油絵の道具と選び方を徹底解説【油絵入門】
初心者のための油絵入門
油絵の道具と選び方を解説
「中学・高校時代に美術の授業で絵を描くのが好きだった」という人も、大人になってから絵を描く機会は案外少ないものです。
中でも油絵や日本画といった専門的な絵画は、絵画教室に通わずに独学で技術を学ぶことが難しいジャンルです。普段から水彩や色鉛筆を使って絵を描いていても、
「油絵を描いてみたいけど、何から初めて良いかわからない」
「画材を見るのは好きだけど、何をどう使うのかがわからない」
という方も多いのではないでしょうか?
今回はそんな方のために、油絵の基本的な道具とその種類・選び方について解説します。
興味はあったけど、行動に移してこなかった。という方は、ぜひ今回の記事を参考に、まず道具を揃えるところから初めてみてくださいね。
「アート診断」
Q1.希望の価格帯は?
Q2.気になるジャンル・モチーフは?
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油絵に最低限必要な道具6つ
まずは、油絵を描くに当たって必要最低限の道具をご紹介します。
道具が増えればそれだけ表現の幅は広がりますが、この6点さえ揃えれば油絵を描くことは可能です。
基本的な道具を抑えて、自分に合った道具選びをしましょう。
1.油絵の具
油絵の具には様々なメーカー・ブランドがあります。
上級者用の絵の具も存在しますが、初めて油絵を描くという方には10~12色程度のセットがおすすめです。
原色と白、黒のみを用いて描いてみるのも、初心者の方には良い練習になるでしょう。
多くの色は原色を混色することで再現が可能です。
描きたいモチーフや絵のイメージに合わせて、自分の好きな色の絵の具を少しずつ増やしていきましょう。
1つの種類に絞らず、様々なメーカーの油絵を試して、自分が使いやすい絵の具を見つけてみてください。
2.溶き油
油絵を描くにあたって、水彩画で言う所の水の役割を果たすのが「溶き油」です。
溶き油を使用することで絵の表面に艶や光沢を出したり、画面を保護することができます。
溶き油には様々な種類があり、それぞれ仕上がりや乾燥時間が異なるので、自分の作品イメージに合った油を使用することが大切になります。
溶き油の種類と選び方については、後ほど詳しくご紹介します。
3.絵筆
油絵では、豚毛を使用した硬い絵筆が一般的に使用されていますが、水彩用の柔らかい絵筆で描くことも可能です。
油絵は水彩と違って水で簡単に汚れを落とせませんが、豚毛は一本一本の毛が太く丈夫なため、大切に手入れをしていれば何度も使うことができます。
反対に柔らかい絵筆は、繊細な描写に向いているというメリットがありますが、きちんと手入れをしていないとすぐにダメになってしまいます。
絵筆の種類と選び方については、後ほど詳しくご紹介します。
4.パレット
油絵の具は乾燥が遅いため、パレットにずっと乗せたまま繰り返し使うことができますが、長く放置しているとパレットの表面にこびりついて取れなくなってしまいます。
あえてそうしているアーティストもいますが、初心者の方は混色した色がきちんと確認できるよう、清潔な物を使用することをおすすめします。
油絵用のパレットとして、木でできた折りたたみ式のパレットが一般的には有名です。
「1つのパレットを長く使いたい」「画家の気分を味わいたい」という方にはこちらのパレットがおすすめ。
長く使い込めばそれだけ道具に愛着も湧きます。
逆に、「パレットの掃除が面倒臭い」「絵の具の発色をきちんと確認したい」という方には紙製の使い捨てのパレットがおすすめです。
パレットが汚れたら紙を剥がすだけなので後片付けが楽ですし、白い紙の上で混色するので、色味をきちんと確認することができます。
5.イーゼル
「イーゼル」とは、絵を描く際にキャンバスを立てかけておくための道具です。
描きかけのキャンバスをイーゼルにかけておけば、部屋を汚すことがありません。
また、高さ調節ができるので、自分の描きたい位置や姿勢に合わせて、ストレスなく制作ができます。
屋外・屋内を問わず油絵を描く際にはとても役に立つ道具なので、揃えておくことをおすすめしますが、どうしても用意ができない場合には、部屋のキャンバスの周り、壁と床にビニールシートを引くなどして養生しましょう。
6.キャンバス
油絵は一般的に麻布を木枠に貼ったキャンバスの上に描きます。
画材屋さんにはすでに布を貼った状態で販売されている「張布キャンバス」もありますし、コストを抑えたい方や大きな作品を描く場合には「ロールキャンバス」と「木枠」を別々に購入することをおすすめします。
ロールキャンバスは、自分で好きなサイズに布をカットできるのでとても便利です。
木枠は布を張り替えれば何度でも使用できるので、1つのサイズをいくつも購入するのではなく、色んなサイズの木枠を揃えておくと便利です。
あると便利な油絵の道具3つ
ここからは、必須ではないけれど揃えておくと便利な油絵の道具をご紹介します。
これらの道具を揃えておけば制作だけでなく後片付けも楽になります。
専用の道具を買わなくても他の物で代用が可能ですが、一度は専用の道具で使ってみることをおすすめします。
1.油壺
「油壺」とは、溶き油を入れておくための鉄製もしくはプラスチック製の容器です。
パレットに取り付け可能で、絵の具を溶くのに役立ちます。特に屋外で制作する場合にはおすすめの道具です。
屋内で制作する場合には、油壺の代わりにお皿やプラスチック製の容器でも代替が可能です。
絵の具を溶くときに、なるべく溶き油を近くに置いて絵筆の移動距離を少なくしたいという方は、油壺を使うとスムーズに制作ができます。
2.ペインティングナイフ
「ペインティングナイフ」には2つの使用方法があります。
1つ目は「混色」です。油絵は取れにくい性質があるため、絵筆を使って混色してしまうと、それだけで筆が痛む原因になります。混色する際には、なるべくペインティングナイフを使用しましょう。
2つ目は「描画です。キャンバス上で油絵の具を盛り上げたいとき、ナイフの先端を使って引っ掻いた表現をしたいときなどに活用できます。
ペインティングナイフを使った描画は、始めはハードルが高いかもしれませんが、色んな使い方をキャンバス上で試してみましょう。美術館やギャラリーの絵を見て、テクニックを学ぶのも1つのヒントです。あなた独自の使い方、表現が見つかるかもしれません。
3.筆洗器・ブラシクリーナー
後片付けで役に立つのが、「筆洗器」と「ブラシクリーナー」です。
「筆洗器」は鉄製の容器で、ここに「ブラシクリーナー」という液体を入れて使用します。
筆洗器には穴の空いた受け皿があり中が二層に分かれているので、下に絵の具が溜まっていく構造になっています。
コストを抑えたい場合には、筆洗器の使用をおすすめしますが、ブラシクリーナーには100ml入りのミニボトルタイプもあり、屋外での制作や持ち運びを重視したい場合にはこちらをおすすめします。
初心者にはスターターセットがおすすめ
初心者の方には、スターターセットがおすすめです。
● 絵筆
●油絵の具
● パレット
● 油壺
● ペインティングナイフ
● ブラシクリーナー
といった油絵の基本的な道具が入っているので、買ってすぐに油絵が描けます。
最初はスターターセットから初めて、少しづつ道具を買い足していきましょう。
持ち運び可能な道具入れも付いているので、屋外での制作をしたいと考えている方にもおすすめです。
道具の種類と選び方
ここからは、それぞれの道具について具体的な種類と選び方をご紹介します。
初心者の方は無理に高級な画材を取り入れないで、筆も絵の具も高価な物はそれだけ使い勝手が良いですが、必ずしも自分の描き方に合っているのは限りません。
徐々に色んな画材を取り入れていくことをおすすめします。
油絵の具の種類と選び方
油絵の具には様々なメーカーがありますが、国内の主なメーカーは以下の3つです。
● クサカベ
● ホルベイン
● マツダ
海外で有名なメーカーは以下の3つです。
● マイメリ
● ターレンス
● ウィンザー&ニュートン
それぞれのメーカーが数種類のブランドの油絵の具を製造しており、高品質な上級者用の油絵の具などもあります。
ブランドによって、絵の具の硬さや色艶が異なります。
色々なブランドを試してみて、自分にあった絵の具を探しましょう。
絵筆の種類と選び方
一般的に絵筆に使われている動物の毛には、以下のような様々な動物の毛が使われています。
● 豚毛
● 馬毛
● ナイロン毛
● リセーブル毛
● オックス毛
● 狸毛(ラクーン)
● マングース毛
● イタチ毛
● コリンスキー毛
● リス毛
油絵に最も使用されている一般的な筆は「豚毛」です。
豚毛は毛の一本一本が太く硬いので、ゴッホの絵のように油絵の具を盛り上げたり、油絵らしいテクスチャを表現したい場合にはおすすめですが、写実絵画のような繊細な描画には向きません。
途中までは豚毛で描き進めていき、仕上げ〜完成にかけては柔らかい絵筆を用いると良いでしょう。
また、筆の形状によっても描きやすさが違います。
広い面積を塗る時は刷毛を用いたり、絵筆のタッチを生かして描きたい時は豚毛の筆を用いたり、細かいところを描く時は柔らかく細い筆を用いるなど、描く面積や出したいタッチによって最適な筆が異なります。
できるだけ色んな筆を試して、人の肌を塗る時はこの筆、髪の毛を描く時はこの筆、といった形で自分に最適な筆を選び出しましょう。細かい線を描く場合には、「面相筆」がおすすめです。
溶き油の種類と選び方
油絵を始めようと考えている人にとって、一番理解が難しいのが「溶き油」ではないでしょうか?
水で溶く水彩画と違って、豊富な種類の油を使用する油絵は、初心者の方にはハードルが高く感じてしまう場合もあるかもしれませんが、溶き油を使いこなすことで表現の幅が広がり、絵を描くことがもっと楽しくなります。
「溶き油」は、油絵の仕上がりを左右する画材といっても過言ではありません。
事前の知識なしでは、せっかくの絵を台無しにしてしまうことも。
ここからは、溶き油の種類と特徴について詳しくご紹介します。
乾性油
「乾性油」とは、空気中で徐々に酸化して固まることで、絵の具をキャンバスに定着させてくれる油のことを言います。
油絵特有の艶を出すことができます。
● 乾性油の主な種類
リンシードオイル
ポピーオイル
スタンドオイル
サンシックンドリンシード
揮発性油
溶き油は、乾性油と「揮発性油」を合わせることで初めて描画が可能になります。
揮発性油は、乾性油の濃度や艶を調整し描き心地を良くするための油です。
水のようにサラサラとしているので、水彩に慣れている人は特に使いやすさを感じるでしょう。
しかし、揮発性油それ自体には固着力がないので、必ず乾性油と混ぜて使用しましょう。
● 揮発性油の主な種類
テレピン
ペトロール
樹脂
乾性油と揮発性油で基本的な油絵の描画は可能ですが、「樹脂」を足すことでより光沢のある堅牢な画面に仕上げることができます。
● 樹脂の主な種類
ベネチアテレピン
ダンマルバニス
マスチックバニス
乾燥剤
乾燥剤は、乾きが遅い絵の具に混ぜて乾燥を早くするための油です。
乾燥を早めることでスムーズな重ね塗りが可能になりますが、入れすぎると亀裂や変色の原因となるため、溶き油全体の量に対して1/10以内にとどめておきましょう。
● 乾燥剤の主な種類
ホワイトシッカチーフ
ブラウンシッカチーフ
描画油
描画油は乾性油・樹脂・揮発性油・乾燥剤などが、あらかじめ描きやすいように調合されている油です。
種類によって艶の出方や乾燥の早さが異なりますが、亀裂や変色が起きないよう、初心者でも描きやすいベーシックな調合になっているので、油絵をこれから始めるという方は描画油の使用をおすすめします。
● 描画油の主な種類
ネオペインティングオイル
ペインティングオイルスペシャル
ペインテイングオイルクイックドライ
ダンマルペインティングオイル
自分に合った画材を揃えよう
油絵をこれから始めるという方は、まずは基本的な道具だけを揃えて描いてみることをおすすめします。
油絵を一度は描いてみたい!という人も多い一方で、水彩に慣れていた分、実際に描いてみると油絵の具特有の匂いや汚れが苦手という人も意外と多いものです。
「もっと色んな技法を学びたい」「表現の幅を広げたい」という人は、様々な画材を意欲的に取り入れてみましょう。
画材の知識が増えるだけで、表現の可能性は無限に広がります。
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