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NEW CREATOR,NEW INTERVIEW. vol.3 松居大悟(映画監督)

こんにちは。thisismedia編集部の久保です。

 

「NEW CREATOR,NEW INTERVIEW.」は、注目のクリエイターにスポットを当て、その人のクリエイションの根源や物語を新たな角度から聞き出す企画です。

 

第3回目は、映画監督・劇団ゴジゲン主宰の松居大悟さん。

 

松居大悟

 

大学卒業後、劇団ゴジゲンを旗揚げ。2012年に『アフロ田中』で商業映画デビューを果たしてからは、演劇や映像の枠に捉われず活動する松居さん。最近はドラマ『バイプレイヤーズ』の監督やラジオのパーソナリティを務めるなど、多方面で活躍しています。

 

演劇と映像それぞれに込められた思いやその違い、クリエイションの源になっているもの、そして2月11日に公開の映画『ちょっと思い出しただけ』のお話などお伺いしました。

 

ぜひごゆっくりとお読みください。

 


 

talk.1
演劇と映像の話

 

 


 

ー演劇の演出家と並行して映画の監督も始めた、その出発点からお伺いできたらと思います。

 

もともと映像をやろうも演劇やろうもなくて、ただモノを作りたかったんです。中高生のころに漫画を描いたりしたんですけど、一人でやっているのはどうにも辛くて。

 

ー辛いことがきっかけで、人が必要なクリエイションを始めたのですか?

 

はい。演劇だと人が集まってすぐにできて、みんなでひとつのモノを作ることは楽しいなと思いました。

視覚的に世界を作りたかったので、演劇は定点になりますが、映像はアングルなどを決められて面白いなと思って、大学時代に自主映画を撮り始めました。

 

ーそこからは演劇と映像、どちらに進みましたか?

 

演劇サークルを卒業してからは劇団を作って演劇をやっていましたね。そのうち映像の脚本も書いたりしていたので、映像関係の方も演劇を見に来てくれるようになって、『アフロ田中』という映画のプロデューサーが見に来ていて、自主映画を見せてほしい、と言われて。その映画の監督をしてからは、映画を少しずつ撮るようになりましたね。

 

松居大悟

 

ーそこから映画監督としてのキャリアが重なっていったのですね。

 

映画監督が本格的になったのは、2011年に劇団を休止にしたことがっかけだと思います。そしてちょうどそのタイミングで、クリープハイプの尾崎くんと出会ったことも大きいです。尾崎くんも2012年からメジャーデビューすることが決まっていて、僕も同じ年に商業映画デビューするっていうので一緒にやろうとなって。

 

ー劇団の活動休止をして、演劇からは少し離れたのでしょうか。

 

直その頃は演劇のことを考えたくなかったんです。なので逃げるように映像に尽力して。クリープハイプと組んでミュージックビデオや短編映画を作ったり、映画の台本を作ったり撮ったり、でも沢山の人に出会えました。

 

ー映像に夢中になって、そのあと演劇を再開するきっかけは何だったんでしょう?

 

2014年に『ごきげんさマイポレンド』という公演で、劇団員の目次くんが復活することが決まって、演劇を再開する運びになりました。映像をやって思ったのですが、みんなのいろんなアイデアだったり意見が混ざり合って、このメンバーだからこの演劇が生まれるっていう必然性が演劇はいいんだなと感じました。

 

ーゴジゲンからはその必然性がすごく感じられます。2014年からは演劇と映画と両軸になった感じですか?

 

そうですね。「結局どっちなの?」とよく聞かれますが、どっちかに決めないといけないわけではなくて。面白いことをやりたいです。

 

ー演劇は松居さんや劇団員さんの心情などが溢れる演出だと思うのですが、映画は松居さんから一歩引いた目線を感じます。今回の『ちょっと思い出しただけ』は特にそう感じました。演劇と映像で、線引きはきっちりありますか?

 

前は線引きがありましたね。それこそ、演劇のスタッフは映像に連れていかないし、映像で出会った人は演劇に連れて行かない。僕の中で、演劇の顔と映像の顔みたいなものが全然違っていたんですが、2018年に『アイスと雨音』という映画で変わりましたね。

その映画は、僕が実際に演出をする舞台が中止になってしまい、悔しくて演劇が中止になった映画を作ろうとなったんです。そのとき全部がごっちゃになったんですよ。たとえば演劇の演出助手が映画の助監督やるような。

そのとき、最初は不思議だったんですけど、だんだんまあいいかとなって。自分の中での線引きはなくなりましたけど、どっちも今やりたいことをやるという感じですね。

 

ー線引きはなくなっても、演劇と映画での違いはありますか?

 

 

よく聞かれるし、変わってはいくんですけど、今の感覚で言うと、スタート地点だけしか決めずに走り出すのが演劇、というか劇団。映画は脚本を全部書いて色々目処がたってから走り出すようなイメージ。

ゴールに向かっていくのが映像で、スタート地点を見つめ続けるのが演劇、って感じですかね。今は。

 

 


 

talk.2
『ちょっと思い出しただけ』の話

 

 


 

ー今回の『ちょっと思い出しただけ』では美術面がかなり映画のサポートをしているなと感じました。エンディング曲のインスピレーション源だというジム・ジャームッシュ監督の影響もあると思いますが、そのこだわりは強かったのでしょうか?

 

今回は特にこだわりがありました。役者が主人公ではなくて、この”一日”という日が主人公で、部屋があって、天気があって、そこに佇む人がいてみたいな。この一日を見せて、これまで一年間のことを考える余白を感じられるように作っていました。

松居大悟

 

ー余白や間合いを大事にされている印象でした。

 

美術装飾チームは、ずっとやりたいと思っていた人で。他のどのセクションもですけど。チームもかなりこだわってイメージして提案してくれました。

それに、今回はすごく肩の力が抜けていたこともあります。なぜかというと、最後に流れるクリープハイプの曲が素敵に聞こえることが一番大切で。ここのシーンをこう伝えねば!というよりも、お客さんを信じていた気がしますね。

 

 

ーそのまっすぐさは観ていて伝わりました。そういえば、タイトルの『ちょっと思い出しただけ』はエンドロールの「ナイトオンザプラネット」の歌詞から取ったんですか?

 

そうです。最初は違うタイトルをつけていたんですが、プロデューサーとかと話してこのタイトルになりました。

 

ー尾崎さんと信頼しあっている感じも、映画に如実に出ているなと感じました。

 

任せ合いましたね。5年以上前に撮った『自分の事ばかりで情けなくなるよ』のときはたくさん打ち合わせをして具体的に話し合いましたけど、今回は任せてくれたし、任せられた、という感じです。

 

 

ー脚本を書いているときや実際に撮ったときなど、印象に残っているシーンはありますか?

 

6年前の、忘れ物のカバンを渡すシーンですかね。何気ない会話と意図的にすれ違う目線、その奥に映る劇場、と画角のすべてが良くて。

 

松居大悟

 

ーコンテンポラリーダンスを池松さんに役を当てたのはなぜですか?

 

出役だった人がスタッフになるという設定で、役者じゃないほうがいいなと思ったときに、一緒にプロットを作っていた首藤さんと話してダンサーにしてみようと。最初はバレエダンサーだったんですけど、池松さんと相談したときに、コンテンポラリーダンサーの(皆川)まゆむさんを紹介してもらって。試しに一度脚本を読んでもらって、いいですね、となりその配役に決まりました。

 

 

ー今回の映画は、これまでの松居さんの作品と体温の質感が違う作品でした。

 

そうなんですね。今回の作品は、割と初期のメンバーでやったんです。撮影の塩谷さんも、クリープハイプも、池松さんも、懐かしいメンバーと再会してるんですよ。

 

松居大悟

 

ー懐かしさをいい意味でスクリーンのどこからも感じなかったです。松居さんが新たなステージに登った作品だと思いますが、ご自身としてはあまり実感がないですか?

 

ないですが、意識的に撮影の塩谷くんとは今までのようにやらないようにしようと言っていました。それに、照明の藤井さんという大先輩の存在が大きくて。脚本がいいから、何かをしようとしなくていい、と。映画自体が定点観測のものなので、カメラが動かないほうがいいと僕も思いました。

 

ー意識的に変化していた部分もあるのですね。

 

そうですね。今までのような感じもありましたが、新しいことをやろうは本当になかったです。

 

ー伊藤沙莉さんの存在も大きいように感じました。主人公の設定を男女逆にしたというのはキャスティングしたときに思ったんですか?

 

伊藤沙莉さんがキャスティングできるかもしれないと聞いたときに、伊藤さんの配役がダンサーだったんですが、タクシー運転手のほうがいいなと思ったんです。そうなったときに、僕の中で脚本が見えて。とりあえず書いてみて伊藤さんに確認したところ大丈夫でした。

 

 

 

ー最後は、クリエイターの皆さんに同じ質問をしています。松居さんはどんな能力を奪われたらクリエイションに困りますか?

 

”寂しい”を奪われたら、何も作れないと思います。”寂しい”と思うこと、思わなくなること、一人でいることが平気なようで平気じゃないので。人と一緒に作りたいから演劇や映画をやっている部分が大きいです。寂しいことが受け入れらたり、平気になったりしてしまうと、僕は作品を作れないですね。

 

ー寂しさゆえ完成する作品。その寂しさや切なさが溢れている『ちょっと思い出しただけ』は2月11日公開です。松居さんありがとうございました!

 

今回のクリエイター  
松居大悟 Matsui Daigo

松居大悟

Profile
1985年福岡県生まれ。劇団ゴジゲン主宰、全作品の作・演出を担う。2009年NHKドラマ「ふたつのスピカ」で同局最年少のドラマ脚本家デビュー。12年、『アフロ田中』で長編映画初監督。その後『スイートプールサイド』、『私たちのハァハァ』、『アズミ・ハルコは行方不明』など監督作を発表、枠に捉われない作風は国内外から評価が高い。テレビ東京ドラマ24「バイプレイヤーズ」シリーズではメイン監督をつとめ、J-WAVE「JUMP OVER」ではナビゲーターとして活躍、2020年には自身初の小説「またね家族」を上梓。

HP:http://5-jigen.com
Twitter:@daradaradayo

 

『ちょっと思い出しただけ』

2022年2月11日(金・祝)全国公開

©︎2022『ちょっと思い出しただけ』製作委員会

出演:池松壮亮、伊藤沙莉 ほか

監督・脚本:松居大悟

主題歌:クリープハイプ「ナイトオンザプラネット」(ユニバーサル シグマ)

東京テアトル

公式サイト:choiomo.com 

公式Twitter・Instagram:@choiomo_movie 

 

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