ゲルハルト・リヒター生誕90周年を記念する展示がドイツで開催中!
ドイツが生んだ現代アートの巨匠、ゲルハルト・リヒター。
2022年2月9日で90歳になるリヒターは、その作家活動も60年目を迎えます。
リヒターの故郷ドイツで、彼の生誕90周年を祝した展覧会が複数開催されています。
日本でも16年ぶりの展覧会が、2022年6月から東京国立近代美術館で、同年10月から豊田市美術館で開催されます。
ゲルハルト・リヒターのこれまでの経歴と、ドイツで開催されている展示について詳しくご紹介します。
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現代アートの巨匠、ゲルハルト・リヒター
世界を代表する芸術家の1人であり、「ドイツ最高峰の画家」とも呼ばれている、ゲルハルト・リヒター。
彼は1932年に東部ドイツ、ドレスデンで生まれました。
共産主義体制から逃れるため、1961年に西ドイツのデュッセルドルフへ移住。
デュッセルドルフ美術アカデミーで学んだ後、同大学の絵画科の教授として、1971〜94年まで教鞭をとっています。
フォト・ペインティング
リヒターは、「絵画」それ自体の追求をコンセプトに掲げ、実験的な手法で新しい絵画作品を次々と発表してきました。
新聞や雑誌などの写真を精密に模写した上から、ハケを使ってわざとぼかしたタッチに仕上げた作品「フォトペインティング」シリーズ。
その製作プロセスと、鑑賞者が不思議とノスタルジックに感じてしまう効果が絶妙にマッチした絵画作品です。
カラーチャート
同じく彼の代表作である、様々な色の正方形を並べた「カラーチャート」シリーズ。
画材店にある色見本帳をベースに、リヒターが絵画として成立させた作品です。
グレイ・ペインティング
カラーチャートと対照的な作品として、灰色一色で塗り込めた絵画「グレイ・ペインティング」。
灰色一色を使用し、「無」を表現した作品です。
アブストラクト・ペインティング
何層にも重ねた色が響きあう抽象画「アブストラクト・ペインティング」。
リヒターの代表的な作風で、キャンバスよりも大きなヘラを使い、絵の具を上から引きずる行為を繰り返しながら制作しています。
色を重ねては削り取り、それを繰り返すことで偶発的に色を多層化させたこのシリーズは、作品数が最も多く、リヒターが40年以上に渡り制作し続けています。
リヒターのこれまで展覧会は、
ポンピドゥー・センター(パリ、1977年)
テート・ギャラリー(ロンドン、1991年)
ニューヨーク近代美術館(2002年)
テート・モダン(ロンドン、2011年)
メトロポリタン美術館(2020年)
など世界の著名な美術館で開催され、画家として不動の地位を確立しています。
アート市場においても、リヒター作品のオークション落札額は存命アーティストの中でトップクラスです。
2020年10月、老舗オークションハウスのサザビーズが香港で行ったアートオークションでは、ポーラ美術館が1987制作のアブストラクト・ペインティングを約30億円で落札しました。
ドイツで生誕90周年を記念した展示が複数開催中
ドイツでは、リヒターの生まれ故郷ドレスデンと、活動拠点としているデュッセルドルフ、ベルリンなど複数の場所で生誕90周年を記念した展示が開催されています。
Gerhard Richter Drawings | Zeichnungen 1963 – 2020|デュッセルドルフ
デュッセルドルフ美術アカデミーで長年教鞭をとったリヒターの功績を、60点のドローイングとともに紹介する展示。
このうち40点は、約260万円〜6500万円で販売されます。
リヒターは2017年、自身が85歳の時に、大型の絵画制作を止めると宣言しました。
それ以降にリヒターが描いたドローイング作品を見渡すと、彼の引退宣言には明確な意図的があったと感じることができます。
リヒター作品にはお馴染みの重ね塗り、削り取りの表現は、1990年代以降のドローイングにも反映されています。
Gerhard Richter Drawings | Zeichnungen 1963 – 2020
会期
2022年1月29日~3月12日会場
Sies and Höke(デュッセルドルフ、ドイツ)公式HP
https://www.sieshoeke.com/exhibitions/gerhard-richter-drawings-zeichnungen-1963-2020
Presentation of the Gerhard Richter Collection|ケルン
ケルンのルートヴィヒ美術館は、リヒター自身が冗談で「ふるさとの美術館」と呼ぶほど、リヒターの代表作を多く所蔵する美術館です。
初期のフォトペインティング作品「エマ(階段のヌード)」(1966年)や、「Five Doors」(1967年)をはじめとする当館所蔵のリヒター作品を一挙に公開する展示を開催しています。
Presentation of the Gerhard Richter Collection
会期
2022年2月1日~5月1日会場
The Museum Ludwig(ケルン、ドイツ)公式HP
https://www.museum-ludwig.de/en/exhibitions/presentation-of-the-gerhard-richter-collection.html
Gerhard Richter Portraits. Glass. Abstracts|ドレスデン
東西冷戦当時、東ドイツだったドレスデンは、リヒターがデュッセルドルフに亡命する前に生活していた故郷です。
ドレスデンのアルベルティナム美術館では、ニューヨーク近代美術館から貸し出されたリヒターの自画像のほか、妻、子どもたちを描いた作品をメインとした展示を開催中。
リヒター自身がキュレーションを手がけたこの展示は、家族の肖像画を中心に据え、画家内面や人生観に迫る内容となっており、詩的な世界観で包まれています。
他にも、リヒターの引退を宣言する前に制作された大型のアブストラクト・ペインティングが多数展示されています。
Gerhard Richter Portraits. Glass. Abstracts
会期
2022年2月5日~5月1日会場
Albertinum(ドレスデン、ドイツ)
Gerhard Richter Artist’s Books|ベルリン
修復工事を経て2021年にリニューアルオープンしたベルリンのノイエ・ナショナルギャラリーでは、リヒターがこれまで制作した書籍やカタログ、新聞などを展示する特別展を開催中。
同館所蔵の大型抽象絵画作品「アトリエ」や版画作品とともに、リヒターの関連書籍が多数展示されています。
Gerhard Richter Artist’s Books
会期
2022年2月10日~5月29日会場
Neue Nationalgalerie(ベルリン、ドイツ)公式HP
https://www.smb.museum/en/exhibitions/detail/gerhard-richter-artists-books/
Gerhard Richter. Birkenau-Paintings, Drawings, Overpainted Photographs|デュッセルドルフ
同じく、デュッセルドルフで開催中の展覧会「Gerhard Richter. Birkenau-Paintings, Drawings, Overpainted Photographs」。
本展では、リヒターが2000年代に制作した作品の中でも評判の高い、幅2メートル、高さ2.6メートルもの大型絵画4点で構成される巨大な抽象画「ビルケナウ」(2014年)が展示されています。
「ビルケナウ」は、ホロコーストと第二次世界大戦のナチスの残虐行為をどのように描くべきか、リヒターが長年考察を重ねた上に制作された作品です。
4枚の絵画の元になったのは、ポーランドのアウシュビッツ・ビルケナウ強制収容所に収容された囚人が秘密裏に撮影した4枚の写真。
ガス室で殺された仲間の死体を焼却する作業に従事していたゾンダーコマンド(特殊部隊)の一人が、密かに収容所内部の様子を撮影し、外部へ持ち出したものです。
4枚の絵画と、その真正面に吊るされた4つの鏡、強制収容所の写真4枚が意図的に配置されたインスタレーション作品となっています。
Gerhard Richter. Birkenau-Paintings, Drawings, Overpainted Photographs
会期
2021年12月18日~2022年4月24日会場
K21(デュッセルドルフ、ドイツ)公式HP
https://www.kunstsammlung.de/en/exhibitions/gerhard-richter-en
東京国立近代美術館「ゲルハルト・リヒター展」
この夏、日本で開催される「ゲルハルト・リヒター展」。
6月に東京国立近代美術館で開催され、10月には豊田市美術館にも巡回します。
日本でのリヒターの大規模な展覧会は、2005年の金沢21 世紀美術館、DIC川村記念美術館で開催されて以来、16年ぶりになります。
注目の作品は、現在デュッセルドルフで展示中で、日本初公開となる「ビルケナウ」(2014年)です。
他にも彼が長年大切に手元に残してきた秘蔵の作品が多数来日します。
リヒターの60年にわたる画業を総括した、今年必見の展示になることは間違いありません。
ゲルハルト・リヒター展
【東京展】
2022年6月7日~10月2日
@東京国立近代美術館【愛知展】
2022年10月15日~2023年1月29日
@豊田市美術館
今もなお現役で活躍する画家、ゲルハルト・リヒター。
60年に渡って絵画を追求し、常に新しい表現を模索し続ける姿勢が、巨匠と言われる所以なのでしょう。
日本で開催される「ゲルハルト・リヒター展」は今年必見の展覧会です。
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