窪田望とは?AIでアートの新境地を拓く、作品に込めた思いと挑戦を詳しく解説
AIと人間のありきたりな二項対立に脱構築し、AIとあらゆるメディウムを領域横断的に掛け合わせたインスタレーション作品を制作する窪田望さん。AI技術が社会的・文化的な風景を一新している中、今回の「This is」では、彼がどのようにしてこの革新的なフィールドで独自の声を築き上げているのか、その真相に迫りました。
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窪田望とは
8歳までアメリカで過ごし、19歳で起業、SNSフォロワー数は30万人超。4万人いるウェブ解析士の中で2年連続日本一になりその後殿堂入り、データ解析やAI技術の特許を累計20件取得している、AIなどの最先端技術を駆使した作家。2024年から東京藝術大学大学院の美術研究科 先端芸術表現専攻に在籍しています。
窪田望の歩み
AIとアートに導かれたユニークな経歴と視点
窪田望さんにインタビューをして、その深い洞察力と個人的な経験から生まれた物語性に心を打たれました。アメリカで生まれ、転勤族の家庭で育ち、幼少期からの頻繁な転校が、彼のアートでの感情表現に影響を与えたことが率直に語られました。
窪田望さんは、AI分野で特許を複数保持するほど精通した研究開発者であり、AI研究を進めるうちに「外れ値」に対する疑問や違和感が膨らむようになり、「AIの研究では、データをの大部分を構成する塊から逸脱した“外れ値”を除外します。しかし、データとしては除外してしまう一方で、本当に除外して良いのかという疑問がわきました。外れ値には、実は大切な要素が隠されているかもしれせん」と述べています。この鋭い観察力が、彼のアート作品「外れ値の咆哮」を探求する中心テーマになり、データとして簡単に除外されてしまう「外れ値」の価値を再評価し、そこに光を当て、幼少期の自らの体験と重ねながら、共感を呼び覚ます世界を模索、そこに価値を感じることができる世界の模索がアートを始めるきっかけとなったと語りました。
近年、AI技術が急速に進化し、多くのアーティストがさまざまな作品にAIの使用を試みていますが、技術者としての視点も持ち合わせた窪田望さんの考えは、特に興味深いものです。それは、「第三の分岐点を作る」という観点です。
新しい技術の導入によって、しばしば、社会は「使いこなせる人」と「そうでない人」に二極化する傾向があります。例えば、写真の登場でカメラを使いこなす人が現れた一方で、リアリズムから印象派という新しいアートの形が生まれました。AIも同様に、AIを使いこなしてアートを作る人と、AIを使わずにアートを創作する人に分かれることで、新たなアート形式が生まれるでしょう。しかし、窪田望さんは「私は、AI技術をただ使いこなすだけでなく、内部構造を理解していることによって、アート界における新たな“第三の分岐点”を作り出したい」と語っていました。この新しい視野を持った窪田望さんのアプローチは、アートの世界に新たな次元をもたらす可能性があり、その実現に向けた唯一無二の存在として、使命感とともにアートの世界に一歩踏み出してくれることに期待が寄せられています。
作品に秘められた思いとAIが生み出す新たなインスピレーション
窪田望さんの代表作の一つである、2023年に開催の個展「生まれては消える、消えては生まれる」においても、AIが重要な役割を果たしています。AIによってリアルタイムで生成される詩が多言語で朗読され、その秒数の時間に応じてさまざまなシャボン玉が生成されます。
完璧に計算されているはずにも関わらず、「景色の揺らぎ」が必ず生まれます。偶発的に作品を鑑賞した鑑賞者と生み出す泡々の軌跡は、二度と再現できない一期一会の空間を創出し、人々の心を魅了しました。開催期間中に何度も訪れて没入感に浸る人が多くいました。
私自身もこの作品を実際に体験しましたが、訪れた多くの人々に深い感動を与えていたと感じます。特に印象的だったことは、親の手を離れてこの世界観に没頭する子どもたちが多くいたことです。彼らの無垢な姿は、言葉を超えた芸術の力強い魅力を物語っていました。
さらに、窪田望さんのプロジェクトには常に多くの支援者がいることも特徴的です。準備から当日の案内、そして片付けに至るまで、時に200名を超えるサポートメンバーが集まることもあり、そのコミュニティのメンバーを「シャキメン」と呼ぶそうです。彼らは個展やイベントの際に不可欠な存在となっています。「私は、本当に幸運です。彼らの献身的なサポートがあるからこそ、私はアートを通じてより大きなことを成し遂げることができていると思っています。」と窪田望さんは嬉しそうに語り、心から感謝している様子が伝わってきました。支援者が増え続けていることもその証です。将来的には、もっと彼らのことも詳しくお話しを伺うことができればと思っています。
窪田望の創作プロセス
AI技術を駆使したアート制作の裏側
窪田望さんの作品は非常に独創的で、多岐にわたる素材を使用しています。制作プロセスは、常に新しい体験を求めることから始まります。
「移動は正義」というモットーのもと、国内外の様々な展示会やイベントに足を運び、そこで得たインスピレーションや、他の芸術家との対話から新たなアイディアを得ています。
アイデアを具体的な作品に落とし込む過程は、まず周囲のあらゆる物を素材として観察するところから始まります。その後、さまざまな素材を組み合わせてみて、何度も調整を重ねながら試行錯誤を繰り返します。展示会や美術品だけでなく、ホームセンターにも足を運び、多様な素材を探求して、「その素材をAIを駆使しながら融合させる段階は、特にワクワクするものです。制作プロセスは制作のプロセスは非常に動的で、展示が始まる直前まで変更と調整を続けることが多いですね。」と語ってくれました。
AI技術を中心に据え、Pythonというプログラミング言語を書くことから制作を行うとのことでした。これまで幾度となく触れてきたような身近にあるものに最新のテクノロジーが加わることで、全く新しい感覚や価値観を提供できればと試行錯誤を繰り返します。
最近では、誰かの部屋の片隅で不用品として扱われていたスマートフォン70台をSNSを通して集め、吊るしたインスタレーション作品「断片的な日常」において、テクノロジーとして、テクノロジーを活用する一方で、自然界の要素として、例えば、太陽や木、風といった自然の力を利用していました。
さらに、廃校となった学校の体育館を利用して巨大インスタレーション作品を作り、ドライアイスやプロジェクションマッピングの演出などを取り入れていました。ここでは、地元の方々が心を込めて作った芋煮を提供し、その場で生じる会話や笑い声、さらには壁や天井に大きく映し出される人の影までもが作品の一部となりました。観客が作品の中に入り込み、五感でアートを体験することで、過去と現在、未来を繋ぎ合わせるという新しい挑戦に挑みました。そして、その場に居合わせた人々の心が一つになるような見事な体験を提供しました。
AIが織りなす作品から生まれる新たな交流の形
窪田望さんの作品を体験すると、作品と観客との関係が密接に絡み合っていることを強く感じます。「私の作品は、観客との対話を重視しています。単に作品が一方的にメッセージを伝えるだけではなく、観る人がその空間の中でアートを創出する一部となり、自らの体験や解釈を通じて作品を完成させられるよう意識しています」と窪田望さんは語ります。
特に、AIとシャボン玉を掛け合わせた「生まれては消える、消えては生まれる」という作品では、シャボン玉がその場にいる人々の気流によって形を変え、観客の参加と反応によってアートが完成されるプロセスを象徴しています。このインタラクティブな要素は、観客が直接作品の一部となることを可能にし、それぞれの体験が作品に独自の意味をもたらすのです。
すぐに消えてしまう儚いシャボン玉。その一瞬の美しさが、それぞれの観客に異なる感情や記憶を呼び覚ます力を持っています。この瞬間的な交流によって、観る者に新たな意味を提供します。特に子どもたちの純粋で率直な反応は、作品の魅力を如実に示しています。彼らが展示から離れたくない様子は、作品が如何に心を捉えているかの証と言えるでしょう。
窪田望さんは、「観客の反応は非常に刺激的であり、私の創作活動に新たな方向性をもたらしてくれることも多々あります。作品を目にした時の表情や言葉から多くを学びます。特に、予想外の解釈や感情表現が次のアイデアの種になります」と述べていました。アートを通じたコミュニケーションが、彼の作品を生き生きとさせる源泉であることは明らかです。
窪田望さんのアートは、観客とのエンゲージメントを核としています。この対話が作品に深みと生命を吹き込む要素となっているのです。観客の体験をどれほど大切にしているかは、彼の創作への真摯な姿勢から伺えます。実際に展示会場にいる際は、来場者と積極的に交流をして、その場で感じたことをヒアリングするなど、その瞬間や空間で感じる生の声を大切にすることが、次の作品の魅力を上げる要素の一つになっているように感じました。
AIアーティスト窪田望が描く次なる挑戦と夢
10月に控えた次回の個展に向けて、窪田望さんは日々精力的に取り組んでいます。この展示では、AI技術を活用したインタラクティブな作品を中心に展開予定です。
「来場者が作品と直接対話し、その反応によって作品が変化するような仕組みを導入することで、新しいアートの体験を提供したい」と窪田望さんは語ります。
10月の個展では、観客自身が作品の一部となり、彼らの反応が即座に作品に反映されることで、より深い感動や驚きの魅力あふれる世界観に仕上がることが期待されます。
さらに、夢についても次のように語ってくれました。「作品制作としては、石や木材、鉄などこれまで必ずしもAIと組み合わされてこなかった地に足のついた素材とを領域横断的に掛け合わせていきたいと考えています」
「作品制作を通じて、誰もが社会で大切にされるべきだというメッセージを強く発信したい……それは、ただじっと耐えるのではなく、視点を変えることで実は必要とされる存在であることに気付けるかもしれない」と彼は付け加えました。
この考えは、窪田望さんの子ども時代の実体験や、AI研究から得られた感覚に基づいており、多くの人が希望を持って生きることができる社会を目指す願いが込められているように感じました。
「外れ値の咆哮」というテーマを深く掘り下げることで、見過ごされがちな人々や事象に光を当て、鑑賞者に単なる感情の揺り動かし以上のもの、社会的な外れ値への理解と共感を深めることを促しています。
窪田望さんの人生経験とそれを作品に昇華させる能力が、展示を通じて多くの訪問者に影響を与えることでしょう。作品は、鑑賞者一人ひとりに問いかけを行いながら、広い意味での包摂性と人間の多様性を探求する旅へと誘います。
窪田望さんの作品が、多くの方々にとっての希望の源となり、誰もが価値を感じる社会の構築に寄与することが期待できます。
編集後記:AIとアートの境界を超えて、窪田望の世界に魅了されて
今回のインタビューを通じて、窪田望さんが最新テクノロジーとアートをどのように融合させて追求しているか、その情熱やビジョンが明らかになりました。
彼の作品は、観客一人ひとりに深い印象を与え、それぞれの内面に新たな発見をもたらしています。AIという先進技術を駆使しながらも、人間の感情に訴えかけるアートを創出する窪田望さんの挑戦は、これからも多くの人々に感動を与え続けることでしょう。
個展やプロジェクトを重ねるごとに、彼のアートは新たな境地を開き、観客に未知の体験を提供し続けます。窪田望さんの作品に触れることで、私たちもまた、日常の枠を超えた感動を味わうことができるのです。彼の今後の活動から目が離せません。
最後に、インタビュー後の一コマも印象的でした。水の入ったグラスをデスクに反射させる光で無邪気に遊ぶ窪田望さんの目がキラキラと輝いていました。
This is 編集部としては、窪田望さんの今後の創作活動に引き続き注目し、彼が創り出す新しいアートの世界がどのように社会に受け入れられ、発展していくのかを見守りたいと思います。アートが持つ無限の可能性に、期待を寄せるとともに、窪田望さんのさらなる飛躍を心から応援しています。
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