相次ぐ展示中止と辞任、混沌状態に陥るロシアのアート業界
ロシア連邦による隣国ウクライナ侵攻後、ロシアに対する国際的制裁が開始されました。
厳しい経済制裁によりロシア国内が騒然とする中、アート業界にも大きな損失、打撃、そして混沌をもたらしています。
美術館の展示中止や、プーチン政権に反対的な意見を持つ美術館関係者の自発的あるいは強制的な辞任など、ロシアのアート業界で今何が起きているのか、世界への影響も含め詳しく解説します。
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プーチン政権と関係が深い人物の辞任
ウクライナ侵攻をきっかけに、ロシアと深い関係のあった、グッゲンハイム美術館(Solomon R. Guggenheim Museum)の理事とロンドン王立芸術アカデミー(Royal Academy of Arts in London)の理事がそれぞれ退任しました。
20年にわたりグッゲンハイム美術館に寄付をしてきたウラジーミル・ポターニン(Vladimir Potanin)は、鉱業会社で富を築いたロシアで最も裕福な人物の一人で、プーチン大統領の側近として知られています。
ロンドン王立芸術アカデミーの評議員を辞職した実業家ペトル・アヴェン(Petr Aven)は、ロシア最大の金融機関の1つ「アルファ銀行」の経営者であり、欧州連合(EU)から制裁を受けた個人の1人に名を連ねています。
ロンドン王立芸術アカデミーは、現在開催されている「フランシス・ベーコン展」の資金として受けた寄付金を彼に返却すると発表しています。
ロンドンのテートモダンでは、プーチン大統領と親しい実業家、ヴィクトール・ヴェクセルベルク(Viktor Vekselberg)との関係を断つよう求める声が上がっています。
ヴェクセルベルグはテート財団の名誉会員であり、テートモダンにこれまで多額の寄付をしてきました。
このように世界中の美術館で、プーチン大統領と密接な関係を持つロシアのオリガルヒ(oligarch: 政治的影響力を有する新興財閥)との繋がりを断絶する動きがあります。
美術館・財団関係者がウクライナ侵攻を理由に辞任
ロシアのアート業界にさらなる混沌を生み出しているのは、業界関係者の相次ぐ辞任です。
モスクワのV-A-C財団(V-A-C Foundation)の芸術監督、フランチェスコ・マナコルダ(Francesco Manacorda)は、プーチン政権によるウクライナ侵攻を理由に辞任したことを公式声明で発表し、以下のようにコメントしています。
現在起きている事が仕事だけでなくプライベートにも大きな変化をもたらし、自身にプライドを持ち献身的な仕事を続けることができないという結論に達しました。
私の決断は、多くの困難と悔恨の念をもって下されたものです。
V-A-C財団は、ベネチアとモスクワの2カ所でスペースを運営しています。
ロシア、モスクワにあるスペース「GES-2」は、ロシア最大の民間ガスグループ、ノバテック(Novatek)の最高経営責任者、レオニード・ミケルソン(Leonid Mikhelson)の出資によって2020年に開館した文化センターです。ミケルソンはプーチン政権と密接な関係にあります。
マナコルダは、V-A-C財団の芸術監督に就任する以前はテート・リヴァプールの芸術監督を務めていました。
他にも、ヴェネチア・ビエンナーレ「スロヴェニア・パビリオン」のキュレーター(2007年)、リヴァプール・ビエンナーレの共同キュレーター(2016年)を務めるなど、世界的にも有名な芸術監督です。
彼の離脱はGES-2にとって多大な損失を与え、GES-2は今後のすべての展示とイベントを停止するという声明を発表し、「私たちが目の当たりにしている(ウクライナの)悲劇的な出来事から目をそらすことはできない」と述べています。
マナコルダの辞任は、ロシア有数の文化施設であるモスクワのプーシキン美術館(Pushkin Museum)の副館長、ウラジミール・オプレデレノフ(Vladimir Opredelenov)の辞任に続くものです。
オプレデレノフは自身のインスタグラムアカウントで発表した声明の中で、以下のように述べています。
今起こっている悲劇に対する私の考えは、ロシア連邦文化省の同僚たちと異なります。
一刻も早く現状が変化することを望んでいますが、現時点では、私はこの愛すべき美術館を去ることを余儀なくされています。
オプレデレノフは19年間同美術館に勤め、約10年間ものあいだ副館長の職務についていました。
他にも国立研究大学高等経済学部文化情報技術学科長、国際美術館連合ロシア委員会美術館デジタル発展協議会会長を務めた経験を持ち、美術館のデジタル分野の発展に貢献した人物です。
V-A-C財団とプーシキン美術館による公式声明は、マナコルダとオプレデレノフそれぞれの辞任について、彼らが自発的行ったものであることを示唆しています。
その一方で、「プーチン政権が紛争について発言した美術館の文化人を解雇するように命令している」という噂もあります。
17,000人以上のアーティスト・文化人がプーチン政権に反対
ロシア国内では、17,000人以上のアーティストや文化人が、ロシア政府によるウクライナ侵攻を断罪する公開書簡に署名しました。
「文化や芸術との関わりは、このような状況ではほぼ不可能だろう 」と書かれた公開書簡に署名することは、プーチン政権に反対する発言をしたとして、ロシア全土の施設からの退去を余儀なくされるリスクもあります。
美術館職員・キュレーターの強制的な解雇
モスクワ市近代美術館が署名した職員を強制的に解雇したという情報が流れています。
アーティストでキュレーターのディミトリ・ブラトフ(Dimitri Bulatov)は、ロシアのソーシャルメディアサイト「テレグラム(Telegram)」上で、美術館経営者がモスクワ市議会の文化局から直接解雇命令を受けた、と投稿しました。
モスクワ市近代美術館の代表者はこれに対し何もコメントしていません。
連邦議会下院のヴャチェスラフ・ボロディン(Vyacheslav Volodin)議長は、侵攻に反対する文化人を「裏切り者」と評し、テレグラムで 「そんなに信念があるなら、国の補助金を拒否することから始めろ 」と書き込んでいます。
国外のアーティストもロシアでの展示を拒否
影響は国内だけに及びません。
ウィーン在住の日本人アーティスト、丹羽良徳もモスクワ市近代美術館で個展の開催を予定していましたが、担当キュレーターが提出した反戦声明のために退職せざるを得なくなったとTwitter上に投稿しています。
キュレーターの退職を受けて自身も「プーチン政権が崩壊するまではロシア公立美術館からの招聘は拒否する」と公式に発表しました。
アーティスト・キュレーターを支援するプログラムを開設
アーティスト、キュレーターの自主的あるいは強制的な辞任の連鎖を打開しようと、モスクワクリエイティブ産業センター「Fabrika」は、文化機関で職を失ったアーティストやキュレーターのためのプログラムを立ち上げました。
ウクライナ侵攻に反対したことで困難な状況に置かれ、ロシア政権から独立したプラットフォームで作品やプロジェクトを展示し、議論したいと考えるすべての人たちを招待します
と、同センターは公式ホームページで記しています。
美術館が相次いで展示を中止
ロシア国内では開催予定だった展示が次々と中止されています。
モスクワのクレムリン美術館は、今後の展示をすべて中止すると発表し、モスクワの国立トレチャコフ美術館(Tretyakov Gallery)も、2021年からドイツ、フランス、ロシア共同で企画していた展示「ディバーシティ・ユナイテッド(Diversity United)」を早期終了すると発表しています。
サンクトペテルブルクのマネジセントラルエキシビションホール(Manege Central Exhibition Hall)では国内初のクリスチャン・ボルタンスキーの個展が3月13日から開催される予定でしたが、こちらも中止が決定しています。
モスクワのガレージ現代美術館(The Garage Museum of Contemporary Art)は、「ウクライナで繰り広げられている人的・政治的悲劇が収まるまで、すべての展覧会の作業を中止する 」との公式声明を発表しています。
中国との関係を見直す動きも
フランスのマティス美術館は2月25日に中国との文化交流および作品貸与の停止を発表しました。
これにより、北京のコンテンポラリーアートセンター(UCCA-Center for Contemporary Art)で3月25日から開催を予定していたアンリ・マティスの個展「Matisse by Matisse」が中止となりました。
国際社会との分断、そして芸術文化の破壊
ここ数年、ロシアの芸術文化の分野は国際社会から注目されてきました。
ロシア国内の美術館、芸術団体の多くが、ヨーロッパやアメリカのパートナーとともに、ドイツ、フランス、ロシアの共同企画展示「ディバーシティ・ユナイテッド(Diversity United)」をはじめ、何百というあらゆる規模のプロジェクトに取り組んできたのです。
しかし、このような取り組みはプーチン政権によるウクライナ侵攻を止めるものにはなりませんでした。
ウクライナでは子供も含めた大勢の民間人の犠牲者を出し、国内の美術館や記念館も大きな被害を受けています。
1日も早くこの悲劇が終わり、ロシアの芸術分野に自由と平等が戻ることを祈るばかりです。

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