アボリジナルアート民族絵画
ART

「アボリジナルアート」とは?その魅力を詳しく解説

アボリジナルアートは、オーストラリアの先住民アボリジニの人々により描かれたアートのことです。

英語では「Aboriginal Art」といい、正式名称はアボリジニアートではなく「アボリジナルアート」。

(「アボリジニ」には差別的な響きがある上、言語集団が分かれていた先住民の多様性への配慮から、近年のオーストラリアでは「アボリジニ」は呼称としてほとんど使われていません。)

アボリジナルの文化は現存する文化の中で最古のものだとも言われています。

そんな彼らの文化を語る上で欠かせないアート。

その独特な色彩や表現方法など、アボリジナルアートは他の文化に類を見るものはなく世界中のアートコレクターから大変人気があります。

日本ではまだそこまでメジャーではありませんが、きっと一度は見たことがある人も多いはず。今回はアボリジナルアートの不思議な魅力に迫っていきます。

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アボリジナルアートとは?

オーストラリア先住民、アボリジナルの歴史

ヨーロッパ人によって発見されるよりずっと前から、オーストラリア大陸で暮らしている先住民族アボリジナル。

その歴史は5万年以上前まで遡ります。

日々、狩猟や採集をしながら洞窟で暮らし一定の範囲内を移動する生活を送っていました。

アボリジナルの人々は「読む」「書く」文字を持っていなかったので、絵を描くことで重要な文化を後世に伝えました。

彼らの文化や哲学は2万年以上前に描かれた岩壁に見ることができます。

18世紀、植民地化運動の波がオーストラリア大陸にも押し寄せてきました。

イギリス人の探検家、ジェームス・クックが1770年、オーストラリアの東海岸を英国領であると主張し、その後1788年にSydney Coveで正式に植民地化。植民地化を進めるためアボリジナルの人々は迫害されました。

白人による殺害や、ヨーロッパから持ち込まれた病気によりアボリジナルの人口は90%以上減少。彼らの伝統的な文化や言語も大きく打撃を受けてしまいました。

現在では、オーストラリア政府内にアボリジナルのための政府を作るなど権利や文化の保護活動が精力的に行われています。

 

アボリジナルの思想「ドリーミング」

アボリジナルの人々は、大自然を崇拝し自然界には精霊が存在すると信じています。

精霊こそがすべてを創造したと考え、自然と一体化するように生きてきました。

「ドリーミング(Dreaming)」とは天地創造の神話にまつわるもので、アボリジナル社会における重要な宗教的概念となっています。

ここでの「ドリーム」は「夢」という意味ではなく時間的な感覚のようなもの。

とは言っても彼らは過去や未来という時間の概念は持っていません。

祖先たちの物語は、時間を超越した出来事なのです。

天地創造の神話も大昔のできごとではなく、現在そして未来へと続くと考えてられており、人々は今この瞬間もドリームタイムをたどり続けているのです

そして大地や生物など、自然界にあるものから太古の昔に生じた天地創世のドラマをたどる行為をドリーミングと呼んでいます。

しかしドリーミングには確実な定義がなく、部族によっても説明は違います。学術的にも確実な説明はまだなされておらず、とても奥深いものです。

アボリジナルアートの特徴・モチーフ

ドットペインティング

アボリジナルアートの手法で最も代表的な、ドットペインティング。

しかしドットペインティングは伝統的な手法の絵画であったわけではありません。

1971年にイギリス人の若手美術教師ジェフリー・バーデンの指導によって、アボリジナルの人々がアクリル絵の具などの現代的な素材を使うようになり、そこで初めてドットペインティングの手法が主流となりました。

 

作品の模様が意味するもの

一見抽象画のように見えますが、絵画の構成要素は全て自然とのつながりを表象しています。

それぞれの模様に重要な意味があります。

有名なアボリジナルアーティスト

clifford possum tjapaltjarri

アボリジナルアーティストの先駆者の代表者で、最も多くの作品が収集されているアーティストです。

1970年にイギリス人、ジェフリー・バードンが西部砂漠を訪れた時に開かれた絵画教室のリーダー的存在でした。

そこから頭角を現し、アボリジナルアートを世界に広める重要な役割を果たしました。

「Warlugulong」in 1977

この作品は、史上最も高い金額でオークションで売却された作品です。

その金額は$2400000。

当時、オーストラリア文化を語る上で重要な作品が海外に流出する可能性が危惧されていましたが、購入したのはオーストラリア国立美術館でした。

オークションにかけられる前まで、20年以上もある銀行のカフェテリアの壁に飾られていたそうです。

「Worm dreaming」

「Water Dreaming」

emily kame kngwarreye

晩年にアート製作を開始したemily kame kngwarreye。

8年間のキャリアの中で約1日に1作品のペースで、約3000 作品を残しました。

現代的な鮮やかな色使いが特徴ですが、その奥には彼女の過ごしてきた日々からなるスピリチュアルなメッセージが込められています。

「Earth’s creation」in 1994

今までで2番目に高い価値のついたアボリジナルアート作品です。

2017年にシドニーのオークションで$2100000で売却されました。

「Spring celebration」in 1991

ソース

「Big Yam」in 1996

 

 

 

rover (julama) thomas

本職は農家だったrover (julama) thomas。彼は50才を過ぎて初めて、絵を描き始めました。

現地のアーティストからインスピレーションを受け創作を続け、沢山の有名な作品を残しています。

「All that big rain coming from top side」in 1991

ソース

ドットの線は雨を表現しています。

「Bungullgi」in 1989

Albert Namatjira

ソース

アボリジナルのアーティストを語る上で外せない存在、Albert Namatjira。

伝統的な抽象的なデザインとシンボルから大きく離れ、オーストラリアの自然の風景を描きました。

オーストラリア先住民の現代作家としては、最も有名な作家です。

「Palm Valley」 in 1940s

「Alice Springs」

ソース

現在アートの世界でも
注目を集めるアボリジニアート

アボリジナルアートは、現在アートの世界でも注目を集めています。

ここからは、現代のアボリジナルアーティストとその活動について詳しくご紹介します。

キャニング牛追いルートプロジェクト

2007年に、総勢60名のアボリジニ・アーティストが旅をして、自らの故郷について歌い語り、絵を描く「キャニング牛追いルートプロジェクト」が行われました。

歩いた距離は1850キロメートル。

今の世代のアボリジニ自身たちが先祖たちの営みを検証しアートとして表現し、後世に残す機会になりました。

オーストラリア政府や団体によって、保護活動が進んでいます。

注目の若手アーティスト
Glenda McCulloch

彼女の絵の特徴は明るい色調。

優しい雰囲気のある彼女の絵は若者を中心に人気があり、アボリジナルアートの新しい魅力を引き出しました。

また彼女は「ドリーミング」から発想を得て絵を描いているわけではありません。

伝統的な思想からではなく、身近な自然の喜びからインスピレーションを得て絵を描いています。

アボリジナルアートはどこで買える?

artlandish online gallery

2001年に創業したArtlandish Gallery。日本を含む38ヶ国への配送が可能です。

数百人の先住民族のアーティストと協力して、オンラインとギャラリーの両方で作品を宣伝しています。

 

Mbantua Gallery

ダーウィンとアリススプリングスの2カ所に実店舗を構えるギャラリーのサイト。

カテゴリー分けも多く見やすいオンラインギャラリーです。世界中どこでも無料配送してくれます。

まとめ

アボリジナルアートは現存する中で最古の文化であるとも言われており、深い歴史を感じることのできるアートです。

ただ「アボリジナルアート」と一概に言っても部族や地域によって大きく違いがあり、全てを網羅することはできません。また、アボリジナルアートに宿る思想を、西欧のまなざしで一方的に見ることには限界があると論じられています。

しかし、作品を通じ自然や歴史への敬意を、その世界観を少しでも感じ取ることができたらいいですよね。

神秘的なアボリジナルアートの世界。

ぜひ本物の作品を鑑賞し、その力を感じてみてください。

 

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