ドイツドクメンタ現代アート芸術祭
ART

「ドクメンタ15」2022年6月18日からドイツ・カッセルで開催!

5年に一度、ドイツ・カッセルで開催される世界最高峰の国際美術展「ドクメンタ(documenta)」。

世界のアートシーンに多大な影響力を持つこの国際美術展。第15回目となる「ドクメンタ15」が、2022年6月18日から9月25日まで開催されます。

 

アーティスティック・ディレクターを務めるのは、インドネシアのアーティストコレクティブ、「ルアンルパ(ruangrupa)」。

ヨーロッパの美術展で、アジアからディレクターを招聘するのは初めての試みになります。

 

「ドクメンタ」とはどんなイベントなのか、その歴史と「ドクメンタ15」の見どころについて解説していきます。

 

あなたの部屋に合うアートは?
「アート診断」

Q1.希望の価格帯は?

Q2.気になるジャンル・モチーフは?

国内最大のアートギャラリーで
あなたにおすすめの作品が
23件見つかりました!
診断をやり直す
国内最大のアートギャラリーで
あなたにおすすめの作品が
30件見つかりました!
診断をやり直す
国内最大のアートギャラリーで
あなたにおすすめの作品が
34件見つかりました!
診断をやり直す
国内最大のアートギャラリーで
あなたにおすすめの作品が
55件見つかりました!
診断をやり直す

「ドクメンタ」とは?

アーティスト、キュレーターなど美術関係者たちの多くが、世界でもっとも重要な展覧会として評価している「ドクメンタ」。イタリアで3年に一度開催される「ヴェネチア・ビエンナーレ」と並び、世界の主要な展覧会の一つです。

1955年に初めて開催され、5年に一度、ドイツの中央部に位置する都市・カッセルで開催されています。

 

ドクメンタでは、アーティスティック・ディレクターが決めた一つのテーマを元に、世界中から人気アーティストが集まり、カッセルの街中で作品が展示されます。

他の国際展に比べてマーケット的な要素が無いこともあり、学術的な場として評価されています。

 

ドイツ・カッセルで5年に一度開催

ドクメンタの開催地カッセルは有名な観光地でもないため、「なぜ5年に一度の芸術祭をここで開くのか?」と、不思議に思える場所でもあります。

その理由は、カッセル出身のキュレーターのアーノルド・ボーデ(Arnold Bode )によって、1955年に第1回目が開催されたことが所以となっています。

会期中は、人口20万人の小都市・カッセルに80万人以上もの観客が集まります。

 

美術展の開催は、基本的に税金で賄われており、2022年の開催には4,200万ユーロ(約60億円)と、歴代のドクメンタの中で最高額の予算が組まれました。

 

ヴェネツィア・ビエンナーレに金獅子賞があるように、ドクメンタからはアーティストに「アーノルド・ボーデ賞」を授与しています。

カッセル市から授与され、賞金は1万ユーロ。

ドクメンタの開催期間中に授与され、過去にはドイツ出身のコンセプチュアル・アーティストであるハンス・ハーケ(Hans Haacke)、大地の芸術祭などにも参加していたナイジェリア出身のアーティストのオル・オギュイベ(Olu Oguibe)、ゲルハルト・リヒター(Gerhard Richter)らが受賞しています。

 

ドクメンタが重要視される理由

ドクメンタは1955年の初開催以降、当時の前衛的な美術運動を取り入れ、それ以降もアート業界で新しい試みを次々と実践し、国際的な知名度を高めてきました。

 

ドクメンタを率いるディレクターたちは毎回、実験的なキュレーションで、型破りな展示構成に挑戦します。

ここ10年間ではグローバルな視点に立ち、ヨーロッパ以外の地域に目を向けることを任務の一つとして、アーティストを選定しています。

1997年に開催され、キャサリン・デイヴィッド(Catherine David)が指揮を取った「ドクメンタX」では、当時はまだ一般的ではなかったデジタルアートプロジェクトをウェブサイト上に公開しました。

 

2002年の「ドクメンタ11」では、ヨーロッパ出身以外から初のアーティスティック・ディレクターとして任命されたナイジェリア出身のオクウィ・エンヴェゾー(Okwui Enwezor )が非欧米系のアーティストを多数選定し、グローバルな視点への転換を促しました。その精神は今も受け継がれています。

2017年のアダム・シムチク(Adam Szymczyk)による「ドクメンタ14」では、先住民族のアートに焦点を当てることに成功しました。

 

ドクメンタは他の国際ビエンナーレを新しい方向へ導くだけでなく、これまで知られていなかった作家にスポットを当てる役目を果たしており、作家たちが国際的な知名度を上げるチャンスの場として知られています。

 

ドクメンタの歴史

1955年に開催された第1回ドクメンタは、第二次世界大戦の終戦からわずか10年後に開催されました。

当時の前衛芸術は、ナチス党によって政治的に後進的でドイツ社会に害をなすものとして、退廃芸術と位置付けられていました。

そのためキュレーターのアーノルド・ボーデは、ドイツの芸術文化復興の一助となるべく、現代美術を前進させる試みとして展覧会の開催を目指します。

初回のドクメンタでは、アンリ・マティス、パブロ・ピカソ、エルンスト・ルートヴィヒ・キルヒナーなどの168人のアーティストが参加し、一時はドイツで軽蔑されていた現代美術の注目度を高めました。

 

動員数は初回が100日間で13万人、1959年の「ドクメンタ2」では339人のアーティストと1770点の作品が展示され、さらに規模は大きくなりました。それ以来規模は年々拡大し、観客動員数も増加しています。

 

ドクメンタをめぐる論争

ナチス党の支配下以降、現在まで、その展示に隠された政治性について多くの研究が行われてきました。

最も衝撃的だったのは、アーノルド・ボーデの相談役を務めた美術史家のヴェルナー・ハフトマン(Werner Haftmann)が、ナチスの軍事組織SAのメンバーであったというニュースです。

2021年にベルリンのドイツ歴史博物館で開催されたドクメンタの歴史に関する展覧会では、他の初期顧問もナチス党との関係を持っていたことが明らかにされました。

 

またドイツの地元メディアは、イスラエル出身のアーティストが含まれていないことも問題視してきました。

ナチス党によるユダヤ人迫害の歴史を持つ故に、国内外からの激しいバッシングの末、アーティストとドクメンタ15の主催者は作品を会期中に黒い幕で覆い隠しました。

 

「ドクメンタ15」

ドクメンタ2022

2022年に開催される「ドクメンタ15」では、カッセル最大の美術館「フリデリチアヌム美術館(Fridericianum)」をはじめ、32の会場で作品が公開されています。

 

2022年は、パンデミックによってヴェネツィア・ビエンナーレが1年延期されたため、10年に一度、ヴェネツィア・ビエンナーレとドクメンタが同時に開催される奇跡的な年となりました。

 

アーティストコレクティブ「ルアンルパ」によるキュレーション

これまでのドクメンタでは、選考委員会によって選ばれた一人の人物がアーティスティック・ディレクターが指揮を取り、キュレーター選出。展覧会の運営をサポートするチームを構成してきました。

誰がアーティスティック・ディレクターを務めるか、に注目されがちですが、キュレーターも憧れのポストであり、その座を射止めることは美術業界でのキャリアアップに繋がります。

2014年の調査によると、アーティスティック・ディレクターは年間10万ユーロ(日本円で約1,300万円)程度の報酬を受け取っているそうです。

 

長い間、ドクメンタはヨーロッパの白人男性がアーティスティック・ディレクターに選ばれていましたが、1997年にカトリーヌ・デイヴィッド(Catherine David)が女性として初めて統括をし、当時画期的な試みとして評価されました。

2002年には、アフリカ出身のオクウィ・エンヴェゾーが、ドクメンタ史上初の黒人ディレクターとして抜擢されました。

 

2022年にアーティスティック・ディレクターを務めるのは、インドネシアを拠点にするルアンルパ。アーティストコレクティブとしても、アジア出身者としても史上初の快挙です。

ルアンルパは、表現に対する厳しい制限が行われた、スハルト独裁政権末期の1990年代半ばに、ジャカルタやジョグジャカルタの美大生が、友人や学生ネットワークを基に2000年に結成したアーティスト集団です。

現代アートの根本的な概念を広げたいという考えから、「アートをつくらずに、友達を作ろう」というスローガンを掲げ、地域社会との関係を持ったプロジェクトを数多く手がけています。

 

ルアンルパによる今年のドクメンタのコンセプトは、「ルンブン」。

ルンブンは、インドネシア語で共同体が共有する米を貯蔵したり、仲間や困窮者の緊急支援のために使用する共同倉庫のことを表します。

この言葉には、コミュニティにある知識や能力、資源などを共有しようという意向が集約されています。

 

ルアンルパのメンバー2名は2020年よりカッセルに拠点を移し、地域社会との関係性を構築するため、2020年7月からカッセル市内中心部に「ルルハウス(ruruHaus)」をオープンさせました。

コミュニティスペースとして地元との交流を図りながら、経済と環境双方において、持続可能性を持ったエコシステムの構築を目指し、ドクメンタ15の開催に向けて取り組んでいきました。

 

ドクメンタ15の参加アーティスト

アーティストの選出は、アーティスティック・ディレクターの裁量に任されています。

ドクメンタが他のビエンナーレと大きく異なる点は、ヨーロッパでは比較的知名度の低いアーティストが選出されることです。

選ばれたアーティストは作品制作のために2年の期間を与えられます。

 

2022年の参加アーティストは、日本からはシネマキャラバンと栗林隆。他の国と地域からは、リチャード・ベル(Richard Bell)、タリング・パディ(Taring Padi)、ワカリウッド(Wakaliwood)、ブラック・クォンタム・フューチャリズム(Black Quantum Futurism)、チムレンガ (Chimurenga)、ジュマナ・エミール・アブード(Jumana Emil Abboud)などが参加しています。

 

最新のアートシーンを見に、カッセルを訪れてみてはいかがでしょうか。

 

ドクメンタ15(documenta 15)

会期:2022年6月18日~9月25日

会場:フリデリチアヌム美術館、その他カッセル市内

公式HP:https://documenta-fifteen.de/en/

 

 

関連記事

ゴッホの新たな自画像がX線検査で見つかる、スコットランド国立美術館蔵「農婦の頭部」

フィンセント・ファン・ゴッホ(Vincent van Gogh、1853~1890)の絵画の一つから、新たなゴッホの自画像が見つかったことが明らかになりました。 作品を所蔵するスコットランド国立美術館(National Galle

最も高額なNFTアート作品は?2021年のトップ10作品を発表

アート以上で大きな盛り上がりを見せるNFTアート。 NFTアートとは、無限に複製可能なデジタルアートをNFT(非代替性トークン)などに紐付けることで、唯一無二の価値を生みだせるデジタルアート作品のことです。 2021年初頭から取

前澤友作のバスキア作品が競売へ 落札価格は推定で約80億円

世界3大オークションハウスのフィリップス(Phillips)は、ZOZO創業者でアートコレクターとしても知られる前澤友作氏が所有するバスキア作品「Untitled」(1982年)をオークションに出品すると発表しました。  

狩野派とは?狩野派の歴史、永徳・探幽など有名絵師と代表作を詳しく解説

狩野派は、幕府の御用絵師として襖や障壁画などを制作した絵師集団です。 室町〜江戸時代までの約400年にわたり画壇の中心に君臨しました。 画家としては、狩野派の創始者である正信(まさのぶ)、桃山時代の天才画家・永徳(えいとく)、画

黒板アートとは?簡単に描くコツや傑作アートを紹介!

学生時代、毎日のように向かい合った黒板。 先生にあてられて苦手な数式を書かされたり、落書きしたり、いろいろな思い出が浮かぶのではないでしょうか。黒板はどの教室にも必ずある、一番身近な存在でした。 その黒板をキャンパスに見

TOP