小説文学谷崎潤一郎
CULTURE

谷崎潤一郎のおすすめ代表作品・謎に包まれた人生を解説

大正から昭和にかけて活躍し、芸術性の高い作品が国内外で評価を受ける文豪・谷崎潤一郎。

「痴人の愛」「春琴抄」などから、女性崇拝やフェティシズムのエロティックで情緒的な作品のイメージを持つ方が多いのではないでしょうか。

実は谷崎の作品は、谷崎自身の私生活をモデルにした作品がとても多いとも言われています。

今回は、谷崎潤一郎の作品の評価から経歴、代表作品について詳しく解説していきます。

 

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谷崎潤一郎とは?

耽美派の作家 

谷崎潤一郎は、耽美派と呼ばれるジャンルに分類される作家です。

耽美派とは、「美に耽(ふけ)る」と書くように、とにかく美に対して最上の価値を置く芸術思想。

道徳や美徳を否定し、悪徳や快楽の享受を肯定するという意味合いも持ちます。

耽美派は19世紀後半にフランスイギリスを中心に巻き起こり、明治・大正時代の日本の小説家たちに大きな影響を与えました。

中でも耽美派としてひときわ高い評価を受けた作家が谷崎潤一郎でした。

 

作品の評価 

ただ、谷崎潤一郎は最初から完璧な評価を受けていた訳ではありませんでした。

キャリアの初期には、「事実を描き真実を見せる」自然主義が主流だったため、美を至上とする谷崎の作品は、しばしば低い評価を受けています。

しかし、キャリア中盤に以降には、耽美主義の描写の芸術性が次第に評価され、最終的に毎日出版文化賞や朝日文化賞など複数の賞を受賞するようになりました。

また、谷崎は海外からも高い評価を受けています。

最晩年の1964年6月には、日本人で初めて全米芸術院・米国文学芸術アカデミー名誉会員に選出され、合計7回ノーベル文学賞候補に選ばれました。

 

谷崎潤一郎の人生

生い立ち 

1886年東京府東京市日本橋区蛎殻町にて、点灯会社を営む両親のもと生まれた谷崎潤一郎。

幼いころより学業優秀で、神童と言われる少年でしたが、潤一郎が小学4年時に父の事業がうまくいかなくなり進級も危ぶまれてしまいました。

しかし、その天性の学力を惜しむ教師から助言を受け、家庭教師にて生活費を賄いながら府立第一中学校(現・日比谷高等学校)に進学します。

進学後ほどなくして飛び級し、飛び級先の学年でもトップの成績を記録するなど谷崎は持ち前の学才をいかんなく発揮。

卒業後には、東大の前身である「旧制一高」に進学し、校友会雑誌にて小説家としての一歩を踏み出しました。

 

作家としての成功 

東京帝国大学(現在の東京大学)に進学した谷崎潤一郎は、在学中に戯曲「誕生」や小説「刺青」を発表。

文壇から高い評価を受け、新進気鋭の作家として地位を確立します。

その後、物語のストーリー性を重視した反自然主義的作風で、時代に反しながらもその評価を高めていきました。

谷崎文学の特に評価された点は、快楽の享受を是とする耽美派の中でも「女性崇拝」「フェティシズム」を文章で巧みに表現したところにあります。

 

3度の結婚 

「女性」をテーマに多くの作品を書く谷崎潤一郎ですが、私生活の女性関係もスキャンダラスなものでした。

1915年に石川千代子、1931年には古川丁未子、1935年には森田松子と計3度の結婚をしています。

また谷崎自身も語るように、3度の夫婦生活は様々な作品のベースにになっています。

冷めきって破綻した夫婦を描いた「蓼食う虫(たでくうむし)」は、最初の妻・千代子との結婚生活を、「猫と庄造と二人のおんな」は2人目の妻・古川丁未子と愛人との間で揺れ動く心情を描いた作品です。

谷崎の作品に対して理解のあった3人目の妻・松子とはうまくいき、生涯の伴侶となりました。

 

死因

谷崎潤一郎は、1965年・79歳の時に腎不全の合併症である心不全によって亡くなっています。

死因は、1935年に診断を受けた高血圧症の影響が強いと見られています。

高血圧症の診断により怯えた谷崎は、一時は酒や食事を控え、節制した生活により血圧を改善しようとしましたが、あまり長く続かなかったと言います。

 

谷崎潤一郎の作品の特徴

フェティシズムと女性崇拝 

谷崎文学の主な特徴はフェティシズムと女性崇拝です。

この二つは、谷崎のキャリアを全作品を通して描かれており、その特殊な嗜好を芸術性にまで昇華しました。

最初期の作品「刺青」では素足を見て興奮する彫師が、晩期の作品「瘋癲老人日記」では足を舐めたい老人が登場するなど、その嗜好は生涯変わりませんでした。

また、初期から晩年までほとんどの作品で「屈辱によって生まれるマゾヒチックな快感」も多く描かれています。

女性への崇拝というテーマも一貫しており、初期作品から晩年の「瘋癲老人日記」まで50年以上、特に女性の肉体への崇拝を書き続けました。

 

芸術性の高い文章 

谷崎潤一郎の文章は、耽美派の作家らしく高い芸術性が特徴です。

谷崎自身が、自らの作品を「甘美にして芳烈なる芸術」と言うほど並々ならぬこだわりを持っており、物事の細かな美を詳細まで描いています。

また、谷崎の文章は読みやすく完全であると、著名な日本文学研究家・ドナルドキーンは言います。

数ある作家を分析する中でも谷崎潤一郎の文章は最も読みやすく、漢字とかなが混ざる和漢混合文の美しさと、英文法のような論理構造の明晰さを兼ね備えていると評しました。

 

多ジャンルでの執筆

谷崎潤一郎と聞けば、純文学を執筆した作家というイメージが浮かぶ方が多いかと思います。

しかし実は谷崎潤一郎は、様々なジャンルの作品を執筆した作家です。 

現代にも通じるミステリー・サスペンス作品や歴史小説、戯曲などを執筆し、さまざまなジャンルの先駆者的存在でした。

また、谷崎は映画にも深い関心があり、それが高じて映画シナリオも執筆しています。

 

谷崎潤一郎の代表作品

刺青 1911 

刺青は、谷崎潤一郎が大学在学中に発表した小説です。

主人公である元浮世絵師ので彫り師の清吉は、「美女の肌に己の魂を彫り込みたい」という願望を抱いていましたが、そんな女性は江戸中を探してもなかなか見つかりません。

夏のある日、籠のすきまから真っ白な女の素足がはみ出ているのを見た清吉。この足を持つ女性こそが自分の探し求めていた女性であると清吉は確信します。

 

\ 作品のおすすめポイント /

女性に踏まれる描写もあるなど、足に対するフェティシズム全開の作品。女性に対する偏愛もこの頃からでした。

出版社 : 新潮社; 改版 (1969/8/5)
発売日 : 1969/8/5

 

痴人の愛 1925 

何度も映画化されている、谷崎潤一郎の代表的作品。

真面目で裕福な譲治は、カフェで出会った少女ナオミを理想の女性に教育するために一緒に暮らし始めます。

しかし、ナオミは譲治の思惑通りには育たず、性に奔放で小悪魔な女性に。

何度も不貞を重ねるナオミ、それでもナオミの肉体的魅力により離れられない譲治。次第に主従関係が逆転し、譲治は破滅へ突き進んでいきます。

 

\ 作品のおすすめポイント /

この作品の特徴は、恋愛心理描写の緻密さです。

譲治とナオミの徐々に変わりゆく心理描写を克明に描いています。

出版社 : 中央公論新社; 改版 (2006/10/25)
発売日 : 2006/10/25

 

蓼喰ふ虫 1929 

「蓼食ふ虫」は谷崎の中期・成熟期を代表する作品です。家庭内に不和のある夫婦を描きながら谷崎の理想の女性美を描いています。

この作品のモデルは、二度目の結婚相手千代子との破綻に終わった夫婦生活です。

 

\ 作品のおすすめポイント /

谷崎潤一郎が、これまで影響を受けていたアメリカ文化から、日本の伝統文化に傾倒した作品で、谷崎はこの作品をきっかけに、日本伝統の「陰のある美」に回帰するようになりました。

「蓼喰う虫」では、日本古来の文楽にある詫び寂びに惹かれていくような登場人物の心情が描かれています。

出版社 : 新潮社; 改版 (1951/11/2)
発売日 : 1951/11/2

 

陰翳礼讃 1933

陰翳礼讃(いんえいらいさん)は、谷崎潤一郎が自身の持つ美意識を余さず言語化した評論作品。

「蓼食ふ虫」以来、谷崎が西洋文化から日本の伝統文化のすばらしさに目覚めた時期に書いた随筆です。

西洋の文化は力強い明るさにより、陰翳を消すことを是としていましたが、伝統的な日本文学ではむしろ陰翳を認めていました。

谷崎は、それを利用することで陰翳の中でこそ映える芸術を作り上げられるとし、「陰翳」こそが芸術的であり日本の美であると主張します。

 

\ 作品のおすすめポイント /

日本古来よりの陰翳を視点に、建築、食器、能や歌舞伎の伝統芸能など、さまざまな分野の美を考察している一冊です。

谷崎の美的感覚を深く知ることができます。

出版社 : パイインターナショナル (2018/1/18)
発売日 : 2018/1/18

 

春琴抄 1933 

「春琴抄」は、容姿端麗の才気ある三味線奏者「春琴」と、献身的な丁稚の「佐助」の奇妙な関係を描く物語。

丁稚だった佐助は、春琴の三味線の弟子となりますが、春琴は、佐助泣き出すほど激しい稽古をつけます。

春琴抄は、サディスティックな春琴に、佐助が献身的に仕えていくマゾヒズムな描写が特徴的です。

 

\ 作品のおすすめポイント /

春琴抄は、改行や句読点などを極力使わないで描かれている、実験的な作品。

谷崎潤一郎著「文章読本」の一説によると、春琴抄の句読点の少なさは、流れる水のような文章を追求したそうです。

出版社 : 新潮社; 改版 (1951/2/2)
発売日 : 1951/2/2

 

細雪 1936 

「細雪(ささめゆき)」は、三島由紀夫を筆頭に多くの小説家、文壇から高く評価された、近代文学の金字塔とも評される作品です。

大阪船場を営む名家・蒔岡家に生まれた、4姉妹「鶴子・幸子・雪子・妙子」の日常を悲喜こもごも描いています。

 

\ 作品のおすすめポイント /

戦中、戦後をまたいで書かれたこの作品は、時代背景もあり連載の中止や、内容の改変がなされています。

1943年には戦前の崩壊を予感させる描写が、軍部より「内容が戦時にそぐわない」として連載が中止になりました。

さらに1949年には、GHQによる検問で内容の改変が行われています。

出版社 : 中央公論新社 (1983/1/10)
発売日 : 1983/1/10

 

瘋癲老人日記 1962 

「瘋癲老人日記」は、谷崎潤一郎が晩年に執筆した長編小説です。

本作は77歳の卯木督助の日記を通して進行していきます。

性的に不能ながらも息子の嫁・颯子に情念を抱く卯木督助を通し、老人の「老い」と「性」を描いた作品です。

 

\ 作品のおすすめポイント /

颯子のモデルは谷崎の義理の息子の嫁・千萬子であるとはっきりしており、老人の生活も当時の谷崎の生活そのものだったとのことで、谷崎自身の物語であるとされています。

晩年の谷崎を間接的に知ることができる作品です。

瘋癲老人日記

692円 (税込)

出版社 : 中央公論新社; 改版 (2001/3/25)
発売日 : 2001/3/25

 

谷崎潤一郎の作品をもっと楽しむ

谷崎潤一郎記念館

実物を見て谷崎潤一郎の足跡に触れてみたい方は、兵庫県芦屋市にある「谷垣純一郎記念館」に訪れてみましょう。

谷崎が愛用していた筆、硯、机やコレクションしていた美術品などさまざまな資料を所蔵しており、小説家・谷崎潤一郎の歴史をたどることができます。

記念館と庭園は、それぞれ谷崎が好んだ様式の邸宅と庭園を再現したものです。

また、記念館内にあるホールでは、朗読会や文学解説、特別展などのイベントが季節に合わせて開催されます。

 

谷崎潤一郎記念館

開館時間:10:00~17:00

休館日:毎週月曜日(月曜日が祝日の場合は翌日)、年末年始(12月28日~翌年1月4日)

入館料:一般300円 高大生200円 中学生以下無料 ※特別展、の入館料は異なります

 

まとめ

今回の記事では、谷崎潤一郎の生い立ちや経歴、代表作品について解説してきました。

嗜癖については一貫していながらも、作品では実験や新たな知見をすぐに取り入れるなど非常に意欲的な作家だった谷崎。

また、数多くの名作の裏に、谷崎自身の私生活が関わっています。

彼の人生と共に作品を楽しんでみてはいかがでしょうか。

 

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