NEW CREATOR,NEW INTERVIEW. vo.2 東佳苗(ニットデザイナー)
こんにちは!thisismedia編集部の久保です。
「NEW CREATOR,NEW INTERVIEW.」は、注目のクリエイターにスポットを当て、その人のクリエイションの根源や物語を新たな角度から聞き出す企画です。
今回インタビューさせて頂いたのは、ニットデザイナーの東佳苗さん。
ファッションブランド rurumu:®︎/縷縷夢兎®︎(るるむう)のデザイナーでありながら、舞台衣装、ミュージックビデオの空間デザイン、アイドル衣装などのデザインや映画監督などさまざまな表現活動をされています。
2021年AWと2022SSのコレクションや、今興味のあることについてのお話などをお聞きしました。
ぜひごゆっくりとお楽しみください。
talk.1
ファッションショーの可能性
ーまずは2021AWのコレクションについてお伺いできたら。
初めてショー形式で発表したのが、2021AWのコレクションです。このシーズンからPRをお願いして、さまざまなメディアの方にご案内を送って来て頂きました。ショーをやるブランドだと思われてなかったはずなので、満を持しての気持ちはありました。
ーどうしてファッションショーをしようと思ったのですか?
これまでは音楽や映画業界のほうが衣装やその他のことでも記事にしてくれることが多かったのですが、ファッション業界でもっと認知を広げていきたいとずっと思っていました。
また、コロナ禍というものあって何かしらアクションを起こさなくちゃ、と感じました。
ファッション業界を目指す子たちも、ファッションのエンタメ性みたいなものに飢えているような気がしていて。
衣装を作ることがエンタメと直結しているからなのか、最近衣装デザイナーになりたい人の話を聞くことが多くて、ファッションデザイナーになりたい人が減っているのかなと思ったんです。
あとは、ファッションショーを実際に見たことがない人も多い。
私自身も正直なところあまり興味がなかったんです。業界人向けなクローズドなもの、というイメージが強かった。私がそう思うということは、ファッションが好きな子たちが面白いものだと思っていない気がしたんです。
ー実際にファッションショーをしてみてどうでしたか?
「ショー自体を初めて見ました」とか「今まであまりショーを面白いと思っていなかったけれど感動した」と声をかけてくれる人がいました。
rurumu:の服には興味がない人が見てもエンタメとして面白さを感じてもらえるショーにしたかったので、演出や構成はかなり考えました。
今まで映画やMVの空間デザインや監督もやってきた経験から、ストーリー性を持たせて音楽や美術の効果で儀式に参加しているように錯覚させたい、という想いがありました。
ーランウェイを行き来するファッションショーの概念から創造性を拡げていき、佳苗さんは物語性の強いものにされたと感じます。ショーそのものについて心境の変化はありましたか?
表現活動のツールとして捉えるようになりました。
ショーをやる、という姿勢をファッション業界の人にも示すことでの反響はありました。それはもちろんいいことだと思います。
ですが、ショーをやるには莫大なお金がかかる。仕組み自体も変わっていく必要があると感じています。
業界やメディア、関係者以外のお客さんを入れてもいい、有観客でもっと人を入れてもいい、という形になったら、チケット制にしてもいいのではないかと考えています。
ーファッションショーのチケット制。面白いですね。
ライブやトークイベントや舞台には当たり前にチケット代があるけれど、ファッションショーにはないことがずっと違和感はありました。(ガールズコレクションなどを除いて)
すごくお金がかかるのに招待さえされたら全員が無料で見ることができるのが現状です。
また、限られた人しかキャパ的に入らないので、希少価値がある。
だからこそ、絶対にお金を払ってでもショーを見たい人はたくさんいるはずです。
ファッションが好きでもショーを直接見れる機会はまだ少ないので、お金を払ってみるもの、という認識が生まれてもいいのではとも思います。
それに、チケット制にすることで、ファッション業界やブランド側が、ショーをやりたいと思う人も増える気がします。
私はショーを続けていくのであれば、その可能性も視野に検討していきたいと思っています。
ーチケット制にすると、ひとつのエンタメとしてファッションショーが確立していく可能性も見えてきます。
私たちがファッションショーで表現を続けていくには、それ相応の仕組みが必要だと思っています。
その仕組みを、rurumu: 単体でもやってみたいですが、いくつかブランドを集めて、ファッションショーをフェスのような形でやってみたいです。
ショー自体の可能性はすごく感じたので、続けていけるように頑張りたいです。
talk.2
これまでと2021AWのコレクションについて
ー2021AWのテーマは「solitary witches(孤独な魔女たち)」です。どうして魔女がテーマになったんですか?
「魔女」というワードがずっと引っかかっていたんです。
特に「魔女狩り」は昔から今もあるもので、どういう理由で狩られていたのか調べました。そのうちに、バースコントロールできる存在の産婆さんや、精神病患者、同性愛者なども標的にされていたことが分かりました。
正義の裏返り、みたいなことがそもそも魔女狩りの始まりで、今もずっと似たようなことが行われている。
現代でも一部の国では未だに魔女狩りが行われています。
炎上や差別は、魔女狩りと似たようなことだと感じます。
ー魔女狩りとrurumu:には関係性があったんですか?
rurumu:の活動自体がニッチなもので、ファッション業界においても映画や音楽など、どこの業界においても、マスにヒットするものではないと私は思っています。
ブルーオーシャンとも言えるのですが、それもあって、全員が敵に感じて迫害されているような被害妄想の気持ちの時期も長らくありました。際(きわ)にいることはすごく感じていました。
rurumu:を取り巻く周りの人たち、お客さんも、マインド的に際にいる人も少なくないのかなと感じています。
この気持ちのもやもやをどうしたら昇華できるのかなっていうのを考えていたときに、ちょうど友達の友達が魔女で紹介されて。
ー現代の魔女。どんな話をしたんですか?
rurumu:がどんな経緯を経て、どんなブランドとして今に至って、今季魔女をテーマにしたいと思っているかを話したら「魔女から言わせてもらうと、rurumu:は今、魔女に自己参入(魔女になる)という段階にいる」と言われました。
ー具体的にどんな経緯を経てきたんですか?
2019SSに「fictional youth(架空の青春)」というタイトルでrurumu:は始まったんです。
私の中でひとつの青春が終わったことから名付けました。
今までの活動や関わってきた場所から一歩踏み出す、もしくは決別するような気持ちでした。
青春って、ある種恥ずかしいものみたいなところがあると思うんです。
rurumu:を始めるにあたって、今までの自分の精神性について恥ずかしくなることがあって。
今までの自分に対しての決別から「fictional youth」が生まれました。
2019AWは「Angel bless you.」で「天使に御加護を」というような意味です。
その時期は葛藤があって、守られないと精神が保てない気持ちになっていました。
そこから「天使に御保護を」というコレクションになりました。
2020SSは、「A mon seul désir(我が唯一の望みに)」です。
『貴婦人と一角獣』という絵があるんですけど、6枚綴りで15世紀に描かれたタペストリーで。
その最後のタペストリーが「A mon seul désir(我が唯一の望みに)」なんです。
かなり抽象的で諸説ありますが、「五感のあとに理解すること」だと言われています。
ひとつ引いた視点から物事を理解する、という絵だそうです。そこから着想したコレクションです。
その後の2020AWのテーマは「sacredness garden」。
sacrednessは、「神聖不可侵な」という意味です。
迫害されたのちに、守られたい、理解したい、でも自分の領域は死守しなくては、という気持ちになりました。
心の領域の庭みたいなものをテーマにしたコレクションです。
2020年は「共生」がテーマでした。
ATフィールドを張ったけれど、やっぱり共生したいっていう思いでした。
2021SSは「symbiosis」がタイトルで、生物学的に共生するという意味合いです。
ーテーマ決めは心情から生まれますか?それともその時取り巻く環境ですか?
ずっと心情ですね。
2020年から気持ちは少しずつよくなっていって、2021年の「solitary witches」に辿り着きます。
共生、他者への愛に向き合ってから、自分の場所を探したときに、自然と”自己参入”のような状態になった気がします。
孤高なまま誰にも気付かれない魂が世界中に点在しているけれど、共通する気持ちみたいなものがあって、それらは見えない連帯をしているはずだ、という確信がこのシーズンでありました。
私自身、現代魔女について調べ出してから、救われた部分がかなりあって、それがいいように進みました。
魔女の定義自体も、際にいる存在だと言われています。
際の精神性がある人は実はみんな魔女性があるんだなと思うと、自分一人の感情ではなくなった気がします。
社会とうまく迎合できない自分のコンプレックスが、魔女性というひとつの自己肯定によって、自分のことも認めて良いんだなと思うようになりました。
この肯定感がrurumu:を通して繋がっていけばいいなという気持ちがあります。
ー魔女ってキーワードを聞いたときに「呪い」と「祈り」が浮かぶんです。作り手において、作ることへの呪われる幸せがあると思います。佳苗さんにとって、それはなんだと思いますか?
愛かなと思いますね。
恋愛だけじゃなくて友達関係も含めて、他者との関係性。そこで生まれた感情がおよそ表現の起源になっています。
「地球を救いたい」ではなくて、「その人のいる地球を明るくしたい」みたいな感じですかね。
呪いの部分では、魔女を調べる以前から向き合っていました。
2021SS「symbiosis」の裏テーマは愛だったんですけど、ずっと愛をテーマにしている気がします。
そして共生というワードにたどり着きました。rurumu:では、ずっと同じことをテーマにしているのかもしれません。
talk.3
2022SSと影響を受けたもの
ー2021AW「solitary witches」で救われたことでリセットされ、2022SS「continued story」に向かったのでしょうか、それとも地続きだったのでしょうか?
地続きですね。でも生まれ直したような気持ちはひとつありました。
今までの鬱々としていた気持ちからは違う場所に行けたように思います。生まれ直してからの物語という感じはありますね。
ファッションショーをやったのはやっぱり大きかった気がします。
rurumu:として、第二章みたいな気持ちもありました。私自身、革命前夜と言っていたので。
ー佳苗さんは思考能力が長けていて、かつ言語をたくさん知っているように思います。その点から言うと、言葉ではなくファッションに向かった理由は?どうしてファッションで表現しなくてはいけなかったのでしょうか。
言葉を紡ぐことは好きですが、いつもギリギリの精神で推敲しているので、向き合いすぎると、自分に絶望しそうな気がするんです。
詩を書くことは昔から好きですが、やっぱり難しさはあります。
それでも、いつか向き合ってみたい気持ちはあります。
絵を描くことや映画を撮ること、絵本を書くこともそうなんですけど、昔から比喩のような、伝えたいものを直接伝えるよりも、何かフィルターを通して伝えることが好きなんです。
ーそれはどうしてでしょうか?
さまざまな方向から解釈ができるほうが、余地があるように感じたんです。
掘り下げていくと、パーソナルな気持ちがあるし根源は心の揺れ動きだと思うんですけど、それをいかにフィルターをかけて、幅広く共感できるものにするか、私の物語だ、私に向けられている、と思ってもらえるようにするか。
どうしてファッションだったかは、ある意味消去法かもしれないです。
絵や漫画や小説や音楽や映画など子供の頃から今まで色々挑戦、挫折してきて、服に辿り着いたという感じですかね。
装うことも好きだし、客観でも主観でも、楽しく表現出来るのがファッションだったんだと思います。
2022SSの話になるんですけど、絵本を見ていると表現を考えさせられました。
子供より実は大人のほうが絵本は読むべきだなととても感じました。
ー何の絵本を手に取ったんですか?
最初はエドワード・ゴーリーの『おぞましい二人』を読んで号泣しましたね。
説明が省かれた、行間みたいなものを勝手に考えて感極まるものってあると思うんですけど、絵本はその局地だと思いました。
絵とちょっとした文で考えさせる、かつ子供にもわかるものになっているというところが、ファッションにおいても参考になるなと感じました。
核心をついているけれどわかりやすく表現できるということは、考え抜かないとないとできないですよね。
いつか絵本を書いてみたいなと思わされました。
少量のアウトプットでどう見せるか、という表現に興味があります。
ーエドワード・ゴーリー以外に影響を受けた人はいますか?
映画監督だとアレハンドロ・ホドロフスキーですね。芸術だとヤン・シュヴァンクマイエル。
ホドロフスキーは特に中身はピュアなおじちゃんだと思います。
壮大な物語を作っていても悩んでいることはずっと同じというか。そこのピュアさみたいなものはずっと忘れないでいたいな、とホドロフスキーを見ていると思います。
それこそ2022SSのシーズンテーマにしたのは、ターシャ・テューダーとダニエルジョンストンでした。
全体的に影響を受けている人たちは、ピュアが極まった狂気性のある人たちです。
ターシャ・テューダーは2022SSの「continued story」のテーマにもなっています。
晩年に「今が一番幸せ」とずっと言っていてこんなふうに生きていきたいってすごく思いました。
ーターシャのどんなところに狂気性を感じましたか?
ターシャ・テューダーは、ガーデニストかつ絵本作家で、人形作家でもあります。
1900年代に、ずっと1800年代のような暮らしをしていました。例えば、電気やガスもなく、全て自給自足をする、家も身の回りのものも作る、といった暮らしです。
一族を巻き込んで自分のやりたいことや理想を全うするためには絶対に手を抜かない純粋性は狂気でもありますよね。
やりたいことをやり尽くして晩年を過ごせたらいいなという気持ちもあって、晩年の後悔みたいなものを考えながら、2022SSのコレクションを作りました。
ちょうど私自身、親が定年を迎える時期で、周りもそんな子が増えてきました。
自分がやれなかったことを、娘息子に想いを託すみたいな気持ちも愛だけど、後悔を持って晩年を過ごすことはとても切ないなと思います。
だから生涯かけて自分の人生を生きている人をmuseにしようと思ったんです。
ー最近観たもので影響を受けたものはありますか?
『インザハイツ』というミュージカル映画で、たまたま似通ったシーンが出てきました。
おばあちゃんが亡くなるシーンの走馬灯みたいなものを観たときに、自分の周りの色んなことが重なって見えてきて、面食らって放心状態になりました。
私の走馬灯には何が見えるかなぁとか。後悔だけはしたくないよなぁとか。
そして、ダニエルジョンストンのことを考えてました。
ーダニエル・ジョンストンはどんな影響をコレクションに与えましたか?
「continued story」というコレクションタイトルはダニエルのアルバムのタイトルから引用しました。
代表曲に『Story of an Artist』という歌があって、ショーの音楽にも使わせてもらったのですが、この曲は『芸術家が老いていくまでの話』≒ダニエルの人生の歌です。
一番活躍できた時期を精神病院にいた人なので、全盛期を失ったとも言えるかもしれません。
「なんでそんなに変なんだよ」「お前のやってることが好きじゃないよ」と言われる環境で、『太陽に感謝をし、花々の間を一人で通り抜けて行く。誰が彼を間違っていると言うのか』と自身のことを歌っていて。
悲しみや怒りは絶えずとも、世界には喜びや愛が満ちているんだと伝わってきて、私には人生賛歌にも聴こえました。
ー2022SSのショーはどういった流れですか?
初めに出てくるおばあちゃんは、旦那さんに先立たれたという設定でした。
『しろいうさぎとくろいうさぎ』という絵本を読みながら旦那さんへの思いを馳せているような。
このコレクションは、おばあちゃんの若い頃の走馬灯なのか、理想を描いた寝ぼけた妄想なのか、どっちとは言っていません。
「親から子へ、先駆者から後継者へ、文化の精神性は継承されて行って欲しい」という願いから、ショーの最後はおばあちゃんと同じ服を着た孫という設定です。
モデルさんが庭に並ぶとき、おばあちゃんはいない。
おばあちゃんがそもそもいない世界線なのか、亡くなった後なのか。
コレクションはそんなイメージを具体化しました。
ー2021AWと雰囲気が大きく変わったように感じます。
そうですね。魔女のときから気持ちはだいぶ変わったんですけど、これも心情の流れの赴くままにこうなりました。
あとはぬいぐるみをテーマにしようとずっと思っていたので、それもテーマの中にありました。
ー元々ぬいぐるみが好きだったんですか?
子供のころよりは大人になってからの方が買っていて、新品よりもアンティークになった子を迎えてます。
それもなんでか自分でもわかっていないんですけど、保護ぬいぐるみというか…
誰かの物語を引き継ぐ感覚があるというか。
継承していくっていうのはいいなと思っています。
rurumu:®も、そういう服になれたらいいなという思いもありますが、とにかくぬいぐるみに愛着があって。
形があるものを集めると魂が宿るから良くないと言われますが、むしろ私は魂があってくれていいと思っています。
自分がいないときに喋ってたら面白いなと、なんだか仕事仲間のような気持ちもあって。
それで、いつかテーマにしたいと思っていました。
ぬいぐるみが必要な大人とは何なんだろうと思って、ぬいぐるみについていろいろ調べていました。
その先で、少女≒おばあちゃん、というところに辿り着いて。そこでターシャとも繋がりました。
ーおばあちゃんには少女性があるということでしょうか?
そうですね。
絶版で30年ほど前の『少女民俗学』という本に出会いました。
その中で、”少女とおばあちゃんは性を所有していない、無月経の存在として同一にカテゴライズをされる、神聖な存在としての少女=おばあちゃん”というものがありました。
私自身「おばあちゃんっぽい」と言われることがあって、ターシャとか老夫婦の作品とかを調べていたら、たしかに気持ちはそうなんだろうなと思いました。
ーどうして佳苗さんもそう思うんですか?
モラトリアム的な未成熟な思考はずっとあって、一生大人、つまり女性にはなりきれないんですよね。
母親になったとしても、いわゆる世間が抱く“母親像”ような成熟された状態を目指すことは生き辛いので、自分や他人の未成熟も許容とか諦念の気持ちで向き合う方が生きやすくて、それで”少女でもありおばあちゃんでもある”というのが心にはしっくりくるのかもしれないです。
talk.4
これからの話
いろいろ調べているうちに、ぬいぐるみに魂が宿ることは分かったのですが、そのタイミングが物として扱っているときではなく、助けて欲しいと願ったときに宿るということが分かりました。タルパって知ってますか?
ータルパ?
チベットの密教の秘技が由来で、創り出せるイマジナリーフレンドのような形態を表すと言われています。
タルパとは、自覚的に架空の人格を作り出して会話をオート化させることなのですが、それを実践している人は世界中にいて、精神病の治療なんかにも使われているそうです。
自分とは全く違う人格かつ対等な立場で物を言える存在、がタルパなんですけど、それをぬいぐるみに宿してもいい、心の中にあってもいい、というものです。
よく小説家が「キャラ設定を作ったら勝手に喋りだしました」というのとも近いのかな。
私はぬいぐるみとして接するというよりも、別人格として、ひとつの魂として接しているんだろうなと思いました。
ーどうしてここまで調べるんですか?
コンプレックスからでしょうね。
ぬいぐるみをいっぱい集めていて、まずいんじゃないかと思ったんです。
30歳も超えて、家や仕事場にぬいぐるみがいっぱいあるのはどうなんだろうという気持ちもあって。
ですが同時に、思考を紐解いて言語化できれば、他人も理解しやすくなるかなと思う気持ちもありました。
“様子がおかしい可愛さ”とか”オカルト”みたいな”際にいるもの”は、先に拡がる文化の為にも源流を言語化することは必要だと感じます。
意味をつけることが正義というわけじゃないけど、ニッチでマイナーなものをやっているからには解説書はいつでも見せれるように用意しておくべきだなと思っています。
ー言語化することはとても大事なことだと思います。話は変わりますが、今気になっていることは?
今は、次のシーズンについて考えたときに、お化けについて調べようと思いました。
タルパも類魂なので、ぬいぐるみもそうですけど、魂が宿っていて形があるかないか。お化けってなんなんだろうなと思うところがあって。
エドワード・ゴーリーの絵本『不幸な子供』にも悪魔が出てきます。
例えば「悪魔」と定義されているものは、そういう行いを「悪魔」自身で心掛けているのではないかとそれを読んで感じました。
絵本の全てのシーンに悪魔がいるんですけど、ずっと女の子のそばにこっそりいるんです。それを読んでいて、役割を演じているのかなと思いました。
霊魂って何なんだろうなと今思っていて、これから調べるところです。
きっと、次のコレクションのベースにはお化けや輪廻の話があります。
ー最後の質問は、さまざまなクリエイターの人に同じ質問をしています。クリエイターとしてどんな能力を奪われたら困りますか?
それこそ、「執着心」かもしれません。
しつこさみたいなものが、私の全部につながっている気がするので。
執着心が無くなったらクリエイションができなくなる気がしますね。
ーありがとうございました!
インタビュー、みなさんはいかがでしたか?
気になるクリエイターについてより知ることができたら何よりです。次回もお楽しみに。
今回のクリエイター
東佳苗 higashi kanae
Profile
1989年福岡県産まれ。rurumu:®︎/縷縷夢兎(るるむう)デザイナー。手作業による一点物のニット製作・販売を行いつつ、2019S/Sよりrurumu:を本格始動。多様なアーティストやアイドルの衣装デザインをはじめ、アートディレクション、空間演出、スタイリスト、キャスティング、MV監督、オーディション審査員等、さまざまな活動をしています。短編映画「Heavy Shabby Girl」(2015)「THE END OF ANTHEM」や「my doll filter」、オムニバス映画「21世紀の女の子」の映画監督も務める。
Twitter:@rurumu_official
Instagram: @rurumu.official
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