北欧デザインとは?日本人に人気な理由、有名ブランド・デザイナーを詳しく解説
家具や生活雑貨を中心に、シンプルで温かみのあるデザインが人気の北欧デザイン。
北欧の自然や文化から生み出されたデザインは、年齢を問わず幅広い年代に支持されています。
IKEAをはじめとする北欧家具、マリメッコ、イッタラなどの北欧雑貨が日本でも人気ですが、北欧デザインのルーツや歴史、デザイナーについては詳しく知らないという方も多いのではないでしょうか?
今回は、北欧デザインの歴史と特徴、有名ブランドとデザイナーについて詳しくご紹介します。
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「北欧デザイン」とは?
フィンランドおよびスカンジナビア諸国におけるデザインの総称
北欧デザインとは、スウェーデン・デンマーク・ノルウェーの3か国からなるスカンジナビア諸国、およびフィンランドで生まれたデザインの総称です。
北欧風のデザインや家具を日常的に目にするようになった昨今、その明確な定義はありませんが、北欧の自然環境や、そこに住む人々の生活から生まれたデザインを指す言葉として使われるのが一般的です。
北欧の自然環境から生まれたデザイン
緯度の高い所に位置しているため、日照時間が短い北欧諸国。
冬至の時期はなんと日照時間が6時間程度の地域も。雲が厚く、一日中どんよりした天気の日も珍しくありません。
そのような厳しい環境に暮らす北欧の人々は、必然と室内で過ごす時間が多くなります。
そのため、太陽を思わせるような暖かい色味や、居心地の良さを追求したデザインが数多く生み出されました。
手工芸・ハンドメイド製品が多い
職人によって一つ一つ丁寧に作られた手工芸、ハンドメイド製品が多いのも北欧デザインの大きな特徴です。
世界が産業革命による機械化・合理化、大量生産へ突き進む中、ヨーロッパの中でも辺境の地である北欧は、その影響を直接的に受けることはありませんでした。
産業革命の影響が少なかったため、木工・ガラス・陶芸といった伝統工芸が根強く生き残っていったと考えられています。
北欧デザインが生まれた背景
北欧デザインが生まれた背景には、北欧の自然環境や生活文化が大きく関係していると考えられます。
北欧は森林や湖などの自然資源に恵まれています。
そのため、身近な自然の素材を利用し、いつまでも飽きないシンプルなデザインが誕生したのではないかと言われています。
北欧デザインの歴史
戦後の輸入販売から火が付いた
北欧デザインが世界で知られるようになるのは、第二次世界大戦後のことです。
デンマーク系アメリカ人の実業家 フレデリック・ルニング(1881〜1952)が、アメリカ国内に北欧のハンドクラフト製品を輸入販売しました。
当時のアメリカの人々の目には、スカンジナビア諸国のハンドクラフト製品が新鮮に映り、フィン・ユールなどの北欧デザイナーの作品が大流行しました。
賞の設立による普及
ルニングは1951年、スカンジナビア諸国のデザイナーを対象とした「ルニング賞」を創設します。
受賞者は国外留学のための資金を与えられ、数多くのデザイナーが北欧から生まれました。
また1957年には、金工家のヤコブ・トーシュトルップ・プリッツ(1886-1962)にちなんだ「ヤコブ賞」が創設されます。
この賞は、ルニング賞とともにデザイナーの育成に貢献し、北欧デザインが世界に普及するきっかけとなりました。
1950~1960年代、北米を中心に大流行
1950年代には様々なデザイナーが活躍し、北米各地で「Design in Scandinavia」という展示会が開催されました。
本展はアメリカの家具市場において「北欧デザイン」(= Scandinavia)というジャンルを確立させ、1950年~1960年代にかけて、北欧デザインは世界的流行を果たします。
過度な装飾をせず、素材の持ち味が最大限に活かされたデザインは「シンプルモダン」「スカンジナビアミニマリズム」といった概念を生み出しました。
日本への北欧企業の進出
1972年、日本にもスウェーデン発祥の家具量販店「IKEA」(イケア)が、名鉄百貨店(愛知県名古屋市中村区)と東急百貨店(東京都渋谷区)に、国内で初めてオープンしました。
また、1999年には「ILLUMS」(イルムス)が池袋にオープン。
「イルムス」はインテリア用品や雑貨、家具の販売を手がけるセレクトショップです。北欧デザインを追求した商品を取り扱い、新しいライフスタイルを提案しました。
北欧デザインの特徴
自然をモチーフとした柄
自然が身近にある北欧諸国では、動物をモチーフとしたデザインが多く生まれました。
樹木や鳥のモチーフなど、一つのモチーフをパターン化して使用されることもよくあります。
自然や動物をシンプルな形にデフォルメし、温かみを感じさせるデザインは、幅広い年齢層に好まれています。
シンプルなフォルム
北欧デザインが「スカンジナビアミニマリズム」と呼ばれることからも分かるように、複雑な模様や、余分なデザインを加えたりすることはほとんどありません。
幾何学模様などのパターンを繰り返したり、シンプルな線や曲線で構成された、シンプルなフォルムが北欧デザインの大きな特徴です。
少ない配色
北欧デザインは配色においても、単色もしくは2~3色しか使用しない傾向があり、アースカラーがよく使用されます。
「アースカラー」とは、青や緑、茶色などの自然を彷彿させるカラーのこと。
木や自然素材と相性の良いグレーは、北欧デザインで使われることが多い色です。
素朴で温かみのある質感
北欧諸国では、冬の過酷な環境に合わせて、耐久性や保温性を兼ね備えた製品が多く生み出されました。
加工がしやすく、温かみを感じさせる木材は、北欧デザインに最も多く用いられている素材です。
木材が醸し出す素朴な質感が、自然と空間に温かみをもたらしてくれます。
北欧デザインが日本で人気な理由
デザインのシンプルさ
日本で北欧デザインが人気な理由の一つとして挙げられるのが、日本の「わび・さび」文化です。
北欧デザインは、経年変化や質素な部分に敢えて美しさを見出す、日本の侘び寂び文化に共通する点が多く、日本の和室や伝統工芸品とも相性が良い傾向があります。
日本の生活文化や、自然に対する価値観とリンクする部分が多いため、日本人にも受け入れられやすいのでしょう。
木に対する愛着
北欧諸国と同じく、日本も国土面積に占める森林面積の割合が高く、昔から木材を使用した家屋や家具、その他生活用品が多く作られてきました。
北欧デザインの自然と伝統を大切にする考え方は、日本人にとっても共感しやすいものです。
北欧デザインの代表的デザイナー
コーア・クリント
デンマークの建築家・デザイナーの コーア・クリント(1888-1954)は、従来の北欧様式を重視しながら、建築・家具デザインの手法を改革し、北欧デザイン史に大きな功績を残した人物です。
後に活躍する有名デザイナー達にも影響を与えました。
彼がリデザインした「SAFARI CHAIR」(上)は、背もたれが姿勢に合わせて動く仕組みになっています。
コーア・クリントは、それまでには無い「機能性を兼ね備えた椅子」を生み出したのです。
ポール・ヘニングセン
デンマークで建築家・デザイナーとして活躍した ポール・へニングセン(1894-1967)は、照明器具の名作を多く残した人物として知られています。
ポール・へニングセンの代表作「phアーティチョーク」(上)はランプの周りに72枚ものシェードが広がり、光源を隠しながら、光を拡散させる画期的なランプです。
アルネ・ヤコブセン
建築家・家具デザイナーのアルネ・ヤコブセン(1902-1971)は、直線的な建築や曲線を用いた家具を多く手掛け、モダン主義を牽引した人物です。
体の曲線に沿ってデザインされた「セブンチェア」(上)は、現在でも多くの人に愛されるロングセラーとなっています。
他にも「エッグチェア」や「スワンチェア」など、名作チェアとして語り継がれる椅子を多く残しました。
ハンス・J・ウェグナー
デンマークを代表する家具デザイナー、ハンス・J ・ウェグナー(1914-2007)。
彼は20世紀にデンマークで起こった、木製家具のミニマリズム運動「デニッシュモダン」を牽引し、「Yチェア」や「シェルチェア」など実に500脚以上の椅子をデザインした「椅子の巨匠」として知られています。
彼のデザインに共有するのは、木材などの天然素材への深い探求心と、シンプルなフォルムと機能性から生まれる美の追求です。
カイ・フランク
ロシア出身のデザイナー、カイ・フランク(1911-1989)。
彼が活動していた頃のフィンランドは敗戦後で物資が不足し、人々は質素な生活を余儀なくされていました。
そんな時代に、機能的で安価で美しい製品を普及させた彼は「フィンランドデザインの良心」と呼ばれました。
カイ・フランクの代表作として知られる「キルタ」(上)は、フィンランドで最もよく知られている食器です。
発売開始から「ディナーテーブルの革命」と称賛され、多くのフィンランド国民が愛用しました。
北欧の有名な家具・照明ブランド
FRITZ HANSEN(フリッツ・ハンセン)
FRITZ HANSEN(フリッツ・ハンセン)は1872年から続くデンマークの代表的な有名家具ブランドです。長年にわたりアルネ・ヤコブセンなどの一流デザイナーと共に家具を製造し、「セブンチェア」(下)や「エッグチェア」などが生まれています。
創業当時から続く高い品質基準とタイムレスなデザインで、多くの一流顧客や北欧家具を愛する人々から信頼を獲得しています。
CARL HANSEN & SON(カール・ハンセン&サン)
CARL HANSEN & SON(カール・ハンセン&サン)は1908年、家具職人のカール・ハンセンが自身の工房をデンマークに開設したことから始まります。
カール・ハンセン&サンと言えばハンス・J・ウェグナーの作品。
1949年、カール・ハンセンの息子であり二代目のホルガ―・ハンセンが、当時まだ無名だったハンス・J・ウェグナーと手を組んだことによって共に世界に名を知らしめるきっかけとなったのです。
ARTEK(アルテック)
ARTEK(アルテック)はアルヴァ・アアルト、妻のアイノ・アアルト、実業家のマイレ・グリクセン、そして美術史家のニルス=グスタフ・ハールの4人によって「家具を販売するだけではなく、展示会や啓蒙活動によってモダニズム文化を促進すること」を目的に1935年に設立されました。
社名の由来は、1920年代のモダニズム運動のキーワード、art(芸術)とtechnology(技術)を組み合わせた造語からきています。
曲げ木の技術で作られた「パイミオ・チェア」はあまりにも有名です。
彼らは家具の製造・販売の他にも、モダニズム芸術の展示企画といった活動も行いました。
Louis Poulsen(ルイスポールセン)
1874年にデンマークで創業したLouis Poulsen(ルイスポールセン)は、北欧を代表する照明ブランドです。
1924年、ポール・へニングセンはルイスポールセンのために「パリ・ランプ」をデザインし、その後「PH-5ランプ」(下)や「アーティーチョーク」を生み出しています。
光をかたちづくる、というルイスポールセンのデザイン手法は現代でも受け継がれており、私たちや空間に影響を与える魅力的な雰囲気を作り出し続けています。
LE KLINT(レ・クリント)
LE KLINT(レ・クリント)は1901年、デンマークの建築家P.V.イェンセン・クリントが日本の折り紙をヒントに、オイルランプの光を調節するためのプリーツシェードを製作したことをきっかけに、息子のターエ・クリントによって設立されたブランドです。
レ・クリントが生み出す温かい光とやさしい影はハンドメイドならでは。
折り職人の手によって、創業時から変わらない製法で今も作られています。
IKEA(イケア)
スウェーデンで生まれたIKEA(イケア)は、世界最大の家具量販店として世界中に店舗を構えています。
北欧デザインのインテリア用品・家具を低価格で手に入れることができ、日本では北欧デザインブームの火付け役となりました。
店内にはレストランやカフェを併設しており、スウェーデン文化を楽しむことができます。
北欧の有名な食器ブランド
ROYAL COPENHAGEN(ロイヤルコペンハーゲン)
1775年、デンマークでジュリアン・マリー皇太后の援助によって王室御用達窯として開窯したROYAL COPENHAGEN(ロイヤルコペンハーゲン)は、北欧を代表する陶磁器ブランドです。
絵付けは全て熟練のペインターによる手描きで、製品の裏側には王室御用達の証である王冠が描かれています。
ベストセラーの「ブルーフルーテッド」(上)は日本でも認知度が高く、お祝いのシーンや贈り物として人気の高いシリーズです。
iittala(イッタラ)
1881年、フィンランドのイッタラ村で創業した iittala(イッタラ)は、ガラス製品を中心に食器、生活用品を製造・販売するデザイン企業です。
陶器で人気のARABIA(アラビア)も、イッタラグループが所有するブランドです。
「カルティオ」(上)や「ティーマ」など、シンプルかつデザイン性に優れた食器を多く生み出し、人気作品を数多く輩出しており、今も世界中で愛用されています。
北欧の有名なテキスタイルブランド
marimekko(マリメッコ)
1951年、フィンランドで創業したアパレル企業 marimekko(マリメッコ)。
社名のmarimekkoは、フィンランド語で「マリのドレス」という意味です。
マリメッコの代名詞とも言える花柄「ウニッコ(Unikko)」(上)は、1960年のアメリカ大統領選挙でジョン・F・ケネディの妻、ジャクリーン・ケネディがマリメッコのドレスを着用し、アメリカでの知名度が急上昇しました。
finlayson(フィンレイソン)
200年の歴史をもつフィンランドのテキスタイルブランドFinlanyson(フィンレイソン)は、ホームテキスタイルや寝装具などを展開しています。北欧の自然や動物をモチーフにしたデザインは、フィンランドの幅広い層に愛されています。
ELEFANTTIは、FInlaysonを代表するデザインの一つで、寝具からタオル、アパレルまで様々な商品で展開しています。
KLIPPAN(クリッパン)
スウェーデンで1879年に設立されたテキスタイルメーカー、KLIPPAN(クリッパン)。
紡績・染色・織り・製造までを全て自社工場で行うことで、質の高い商品を実現しています。著名なデザイナーとのコラボレーションもその人気を集めています。
日本でも人気のあるアパレルブランド「ミナ ペルホネン」をプロデュースしている皆川 明氏もその1人です。
クリッパンのウールブランケットは、100%オーガニックを使用しています。また大人も子どもも使いやすいデザインが多くの人に愛される理由です。
Johanna Gullichsen(ヨハンナ・グリクセン)
フィンランドのJohanna Gullichsen(ヨハンナ・グリクセン)は、1989年創業以来、 高品質な触りごごちとグラフィックデザインが特徴的なホームウェアやアクセサリーを生み出してきました。
ヨハンナ・グリクセンのコレクションは、伝統的な北欧デザインかつモダンでシンプルなデザインで、おうちでもパブリックなシーンでも馴染みます。
「ノルマンディコレクション」は、ブランド設立以来のロングセラーで、ヨハンナグリクセンのトレードマークでもあります。独特なパターンと豊富なカラーバリエーションが特徴的です。伝統的な手法で織られているため、厚みがあり、高い耐久性も備ています。
その他、有名な北欧ブランド
NOKIA(ノキア)
いまや現代人にとって欠かせないアイテムとなった携帯電話ですが、その基盤を作ったのがフィンランドに本拠を置くNOKIA(ノキア)です。
2011年までは世界最大の携帯電話端末メーカーでしたが、現在はマイクロソフトに売却し、通信インフラ施設・無線技術を中心とする開発ベンダーとして世界中に通信機器を提供しています。
LEGO(レゴ)
組み立てブロック玩具で有名なデンマークのおもちゃメーカー LEGO(レゴ)。
LEGOという名称の由来は、デンマーク語の「leg godt」(=よく遊べ という意味)から生まれました。
創業当初は木工玩具を製造していましたが、1949年からプラスチック製玩具の製造を開始。
レゴブロックは世界中の子どもたちから愛され、小さな木工所から始まったLEGOは、瞬く間に世界最大の玩具会社に成長しました。
VOLVO(ボルボ)
スウェーデンに本拠を置く乗用車メーカーの VOLVO(ボルボ)。
「世界一安全なファミリーカー」と評されるほど、ボルボの設計は安全性に卓越しており、特許を取得した3点式シートベルトは、現在や全世界の自動車に採用されています。
細部までこだわったデザインは、良質で洗練された北欧デザインらしい美しさをまとっています。
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デンマーク家具の巨匠と言われる人物たちや、有名なデザインを時代の流れに沿って解説し、名作が生まれた秘密を紹介する書籍です。
豊富な写真や図など、ビジュアルでも理解を深めることができるので分かりやすく、デンマーク家具についての教養を深めるにはピッタリの一冊です。
北欧デザイン1 家具と建築
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部屋のインテリアにもなりそうな美しい装丁と、見ているだけで楽しくなる内容は買って損はないでしょう。
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前述の一作に続く作品で、陶器、ガラス器などの日用品、車などの工業製品を中心に、北欧のプロダクトデザインが多数紹介されています。
北欧の自然・社会環境を背景とした、デザイナーたちのプロダクトへの思いが感じられる一冊です。
まとめ
今回は北欧デザインの特徴や代表的デザイナーなど、北欧デザインの魅力を紹介しました。
ミニマルでありながらも温もりのある北欧デザインは、日本文化とも相性がよく、日本とスカンディナビアン(北欧風)を合わせた「Japandi(ジャパンディ)」というデザインも流行しています。
皆さんもぜひ北欧デザインが生まれた背景や、北欧の人々の生活に思いを馳せてみてください。
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