デザイナーズチェアとは?有名ブランド、デザイナーと名作チェア20選
家の中にあるだけで存在感を発揮するデザイナーズチェア。
インテリアデザインの雑誌の中でもよく見るデザイナーズチェアをいつか自分の部屋にと憧れる方も多いのではないでしょうか?
デザイナーズチェアの多くは50年以上前に考え出されました。
名作と呼ばれるチェアが世界中で長い間愛され続ける理由とその魅力を詳しくご紹介します。
「アート診断」
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デザイナーズチェアとは
建築家やインテリアデザイナーがデザインした椅子
デザイナーズチェアとは、有名な建築家やデザイナーがデザインした椅子のことです。
デザイナー自身がアイデアやインスピレーションを駆使して生み出した芸術的で、その上に実用性も兼ね備えた椅子です。
一流デザイナーが手がけた椅子の多くは、流行に左右されないデザインが基本で、シンプルなのに個性があり、部屋をスタイリッシュかつ居心地のよい空間に演出してくれます。
見ても触れても心地良く、長く愛用したくなる傑作が現代においても数多く生み出されています。
デザイナーのトーネットが世界で初めて発表
1859年に、オーストリア(ドイツ生まれ)のデザイナーのミハエル・トーネット(Michael Thonet)が曲木椅子(ベントウッドチェア)を発表しました。
初めてのコンシューマーチェアーと評された「タイプNo.14」は、トーネットを代表するモデルで、発売から140年以上たった現在までに2億脚近くが生産されたと言われ、今なお世界中でロングセラーとなっている名作です。
それを機に、デザイナーの個性や志向などが明確に現れたデザイナーズチェアが生み出されるようになっていきました。
機能性に加えてデザイン性も高い
デザイナーズチェアは、誕生時には当時の新たな技術・素材を取り入れた斬新なデザインのものです。
しかし、デザインが優れているだけでなく、機能性の高いものが多く普遍的な魅力を備えている名品の数々があります。
デザイナーズチェアの魅力
時代を超えて愛されるデザイン
デザイナーズチェアの魅力は、シンプルでありながらスタイリッシュなデザインです。
デザイナーズチェアの多くは、ミッドセンチュリー、モダニズムの時代に生み出されたもので、それから数十年経った現在でも斬新に感じるデザインの椅子は時代を超えて世界中で愛され続けています。
個性的なインテリアを演出できる
芸術的で独特のデザインが素敵なデザイナーズチェアは、住む人の人柄をあらわすインテリアの焦点となる存在です。
シンプルでありながらシックで上品な佇まいのデザイナーズチェアは、部屋を格上げしてくれるインテリアを演出してくれます。
デザイナーズチェアの購入方法
デザイナーズチェアを購入するには、主に3つの方法が考えられます。
正規品
まずは正規品です。正規品とはデザイナーからの正規の意匠権を持ったメーカーが製作した製品です。
数万円~10万円以上する高額のものが多くなりますが、高品質で、アフターサービスや保証が付いている信頼性が高い購入方法です。
リプロダクト品(ジェネリック品)
意匠権が切れた製品を、正規メーカー以外が製作したものになります。
メーカーによって、品質は様々です。正規品と比べ、数千円から数万円という格安の価格で、憧れのデザイナーズチェアを手に入れることができます。
しかし、デザインは似ていても、材質やクオリティが違うことも多く、正規品とは座り心地や耐久性などが違ってくる場合もあります。また保証やアフターケアなどはあまり期待できません。
ヴィンテージ品
デザイナーがデザインした当時に販売されていたものです。
中古品であるため、傷や経年劣化をしている状態のものが多いのですが、販売当時ならではの形や素材など、新しいものとは違う風格があり、コレクター向けのアイテムになります。
状態によって値段は変わりますが、良い状態で数の少ないものは数十万円以上することもあります。
デザイナーズチェアの有名ブランド
ハーマンミラー (Hermanmiller)
ハーマンミラー社は、ミッドセンチュリーブームの火付け役で、アメリカの家具デザインを革新させたインテリア業界の代表ブランドです。
1950年代のミッドセンチュリー期に、ジョージ・ネルソン、チャールズ&レイ・イームズ、アレキサンダー・ジラード、イサム・ノグチといった、当時最も活躍していたデザイナー達との連携をして多くの名品を生み出し、世界的に有名なモダンデザイン家具メーカーへと成長しました。
特に椅子が有名なブランドです。2021年7月19日にハーマンミラー社が、アメリカのもう一つのミッドセンチュリーデザインを代表するノール社を買収することが発表され、新会社名はミラーノール社(MillerKnoll)となっています。
イームズ (Eames)
ミッドセンチュリーは、戦後の経済復興政策を背景に、技術の進歩と新素材を使った、実用的かつ優れたデザインに対するニーズが高まった時代です。
ミッドセンチュリーのデザイナーと言えば一番最初に名前が上がるのが「イームズ夫妻」です。
現代につながる工業デザインの礎を築き上げ、家具、おもちゃ、映像、テキスタイル、建築と多岐にわたる才能を開花させたチャールズ&レイ・イームズは、ハーマンミラー社とともに、アメリカのミッドセンチュリーデザインを牽引し、アイコンといえる椅子であるシェルチェア、ラウンジチェア&オットマンなど数々の名作を生み出しました。
座り心地を追求したラウンジチェアは、ニューヨーク近代美術館(MoMA)やシカゴ美術館の永久収蔵品となっています。
アルネ・ヤコブセン(Arne Jacobsen)
アルネ・ヤコブセンはデンマークの建築家、デザイナーです。
モダン様式の代表的存在で、今日のモダンデザインの原型となった最も影響力のあるデザイナーの一人です。彼の作品は建築から、家具、掛時計、バンカーズクロックといった小品にまで及びます。
ヤコブセンはトータル・デザインという考え方のもと、一貫した哲学でデザインしました。
ヤコブセンは1950年代から歴史あるインテリアメーカー、フリッツ・ハンセン社(Friz Hansen)とともに家具デザインを手がけており、当時新素材だった成型合板を用いたアントチェアや、SASロイヤルホテル(現ラディソン・ブル・ロイヤルホテル)のために設計された「エッグチェア」、「スワンチェア」、そして「セブンチェア」をデザインしています。
ハンス・J・ウェグナー (Hans J.Wegner)
デンマークデザイン界において、最も創造性と独創性に溢れれたデザイナーと言われるのがハンス J. ウェグナーです。
椅子の巨匠として知られ、500脚以上の椅子をデザインしています。
その多くが現在まで名作として、国際的に高い評価を受けているデニッシュモダンを牽引したデザイナーです。
1943年、ウェグナーは自身のデザイン事務所を開設。
1949年に初めてカール・ハンセン&サン(Carl Hansen & Søn)の椅子をデザインしています。この時デザインされたのが「CH24(Yチェア)」です。
その作品はニューヨークのMOMAからミュンヘンのディ・ノイエ・ザムルングまで、世界中の著名な美術館でコレクションされています。
ウェグナーは、Yチェアのほかにも、「チャイニーズチェア」「ピーコックチェア」や、ケネディ大統領が使用したことでも知られる「ザ・チェア」など、数多くの名作チェアを発表しています。
ルートヴィヒ・ミ―ス・ファン・デル・ローエ (Ludwig Mies van der Rohe)
ル・コルビュジエやフランク・ロイド・ライトと並びモダニズム建築の三大巨匠の一人と呼ばれるドイツ出身の建築家のルートヴィヒ・ミ―ス・ファン・デル・ローエは、現代の建築や家具、様々なデザインの分野にも多大な影響を与えています。
ミースはバウハウスの第3代校長を務めましたが、ナチスによってバウハウスが1933年に閉鎖された後アメリカに亡命し、アメリカのモダニズム建築の発展に大きく貢献しました。
彼のテーマとするものは「Less is more.」(より少ないことは、より豊かなこと)と言われています。合理性、機能性を追求したモダニズムの建築家です。
1929年に開催されたバルセロナ万博でスペイン国王夫妻をドイツ館に迎えるために、ミースがデザインした『王の椅子』と呼ばれる「バロセロナチェア」は、モダンデザインの傑作として知られています。
ル・コルビジェ(Le Corbusier)
モダニズム建築の巨匠といわれ、近代建築の三大巨匠として位置づけられるル・コルビジェはスイス出身で主にフランスで活躍した建築家です。
幾何学形態黄金比率に魅せられ、鉄筋コンクリートを使ったモダン建築物を数多く生み出し、その造形手法はその後のモダニズムに強い影響を与えました。
建築家として追求する美しさへのこだわりが家具の設計にも込められていて、計算された美しさ、美しさのバランスへのこだわりがあるのが特徴です。
ル・コルビジェの家具の中で一躍有名なのが「LCシリーズ」と呼ばれる家具です。LCシリーズは、ル・コルビュジエが従兄弟であり建築のパートナーであるピエール・ジャンヌレ、デザイナーのシャルロット・ペリアンと共作したシリーズです。
その中でも人気の高い「シェーズロング」とソファータイプの「LC2」はステンレスと本革を使い、建築のようにデザインされた構造のチェアです。
ジョージ・ネルソン(George Nelson)
ジョージ・ネルソンは幅広い分野で活躍したアメリカの建築家兼グラフィックデザイナーです。
システム家具の先駆けとなった「ストレージウォール」を発表すると、1945年に「ライフ」誌に大きく取り上げられ、家具業界に旋風を巻き起こします。
それがハーマンミラー社の目に留まり、同社のデザインディレクターに就任しました。当時まだ無名だったイームズ夫妻の才能を見出してデザイナーとして採用したり、イサム・ノグチやアレキサンダー・ジラードなどを招き、ハーマンミラー社を世界的な家具メーカーへと成長させた立役者です。
「プラットフォームベンチ」、「ボールクロック」や「マシュマロソファ」がネルソンの代表作です。
デザイナーズチェアの名作20選
名だたるデザイナーが手がけたお洒落な名作椅子20選をご紹介します。
ワシリーチェア
バウハウスの家具工房で教官をしていた、ハンガリー出身のマルセル・ブロイヤー(Marcel Breur)が、愛用の自転車のハンドルにインスピレーションを得てデザインしたと言われる「ワシリーチェアWassily Chair」は、彼は1925年に世界で初めてスチールパイプを使用した椅子です。
デザイン界に衝撃を与えたバウハウスのデザインを象徴する名品で、キッチリと曲げられたパイプフレームは、当時のモダニズムを感じさせます。
直線的な四角いフレームに、レザーの背もたれ・座面・肘掛けというシンプルな構成ながら、非常に高いデザイン性を感じる逸品です。
名前の由来は、バウハウスの同僚で抽象画家のワシリー・カンディンスキーの誕生日祝いに贈ったことから由来しています。
チェスカチェア
「チェスカチェア」または「S32」として知られる椅子は、マルセル・ブロイヤーが1928年にデザインしたものです。
スチールパイプによるキャンティレバー構造の椅子ものまたバウハウスのデザインを象徴する名作の一つです。
バウハウスで学び、その後教官として後進を育て、戦後は米国で建築家として活躍をしたマルセル・ブロイヤーがワシリーチャアから3年後に発表した椅子です。
現在はノルとトーネットの両者から正規品が販売されています。ノルではブロイヤーが娘から名をとった「チェスカチェア」を製品名としています。
一方でトーネットでは「S32」、アーム付きタイプは「S64」と呼ばれます。
バルセロナチェア
ドイツ出身の建築家ミース・ファン・デル・ローエが、1929年に開催されたバルセロナ万博でスペイン国王夫妻をドイツ館に迎えるためにデザインした有名な椅子が「王の椅子」と呼ばれる「バロセロナチェア」です。
繊細な曲線は余分なものを取り払ったシンプルで美しいステンレスの脚のラインが印象的な椅子です。
その脚のラインはハサミをテーマにしていると言われています。また、ステンレスフレームとイタリア製総本革を繊細に組み合わせている美しい背面デザインとなっています。
セブンチェア
デンマークのデザインの巨匠アルネ・ヤコブセンのデザインした椅子のなかでも最も有名な椅子の1つが1955年にデザインされたセブンチェアです。
デンマークのみならず北欧のモダニズムを牽引したヤコブセンの家具は、同時代の北欧家具に比べて洗練されたミニマルな印象を受けます。
成型合板による背と座が一体となった三次曲面のシェルが魅力的で、緩やかな曲線を描く美しいフォルムとしなやかな座り心地は後進の家具にも大きな影響を与えました。
アントチェア
アルネ・ヤコブセンが1952年に発表したアントチャアは、ヤコブセン自身が建築した製薬会社Novo Nordisk(ノボ・ノルディスク社)の食堂で使用するためにデザインしました。
成型合板を用い、世界で初めて背座一体の3次元曲線を実現した名作で、絞った背もたれのラインと細長い脚部が、まるで蟻のような形をしています。
必要最低限の要素で構成された完璧なまでに美しいフォルムで、デンマーク家具の代名詞と言える作品です。
見た目の美しさはもちろん、体を優しく包み込むような座り心地も魅力です。
背の適度なしなりと座面のカーブによって、長時間座っても疲れにくくなっています。
元々このアントチェアは3本の脚部に、座った人間の脚の5点で安定感のある座り心地を実現するという、斬新なコンセプトのもとデザインされました。
座面に腰を降ろした際に椅子の脚部が邪魔にならない、シンプルを極限までに追求したヤコプセンのこだわりが反映されています。現在ではより安定性を高めた4本脚モデルも制作されています。
エッグチェア
アルネ・ヤコブセンのデザインした作品の多くは、現在のモダン様式の手本となっています。
エッグチェアは、1958年にデンマーク・コペンハーゲンの中央駅前に立つSASロイヤルホテル(現ラディソン・ブル・ロイヤルホテル)のロビーのためにデザインされました。
ヤコブセンはホテルだけでなく、この空間のために家具や照明、ドアノブ、カトラリーまでデザインしたのです。
直線をベースにしたシャープな建築とは対照的に、丸い有機的なフォルムが空間の美しさを際立たせています。
硬質発砲ウレタンを家具に用いることで実現したシルエットは、デンマークのデザインの代名詞となっています。
ドロップチェア
ドロップチェアはSASロイヤルホテル建築プロジェクトの一部として、「エッグチェア」や「スワンチェア」とともに、1958年にアルネ・ヤコブセンによってデザインされ、約200脚のみ製造されました。
まさに「しずく」が落ちるような流線的なデザインで、トップのとんがり部分が愛らしいデザインです。
50年を超える時の眠りから目覚め、「ドロップチェア」・は2014年にフリッツ・ハンセン社から再発売されました。
プラスチックシェルチェア
アメリカのミッドセンチュリーデザインを代表するチャールズ&レイ・イームズによって、有名な「シェルチェア」が生み出されたのは1950年のことです。
軍用に開発されたFRP(ガラス繊維の入った強化プラスチック)を使用して、世界で初めてプラスチック製の椅子を量産化することに成功し、造形的に美しく、品質の良い椅子が多くの人にも買えるようになりました。
イームズの「シェルチェア」の最大の魅力は素材を一体成型する手法を採用した美しいフォルムです。
緩やかな美しい曲線の背座一体のフォルムは、見た目の美しさだけでなく座った時に体のラインにそって包み込むような座り心地も良いことも特徴です。
ワイヤーチェア
1951年に発表されたこの椅子は、イームズ夫妻の代表作のプラスチック製の「イームズシェルチェア」の形のままでありながら、「ワイヤーチェア」は、細いワイヤー状の金属を使うという、その斬新な素材使いに家具業界に衝撃を与えました。
この複雑で斬新な家具を開発するのに、イームズ夫妻は素材の研究から取り組み、独自の製法を生み出したのです。
細いワイヤーで構成されたこの椅子は、一見華奢で繊細そうに見えますが、2重構造のフレームによって高い耐久性があります。
Yチェア
多くの北欧デザイナーのなかでも有名なのがハンス・J・ウェグナーです。
500種類以上の椅子をデザインし、その一部はニューヨーク近代美術館に所蔵されるなど、北欧デザインの巨匠として知られるデンマーク人の家具デザイナーです。
1950年にデザインされた「CH24」は、中国の明王朝時代の椅子にインスパイアされたと言われています。
背もたれのYの字がトレードマークで、日本では「Yチェア」の名で知られていますが、ヨーロッパでは鳥の胸骨に似ていることからウィッシュボーンチェアと呼ばれています。60年以上たった現在でも愛され続けている不朽のデザインです。
制作過程の多くに機械を用いながら、繊細な作業を必要とするやすり作業や組み立て、座面に使われるペーパーコードの編み込みなどを手作業とすることで、コストを抑えながらも高い品質を維持の見た目にも美しく、座り心地の良い椅子です。
アカプルコチェア
この特徴的なデザインは、メキシコのカリブ海沿いの人気ビーチリゾートのアカプルコにちなんで名づけられました。
1950年代、アカプルコはハリウッドスターの人気の休暇先の1つでした。
この椅子が最初にデザインされたのは、フランス人観光客と推測されています。
その観光客が、アカプルコのビーチチェアが熱くて座ることができないことに気づき、自らチェアをデザインしようと思ったことから誕生したと言われています。
もともとはアウトドア家具でしたが、座ってみると、PVCコードの柔らかさが体を優しくうけとめてくれて、まるでハンモックに揺られるような心地よさを感じる椅子です。
このクラシックなデザインは、さまざまなブランドによって現在はリプロダクトされ、色や素材のバリエーションも豊富です。
つきです。
バタフライスツール
日本の工業デザインの礎を築いた柳宗理が1956年に発表した「バタフライスツール」です。その名の通り、羽ばたく蝶のようなデザインが大きな魅力です。
戦後、イームズのデザインした椅子から成形合板の存在を知った柳は成形合板の技術を応用した新しい物づくりを日本で模索しました。国内でいち早く成形合板技術を取り入れていた天童木工とともに開発を進め、2枚の成形合板をあわせた優美な曲面とシンプルな構造を併せ持つ一脚を完成させたのです。
1957年のミラノ・トリエンナーレでは金賞を受賞し、パリのルーブル美術館、ニューヨークの近代美術館など、世界各地の美術館で永久収蔵品入りを果たしている名作です。
LC2
「LC2」は建築家でもあるル・コルビジェ(Le Corbusier)の傑作です。
ル・コルビュジエは、1928年に当時のモダニズムを象徴するスチールパイプを使用した籠のようなフレームに革製の四角いクッションをはめ込んだ「LC2」を発表します。
コンクリートや金属などの素材を組み込み、無駄な装飾を一切なくしたシンプルなソファは、上質な羽毛を使っているため程よい弾力があり、座った瞬間の座り心地は格別です。
装飾を用いた建築様式を否定したル・コルビュジエは、伝統から切り離された合理性を信条とするモダニズム建築を提唱しました。この名作椅子は、そんな彼の建築思想をよく表し、合理的に快適さを実現するソファでした。
しかし一般的にはスチールパイプの家具に馴染みがなかった時代で採算も見込めず、お蔵入りとなってしまいました。
この椅子が再び世に出たのは1965年です。ル・コルビュジエとペリアンの監修によりカッシーナ社から復刻されました。
シェーズロングLC4
ル・コルビジェのデザインした椅子の中で、「LC2」と並んで人気のある「シェーズロング」はステンレスと本革が出会い、建築のようにデザインされた構造のチェアで世界最高デザインの休憩椅子と言われています。
1929年に発表されたLC4は、「休養の為の機械」とコルビュジエ氏が呼んだ寝椅子で、その言葉の表す通り休息時の快適さを追求した椅子です。
溶接のないなめらかな曲線の美しさを実現した弧円型のフレームは自由に動き、使う人の体に合わせて最適な背座のカーブが実現します。
細かい3cmの幅のベルトが支えるため細かく体重を分散させるよう計算された構造で、弓形のパイプをずらすと寝る角度が自由に変えられる仕組みなど、現代のエゴノミクスチェアに通じる要素が見られるイタリア製の本革を使った美しい椅子です。
台座部分から外して単体でも使用可能。
スポークチェア
日本人のための椅子を生涯にわたり研究した豊口克平の代表作の一つです。
格子状の背もたれは英国のウィンザーチェアがモチーフです。正確には“コムバック”といわれる様式で、スペイン風の櫛に形が似ていることに由来します。
大きな楕円形の座面と、座面の高さが低いのが特徴のこのイスは、畳の上のようにゆったりとあぐらをかくことができるため、別名「あぐら椅子」とも呼ばれます。
豊口克平氏自身が54歳の時に「自分が座りたい」とつくり上げた椅子は、脚先は丸みをもたせ、畳に置いても傷が付きにくいように配慮されています。
日本の伝統とモダンなデザインが見事に融合した椅子は天童木工から販売されています。
アルテック スツールE60
このスツールを生み出したのはフィンランドが誇るモダンデザインの巨匠、アルヴァ・アアルト(Alvar Aalto)です。
アアルトは、当時の直線的で無機質なモダニズムに相反する、フィンランドの伝統的な材料の木材と、柔らかな曲線をデザインに取り入れた、現代の北欧モダニズムの原型を感じさせるデザインを作り出しました。
また、自国の木材を使用し、環境との共生や地域文化の尊重、地場産業の育成など今日的なサスティナブルなテーマをいち早く実践したことでも知られています。
1934年にデザインされた「スツールE60」は、フィンランドの森林から採取される白樺(バーチ)を使用し、その特徴であるL字の曲木脚「L-レッグ」は、角材の曲げ加工を施す部分にスリットを入れ、その隙間に薄いベニヤを挟みこみながらプレス加工で曲げていくというものです。
規格化された部材であり、出荷時は分解して平たく梱包できることから、製造・輸送コストも抑えられ、買い求めやす価格に設定されていることも魅力のひとつとなりました。また、誰でも簡単に組み立てができることもアアルトによる大きな発明でした。
座ることはもちろん、サイドテーブルにもなり、踏み台としても使える「スツール E60」は、シンプルで美しく、使いやすい椅子です。スタッキング可能なのでいくつあっても場所を取らないことも人気の理由です。
パイミオチェア
フィンランドの巨匠アルヴァ・アアルトがデザインをしたパイミオチェア(Paimio chair) は合板を使った椅子の先駆けとなる存在です。
今までの木製椅子のイメージを一新した軽やかで革新的なデザインは、後の椅子のデザインに多くの影響を与えました。
アアルトがパイミオ市が主催した結核診療所(サナトリウム)の建築コンペを勝ち取ったことから、パイミオチェア(Arm Chair41)は1932年にデザインされました。
患者が腰掛けた時に呼吸が楽になるよう、背もたれの角度が設計されているなど、人体工学(エゴノミクス)を意識してデザインされた椅子です。
フレームも座面も、木の板を重ねた積層合板を使用して作られていて、この合板を曲げ加工して作られた成形合板の椅子は当時めずらしいものでした。
患者が触れることを考えて作られているため、見る人に優しい印象だけでなく、クッションが無いながらも、座ると弾力を感じる座り心地が評判となりました。
パントンチェア
1960年にヴァーナー・パントン (Verner Panton)によって考案された「パントンチェア」は、当時は製品化できる製造元がありませんでしたが、ヴィトラ社(vitra)と共同で量産用に開発、1968年に量産がスタートしたプラスチックによる世界初の一体成形型のキャンチレバーチェアです。
ヴァーナー ・パントンのデザインを象徴する鮮やかな色と、彫刻を思わせる斬新なデザインは、当時のデザイン界に、大きな衝撃をもたらし、「パントンチェア」は国際的なデザイン賞を多数受賞し、世界中の著名な美術館のコレクションとして所蔵されています。
1968年に量産がスタートしましたが、依然として多くの手作業による仕上げが必要でした。
ヴァーナー・ パントンはこの製造方法に満足することはなく、よりよい方法を模索し続け、1990年代に入ると、プラスチックと射出成形の技術革新が一層の進化を遂げ、ポリプロピレン製によって「パントンチェア」の量産化に成功しました。
最初の発表から30年の時を経て、 パントンが掲げた大きな目標の1つであった、プラスチック製の椅子を手ごろな価格で量産化することが達成されたのは、彼が亡くなった直後の1999年のことでした。
ボールチェア
1963年にフィンランドのデザイナーエーロ・アールニオ(Eero Aarnio)によりデザインをされ、彼のデビュー作でもあり最も有名な椅子です。
1962年に独立して自身のデザイン会社を立ち上げた際に最初にデザインが完成した椅子がこのボール(Ball)チェアです。初期名はGlobe(グローブ)でしたがいつ頃からか名前が変わりボールチェアとなりました。
もともと自宅のための椅子としてデザインしたもので、1963年にフィンランドのASKO(アスコ)社から製品として発売をされています。そして1966年のケルン国際見本市に出展すると大きく注目が集まりアールニオの名が業界内で知れ渡ることになりました。
真っ白な半球体のボディは強度のあるFRP製で、上部は360°回転します。
白と赤のコントラストが、モダンであり未来的なデザインは、実用面以上に、インパクトのあるインテリアとして存在感のあるチェアです。映画、音楽、ファッションといったエンターテイメントの場で使われることで人々へ強烈なイメージを残しました。
ダイヤモンドチェア
イタリア生まれのアメリカで活動した彫刻家のハリー・ベルトイア(Harry Bertoia)が1952年にデザインした、ダイヤモンドチェアはミッドセンチュリーの代表作の一つで、米国ノール社(Knoll)から製造販売されました。
ハリー・ベルトイアはイームズ夫妻に誘われカルフォルニアに移り住み、ロサンゼルスのイームズオフィスのメンバーとして活動をしていました。
その後金属彫刻家として金属の家具を作ることにしたベルトイアは1950年にイームズオフィスを離れノール社へ移動しました。その中で制作された椅子の一つがこのダイヤモンドチェアです。
「この椅子は主に空気によってできている」この椅子をデザインしたハリー・ベルトイアは、自作をそう評しています。
空気をはらんだ、あるいは空間に溶け込むような透明なデザインは、彫刻家である彼の哲学を見事に表現したものです。
フレームは、1本1本異なる長さのスチールロッドを3次元に曲げ、その後ダイヤモンド型に溶接固定しています。
金属造形に長け、溶接技術に天才的な腕前をもっていたベルトイアが 「空気と鋼の彫刻である」と言い表したこのシリーズは、強堅なつくりでありながら軽やかでスタイリッシュなモダンデザインが特徴です。
座るための家具だけでもなく、ディスプレーの装飾品というだけでもない、椅子の形をした現代彫刻作品といわれる名作です。
デザイナーズチェア の魅力、そして数ある中から名品を20個選びご紹介しました。
長い時を経て、今も愛され続けるデザインには理由があります。こだわり拔いた素材や、徹底して追求された機能美など、巨匠たちの魂や情熱を感じるからこそ、その作品に普遍的な魅力を感じるのではないでしょうか?
良い椅子がある生活は心を豊かにしてくれます。ぜひ、自分の暮らしやライフスタイルになじむ、素敵な1脚を見つけてみてください。
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