ピータードイグレビュー展覧会
ART

ミステリアスで夢のような世界。「ピーター・ドイグ展」レビュー

「画家の中の画家」
ピーター・ドイグの世界へ

こんにちは。静物と申します。

ただの美術好きとしてTwitterで美術についての情報を呟いています。

今回は東京都近代美術館で開催中の「ピーター・ドイグ展」の個人的なレビューをご紹介いたします。

 

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ピーター・ドイグの世界を総覧する、日本初個展

ピーター・ドイグとは、1959年、スコットランドのエジンバラ生まれのアーティスト。

自身が過ごしたカナダやトリニダード・トバゴの風景をベースに、絵画を描いてきたことで知られています。ミステリアスでありながらも幻想的な絵画世界を展開してくれるアーティストです。

本展は、そんなドイグの初期作から最新作までを展覧する日本初の個展となっています。

 

夢のように美しく、ミステリアスな作品群

個人的に特に推したい作品を2つ紹介します。

 

まずは本展のメイン作品でもある《ガストホーフ・ツァ・ムルデンタールシュペレ》。これはドイツにあるムルデンタールシュペレという場所の絵葉書をもとに描かれた作品です。

鑑賞者である私たちをじっと見つめる中央にいる2人の男。

傍に半開きになった白い柵があることから、この男たちが絵の奥側に伸びるカラフルな道に誘っているように感じられます。エメラルド色の夜空も相まって、幻惑的な雰囲気がなんともたまりません。

 

じっくりと作品を観てみると、中央に伸びる道は実はダムであることに気づくでしょう。ダムの排水口からは、黄色や赤など色とりどりの水が出てきているのがわかります。

一体どんな世界なのでしょうか。想像力をかき立てられる作品です。

本作品の正面には大きな椅子があります。ぜひゆっくりと時間をとって眺めてみてください。

くれぐれもこのワールドから帰って来れなくならないよう、ご注意を。

 

さらにご覧いただきたいのが、《ラペイルーズの壁》。

こちらの作品はいわゆる”ドリーミー”な絵ではありませんが、ある意味夢のような空気感のある作品です。

描かれているのは、トリニダード・トバゴの首都であるポート・オブ・スペインにあるラペイルーズ墓地の壁沿いの風景。

晴渡った空や影の濃さなどから南国の焼けつくような日差しが感じられます。と同時に、私にはどこか孤独感も漂っているように見えます。まるで中央の男性しかこの世界には存在せず、他の人間がすっかり消え去ってしまったような、そんな雰囲気がしてきます。

顔をうっすらと下に向けて猫背気味に歩く男の姿や、後景に行くにつれてのっぺりと抽象化された風景がそう思わせるのかもしれません。

私は心がざわざわするような不穏さを感じましたが、別の方からの目線では全く別の感想が得られそうな作品です。

ぜひ多くの方とこの作品を見ながら語り合いたいものです。

 

随所に宿る巨匠たちのエッセンス

ドイグは、マティスやムンク、ゴーギャンら巨匠たちが生み出したイメージをもとに制作した作品が多くあります。

 

例えば《エコー 湖》という作品の右手にいる男は、ムンク《叫び》を想起させます。

 

また、《夜のスタジオ(スタジオフィルムとラケット・クラブ)》の印象的な赤や、輪郭線を残す描き方はマティスの作品を彷彿とさせます。

ドイグはダミアン・ハーストなど大型のインスタレーションを制作するアーティストが多かった時代に、あえて絵画というオーソドックスなメディアに向き合い続けてきました。そういった背景を踏まえると、彼の作品からは絵画にかける情熱や意地、リスペクトのようなものを感じられます。

ドイグの作品に隠された巨匠たちのエッセンスを探すようにして、展覧会を楽しんでみても良いのではないでしょうか。

 

映画好きにはたまらない展示も

ドイグはアーティスト仲間たちと共に、映画の上映会を定期的に開催していました。

その名も「スタジオフィルムクラブ」。これを宣伝するためにドイグが描いたドローイングの数々も、本展では楽しむことができます。

これらがもう、本当に素晴らしいんです。カラフルな色使いや素早い筆致からドイグが楽しんで描いているのが伝わってきます。

上映する映画をドイグが再解釈して描いているため、見た目は通常の映画ポスターとは趣が異なったものになっています。映画好きの方であれば「この作品をこういう風に描くのか!」と興味深く鑑賞できるはず。ぜひお気に入りの一作を見つけてみてはいかがでしょうか。

(マリリンモンロー主演映画「お熱いのがお好き」のポスター。左がドイグ作。)

 

ゆったりした展示空間で過ごす、幸福な時間

本展の音声ガイドで語られていたことの中で特に印象的だったのは「展示空間」についてです。

本展では、作品ごとの間をあえて広めしているのだそう。それは、来場者がドイグの独特な世界観に深く入り込み、邪念なく想像力を働かせられるようにするためなのだとか。

現地に行くとわかりますが、まさに空間を贅沢に使った展示がされています。ぜひゆったりと歩みを進めながら、ドイグの大きな作品たちに身を委ねるようにして楽しんでみてはいかがでしょうか。

ほんの少し現実を忘れて、幸福な時間を過ごせるはずです。

 

ピーター・ドイグ展

会期:2020年2月26日(水)〜10月11日(日)

料金:一般 1,700円 / 大学生 1,100円 / 高校生 600円

休館日:月曜日(ただし8月10日,9月21日は開館)、8月11日,9月23日

新型コロナウイルス感染防止のため、時間指定の入館となっています。

会場でも当日券が販売されていますが、入館には事前にチケットのご購入がおすすめです。

 

国立近代美術館(MoMAT)

東京国立近代美術館
(The National Museum of Modern Art, Tokyo)

住所 〒102-8322東京都千代田区北の丸公園3-1

開館時間 (火、水、木、日)10:00〜17:00、(金、土)10:00〜20:00

(※現在はコロナウイルスの影響により変更があります。HPをご確認ください。)

休日 月曜日、展示替期間、年末年始

公式HP http://www.momat.go.jp/

 

 

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