ラッセンとは?マリンアートの作品価値や絵画商法について詳しく解説!
海とイルカの絵が印象的なラッセンの絵は、日本人なら多くの人が一度は目にしたことがあると思います。
ラッセンはバブル期の日本で大ブームを起こし、数多くの作品が世に出されました。
この記事では、画家・ラッセンと日本における商業的な成功について解説し、代表的な作品を紹介していきます。
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ラッセンとは?
マリンアート絵画の第一人者
クリスチャン・リース・ラッセンは、海やそこに生息する海洋生物をモチーフにしたマリンアートと呼ばれる作風で知られているアメリカの画家です。
ラッセンは幼少の頃にハワイに移り住み、海やイルカなどの自然と触れ合う生活を送る中でその感性を培いました。
ラッセンは専門的な美術教育は受けていませんが、マーク・マッカイやロバート・ネルソンなどのマリンアートからの影響を強く受けていると言われ、肌で感じた自然をきらびやかに描くのが大きな特徴です。
バブル期の日本でベストセラー画家に
親しみやすいタッチとモチーフが印象的なラッセンの作品は、自然を畏怖する価値観を持つ日本人の感性と共鳴し合い、これまで美術に関心がなかった中間層からも広く親しまれることに。
バブル期の日本で爆発的なブームを起こし、ポスターやカレンダー、ジグソーパズルなどラッセン作品をインテリアとして楽しむ人が続出。
ラッセンは一躍ベストセラー作家となりました。
カラフルでモチーフがわかりやすく、美術の専門知識がなくても楽しめる作品が多かったことや、テレビ番組などへ頻繁に出演して作品が人の目に触れる機会があったことも、多くの人に受け入れられた要因の一つでしょう。
しかし、日本の現代美術界からは通俗的な作風やマーケティングを「本流からは外れたもの」と評され、批判的な意見が少なくありませんでした。
自然保護活動に熱心なアーティスト
ラッセンは環境保護活動を行っているアーティストでもあります。
1990年に環境保護団体「シービジョン財団」を設立し、1997年のナホトカ号原油流出事故で寄付を行うなど、作品の収益の一部を使って各国の環境問題に取り組む活動を続けてきました。
地元ホノルル市はラッセンの活動を高く評価し、1996年から3月2日を「ラッセンの日」として制定。
1997年に主演として環境問題について呼びかけを行った映画「I am the Earth ~私は地球~」は、ユニセフの推薦映画に選ばれ、ニューヨークの国連本部で上映されました。
同年、国連の「オーシャンイヤー」に関してNGO組織『F.U.N』の親善大使にも選ばれており、ラッセンの環境保護活動は世界的に評価されているのです。
ラッセンとディズニーのコラボ
ラッセンはディズニーとコラボした作品も多数制作しています。
華やかで幻想的な作風はディズニー作品の世界観とよくマッチし、ポスターやジグソーパズルなどに多数商品化されました。
ディズニー作品とのコラボによって、一部のインテリアアートの愛好家に加えてディズニーファンの間でも作品が認知されたことは、ラッセンがより大衆的な人気を得る大きなきっかけとなったと言えます。
ラッセンの作品の評価
「美術投資」としての価値はある?
ラッセン作品の価格や買取相場は、一般的な美術品のそれとは異なる特徴があります。
日本において、ラッセンの作品は美術作品やインテリアとしてだけではなく、投資の対象としての価値があるとして注目されていました。
「この作品を買っておけば後からもっと高く売れる」といった、後に資産価値が上がることを示唆したセールストークで販売を行う業者が少なからずいたため、資産形成の一環としてラッセンの絵を買う人が増えていったのです。
しかし、投資としての価値は本来の純粋な芸術性を評価する基準とは外れていたため、美術界からは批判的な意見が広がりました。
「絵画商法」という批判も
ラッセンの作品は高額な値段で販売されていることがよくあります。
1000枚単位で印刷した大量生産品を相場より遙かに高い価格で強引に売りつけ多額のローンを組まされる、マルチ商法のような手法で結果的に損をしてしまうといった被害者が後を絶ちませんでした。
この手法は「絵画商法」と呼ばれ、美術界からは辛辣な批判の声が多かったようです。
ラッセンの代表作品10選
ルビーオブザサウスパシフィック
海中やそこに生息するイルカなどの海洋生物を描くイメージが強いラッセンですが、初期では必ずしも海洋生物をモチーフには使っておらず、日の出の海や浜辺などを描いたものも少なからずありました。
80年代に描かれた初期の作品として、抒情的な雰囲気が魅力的です。
ラッセンの絵でこれ以上赤い色を印象付けるようなは珍しいとされる貴重な作品。
シークレットパース
ラッセンが描くモチーフは、海洋生物以外に虎や女性なども存在します。
この作品は中央に虎を大きく描いた珍しい構図が印象的。
宇宙や地球の青い背景と虎の黄金の毛色というコントラストが美しく、神秘性を感じさせる作品として人気があります。
サクラファンタジー
親日家でもあるラッセンが桜をモチーフに取り入れた作品。
桜吹雪の中、月光に照らされた2頭のイルカがジャンプしてハートを描く姿は何とも幻想的です。
サクラのピンク色が夜空やイルカ、海のブルー色に美しく映える見ごたえのある作品として人気です。
イノセンス
楽しそうに泳ぐ二匹のイルカが表情豊かに描かれている作品で、ラッセンの自然に対する愛情をよく表しています。
「イノセンス」の題名どおり、無垢さや純粋さを感じさせる作品で、躍動感あふれるイルカの泳ぐ姿のみを表現したシンプルさが印象的です。
中期の作品の中でも代表的なものとして広く知られています。
ムーンライトセレニティ
月光に照らされた波が岩場に激しく打ち寄せる様子をリアリティあふれる表現力で描いた作品。
しぶきが上がる荒々しい波の奥には、夜空に浮かんだ月や灯台が静かにたたずんでおり、その対比が何とも幻想的な雰囲です。
波面の複雑な動きが緻密に描かれており、ラッセンの高い表現技巧が見られる作品と言えます。
アンバードーン
アンバードーンは琥珀色に染まった夜明けの海を描いており、やさしく浜辺に寄せては返す波が美しくいつまでも見飽きません。
ラッセンの初期作品「ルビーオブザサウスパシフィック」と構図がよく似ていますが、本作の方が波の状態がよりおだやかに描かれており、深い静けさを感じさせる作品です。
ブライトフューチャー
ラッセンといえばイルカをよく描くことで有名ですが、ブライトフューチャーはその中でも特に有名な作品です。
海面から空に向かって迷いなくジャンプしているイルカを中心に、イルカの体からはじかれるしぶきが水面に反射する光へとつながっていく構図が印象的。
題名のとおり明るい未来を想像させるような希望にあふれた作品です。
エンシャントミステリー
夜の海をゆったりと泳ぐクジラを幻想的に描いた作品。
きらびやかな作品が多い印象の強いラッセンですが、この絵は夜の静けさを感じさせる神秘性の高い雰囲気が魅力的です。
クジラの巨大な尾を描くことで、海という大自然の雄大さを印象付けています。
ヴァルア モアナ
一見写真かと思ってしまうほどリアルに描かれたイルカが印象的な作品です。
他の作品のほとんどが超現実主義的な表現で描かれていますが、この作品は写実主義的なアプローチが取られています。
まるで海の中でイルカと寄り添いながら泳いでいるかのような、リアリティに富んだ表現が高い人気を誇る理由と言えるでしょう。
ミスティックライト
深い青色で占められた画面中央に、月光を浴びながらジャンプするイルカが描かれた作品。
動きのない海面から跳ねるイルカをシルエットとして描くことで、夜の海の静寂さを強調し、落ち着いた空気感が広がります。
気持ちが落ち着くヒーリングアートとしても親しまれています。
マウイドーン
日の出をテーマにした作品の中で、特に人気が高いのがこの作品。
マウイ島の夜明けの様子を描いていますが、同じ構図の作品よりも高くうねる波を手前に配置することでこれから始まる躍動的な一日を示唆しているかのようです。
ロードオブザミレニアム
虎をモチーフとした作品の代表格ともされる作品。
堂々とした体躯をした2匹の虎と惑星の浮かぶ空とを対比させ、静かながら迫力満点の雰囲気を感じさせます。
全体に広がる青い世界の中に白と黄色の虎の体がくっきりと映えて、とても美しい仕上がりです。
サーフフォーライフ
ラッセン作品の中では珍しい多色使いの作品。
生命力あふれる南国の海辺を描いていますが、画面右側にはサーフボードを配置しているなどサーファーとしても活躍しているラッセンらしさがよく表れています。
中央にゆったりと架かったダブルレインボーが希望へとつながる橋のような存在感があり、明るく楽しい雰囲気を感じさせます。
もっとラッセン作品を知ることができる本
ラッセンとは何だったのか? ─消費とアートを越えた「先」
バブル期の日本で起こったラッセンのブームについて、美術学や社会学、都市論、精神分析など様々なフィールドの専門家の意見を通して原因を解明していく内容です。
ラッセンの出現と人気は日本美術の分断を引き起こした象徴的な出来事と捉え、ラッセン作品を通して日本人とアートとの関係性を解明し、現代美術の課題をあぶりだしていく意欲作。
クリスチャン・ラッセン版画作品集
ラッセンの作品332点を掲載した、完全版ともいえる作品集です。
壮大な海や自然をモチーフとしたラッセン作品の世界観を大きな画面で楽しむことができます。
ラッセン好きなら一冊は持っておきたい、ファン必携の一冊。
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THE ART OF LASSEN
1994年にハワイで出版された作品集。
作品の鑑賞としてだけでなく、ラッセンの生い立ちなど作品のバックグラウンドについての解説も楽しめる内容です。
80年代、90年代に制作されたラッセンの作品が中心で、現在ではなかなか目にすることができない貴重な作品も収められています。
まとめ
自然の美しさや壮大さ、神秘性を表現したラッセンの作品は、バブル期に多くの人に知られ親しまれるようになり、現在においてもモチーフの表現を変えながら人気を維持しています。
その一方で、伝統的な価値観を持つ現代美術界からは批判的な意見も少なくありませんでした。
ラッセンの作品をより深く理解することは、消費とアートの関係について考える大きなきっかけにも繋がりそうです。
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