フェルメールとは?画家の生涯と「真珠の耳飾りの少女」など代表作について分かりやすく解説!
17世紀を代表する画家の一人、ヨハネス・フェルメール。
「真珠の耳飾りの少女」や「牛乳を注ぐ女」などの作品が有名なフェルメールは、日本でも非常に高い知名度を誇ります。
しかし、その知名度に反してフェルメールの生涯はそれほど多く知られていません。
今回はフェルメールが描いてきた代表的な作品を通して、その魅力に迫ります。
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ヨハネス・フェルメールとは?
「オランダ黄金時代」の画家
フェルメールは写実的な作風で、光の表現に長けていた画家でした。
彼が描く光の粒子の美しさから、当時「光の魔術師」という異名がつけられたほど。
17世紀はオランダ人画家が多く台頭した時代でした。
貿易によって裕福になった商人や中産階級が画家を援助し、優秀なオランダ人画家が多く現れ「オランダ黄金時代」と呼ばれるほど美術が盛り上がりました。
オランダ黄金時代の画家にはフェルメールのほかに、レンブラントなど後世に名を遺す画家が何人も存在します。
彼らは、動的でダイナミックな風景画、風俗画などの分野を発展させ、アート界にオランダ独自の風を吹き込むこととなりました。
フェルメールの人生
オランダの港町・デルフトで生まれたフェルメール。
生前も有名な画家であったにも関わらず、その生涯の多くは謎に包まれています。
21歳ごろに画家工芸家のギルドである「聖ルカ」に加入し、プロの画家としてのキャリアがスタートします。
25歳ごろに、醸造業を営む裕福なピーテル・ファン・ライフェンから援助を受けるようになり、そのおかげで集中して絵画に取り組めるようになりました。
しかし、1672年から始まった第3次英蘭戦争によりオランダは不況に陥いります。
絵画が売れない時代になり、その上子供が11人いるフェルメールは生活に苦労するようになりました。
そして、戦乱の波にもまれながらも17世紀を生きたフェルメールは43歳で生涯を終えます。
20年のキャリアでフェルメールが描き上げた作品数は、わずか30数点と非常に少ないものでした。
「忘れられた画家」の時代
現在では抜群の知名度を持つフェルメールですが、世の中の記憶から消えた「忘れられた画家」の時代が存在します。
美術組合の理事になるなど、17世紀にはとても人気で高い地位を得ていたフェルメールですが、18世紀に入るとフェルメール作品の存在感は影を潜めます。
その理由は2つありました。
1つ目は、フェルメールは作品の数がとても少なく、その多くが個人コレクションだったこと。
点数が少ないため市場に出回ることが少なく、知名度もだんだんと低下していったのです。
2つ目は、18世紀はロココ美術と呼ばれる華やかなアートが盛んだったこと。
豪勢さを重視したロココ美術の時代では、写実主義のフェルメールの絵画は評価されにくいという背景がありました。
フェルメールの代表作品を解説
牛乳を注ぐ女(1658年)
フェルメールの残した中でも有名な作品の一つが「牛乳を注ぐ女」。
描かれているのは、ミルクメイドと呼ばれる女性の使用人が牛乳を注いでる日常のシーン。
水仕事で赤く荒れた手で瓶を持ち、物憂げな表情で牛乳を注いでいるのに、どこか優雅さを感じさせる作品です。
その理由は、フェルメールの色使いにあると言われています。
補色の関係にあるエプロンとテーブルの青色と上着の黄色がコントラストを際立たせ、牛乳瓶の赤色と袖の緑色が女性に華やかさを演出。
更に、差し込む光に反射した白い肌と白色の壁が、女性の存在感を鮮明に浮かび上がらせています。
デルフトの眺望(1661年)
貿易で栄えたフェルメールの生まれ故郷・デルフトを描いた作品です。
初夏の早朝、時刻は朝の7時。朝日に照らされながらこれから貿易港の一日が始まる、そんな一瞬を描いています。
一見風景を忠実に描いたように見えますが、建物の大きさや水面の反射などを変え、全体として引き締まるよう細かな調整がなされています。
真珠の耳飾りの少女(1665年)
フェルメールの作品の中で最も有名な「真珠の耳飾りの少女」。絵画に詳しくなくても誰もが知っている作品ですよね。
描かれているのは、真っ暗な背景の中に佇む謎めいた表情をした少女。
光の表現を意識したフェルメールの作品の中では珍しい、黒い背景も特徴的な作品です。
一度見たら忘れることができないこの絵画は、レオナルド・ダヴィンチの「モナリザ」になぞらえ、「北方のモナリザ」とも呼ばれます。
絵画芸術(1666年)
月桂樹の冠を被りトランペットを持った女性と、女性を描く長髪の男性が描かれている一枚。
長髪の男性はフェルメール自身だともいわれ、フェルメール自身非常に気に入っていたとされている作品です。
終生まで自身のアトリエに常に置いていたというほどでした。
レースを編む女(1669-70年)
穏やかな表情を浮かべた女性が、編み物に集中している姿を描いたのが「レースを編む女」。
裁縫をする女性は当時ありふれた題材ではありましたが、フェルメールはその一瞬にフォーカスして描いています。
女性の低い目線や全体の光の加減に工夫があり、見てる人の目線も手元に吸い込まれるような作品です。
フェルメールの作品の特徴
美しい青「フェルメール・ブルー」
フェルメールの特徴の一つとして、当時としては非常に高価だった青色の顔料をふんだんに使用したというものがあります。
中でもウルトラマリンという特に高価だった青色顔料を好んで使用し、その深みのある青の表現は「フェルメール・ブルー」と呼ばれました。
ウルトラマリンはラピスラズリという希少な鉱石からとられ、当時金よりも高かったとされます。
叔母が裕福だったために使うことができたとされており、他の画家にはないフェルメールの特権でした。
また、青色と相性のいい黄色との組み合わせもフェルメール作品の全体でみられます。
人と背景の描写
次に、フェルメールの構成の特徴です。
人物画では、一般の女性を描き、複数人ではなく1人だけを描くという形をとっていて、当時としては珍しいことでした。
また、高価なウルトラマリンを聖母ではなく一般の女性にたっぷり使うというのもフェルメールの特別なセンス。
背景は書き込みすぎないのがフェルメール。
注釈をそぎ落とし最小限の必要なことのみにする、引き算の美学を持っていました。
現実的でありながらも質素にならず、エレガンスな印象を受けるのはフェルメールの卓越した技術と計算の賜物です。
また、そぎ落とすことによって生まれた空白は、作品全体にミステリアスな印象を与えます。
フェルメールの絵がまだ解決してないミステリー小説のように心を掴んで離さないのは、その空白のおかげかもしれません。
フェルメールの作品が見れる美術館
マウリッツハイス美術館
オランダ南ホラント州デン・ハーグにある「マウリッツハイス美術館」。
「真珠の耳飾りの少女」や、故郷を描いた「デルフトの眺望」などが展示されており、フェルメールの代表作を見るなら一度は訪れたい美術館です。
他にもレンブラントや、ヤン・ステーンなど同世代に活躍した画家の作品も飾られており、オランダ黄金時代のオールスター作品を楽しめます。
開館時間
月曜日 13 am – 6 pm
火曜日~日曜日 10 am – 6 pm
木曜日 10 am – 8 pm入館料
大人 €17.50 子供(18歳以下) 無料
アムステルダム国立美術館
次に紹介するのはアムステルダム国立美術館。
オランダの首都アムステルダムにあるこの美術館では「牛乳を注ぐ女」「手紙を読む青衣の女」「小路」「恋文」の4点のフェルメール作品が展示されています。
また、同時期のレンブラントの名作「夜警」も所蔵されています。
ここではフェルメールの作品のみならず、美しい建物の外観や庭園を見て楽しむことができます。
開館時間
毎日 9 am – 5 pm入館料
大人 €20 子供(18歳以下) 無料
フェルメール作品をもっと楽しむ
映画「真珠の耳飾りの少女」
2003年にイギリスとルクセンブルク合作で映画化された「真珠の耳飾りの少女」。
主人公はスカーレット・ヨハンソン演じる、フェルメールの奉公人・グリート。
彼女の優れた芸術センスに感銘を受けたフェルメールが、自らの作品に巻き込んでいくという物語です。
この作品の特筆すべきは、映画全体をフェルメールの芸術的表現に近づけている点。
視覚的に非常にこだわって作られたこの作品は、見る人をフェルメールの絵画の世界に引き込みます。
フェルメール原寸美術館 100% VERMEER!
様々な倍率でフェルメールの全作品を収録した一冊。
フェルメールの絵画を原寸大・ズームで楽しむことが可能です。特にズームで見るフェルメールの作品は圧巻です。
絵の具のリアルなひび割れ具合、細部の筆遣いを感じることができ、まるで「本物」が目の前に存在しているような錯覚を受けます。
説明も作品ごとに丁寧にされていて、この本一冊でフェルメールの作品を堪能できます。
まとめ
今回はフェルメールの人生や作品を詳しく解説しました。
現代ではとても有名なフェルメールですが、実は人生も作品の評価も実は不安定なものだったことが判ります。
そんな紆余曲折があったという背景を知ることも、フェルメール作品を楽しむスパイスになりますよね。
日本にいてもフェルメール作品を生で見るチャンスは大いにあるので、今後の作品来日に期待しましょう。
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