原田マハとは?経歴と代表作・おすすめ作品15選
小説『楽園のカンヴァス(2012)』や、映画『総理の夫(2013)』、フィンセント・ファン・ゴッホの死の謎を描いた単行本『リボルバー(2021)』などなど、新作を出せば必ず話題になる小説家、原田マハ。
美術に関心のある人はもちろんのこと、映画・ドラマなどで知っている人も多いのではないでしょうか。
今回は「アート小説の先駆者」と呼ばれる、原田マハの経歴と代表作品を詳しくご紹介します。
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原田マハとは?
原田マハは日本の小説家、キュレーター、エッセイストです。
2006年に『カフーを待ちわびて』で第1回日本ラブストーリー大賞を受賞し、小説家デビュー。
百科事典・美術書などのセールスマンをやっていた父の影響もあり、幼い頃から美術が身近にある環境で育ちました。
兄の原田宗典も同じく小説家で、1987年にデビューしています。
原田は大学を卒業後、しばらくアルバイト生活をした後、1988年に馬里邑美術館(現在は閉館)に就職。
結婚を機に同館を退職し、その後、伊藤忠商事に入社。アート、文化に関するコンサルティング業務に従事します。
1994年には、現代アートのキュレーターを目指すべく早稲田大学第二文学部の美術史科に入学。
平日昼間は企業で働きながら学芸員の資格を取得しました。
1995年には森ビルの森社長の誘いを受けて、森美術館の設立準備に参加。
その後、森美術館とニューヨーク近代美術館(MoMA)との提携により、ニューヨーク近代美術館にも勤務しています。
2002年にフリーのキュレーターとして独立した後、2003年にカルチャーライターとして執筆活動を開始。
小説家デビュー以降、豊富なアートの知識をベースに、史実に基づいたアート小説を次々と出版していきます。
これまでに山本周五郎賞、新田次郎文学賞などを受賞し、美術ファンをはじめ幅広い層に支持されています。
原田マハの経歴
東京生まれ、高校まで岡山県で育つ
1962年、東京都小平市に生まれた原田マハ。
百科事典・美術書などのセールスマンをやっていた父の影響もあり、兄の原田宗典とともに、児童書を読み漁っていたといいます。
3歳から絵を描き始め、「当時好きなアーティストはパブロ・ピカソだった」と語っています。
小学6年生の時、父の転勤のため、家族で岡山県岡山市に引っ越し、高校卒業まで岡山で育ちます。
早稲田大学で美術史を専攻
1981年、原田は関西学院大学文学部に入学します。
ドイツ文学科するも、あまりにドイツ語ができなかったため日本文学科に転科。
明治期以降の日本文学を読み漁り、この頃の経験がその後の小説家人生にも繋がっていきます。
大学4年頃から、就職活動の足しにとグラフィックデザインの専門学校に通い始め、友人と少女漫画家を目指し投稿しますが、最終選考に残るもあえなく選外に。
1985年に関西学院大学を卒業し、就職はせずバイト生活をしながら専門学校も卒業。
当時コピーライターをしていた兄・原田宗典に呼び戻され上京します。
1987に兄が小説家デビュー。その翌年には、当時オープン準備中だった真梨邑美術館に飛び込みで求職し、その度胸を買われて就職。美術展の展示、コレクションの管理、広報、受付と幅広い美術館の実務を経験しました。
その後伊藤忠商事に転職した原田は、美術コンサルタントとして働く傍ら、キュレーターを目指し、早稲田大学第二文学部の美術史科を受験、合格しました。
早稲田大学第二文学部時代は20世紀美術を専攻し、卒業後に学芸員の資格を取得しています。
キュレーターとして勤務
伊藤忠商事では美術コンサルタントとして、企業や自治体とアート・文化を結び、新しく美術館を開設する際のコンサルティングや、コレクションの売買、展覧会のプロデュースなどを行っていました。
その縁もあり、六本木ヒルズの最上階に予定していた森美術館建設のチーフコンサルタントとして採用されます。
その後は美術館設立にまつわるほぼすべての業務に関わり、森社長の通訳業務も務めるようになりました。
2000年、森美術館がニューヨーク近代美術館(MoMA)と提携を結んだことをきっかけにMoMAへの派遣が決まり、6か月間ニューヨークに駐在。
原田はMoMAインターナショナルプログラムに所属し、美術館のしくみを学びながら、企画展、国際展についてのリサーチを行いました。
カルチャーライターから小説家へ
2002、原田は40歳を機に人生で一番やりたい事を考え、森ビルを退社。
6か月間ニューヨークに駐在していた経験を買われ、雑誌『インビテーション』のニューヨーク特集のライターに抜擢されました。
カルチャーライターとして取材、記事を書き続けるうちに小説を書くことを考えていた時に、沖縄県の伊是名島滞在中にカフーという名前のラブラドールに出会います。
この出会いが『カフーを待ちわびて(2006)』のプロットに繋がりました。
ケータイ小説にも挑戦
小説家としてデビューした原田は、文芸誌で連載を次々と開始させます。
それは1年間に7冊の出版というハイペースなものでした。
2008年には当時中学生や高校生が夢中になっていたケータイ小説を「maha」という名義で執筆。
『ランウェイ☆ビート(2008)』は700万人の読者から支持され書籍化、映画化されました。
「アート小説」という分野を開拓
2012年に出版した、アンリ・ルソーをモチーフにした小説『楽園のカンヴァス(2012)』は、美術雑誌「芸術新潮」で2010年から連載され、第25回山本周五郎賞、R-40本屋さん大賞、TBS系「王様のブランチ」BOOKアワードなどを受賞します。
原田は本作で「アート×ミステリー」という新たな分野を開拓し、その後もアーティストや美術作品を主題とした『ジヴェルニーの食卓(2013)』、『暗幕のゲルニカ(2016)』、『リボルバー(2021)』など、作品を次々と発表していきます。
原田マハの作品の特徴
豊富な美術の知識を生かしたストーリー
美術コンサルティング、キュレーションに携わってきた経験は、原田が描く「アート小説」の土台となっており、史実をベースにしたフィクションは、美術の知識がない読者をも魅了します。
『現代アートをたのしむ 人生を豊かに変える5つの扉(2020)』、『CONTACT ART 原田マハの名画鑑賞術(2022)』などの「美術見る術を伝える本」も執筆しており、その豊富なアートの知識は小説以外の分野でも発揮されています。
情景を想像しやすい平易な文調
情景が脳内に浮かぶような描写は原田の作品の特徴といえます。
入念な取材をもとに描かれた小説は、読者にまるで現地にいるような情景をリアルに鮮明に伝えます。
日本以外にもフランスやマカオ、スペインなど様々な場所が出てくるのも魅力です。
アートという専門的な分野を題材にしながら、エンターテイメント要素も盛り込まれており、物語の世界観にどんどん惹き込まれます。
原田マハの代表作品15選
カフーを待ちわびて(2006)
舞台は沖縄の小さな島。
主人公の友寄明青(35)は島で祖母から引き継いだ小さな商店を営んでいます。
明青が島民たちとの旅先で行った北陸の神社の絵馬に「嫁に来ないか。幸せにします」と奉納したその4か月後、ある日「幸」と名乗る女性から便箋が届きます。
そこには絵馬を見て明青と結婚することを決めたこと、近日中に与那喜島を訪れるつもりだということが書かれていました。
島のリゾート開発の波にのまれていく島民たちの実情と、美しく穏やかな沖縄の島の対比が印象的な本作は、第1回日本ラブストーリー大賞受賞した原田のデビュー作です。
ランウェイ☆ビート(2008)
高校2年生の塚本芽衣のクラスに転入してきた、溝呂木美糸(みぞろぎびいと、通称・ビート)。
彼はファッションが大好きで、冴えないクラスメイトの犬田悟をクラス一カッコイイ男にすることを宣言し、見違えるようなイケメンに変貌させました。
それをきっかけに彼が中心となって文化祭のファッションショーの準備に盛り上がっていくのでしたが・・・。
本作は原田マハがmaha名義で執筆したケータイ小説で、「デコメール」サイトの『デコとも』にて連載されました。
2011年には瀬戸康史、桜庭ななみ、桐谷美玲、IMALU、田中圭出演で映画化されています。
キネマの神様(2008)
無類の映画好きで、国内有数の再開発企業に勤めていた円山歩。
順風満帆なキャリアを築いていましたが、人間関係に疲れ辞表を出します。
しかしそのタイミングで父親ゴウのギャンブルと借金が発覚。
そんなゴウも無類の映画好きで、歩の書いた映画評論を映画雑誌の映友社が運営するブログに投稿しました。
歩はそれをきっかけに映友社で働くこととなり、ゴウも映画ブログを始めます。
そんな中、「ローズ・バッド」と名乗る謎の人物が現れるのでした。
映画の神様が壊れかけた家族を救う感動ストーリーです。2021年に山田洋次監督で映画化されました。
さいはての彼女(2008)
25歳で起業した敏腕社長の鈴木涼香。
会社は順調に成長したものの結婚とは縁遠く、絶大な信頼を寄せていた秘書の高見沢さえも会社を去ることに。
沖縄での優雅なヴァカンスへ失意のまま出かけますが、行き先違いで、たどり着いたのはなぜか北海道の女満別。
そこでの人々との出会いが、こわばった涼香の心をほぐしていくのでした。
ほかにも、「旅をあきらめた友と、その母への手紙」、「冬空のクレーン」、「風を止めないで」など計4編が収録されています。
全力で頑張ってきた女性の、旅先での再生をテーマにした短編集です。
翼をください(2009)
1939年、世界初の世界一周旅行を果たした毎日新聞の社用機「ニッポン号」。
暁星新聞社記者の青山翔子は資料室で「ニッポン号」に関する謎の写真を見つけ、乗組員の一人だったカメラマンの山田順平に会うため、アメリカ合衆国カンザス州へ向かいます。
そして、GHQによって歴史の闇に葬られた米国人女性飛行士エイミー・イーグルウィングのことを知るのです。
実在した毎日新聞の社用機「ニッポン号」を取り巻く、実話をもとにした物語です。
本日は、お日柄もよく(2010)
平凡なOLのこと葉は、幼馴染の厚志の結婚式でプロフェッショナル・スピーチライターの久遠久美と出会います。
会社の同期の結婚式でスピーチを頼まれた彼女は、久美にスピーチのコツを教えてもらい感動的なスピーチを披露することができました。
それを機に、こと葉自身も言葉の力というものに興味を持ち始め、会社の広報戦略室に異動、スピーチライター、そして民衆党のスピーチブレーンにまでなってしまうのです!
失敗を重ね色々な経験を積みながら、少しずつスピーチライターへ近づいていくこと葉の成長物語で、プロフェッショナルな人たちの仕事が生き生きと描かれています。
永遠を探しに(2011)
世界的な指揮者でありボストン交響楽団の音楽監督の父を持つ、高校生の和音(わおん)。
父と離婚し、突然家を出てしまった母は元チェリストでした。
父が海外赴任となり、日本の家にひとり残ることにした和音。
そこへ突然現れたのは父の再婚相手、真弓でした。
母と娘の友情、成長、そして音楽をテーマにした小説です。
楽園のカンヴァス(2012)
ニューヨーク近代美術館のキュレーター、ティム・ブラウンのもとにスイスの伝説的なアートコレクター、コンラート・バイラーの代理人だという弁護士から、アンリ・ルソーの知られざる名画を調査してほしいとの手紙が届きます。
現地に着くともう一人の鑑定役としてソルボンヌの博士号を取得したルソー研究者である早川織絵がいました。
二人はアンリ・ルソーの名画「夢」とほぼ同じモチーフのこの大作がはたして真作なのか、贋作なのか、その手掛かりとなる謎の古書を読みながら7日間をかけて調べていきます。
山本周五郎賞を受賞した傑作アートサスペンスです。
ジヴェルニーの食卓(2013)
フランスを代表する4人の画家、マティス、ドガ、セザンヌ、モネを巡る以下の4編の短編小説です。
マティスとピカソ、ライバルでありかけがえのない友人であった二人の天才画家の交流を描いた「うつくしい墓」。
新しい美を求め、周囲の無理解に立ち向かったドガの格闘の日々を刻んだ「エトワール」。
セザンヌやゴッホら若い画家の才能を信じ、支え続けた画商の人生を巡る「タンギー爺さん」。
不朽の名作「睡蓮」誕生に秘められた、モネとその家族や友人たちの苦悩と歓喜の日々が明かされる「ジヴェルニーの食卓」。
第149回直木三十五賞の候補作に選ばれました。
総理の夫(2013)
鳥類学者の相馬日和(ひより)の妻は史上最年少、史上初の女性総理大臣になった凛子。
そして史上初のファーストジェントルマンとなった日和は鳥の観察日記のように、凛子が総理大臣に指名された日から日記をつけ始めます。
政治や家族に翻弄され、鳥好きの夫が総理の夫として奮闘する姿が描かれています。
本作は2021年に田中圭、中谷美紀主演で映画化され話題を呼びました。
異邦人(2015)
たかむら画廊の専務・篁一輝と、妻であり有吉美術館で副館長を務める菜穂。
出産を控えた菜穂は、一輝とともに住んでいる東京都のマンションを離れ、京都府にあるホテルでしばらくの間仮住まいしていました。
鬱々とした気分を払拭するためある老舗の画廊を訪問した菜穂は、応接室に掛けられている1枚の絵画に心を奪われます。
白根樹と名乗るその絵を描いた画家はまったくの新人で、発声障害を患っているのでした。
2018年に第6回京都本大賞を受賞、2021年11月には高畑充希主演でドラマ化されました。
ロマンシエ(2015)
遠明寺美智之輔は、絵を描くことが大好きな男の子。
日本の美大を卒業後、アーティストを目指してパリに留学するも、希望していた美術学校とは違う美術学校へ通うことに。
カフェでバイトをしながらフランス国立高等美術学校への入学を目指しますが、そこで出会ったのは超人気ハードボイルド小説の作者、羽生光晴。
なんと彼は訳あって伝説的なリトグラフ工房「idem」に匿われているのでした…
本作はパリを舞台にした乙女男子と有名ハードボイルド小説家のラブコメディ小説です。
暗幕のゲルニカ(2016)
同時多発テロで夫を亡くした、ニューヨーク近代美術館の絵画彫刻部門のキュレーターである八神瑤子は、反戦のためにピカソ展の開催を企画します。
展示の目玉作品として検討したのは、都市無差別爆撃を主題としたピカソの代表作「ゲルニカ」。
そこで彼女は国連本部にあるゲルニカのタペストリーを借りようと決断しました。
しかし、国連本部のロビーに飾られていたタペストリーが、2003年のある日、忽然と姿を消したのです。
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昭和29年の春、イギリス人の高名な陶芸家であるリーチ先生が、大分の小鹿田(おんた)焼きの里を訪れることになり、町は大騒ぎになります。
しばらく滞在するリーチ先生の世話をすることになったのが若い見習いの陶工・沖高市で、彼は陶工だった父・亀乃介亡き後、他家へ修行に来ていました。
はじめは緊張していた高市でしたが、リーチ先生とは不思議とウマが合います。
ある夜、窯の燃え盛る炎の前でリーチ先生が、「君のお父さんは、オキ・カメノスケという名前ではありませんか」と尋ねるのでした。
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1886年、栄華を極めたパリの美術界に、流暢なフランス語で浮世絵を売りさばく日本人・林忠正がいました。
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兄の才能を信じ献身的に支え続けるテオ。
そんな二人の前に忠正が現れ、大きく運命が動き出します。
パリで画商を営む林忠正とそのアシスタントである加納重吉、画家ゴッホとその弟テオとの交流と悲劇が描かれた作品です。
文芸界にアートという新風を巻き起こした小説家、原田マハ。
彼女が美術業界で培った経験・知識から生み出される「史実をベースにしたフィクション」は、幅広い層から絶大な人気を得ています。
アートに関心・興味がないという方も、ぜひ一度彼女の本を手に取ってみてください。
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