「静嘉堂文庫美術館」が丸の内に移転オープン!国宝7点を含む名品を公開
創設130周年を迎えた静嘉堂美術館。
2022年10月1日、同館は展示スペースを世田谷岡本から、丸の内の重要文化財建築、明治生命館の1階に移転し、「静嘉堂@丸の内」という愛称とともに新たなスタートを切りました。
三菱財閥の2代目社長・岩﨑彌之助(1851〜1908)とその息子・岩﨑小彌太(1879〜1945)の父子2代が築いたコレクションを収蔵・展示してきた静嘉堂美術館。
移転・開館記念展の第1弾として、国宝7点を含む東洋美術の名品が揃う「響きあう名宝―曜変・琳派のかがやき―」展が開催されます。会期は 10月1日〜12月18日です。
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創設130周年を迎える「静嘉堂文庫美術館」
静嘉堂美術館は、1892年に三菱財閥の2代目である岩﨑彌之助 (1851-1908)によって創設されました。
その後、4代目社長となった息子の岩﨑小彌太 (1879-1945)がコレクションを更に充実させ、父子2代で築いたコレクションを一般公開してきました。
国宝7点と重要文化財84点を含む、日本と中国における古典籍約20万冊と、東洋の古美術品約6,500件を所蔵するプライベートコレクションは、質量ともに国内屈指の内容です。
岩﨑彌之助は、三菱財閥の2代目総帥として事業の多角化を進め、銀行・鉱山・造船などを一体とした三菱合資会社を発足させた人物です。
日本の文化芸術に深い関心を抱き、同時代の芸術家たちの振興支援を行いながら、文化財や東洋美術の絵画・彫刻・書跡・工芸までもを幅広く収集しました。
息子の岩﨑小彌太は、各分野の専門家に助言を得て、さらなるコレクションの充実をはかりました。
彼は既存の価値観に捉われず、作品を目の前にした時の美しさや、歴史的な位置付けに重きをおき、西洋的な視点で作品を購入したことから、当時の文化人の中でも「先進的な見識を持つ人物」と評されていました。
特に陶磁器の愛好家であった小彌太は、中国陶磁の大コレクターとして知られています。
表千家久田流の茶の湯の稽古にも取り組み、茶道具の収集も熱心に行っていました。
1934年には、世界に3椀しか現存しない陶芸の至高とも称される、国宝「曜変天目(稲葉天目)」を所有しています。
世田谷区から丸の内「明治生命館」に移転
静嘉堂創設から130周年にあたる2022年、静嘉堂文庫美術館はギャラリースペースを世田谷区から丸の内の「明治生命館」に移転することを発表しました。
「静嘉堂@丸の内」という新たな愛称とともに、2022年10月1日に移転オープン。
丸の内はかつて、岩﨑彌之助が1892年の創設時から美術館をつくりたいと願っていた場所です。今回、長い時を経てその念願が叶いました。
重要文化財を生かした美術館設計
明治生命館(1934年竣工)は、1997年に昭和初期の代表的な近代洋風建造物として、初の重要文化財に指定された建物です。
意匠設計は、東京美術学校(現東京藝術大学)教授の岡田信一郎(1883〜1932)と弟の岡田捷五郎(1894〜1976)によるもの。
当時の西洋近代建築を生かした室内は、壮麗な大理石で造られ、高い天井からはガラス越しに自然光が差し込みます。
展示室は、中央部の広いホワイエを中心に自由に行き来できる4つの部屋から成り、展示室の面積は旧展示スペース(世田谷)の約1.5倍ほどの広さがあります。
低反射ガラスを使用した展示ケースを導入し、美術品がより際立つ空間を実現しました。
国宝7点を含む「琳派」の名品が集結
開館記念展第1弾となる「響きあう名宝―曜変・琳派のかがやき―」展では、静嘉堂が所蔵する国宝7点をはじめ、茶道具・琳派作品・中国書画・陶磁器・刀剣などの名宝を、新たな建築空間に合わせ4つのテーマで紹介します。
展示構成は「静嘉堂コレクションの嚆矢―岩﨑彌之助の名宝蒐集」「中国文化の粋」「金銀かがやく琳派の美」「国宝「曜変天目」を伝えゆく―岩﨑小彌太の審美眼」の4章から成り、国宝7点が前・後期に分けて公開されます。
琳派の名品を多数公開
見所の一つは、琳派の名品の数々です。
俵屋宗達「源氏物語関屋澪標図屏風」(国宝)
酒井抱一「波図屏風」、画帖 「絵手鑑」
尾形光琳「住之江蒔絵硯箱」(重要文化財)
鈴木其一「雪月花三美人図」
といった名品が多数公開されます。
他にも、尾形光琳の弟・尾形乾山の作品や、酒井抱一の下絵を用い蒔絵を手がけた江戸時代後期の蒔絵師・原羊遊斎の印籠など、工芸品の名作も公開されます。
コレクションの根幹となる中国美術
もう一つの見どころは、当館のコレクションの中核を担う、岩﨑父子がこよなく愛した中国美術の絵画と工芸品、古典籍などの名品です。
馬遠作「風雨山水図」(国宝)
牧谿作「羅漢図」牧谿作(重要文化財)
因陀羅・楚石梵埼作「禅機図断簡 智常禅師図」(国宝)
余崧筆「百花図巻」
などを公開。
宋・元時代の陶磁器と漆芸の名品、宋版の貴重書も公開されます。
国宝「曜変天目(稲葉天目)」
本展では、静嘉堂コレクションの中でも最も貴重で、茶碗の最高峰と評されてきた国宝「曜変天目(稲葉天目)」も公開されます。
宇宙を感じさせる神秘的な輝きを持つ曜変天目は、世界で完成品がわずか3碗しか現存しておらず、全て国宝に指定されています。
南宋時代(12~13世紀)に現在の中国福建省で製作され、その焼成方法は未だ謎に包まれたまま。青く美しい光彩を放つこの静嘉堂の曜変天目は、別称「稲葉天目」と呼ばれています。
約400年前の茶道具修繕の裏側を公開
茶道具では、1884年に岩﨑彌之助が購入した最初の茶道具であり、戦国時代に小田信長・豊臣秀吉・徳川家康の手中にあった、著名な唐物茄子茶入の「付藻茄子」と「松本(紹鷗)茄子」が公開されます。「付藻茄子」はその当時、一国一城に値するほど崇められたと伝わる名品です。
この2つの茶道具は、1615年の大坂夏の陣で大破した、大坂城の焼け跡から破片が探し出され、その破片が塗師の名工、藤重藤元・藤巌父子によって漆繕いされ、今日の姿となっています。
2022年1月、東京国立博物館で行われたX線とCTスキャン撮影により、漆継ぎの詳細が解明され、本展では約400年前の神業のような修繕の内容を知ることができます。
また、2022年は千利休(1522〜1591)の生誕500年であることにちなみ、千利休所持と伝わる茶道具「青磁鯱耳瓶(砧花入)」や、重要美術品に指定されている「唐物茄子茶入 利休物相」 などが公開されます。
更に、国内有数のコレクションを誇る約120振の刀剣(うち国宝1振、重文8振)も登場します。
日本美術・東洋美術の名品ばかりを集めた「静嘉堂@丸の内」。
西洋近代建築の最高傑作と評された明治生命館で、ぜひ名品の数々をお楽しみください。
静嘉堂創設130周年・新美術館開館記念展Ⅰ響きあう名宝―曜変・琳派のかがやき―
会期:2022年10月1日(土)〜12月18日(日)
展示替えあり(前期:10月1日~11月6日、後期:11月10日~12月18日)住所:東京都千代田区丸の内 2-1-1 明治生命館1階
開館時間:10:00-17:00(金〜18:00)※入館は閉館の30分前まで
休館日:月曜日、11月8日、11月9日
料金:
一般 1500円 大学・高校生 1000円 中学生以下 無料
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