南方熊楠博物学
CULTURE

南方熊楠とは?天才博物学者の功績と生涯を解説

南方熊楠

南方熊楠という人物をご存知でしょうか?

若いうちから海外を渡り歩き、「知の巨人」と呼ばれるほど研究に人生をかけた日本人です。

変わり者扱いされていた南方熊楠ですが、興味深い彼の生き方や言動は私たちに新しい何かを気付かせてくれるかもしれません。

今回は、彼が成し遂げた功績や名言などをご紹介します。

 

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南方熊楠とは?

和歌山県出身の天才博物学者

南方熊楠は博物学者として知られていますが、民俗学者や生物学者としての顔も持っていました。

それは興味を持った物に関するあらゆる分野まで徹底的に調べる南方の性格が影響しています。

20歳から海外へ渡ったため語学も堪能で、英語はもちろん、フランス語やドイツ語、ラテン語なども専門書を読み込めるほど理解していました。

常人離れした天才的な面があった南方ですが、気性は荒く癇癪持ちで、学問に打ち込むのは熱中することで気性の荒さを落ち着かせるためだと言われています。

 

南方熊楠の生涯

生い立ち

南方熊楠は1867年に現在の和歌山県和歌山市で生まれました。

熊楠は小さな頃から、驚異的な記憶力を持つ神童でした。

自然界に対して強い興味を持ち、学生時代は授業そっちのけで植物観察などに夢中になっており、大量の本を読んでいました。

また、興味のない科目には全く目を向けず、散漫な態度だったためよく教師に叱られていたというエピソードもあります。

父・弥兵衛は、「自分の素質を認めて、自分だけにはずいぶん学問を奨励してくれた」と熊楠は語っています。

 

青年期と海外留学

明治十六年(1883年)に上京し、現在の東京大学に入学します。

しかし、勉学に打ち込む同級生を傍目に「こんなことで一度だけの命を賭けるのは馬鹿馬鹿しい」と大学教育に見切りをつけました。

そこで大学を中退し、アメリカ留学を決意します。アメリカ、そしてイギリスへと渡り、のべ14年におよぶ遊学生活を送りました。

 

日本への帰国と研究

南方熊楠は海外でも既に学者として名を馳せていましたが、日本に帰国後も様々な研究を続けました。

「ネイチャー」誌などに論文の寄稿などを積極的に行いますが、権威の象徴である教授などには目もくれなかったと言います。

民俗学者・柳田國男と交流を深め、日本の民俗・伝説・宗教を広範な世界の事例と比較して論じ、当時としては未だ主流でなかった比較文化学を展開しました。

また、1929年には昭和天皇に進講し、粘菌標品110種類を進献しました。

 

晩年

晩年は和歌山県の田辺に定住して気ままな生活を送った熊楠。

彼にとって人生最高の栄誉であった、昭和天皇への御進講を終えた後も、膨大な資料の研究をする日々が続きました。

しかし、だんだん心身ともに疲労してしまい、太平洋戦争が始まった頃には病状が悪化します。

熊楠は「天井に紫の花が咲いている」と言ったあと、家族に見守られ、74歳で生涯を閉じました

ちなみに熊楠の脳は大阪大学医学部にホルマリン漬けとして、現在も保存されています。

 

南方熊楠が持っていたさまざまな顔

生物学者・植物学者としての研究

南方は、花を咲かせない隠花植物の研究に生涯を注ぎました。

特にキノコや粘菌、藻類を主に研究し、採集目的に植物が豊富な那智や高野山、さらにフロリダやキューバまで訪れたこともあったそうです。

採集に明け暮れ、30年にもわたって研究に没頭した結果、南方は3500枚もの菌類図譜を残しました。

粘菌の標本は約7000点現存しており、生物学研究者であった昭和天皇へご進講という栄誉に結び付いていきます。

 

民俗学者として世界的な民俗を比較研究

南方は、一般社会で育まれてきた文化や慣習の発展を研究する民俗学へも深く関心を寄せていました。

一般的な民俗学は日本だけに焦点を当てたものが多い中、南方はグローバルな知識を活かした世界的な民族の比較研究を行い、「十二支考」や「南方随筆」などの著書を残しています。

南方熊楠は柳田國男とともに日本の民俗学創始者とも呼ばれ、二人は文通仲間でありました。

 

宇宙的思想をもとに南方曼荼羅を考案

マンダラとは、仏教の世界観を網羅的にかいた図のことです。

南方熊楠は、後に高野山真言宗管長になる土宜法竜宛ての書簡で、真言密教のマンダラをヒントにした森羅万象の関係を独自のマンダラで表現しており、のちに「南方マンダラ」と呼ばれるようになりました。

宇宙的思想をもとに複雑に描かれた「南方マンダラ」は、この世界で交錯している因果関係が連鎖して世界の現象となり現れていると説いています。

神社合祀令に反対し自然保護を提唱 

1906年、明治政府は神社合祀令を公布し、各地の神社が合併して多くの神社や自然が失われていきました。

この政策に対して強く反対した南方は、地元の新聞へ投稿したり柳田国男の助けなどを借りて有識者に書簡を送るなどして、反対運動を起こします。

環境を保護する活動は当時はとても珍しいものでした。

「エコロジー」という言葉で生態系の大切さを訴えた南方は、エコロジストの始まりとも言われています。

 

南方熊楠の功績

『ネイチャー』誌に多くの論文を発表

「ネイチャー」誌は1869年にイギリスで創刊された総合学術雑誌で、世界で最も権威のある雑誌として有名です。

「東洋の星座」という初めての論文が1893年に「ネイチャー」で掲載された南方は、一気にロンドンの学術界で有名になりました。

その後も世界中で採集した菌類や民俗学・人類学などに関する論文を発表し続け、掲載された論文は51本に及びました。

これは単独の研究者としては歴代最高記録であり、いまだにこの記録を破る人は現れていません。

 

エコロジー活動により熊野古道(世界遺産)を保護

人と自然が長い年月をかけて育んだ壮大な景観は他にないとされ、「紀伊山地の霊場と参詣道」として世界遺産に登録された熊野古道。

当時の政府は神社合祀令で数多くの神社を廃社し、森林も伐採してしまいましたが、自然が生み出す価値に誰よりも早く気付いていた南方は強く反対しました。

熊野古道が残されたのは、森林伐採が生態系を崩してしまうという南方の度重なる抗議によるものでした。

 

新種の粘菌ミナカテラ・ロンギフィラを発見

新種の粘菌の発見もまた、南方熊楠を有名にさせたきっかけのひとつです。

1916年、彼は弟である常楠の名義で購入した和歌山県田辺の家の庭で、植えていた柿の木から新種の粘菌・ミナカテラ・ロンギンフィラを発見しました。

この出来事は、分類学上の新しい「属」を発見したとして菌類を研究している世界中の学者たちに大きな影響を与えたと言われています。

 

映画「熊楠・KUMAGUSU」

1991年に和歌山県・田辺市で撮影が行われた「熊楠 -KUMAGUSU-」は、小説家・ミュージシャンである町田町蔵さんが南方熊楠役を務めた映画です。

しかし製作資金が足りずに撮影が中断され、その後中止が発表されました。

弁慶映画祭で上映されたパイロット版は30分程度と短いですが、南方熊楠の世界観にたっぷり浸れる作品のため、ぜひ完成させて欲しいと願うファンも多いようです。

 

南方熊楠について知ることができる博物館

南方熊楠記念館(和歌山)

生涯研究を続けた南方が遺した足跡は膨大な量で、いまだ解明されていないものも多いと言われています。

和歌山県にある南方熊楠記念館では、そんな彼の資料の一部である標本や文献などを保存し、一般公開しています。

屋外でのイベントも開催されており、大人から子供まで誰でも楽しめる博物館です。

 

南方熊楠記念館詳細

開館時間:9:00~17:00(入館は16:30まで)

休館日:木曜日 、6月28日~30日・12月29日~1月1日

入館料: 高校生以上600円 小中学生300円 

 

南方熊楠について知ることができる本

「南方民俗学」

南方熊楠の傑作と言われる論文「燕石考」などをまとめた論文集です。

ライバルであった柳田国男への書簡をメインに、構造人類学の方法と思想を先取りした彼の考えを知ることができます。

近代人類学とは違う、南方独自の視点で切り開かれた民俗学の新しい世界に触れられる一冊。

南方民俗学

1,562円 (税込)

出版社 ‏ : ‎ 河出書房新社; 新装版 (2015/4/28)

 

「南方マンダラ​​」

「知の巨人」と言われた南方の膨大な知識や考えに触れることができる、最初の“南方熊楠コレクション”の一作目。

南方について研究している宗教史学者の解説をもとに、彼の思想の中心にあった「南方マンダラ」とはどういうものなのかを解き明かしています。

土宜法龍に送られた手紙をもとに、土宜だけに伝えていた考えの解説も詳細で読みごたえは抜群です。

南方マンダラ

1,320円 (税込)

出版社 ‏ : ‎ 河出書房新社; 新装版 (2015/4/28)

 

小説「名探偵クマグスの冒険」

もし南方熊楠が探偵だったらどのように事件を解決するのか?

19世紀末のロンドンを舞台に、南方熊楠が名探偵として次々と事件を解決していく虚実を織り混ぜた小説です。

南方の激しく野性味あふれた性格はそのままに、膨大な知識を生かして事件を解決していく姿は凛々しく、ダーク過ぎない内容と相まって楽しく読み進められるでしょう。

名探偵クマグスの冒険

499円 (税込)

出版社 ‏ : ‎ 静山社; 初版 (2013/1/10)v

 

漫画「猫楠」 

漫画家水木しげるが南方熊楠の生涯を漫画にした作品です。

猫の視点で南方熊楠の生涯を追ったストーリーは親しみやすく、全500ページとボリュームがありながらもあっという間に読み進めることができます。

南方熊楠の変わった性格や人並み外れた行動がそのまま漫画にされているので、彼の功績とリンクさせながら南方ワールドにひたってみるのもいいでしょう。

猫楠他 (水木しげる漫画大全集)

2,310円 (税込)

出版社 ‏ : ‎ 講談社コミッククリエイト (2014/1/4)

 

まとめ 

自然に対する熱意や好奇心、少し変わった性格など知れば知るほどまぶしい魅力を放つ南方熊楠。

日本初のエコロジー活動や数々の名言は彼だからこそ生まれたものであり、時代を超えて多くの人々に影響を与え続ける貴重な人物として再評価されています。

彼が残した業績だけでなく生き方そのものも、現代の私たちにさまざまなヒントを与え続けてくれるでしょう。

 

 

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