています。

本館21階の展望台からは高松市内が一望できます。

新香川県庁舎

住所:〒760-8570 香川県高松市番町四丁目1番10号

休館日:土日・年末年始

公式サイト:https://www.pref.kagawa.lg.jp/index.html

 

まとめ

日本国内で見ることのできる丹下健三の建築作品をご紹介しました。

東京カテドラル聖マリア大聖堂、東京都庁、フジテレビ本社ビルなど、内部見学可能な建物も多数ありますので、ぜひ実物を見て、丹下建築の魅力を体感してみてください。

 

 

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