コラージュ絵画技法美術史
ART

コラージュとは?作り方や有名なコラージュ作品を紹介!

写真や印刷物などを「切り貼り」してイメージを作り出すコラージュ。

アーティストが表現方法のひとつとして用いるのはもちろんのこと、「絵を描くのが苦手」という人でも取り組みやすいことから、世界中で活用されている人気の手法です。

今回は、代表的な作品を紹介しながらコラージュの魅力を探っていくとともに、コラージュの作り方にも触れていきます。

 

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コラージュとは?

複数の素材を貼り付け新しいイメージを作成する表現技法

コラージュとはフランス語で「糊付け」を意味し、異なる素材を組み合わせることで、素材本来のイメージから離れた新しいイメージを作り出す技法です。

技法自体は古くから存在しており、貴族の遊びなどでも使われていましたが、いわゆる「芸術作品」としてのコラージュは、20世紀初頭パブロ・ピカソとジョルジュ・ブラックがキュビスムの表現として取り入れたのが始まりといわれています。

「コラージュ」という言葉はピカソとブラックによって作られた造語です。

コラージュはその後シュールレアリスムをはじめ、さまざまな芸術作品に用いられました。

 

コラージュの有名作品10選

藤張りの椅子のある静物

作者 パブロ・ピカソ
制作年 1912年

籐椅子の一部が印刷された紙を画面内に貼り付けて構成された作品。

ファインアート史上初めて、絵の具以外のものを絵画に取り込んだコラージュ作品です。

ピカソはコラージュの断片を奇抜な使い方で楽しみ、別の物に転化させたり、思いがけない意味を引き出したりしました。

この考えが、現在までコラージュの基本的な概念となっています。

ピカソはコラージュによって、絵画というジャンルの枠を超えようとしたのです。

 

ギターを弾く女性

作者

ジョルジュ・ブラック

制作年 1913年

ギターを弾く人物が、画面いっぱいにキュビスムを用いて描かれています。

ピカソと共にキュビスムを発展させた盟友ジョルジュ・ブラックは、ステンシルによる文字、新聞の切り抜き、木目を印刷した壁紙を絵の中に取り入れました。

コラージュの技法ですが、こうした紙だけのものはパピエ・コレと呼ばれています。

ブラックはこの時期、楽器の機能的な美しさと形態に魅せられて、この作品を描きました。

目で見た光景を頭の中で再構成したキュビスムのグレーの世界に、木目が浮かぶ茶色いギターが存在感を示しています。

 

美術批評家

作者 ラウル・ハウスマン
制作年 1920年

ベルリン・ダダの中心人物ラウル・ハウスマンは女流ダダイストのハンナ・ヘッヒとともにフォトモンタージュの手法を生み出しました。

ホテルの客室に飾られた兵士のポートレートの頭部に、別の人物の顔がのりで貼り付けられた悪戯を見つけ、それにヒントを得てフォトモンタージュを考えついたと言います。

無意識を表現するシュルレアリストのコラージュと異なり、政治や社会に対する辛辣なアイロニーを込めているのが特徴です。

ハウスマンの作品は風刺的コラージュのルーツとも言われています。

 

神聖な会話

作者 マックス・エルンスト
制作年 1921年

「聖対話」とも題されるこの作品は、人体模型図の図版をベースに鳥や、ボタンの写真が配置されています。羅列すると不思議な組み合わせなのに、バランスが保たれています。

ダダイスムを経てシュルレアリスムの代表的な画家となったエルンストは、常識的に考えると同じ空間や視界に同居することがないイメージを、コラージュによってひとつの構図のなかに配置させ、見る人に驚きや不安を感じさせました。

 

愉快な夜

作者 ジャン・デュビッフェ
制作年 1949年

アンフォルメルの先駆者であり、従来の西洋美術の伝統的価値観を否定し、子供の原初的な感覚を大切にした「生の芸術」アール・ブリュットを提唱したデュビュッフェ。

泥、砂、石炭塵、小石、ガラス片、糸、藁、石膏、砂利、セメント、タールなどの材料を混合した厚い油絵具を使用し、引っ掻きキズや傷跡のような心理的な象徴を絵画制作に導入しました。

「愉快な夜」は2人の子供が微笑みながら万歳をしているような構図。

長く続いた戦渦から開放された安堵感を表しているのでしょうか。

 

ラ・ジェルベ

作者 アンリ・マティス
制作年 1953年

「色の魔術師」といわれたマティス。晩年は癌をわずらい車いす生活を余儀なくされました。

しかし彼は、人生最後の14年間を「Uneseconde vie(セカンドライフ)」と呼び、絵を描く代わりに色を塗った紙を切り抜いた「切り絵」で新たな表現スタイルを生み出しました。

「切り紙絵では色彩の中でデッサンすることができる」といった言葉を残しています。マティスのコラージュは「ハサミで描く」ことで構成されています。

 

招待

作者 岡上淑子
制作年 1955年

敗戦後の東京で青春期を過ごした岡上淑子。

進駐軍が残していった洋雑誌「LIFE」「VOGUE」などを古書店で購入して、「自分の夢にふさわしいもの」を切り貼りし、物語性あふれる白黒の画面を生み出しました。

日本の女性の多くが家庭に縛られていた時代に、外国へのあこがれや新しさへの羨望を抱きながら、想像の赴くままに制作した作品です。

 

一体何が今日の家庭をこれほどに変え、魅力あるものにしているのか

作者 リチャード・ハミルトン
制作年 1956年

アメリカで大流行したポップアートの先駆けとして有名なコラージュ作品。

一般的な家庭によくある物に囲まれた裸のカップルや、男性が持つ「POP」と書かれたキャンディー。
イギリスの画家リチャード・ハミルトンは、アメリカの雑誌から切り取った素材を用い、このポップでクリティカルなコラージュを作りました。
このコラージュは、アメリカの大衆文化に関心を持ちつつ、一歩引いて大衆社会を批評するものでした。

この作品の大部分である居間のテンプレートは、建設会社の広告記事から切り抜かれたもので、この広告に書かれていたフレーズが、そのまま『一体何が今日の家庭をこれほどに変え、魅力あるものにしているのか』というユニークなタイトルになっています。

また、作者のハミルトンはビートルズの『ザ・ホワイト・アルバム』のカバー・ジャケットのデザインをしたことでも有名です。このアルバムデザインでも、メンバーの写真をランダムに配置した、ハミルトンのコラージュを見ることができます。

 

薔薇の蕾と薔薇の関係

作者 横尾忠則
制作年 1988年

ルーベンスが描いた「レウキッポスの娘たちの略奪」をコラージュした「薔薇の蕾と薔薇の関係」。

グラフィックデザイナー出身の横尾忠則にとってコラージュは、単なる技法の域を超えた特別な存在です。

「生きることはコラージュそのものかもしれない」という言葉にも示されている通り、横尾の人生の支柱ともなっているのです。

 

作者 草間彌生
制作年 1994年

「水玉の女王」「前衛の女王」と呼ばれ、海外でも高く評価される草間彌生。

水玉や網目、カボチャをモチーフにした作品を目にしたことがあるのではないでしょうか。

草間はコラージュでも数多くの作品を残しています。

立体作品、インスタレーションにも取り組む彼女にとって絵画の枠を超えたコラージュは、必然なのかもしれません。

 

コラージュ作品の作り方

素材を集める

写真や雑誌や包装紙。気になる素材を見つけたら、どんどん切り抜いてしまいましょう。

最初から細かく仕上げようとせずに、ハサミなどで少し大きめに切り抜いておいて、細かい部分をデザインナイフで切り抜くと楽にきれいに仕上がります。

あえて余白を残しても、おもしろい素材になるかもしれません。切れ端も背景のデザインとして使えますので、気になったものはとっておきましょう。

切り抜いた素材はクリアフォルダーやクリアケースに入れて保管しておきます。散らばらず、配置をあれこれ考える時にはいつでも出し入れできるので便利です。

 

台紙となるものの上に配置してみる

切り抜いた素材を台紙の上に仮置きしてみましょう。まだ糊で貼らずに色々な素材を組み合わせて、あれこれと構成を検討してみてください。

ここで作品の方向性が決まってしまうので大変な作業ですが、コラージュの一番楽しい作業でもあります。

「この素材は合わないだろう」と決めつけずに、時間をかけて色々試してみましょう。固定観念を超えた、意外性のあるコラージュができるかもしれません。

 

糊で貼り付ける

構図が決まったら、切り抜いた素材を糊で貼っていきます。ピンセットを使うと細かい切り抜きにもきれいに糊を塗ることができます。

構図が崩れないように注意しながら糊付けしていきましょう。

スティックのりを使う場合、横に動かして塗ると切り抜きが破れてしまいがち。上からトントンと押さえるように糊付けするのがコツです。

 

コラージュ作りで使用する道具

コラージュにするために切り抜く素材

コラージュ

はさみ、糊、紙があれば、いつでもどこでも楽しめるコラージュ。

まずは切り抜くための素材集めから始めましょう。包装紙、写真、カレンダー、新聞、広告なんでもいいんです。

目に留まったもの、気になったものを集めましょう。古本屋さんで昔の雑誌や海外の雑誌を探してみるのもいいですね。

 

台紙となる素材

切り抜いたパーツを貼り付ける紙は、基本的にどんな紙でもOKです。ただ、糊がつかないツルツルしたものは避けましょう。

余白に絵や文字を描いて楽しむなら、画用紙やスケッチブックなどの絵を描く専用紙が使いやすいですが、紙皿や段ボールにコラージュしても面白い作品に仕上がります。

 

コラージュにはヤマト糊などのでんぷん糊、スティック糊、木工用ボンドなどが一般的に使われますが、初心者にはシワの出にくいスティックのりが使いやすいでしょう。

シワを出さないことに特化した「シワなしPIT」というスティック糊もあります。半透明でスルスルと薄く塗れるので、コラージュ向きです。

広い面に糊付けする時にはスプレー糊をつかっても便利です。

スティックのり PiT シワなしピット S 5個

532円 (税込)

シワになりにくく、塗ってすぐなら貼り直しも可能な「シワなしピット」5個入り。

 

カッター

切り抜きに使用するカッターは普通のカッターでもいいのですが、刃の角度が鋭利なデザインナイフを使うとよいでしょう。

通常のカッターとは違ってペン型になっているので、細かい部分の切り抜きにも使いやすくきれいに仕上がります。

デザインナイフは軸が回転するので曲線向きでもあります。ただ、少しコツが必要ですので、慣れるまでは曲線にはハサミを使うのがおすすめです。

オルファ(OLFA) アートナイフプロ

709円 (税込)

滑らず長時間使用しても手が疲れにくいラバーグリップを採用した本格細工用のアートナイフ。

 

カッターマット

カッターマットには、机の傷防止だけでなく、カッターの刃先の保護や、滑り止め加工で切りたいものを固定してくれるという役割があります。

素材は、塩化ビニール樹脂とオレフィン樹脂の2種類。オレフィン樹脂は少々高価になりますが、強度が高く冬場も問題なく使用できるのでおすすめです。

ちゃんとしたものなら何年も使うことができるので、良いものを選んでおきましょう。

サイズは、作業スペースに置ける最大サイズのものが望ましいです。

オルファ(OLFA) カッターマットA3

841円 (税込)

軟・硬・軟のサンドイッチ構造で、両面に1cm刻みの便利なグリッド入り。

 

ピンセット

細かい部分を押さえたり、チョイチョイチョイと形を整えたり、何かと重宝するのがピンセット。

いろいろなタイプがあるので、使いやすいものを選びましょう。つる首型の物は細かい作業に便利ですし、先が潰れているものは紙を傷つけずに挟むのに適しています。

100円ショップで購入できるものでも十分使えます。

ホーザン(HOZAN) ピンセット

666円 (税込)

精密加工技術により先端がぴったり合います。

 

もっとコラージュ作品について知ることができる本

切断の時代―20世紀におけるコラージュの美学と歴史

コラージュの表現技法の特徴である「切断」による断片化と、その一方であらゆる要素を融合しようとする綜合化。

この相反する極の間を揺れ動いてきたコラージュが20世紀美術にもたらしたものは何だったのか。

絵画・彫刻・写真・映画・文学・音楽・演劇・建築など幅広い分野にわたる「コラージュ」を日本で初めて体系的にまとめた本です。

 

イメージの哲学者 ラウール・ハウスマン

あらゆる既成概念を破壊した芸術運動ベルリン・ダダ。

その創立者の一人ラウール・ハウスマンは当時恋人であったハンナ・ヘッヒとともに、新たな表現手法としてフォトモンタージュの創作をはじめました。

ハウスマンが見出したフォトモンタージュとは?

単なる技法としてでなく、思想としてのフォトモンタージュを読み解いていきます。

イメージの哲学者 ラウール・ハウスマン―ベルリン・ダダから“フォトモンタージュ”へ

2,860円 (税込)

出版社 ‏ : ‎ 神奈川大学出版会 (2016/4/1)

 

岡上淑子 フォトコラージュ -沈黙の奇蹟-

戦後の1950年代、コラージュの技法で多くのフォトコラージュを制作した岡上淑子(おかのうえとしこ)。

日本におけるシュルレアリスム運動を先導した瀧口修造に見出され、日本各地の美術館やギャラリーで展覧会が開かれました。

もともと、洋裁を学んでいたという経歴を持つ岡上淑子のコラージュは、当時パリから世界をリードしていたオートクチュールの華やかなファッションのイメージが引用されています。

さらに、背景には、戦後に連合軍が残していったLIFEのような海外のグラフ雑誌の切り抜きなども使われています。

戦後の風景を映し出した報道写真と最先端のファッションの鮮やかな対比が独特の美しい世界観となり、見るひとを魅了します。

近年になり、再び注目されている岡上淑子のコラージュ作品は、現代の作家たちにも影響を与える作品となっています。

そんな岡上淑子の作品集は、彼女の独特の世界観にどっぷり浸か流ことができるのはもちろん、コラージュを作るときのインスピレーション源になること間違いなしです。

岡上淑子 フォトコラージュ -沈黙の奇蹟-

3,300円 (税込)

出版社 ‏ : ‎ 青幻舎 (2019/2/8)

 

まとめ

コラージュの魅力は、雑誌の切り抜きや文字、布や金属など統一性のない物を自由に画面に貼り付けることで、バラバラであるはずの物質が画面の中で調和するところにあります。

画面に自分で集めた素材を貼っていくだけの作業なのですが、いつしか「もっといい切り抜きはないか」「構成を変えたほうが斬新になる」と、没頭していく自分がいます。

コラージュで自分の内面を表現してみませんか。

あなた自身が気づかなかった自分が見えてくるかもしれません。

 

 

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