アラーキー写真荒木経惟
CULTURE

アラーキーのセクハラ疑惑 KaoRi 水原希子らが告白

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3人のモデルと関係者が
荒木経惟のセクハラ問題について告白

 

荒木経惟(あらき・のぶよし)は、1960年代から50年間以上にわたって日本の写真界の第一線で活躍している写真家です。

生まれ育った下町の風景や、そこで生きる人たち、愛する妻、ペットの猫から、過激なヌード、妖艶な花々などエロスを扱った作品と、数多くの写真を残し、「アラーキー」の愛称で親しまれてきました。

2013年に前立腺がんを患い後遺症で右目の視力を失いますが、御歳78歳を迎える現在も日本を代表する写真家として世界的に活動を続けています。

今回は荒木氏の「ミューズ」として15年モデルを務めたKaoRiさんの告白をはじめとする、アラーキーのセクハラ疑惑について解説します。

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「#me too」運動で明らかとなった
荒木経惟のセクハラ疑惑

 

ハリウッド女優の呼びかけを発端に広がり続ける「#MeToo」の動き。

今まで恐くて誰にも話せなかった、過去に受けたパワハラやセクハラを男女関係なく声を上げよう!とする運動です。

日本では広がりの兆しが見えず皆が沈黙するなか、写真家・荒木経惟にセクハラ・パワハラを受けた女性たちが声をあげました。

彼女たちの声はネットで広がり話題となりました。アーティストとして国内外で有名な写真家・荒木経惟が加害者となれば、ファンにとってもそれは悲しい事実です。

彼女たちが被写体としてどのように扱われたのか。
その写真は、名声がある写真家が撮った写真だから評価されるのか、芸術だから何をしても良いのか。

彼から「セクハラ・パワハラをされた」と公表した元モデルたちの告白では、アラーキー作品への評価が揺らぐ様な事実が明らかにされています。

また、彼女たちの証言の中には「自分以外にも被害にあった方はたくさんいる」という内容もありました。

 

モデル・湯沢薫さん
荒木から受けた性的虐待を告白

はじめて声をあげたのは、モデルの湯沢薫さんです。

2017年に自身のFacebookで公表された投稿には、10代の頃、荒木氏のモデルの仕事の際に性的虐待を受けたとの告白が。

当時病院に通うほどの精神的ショックを受け、荒木の作品や顔を見ると今でも吐き気を催すことや、ほかにも被害者がいることを知っていると綴っています。

What’s about art ?

この話は真実です。

告白しようかと迷いましたが、現実に起こった出来事であり、Artとは何か?という事を沢山考えました。

今が告白するタイミングだと感じたので、投稿します。長文ですが、是非、読んで頂けたら、幸いです。

 

私は若い頃、ファッション雑誌、テレビコマーシャル、ファッションショーなどのモデルをしていました。

19歳の時、有名な写真家である荒木経惟氏と雑誌の仕事を一緒にしなければなりませんでした。

その時、私は荒木経惟氏から性的虐待を受けました

 

その行為はレイプではありません。細かい詳細をここでお話しするのは辛いですが、これは、私にとっては本当に恐ろしい経験でした。

この事件が起こった後、私は精神病院に行かなければならない精神状態になり、何度もセラピーを受け、モデル業を休業しなければならない状態になりました。

私は彼の性的虐待によって、想像以上にとても傷つきました。もし私がお金持ちなら、私は彼を訴えたいと思っていましたが、その時は訴える気力もなく、それを実行するエネルギーもありませんでした。

 

美術館やギャラリーのキュレーターに会う機会があるとき、私はできるだけ、必ずこの話をしてきました。彼の大きな展覧会は現在、東京都写真美術館で行われています。

 

彼の顔の写真と彼の作品を見た後、私は未だに、嘔吐してしまいます。

荒木氏の投稿をfacebookで偶然見てしまい、その後、急速に具合が悪くなり、ここ数日間、発熱と嘔吐という病状に襲われ、寝たきりの情況に陥りました。

この恐ろしい思い出は、私の頭と私の心の中でまだ深く生きています。

 

私は荒木経惟氏の性的虐待の犠牲者が他にもいることを知っています。これは本当の話です。

 

彼は現実には刑務所にいなければならず、彼は犯罪者ですが、多くの人々が彼の作品を愛しています。

私はもし、あなたが彼の作品が好きであれば否定するつもりはありません。

ですが、できるだけ多くの人に彼の犯罪行為を伝えたいと強く想い、私はこの真実の話を投稿することに決めました。

この真実の告白は勇気のいることでしたが、皆さんに芸術とは何か?ということを、改めて考えて頂けるきっかけになれば幸いです。

有名だからといって、罪を犯してもいいのでしょうか?私はそうは思いません。

 

 

長年モデルを努めた
「ミューズ」KaoRiさんの告白

2001年から2015年まで約15年にわたって荒木氏のミューズ(女神)として作品モデルとなってきたダンサーのKaoRiさん。

荒木にとってパートナー的存在であった彼女が、関係の実態を2018年4月1日「note」上に公表しました。

「その知識、本当に正しいですか?」と題された記事には、

 

・パートナーと呼ばれていたが、恋人関係ではなかったこと

・撮影した写真が「どう使われるか」全く知らされなかったこと

・二人のあらゆる撮影に同意書が存在しなかったこと

・荒木作品のために行ったパフォーマンスすべてが無報酬であったこと

ヌード撮影を強いられたこと

・私生活では悪質なストーカー被害に悩んでいたこと

・次第に自殺願望を持つようになっていったこと

・モデルの仕事を突然クビになったこと

 

など、不均衡な関係性が綴られていました。

常識とかけ離れた雇用関係と、周囲からの嫌がらせ、悪質なストーカーなどに悩まされていた日々を、KaoRiさんはこのように回想しています。

 

あまりのストレスに、街中や飛行機の中で意識を失って倒れたことや、目を閉じたら殺されているかもしれないと身の危険を感じた日も少なくありませんでした。

その度に改善を求めましたが「知らない」「忘れた」「言ってない」「俺は関係ない」「編集者が勝手に書いた」「携帯もパソコンもないから知らない。見るのが悪い。気にするのが悪い。」と逃げられて、壊れた私生活と一人ぼっちで向かい合わねばなりませんでした。

昔、奥様にして許されていたことを、責任も取るつもりもない私に押し付けられているようにも感じていました。

 


ソース

 

芸術という仮面をつけて、影でこんな思いをするモデルがこれ以上、出て欲しくありません。

写真という芸術について考えるきっかけにもなってほしい。

一度撮られたら死んでも消してもらえない写真芸術という行為の恐ろしさを、今になって一層強く感じています。

 

「芸術写真」という名の下で自身を「被写体」という名の“モノ”として扱われ、生命まで脅かされるような生活。

同じ状況を沈黙し耐えているモデルたち向けて、彼女はこう訴えました。

 その知識、本当に正しいですか?|KaoRi.|note

 

 

モデル・水原希子さんの告白

kaoRiさんの告白を受けて、モデル・水原希子さんも2018年4月に自身のインスタグラムのストーリー上で荒木氏からのセクハラを告白しています。

 


ソース

彼女が告白した一連の撮影について、ネット上では資生堂が13年元旦に展開した新聞広告ではないか、と噂されています。

「わたし、開花宣言。」と題した広告には、両胸を手で隠した上半身裸の水原さんが笑顔を浮かべる写真が大きく掲載されており、撮影内容、時期ともに水原さんの告白と一致します。

公式サイトによれば、撮影したのは荒木経惟氏で広告のディレクションは資生堂宣伝部の澁谷克彦氏が担当。
おそらく資生堂の撮影での被害であることはほぼ確実と言えるでしょう。

 
 

モデルたちの告白を受けた関係者の反応

 

ソース

この告白に対し、芸能界や同じ写真業界からも反応がありました。

2011年に休刊した写真雑誌『Photo GRAPHICA』の編集者だった沖本尚志さんは、同雑誌で担当した荒木の特集「KaoRi Sex Diary」がKaoRiの被害事例として記されたことに、2018年4月9日にFacebookで私見を記しています。

 

昨晩、荒木さんのモデルだったKaoRiさんの告白記を読んだ。

衝撃だった。
9年前、当時僕が担当していた写真雑誌で荒木経惟特集を組んだ。そのタイトルは、「KaoRi SEX Diary」だった。。
そう、告白文で批判のひとつとして書かれているのは僕が担当した特集だった。

 

雑誌には、ヌードもストリートスナップも誰かのポートレートも作家が載せたいと思う作品はすべて掲載してきたので、いつかはこういう日が来るのだろうと覚悟はしていた。
でもまさか、KaoRiさんが声を上げるとは思っていなかった。

 

9年前の夏、荒木さんと初めて新宿で会って、特集をやらせてくださいと頼んだとき、すぐに出てきたテーマが「KaoRiで一冊やろう」だった。
次に逢ったとき、荒木さんは500枚近い写真を持ってきて、「全部載せてね」と言った。500枚は全部KaoRiさんの写真だった。

 

KaoRiちゃんとは、特集をやっている最中に何度か逢った。
ほとんど喋らない子で、いつも子供のように屈託のなく笑っていた。
会話はほとんど無かった。

 

一度だけ、雑誌が出来たあとで、どうだったかと聞いたら
ひと言、「よかった」と言って笑った。
じつは、よかったどころじゃなかったんだね。
そう考えると胸が痛む。

 

2年後、僕の雑誌は休刊になったが、KaoRiさんは荒木さんの被写体として、何度も雑誌や写真集に取り上げられ、すっかり二人の関係はいまでも変わらず続いているものだとばかり思っていた。昨晩、告白記を読むまでは。

 

書かれていることはほぼ事実だろう。当事者にしか知り得ない話が多いからだ。つらかったんだろうな。モデルの傍らでバイトしているなんて知らなかったよ。そして、文章も見事で饒舌だった。いろいろ衝撃だった。

 

誤解を恐れずに言えば、僕の荒木さんの写真に対する評価はこれからも変わることはない。今回露呈した事実も、基本的には荒木さんとKaoRiさん二人の間の問題だからだ。

ただ、これから荒木さんの写真を見るとき、その中にKaoRiさんと同じ痛みを抱いた人たちがいることを等しく見出すことになると思う。

彼の写真は誰かの犠牲の上に成り立っている、そう思うと、もう気軽に写真を見ることはできないだろう。

無論、僕にも反省はある。
こういう状況を生んだのは、忖度の空気をつくったのは、僕らなのだろうなとも思っているし、責任の一端も多分にある。それは皆が等しく負うべき負の遺産であるし、未来に持ち越してはいけないものだ。

 

そして、僕はいまでも『PHOTOGRAPHICA』の編集者である。
雑誌は無くなったけれど、責任はまだ残っていると思っている。
その一人が口をつぐんでいるのはかつての読者に失礼と思い、FBとtwiterにコメントをポストしました。
長文失礼いたしました。

元PHOTOGRAPHICA編集部 沖本尚志

沖本氏は、作品の制作に伴う犠牲は当事者間の問題であって評価に影響しないと語る一方で、荒木に忖度した責任の一端は自身にもあり「皆が等しく負うべき負の遺産であるし、未来に持ち越してはいけないものだ。」と業界について記しています。

 

 

沈黙する荒木経惟

ソース

モデル・関係者たちの訴えに対して、荒木経惟氏からの公式的な反応や、返答は未だにありません。

kaoriさんの告白文を見る限りでは、個人的なやりとりにおいても紳士的な態度は期待できないようです。

彼女たちの告白をきっかけに、彼の作品は大きなバッシングを受けましたが、写真好きやアラーキーのファンにとって、これほど悲しいこともありません。

 

 

アラーキー作品に対する評価・見方はどう変わる?

裸体・エロスと言ったモチーフを前面に掲げた荒木氏の作品は、そこに彼の芸術性があると言っても過言ではありません。

しかし、作品を見る側の私たちがその裏側を想像することはできても、実際に彼女たちが声を上げるまで誰も問題視してこなかったのも事実。現代になってやっと彼女たちの発言が世に出る時代が来たのです。

KaoRiさんは、その後の追記「これからの話。」で以下のように語っています。

 

荒木さんの写真は、私の写真だけではありませんし、素晴らしい作品がたくさんあります。

だからこそ、私はあのような状況でも最後まで彼から離れようとしなかったのです。

 

それから、ダンサーとして参加させていただいた写真は、勝手ですが私の作品の一部でもあると思っています。

 

ピカソだってロダンだってウォーホールだって、スキャンダルがあっても、今まで語り継がれる芸術家です。

でも、芸術の名の下に人間をモノ扱いするのは、もうこれで終わりにしてほしいというのが私の願いです。

だから、その背景があって今後も写真を展示販売するのであれば、それは何かを提起するものになると思います。

 

美術史の中で「時代」を感じさせるものになってもらえたら、と思っています。

だから作品を排除するかしないかは、美術館、美術関係者のみなさまに全てお任せしたいと思います。

 

KaoRiさんは、自身の告白とは関係なく、荒木氏の作品が評価されるべきものだと述べています。

写真がカメラマンの撮影したものであるなら、同時にその写真はモデルの分身、一部でもあります。

KaoRiさんのメッセージからは、最後まで写真家・荒木経惟の被写体・作品でありたかった、という彼女の切実な気持ちが伝わってきます。

写真に限らず、視覚芸術においてその表現が誰かにとって不快なものである可能性は0%ではありません。

理想の女性像を追い求めた荒木氏の作品が、彼女たちの告白によって「女性問題」を提起するものに変換されたという事実は、現代を象徴する大きな出来事とも言えるでしょう。

 

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