森山大道とは?代表的な写真集や作風の特徴、最新映画について徹底解説!
” より明確で綺麗な写真を ” という写真の歴史の中、あえて「荒れた、ブレた、ボケた」写真を撮った作品で有名な日本を代表する写真家、森山大道。
1960年代に独自の手法を使った写真が世の中に放たれた時、写真界に大きな衝撃を与えました。
今回は森山大道の歩んできた人生から作品まで徹底解説します。
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森山大道とは?
日本を代表する写真家
日本を代表する写真家、森山大道。
あえて写真の粒子が荒れ、激しくブレ、画像がボケた「アレ・ブレ・ボケ」の写真が彼の作品の大きな特徴です。
「僕は街頭スナップ写真家だ」と自身で語る彼の作品は、モノクロときっぱりとしたコントラストの強さが特徴で、力強い黒の使い方は見る人の目を一瞬で惹きつけます。
国際国立美術館や、ロンドンで行われたウィリアム・クラインとの合同展を行うなど国内外で大規模な展示会が開催されており、展示会だけでなくドイツ写真家協会賞など複数の賞を国内外で受賞。
世界的にも高い評価を受けています。
2015年、野良犬の作品がロンドンフィリップスのオークションで300万円で落札されるなど、マーケットでも人気は好調です。
森山大道の経歴
森山大道は1938年、大阪府池田市に生まれまれます。
夜間高校に入学するが中退。その後フリーの商業デザイナーとして大阪府の平野市に事務所を設立し、若くして独立の道を歩みます。
写真家として飛躍するため、1961年に上京。フリーの写真家として活躍する傍、広告や雑誌のデザインも手がけています。
また、大学教授として教育にも力を入れている写真家です。
森山大道の作風
「アレ・ブレ・ボケ」
冒頭で説明させていただいたように、森山大道の作風の大きな特徴は「アレ・ブレ・ボケ」です。
多くの写真家にとって、これら3つの特徴は失敗と捉えるのではないでしょうか?
しかし森山はこれらを自分の表現手法として確立させています。
また、普段コンパクトカメラを使っていたり、カメラにこだわりがない所も彼の作風の特徴です。
「もうずっとコンパクトカメラを使ってるけど、それがなくても撮りたかったら、どんなカメラでもいいから目の前にあるカメラで撮ります、たとえばそれが「写ルンです」でもポラロイドでも大型カメラでも 」
と本人は言います。
街頭スナップとモチーフ
現在82歳の森山は、東京を撮り続けて半世紀以上。特に新宿を好みます。
「僕は新宿体質なんだよ。勝手な思い込みだけれど、体質が歌舞伎町に似てるんだ。人間みな欲望を抱えていて、僕もいやんなるほどに抱えている。東京はいわば“欲望のスタジアム”で、そのなかでも新宿は絶望的に欲望が絡み合っている。僕は都市が、とりわけ東京が好きだね。」
そう語る森山の撮る街の写真は、人間のきれいな部分だけではなく、悪の部分も同時に映し出しているように感じられます。
また、それらの街頭スナップは常に路上からの視点から撮影されています。そこには「日々の視線と同じ目線で撮りたいんだ」と言う想いが込められています。
森山の好むモチーフとしてはメッシュや唇のアップがあり、本山琴美などが被写体となった写真が有名です。
アーティストの撮影
森山は様々なアーティストの写真も撮っています。福山雅治、宇多田ヒカル、他にもジャニーズアイドルや芸能人の写真など。
それらの写真もモノクロ写真であり、最近では森山のドキュメンタリー映画のオープニングナレーションを担当した俳優の菅田将暉さんを撮った写真が公開されました。
菅田さんは、森山が撮る写真について
「深い深い黒く美しい写真には、何よりも夢と心がある。僕は、見えていないものばかりだ。」
と、コメントしています。
普段見えていない、その人の中に隠れている部分を映し出すことができるのが、森山の写真が評価される理由かもしれません。
ドキュメンタリー映画「過去はいつも新しく、未来はつねに懐かしい」
岩間玄が監督を務める、「過去はいつも新しく、未来はつねに懐かしい」という映画が2021年4月30日に公開されました。
これは、森山の1968年に誕生したデビュー作であり、一般の目には触れることがない『にっぽん劇場写真帖』の復刻版を作ろうとする造本家・町口覚と編集者・神林豊を追ったドキュメンタリー映画です。
この写真集を作り上げていく中で、森山のスナップワークが丁寧に映画の中で取り上げられています。写真を撮り続ける森山の姿は純粋に写真を愛していることが伝わり、写真集を作っていく様子はファンにとってたまらない内容です。
まだ観ていない人はぜひ観てみてください。
森山大道の代表的な写真作品
「三沢の犬」
森山の作品の中で最も有名とも言える作品は「三沢の犬」(1971年)です。
海外でも「Stray dog」の名前で有名な作品となっています。
極端な陰影が強烈な印象を与えるこの一枚は森山自身を表しているという話があります。
人間は誰もが悪の部分を持っている、そんな人間の二面性を表現しているのかもしれません。
「SAINT LAURENT SELF 01: DAIDO MORIYAMA」2018
2018年にはサンローランのクリエイティブ・ディレクターであるアンソニー・ヴァカレロが、自ら発信するアート・プロジェクト「SELF」に森山を起用しました。
テーマは「東京の夜」。
プロジェクトの展示はパリで行われ、仮設の黒い箱の中に森山が新宿・歌舞伎町の街で男女のモデルを撮り下ろした写真と、過去の東京の街の写真で埋め尽くされました。
森山大道の写真集
「にっぽん劇場写真帖」1968
1968年に出版された、森山大道の伝説のデビュー写真集です。
写真史を塗り替えた作品とも言われており、森山独自の表現手法「アレ・ブレ・ボケ」が世の中に広まるきっかけを作った写真集です。
この作品が世の中に放たれ、写真家から批判を受ける一方、多くの若者の支持を得ました。
コレクターの中で高額取引されるようなものになっており、一般ではなかなか目にすることができません。
また、この作品は日本写真批評家協会新人賞を受賞しています。
当時の写真界に大きな衝撃を与えた作品と言って過言ではありません。
「写真よさようなら」1972
1972年、森山が30 代の時にに出版した「写真よさようなら」。
この写真集は「アレ・ブレ・ボケ」写真の極致とも言われています。
その理由として、この写真集に載せられている写真はどれも何が写っているのか、何を写そうとしたのかがほとんどわからないようなものだからです。
ネガの切れ端や失敗とも言える写真がランダムに収録されており、破壊的な写真集となっています。
また、森山はこの後に長いスランプに陥ってしまったと言います。
「犬の記憶」1984
自信を路上をうろつく犬に例えた「犬の」シリーズのなかで一番最初に出版されたものです。
こちらの作品はアサヒカメラでの連載をまとめたテキストと、写真図版からなる写真集となっています。
写真は現在と記憶とが交差する時点に生ずる思考と衝動によるもの、という作者の想いが込められており、森山の自伝のようなものでもあります。
この他の「犬の」シリーズとしては「犬の記憶終章」「犬の時間」、「犬と網タイツ」などです。
「サン・ルゥへの手紙」1990
サン・ルゥとは写真装置が誕生した地のこと。
森山が80年代の日本の軌跡を集めつつ、写真への原点に迫る作品です。
ビル、電線、広告ラッシュなどが写し出されており、80年代の日本、森山自身の私生活、彼を囲む世界がどのような世界だったかを、森山の見てきた視点から見ることができます。
森山が当時強い影響を受けたフランス・シュルレアリスム、マン・レイ、ウジェーヌ・アジェやアンドレ・ブレトンなどを追随した被写体が目立つのも特徴となっています。
「新宿」2002
自身のことを「新宿体質」と表現する森山は今でも新宿を撮り続けているほど、彼にとって新宿は興味深い街。
この写真集には東京の夜や街中の看板などが多く登場します。
日頃目にしているはずの景色ですが、森山の視点から見るとやはり違うものが見えてきます。
森山が見ている「都市の欲望」、そして「新宿」について存分に触れることができる、森山らしい写真集です。
「TOKYO」2020
森山の作品の中で最新の作品は、2020年に出版された「TOKYO」です。
東京を半世紀以上撮り続けている森山が、今まであまり目を向けてこなかった東京の名所を森山の視点から3年間撮り続け、それをガイドブックにしたという贅沢な本です。
今までに200冊以上作品や書籍を生み出してきた森山でも、ガイドブックを作るのは初めてとのこと。
「世界で一番、東京という街が好き」と話す森山が紹介する東京を、ぜひこの本を持ちながら巡りたいものですね。
まとめ
今回は日本を代表する写真家、森山大道を紹介させていただきました。
写真の歴史に大きな衝撃を与えた森山は、現在でも多くの人々に影響を与えています。
どんな困難があっても写真と向き合い続け、人間や世界のいい面も、悪い面もそのまま見て、そのまま写真に捉えようとする純粋な写真への姿勢が、多くの人の心を掴む理由なのかもしれません。
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