ちぎり絵山下清
ART

山下清とは?日本のゴッホと呼ばれた画家の人生や代表作品を解説!

緻密で色鮮やかな作風のちぎり絵で名を馳せ、「日本のゴッホ」と称された画家・山下清。

テレビドラマ「裸の大将放浪記」のヒットにより、坊主頭にランニングシャツと半ズボンの出立ちで全国を放浪した画家という印象が強いですが、ドラマでは描かれなかった側面も多かったようです。

唯一無二の個性派画家として今も評価され続ける山下清の人生と代表作品を解説します。

 

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山下清とは

  「放浪の画家」「日本のゴッホ」として知られる画家 

山下清は、色紙をちぎって点描画のように貼り込む色鮮やかで独特な貼り絵をはじめ、油彩画や陶器の絵付けなどさまざまな作品を数多く生み出した画家です。

16歳のときに銀座の画廊で開かれた個展で、洋画家の梅原龍三郎や安井曾太郎から「その美の激しさ、純粋さは、ゴッホやアンリ・ルソーに匹敵する」との称賛を受けたことから、「日本のゴッホ」として知られるようになりました。

18歳で放浪の旅に出て日本全国を回り、その旅の思い出を「放浪日記」に綴っています。

「放浪日記」は後に映画化、そしてドラマ化され、山下清は放浪の天才画家として広く知られるようになりました。

 

  山下清の素顔 

山下清は3歳の頃に重い消化不良で命の危険に陥り、軽い言語障害と知的障害の後遺症を負うことになりました。

しかし障害をものともせず、高い集中力と卓越した観察眼で細やかな描写の画風を確立しています。

18歳から32歳まで自由気ままな放浪生活をしていますが、ドラマのように旅先でスケッチし仕上げていく方法ではなく、当時入所していた学園に戻ってきてから旅の思い出をノートに文章で残し、旅で見た情景の記憶をもとに作品を制作していました

見た風景を細部まで再現できるほどの驚異的な記憶力の持ち主だったことから、山下清はサヴァン症候群であった可能性が高いと言われています。

山下の作品は実際の風景より色鮮やかで暖かく、アレンジが加わった心象風景を描いたものが多いのも特徴です。

絵画教育を受けていなかったが故に、既存の芸術論的な先入観のない、独自性に溢れた作風でもありました。

軽い知的障害を持っていたがゆえに山下清の作品は障害者アートと呼ばれることもありますが、こうした素顔を知ると純粋なアートとしての評価を受けるべき画家と言われるのも納得できるでしょう。

 

山下清の経歴

 転校先で出会ったちぎり絵細工で才能を開花 

山下清がその才能を開花するきっかけとなったのは、12歳で転校した知的障害者施設「八幡学園」で教育の一環として行われていた「ちぎり紙細工」との出会いでした。

もともと手先が器用であったこともあり、山下清は貼り絵に没頭していきます。

やがてその作品は八幡学園の顧問医を勤めていた精神病理学者・式場隆三郎の目に止まり、式場の指導を受けることで才能がさらに磨かれていくこととなりました。

16歳の時に「特異児童労作展覧会」で貼り絵を展示したところ、多くの人の注目を集め、その後開催された銀座の個展では「日本のゴッホ」と絶賛されるまでになります。

 

 18歳から放浪の旅に

山下清

ソース

18歳になった山下清は、ある日突然学園から姿を消し、その後16年間にわたって放浪を繰り返します。

学園から出て行って3年ほど経つとふらっと戻り、放浪先で見た風景や花火を貼り絵として残し、再びふらりと出ていく、その繰り返しだったようです。

とりわけ花火が好きだった山下清は、全国に足を運んで花火を観てその情景を描くという日々を送り、その中で代表作ともいわれる「長岡の花火」を制作しました。

 

多彩な作品を制作 

山下清といえばちぎり絵というイメージがとても強いですが、実はちぎり絵以外の作品も数多く手がけています。

32歳の時放浪の旅に終止符を打った山下清は、式場の指導により陶器の絵付けやフェルトペンの巣描画などの新境地を開き、油絵や水彩画、ペン画など多彩な作品を制作しました。

1956年、東京大丸で開催された「山下清展」を始めとして全国巡回展が約130回開かれ、500万人を超える観客が訪れました。

1961年には式場隆三郎らとともに約40日間のヨーロッパ旅行にでかけ、帰国後エッフェル塔などの風景画を50点以上の作品を制作しています。このとき初めてスケッチブックを持参したといわれています。

 

  晩年と死因

晩年の山下清は、「東海道五十三次」の制作のために東京から京都までスケッチ旅行に出掛け、約5年の歳月をかけて55枚の作品を遺しています。

1971年、「今年の花火見物はどこに行こうかな」の言葉を最後に、山下清は脳出血のため49歳で急死。

「東海道五十三次」は山下清の遺作となりました。

 

山下清の作品の特徴

緻密で色鮮やかな貼絵

山下清の貼り絵は、鋭敏な観察眼と繊細な色彩感覚による緻密な描写が魅力のひとつです。

3ミリ程度に手でちぎった色紙を細かく貼り込んでおり、まるで印象派の絵画のようなソフトな印象を与えます。

色紙のちぎり方を工夫し、絵筆で絵の具を塗り重ねたタッチに似た雰囲気を出している技術もすばらしいと言えるでしょう。

 

微妙な変化を表現した色彩感覚

少しずつ違う色の色紙を重ねて貼る技法は、陰影を出し作品に立体感を与えています。

たとえば、代表作の1つである「桜島」では、波にきらめく光を青と白の色紙を大小に細かくちぎることで表現。

遠近感を感じさせる色紙の貼り方の斬新さには目を見張るものがあります。

 

「こより」による立体感

山下清の独自の技法として注目されるのは、紙を細くなるように捻った「こより」です。

紙をちぎって貼り付けた平面的な表現とあわせて「こより」の手法を駆使することで、作品に厚みが増し立体感が増します。

こよりを使うことによって、臨場感ある表現が可能になっています。

 

山下清の代表作品7選

 長岡の花火 (貼り絵)

制作年 1950

28歳の時に制作した山下清の代表作

花火好きだった山下清は、日本一の花火を観るため1949年の夏に長岡を訪れ、その記憶をもとに翌1950年に制作しました。

漆黒の夜空と大小の丸い花火の色の対比が素晴らしい上に、ぎっしりと埋め尽くされた観衆や信濃川の水面に映る花火の描写の細やかさも秀逸です。

「長岡花火」を支えつづけてきた花火師の嘉瀬誠次は、この作品を今も家宝として大切に所蔵しているのだそうです。

 

桜島(貼り絵)

制作年 1954

放浪の旅の最後に見たとされる桜島を描いた作品。

アメリカの「ライフ」誌や朝日新聞社が放浪の旅に出た山下清の捜索に乗り出し、一人の高校生の通報によって桜島を望む海岸付近で山下清は発見されました。

長年の放浪癖に終止符を打ち、仕事として貼り絵の制作をはじめた最初の作品と言われています。

 

清の見た夢

制作年 不詳

一つ目巨人に大蛇、大蜘蛛が一斉に攻めてくる、まるでゴジラの映画のようなワンシーンが描かれています。

絵本のように愛らしいモチーフと原色を中心とした明るい色使いは、想像力豊かな山下清ならではの世界観がよく表れている作品と言えるでしょう。

 

 ひまわり(貼り絵)

制作年 不詳

1954年当時、山下清は「ゴッホもルソーも全然しらない」と言っていますが、ゴッホの人物を模写した作品は残っています。

この作品もゴッホの「ひまわり」を彷彿とさせる構図ですが、色彩のコントラストは山下清ならではのものです。

背景の色を抑えることで花の黄色の鮮やかさを目立たせると同時に、花びらや葉の葉脈など細やかさを引き立てています。

 

パリのエッフェル塔 (水彩画)

制作年 1961

こちらは山下が、ヨーロッパ旅行に行った後に描かれた作品。

貼り絵ではなく、水彩画にフェルトペンでエッフェル塔が描かれています。

伸びやかで迷いのない線とほのぼのとしたタッチのバランスが、山下清の画才の円熟味を感じさせます。

 

 日本平の富士 (貼り絵)

制作年 1965

富士山は山下清が好んだモチーフの一つです。

色鮮やかでありながら落ち着いた独特のタッチで描かれた富士山の荘厳な雰囲気が印象的。

色紙を極限まで細かくちぎって重ね貼りすることで、深みのある温かさを感じさせます。

 

 東海道五十三次(素描画)

制作年 不詳(1964-1971)

晩年、山下清が「いつまでも世に残る大作にしたい」という想いで描いた作品と言われています。

東京を皮切りに京都までの旅を約5年間続け、作品を次々に仕上げました。

眼底出血を起こして制作を中断し、その後脳出血により急逝したことで未完と思われていましたが、他界後に三重の桑名から京都までの残り13枚がアトリエから発見されました。

全55枚にもおよぶ大作です。

 

山下清の作品を鑑賞できる美術館 

山下清の作品の多くは遺族や関係者が保有していますが、作品の一部は美術館で鑑賞することができます。

 山下清 放浪美術館  

放浪美術館は、貼り絵を主体として各地の窯元で制作した絵付け陶磁器やフェルトペンによる点描画、スケッチ作品などを集めた山下清作品の常設美術館です。

幾度も訪れては大好きな諏訪湖の花火を見物していた山下清ゆかりの土地、長野県茅野市に建てられています。

 

山下清放浪美術館詳細

開館時間:9:30~18:00(10月~3月は~17:00まで)

休館日:なし

入館料: 大人800円 小中学生400円

住所:〒391-0001 長野県茅野市ちの2764-3

 

 古い町並み美術館

岐阜県飛騨高山にある美術館です。

山下清が制作した貼り絵やフェルトペン画「花」「昆虫」「花火」「風景」の原画120点、記録写真25点が常設展示されています。

館内には山下清になりきって撮影ができるスポットもあります。

 

古い町並み美術館詳細

開館時間:11:00~16:00

休館日:水曜日

入館料: 大人700円 中高生400円 4歳~小学生250円 幼児無料

住所:〒506-0841 岐阜県高山市下三之町1-9

 

 月夜野 上牧温泉 辰巳館

上牧温泉の辰巳館は、山下が式場と一緒に何度か訪れ、長期滞在して数々の作品製作に励んだ宿です。

山下の貼り絵の原画を元に、特殊ガラスを使って制作された「はにわ風呂」と「大峰沼と谷川岳」のタイル絵が鑑賞できます。

併設された「山下清ギャラリー」には、火山口から天空へ真っ赤な龍を噴き出している水彩・マジック画の作品「登龍」などが展示されています。

 

月夜野 上牧温泉辰巳館詳細

開館時間:辰巳館の営業時間に準じる

休館日:なし

入館料: ギャラリーとして併設

住所:〒379-1303 群馬県利根郡みなかみ町上牧2052

 

もっと山下清作品を知ることのできる本

 日本ぶらりぶらり

山下清自身の文書とスケッチで綴る放浪記です。

彼が放浪の旅の中でつけていた日記を元に、主治医が少しだけ読みやすい形に手を加えたもの。

「ぼくは新聞はめったにみないが、ときどきよむとみんな本当のことばかりではないような気がするので、嘘と本当はどのくらいのわりあいに世のなかにあるものだか、わからなくなる。大ぜいが本当だといえば、嘘でも本当になるかもわからないので、世のなかのことは、ぼくにはよくわからないのです」

そんな日記から、山下清の純粋無垢な性分が垣間見える一冊です。

日本ぶらりぶらり

748円 (税込)

出版社 ‏ : ‎ 筑摩書房 (1998/4/1)

 

 山下清の放浪日記

山下清自身の放浪日記の1つ。

貼り絵でみせた特異な才能が世の注目を集めながらも、自然体で気ままに絵を描き続けた放浪画家山下清の放浪の日々が綴られています。

「みんなが爆弾なんかつくらないで、きれいな花火ばかりつくっていたら、きっと戦争なんて起きなかったんだな。」

素朴な言葉の数々は独特の魅力にあふれています。

山下清の放浪日記

2,590円 (税込)

出版社 ‏ : ‎ 五月書房 (2008/12/1)

 

 山下清作品集

貼り絵を中心に80点ほどをオールカラーで収録。

傑作「長岡の花火」をはじめ貼り絵が約60点、水彩画やペン画、油彩画などが10数点収録されています。

山下清の作品世界をとことん堪能したい人におすすめの画集です。

山下清作品集

10,408円 (税込)

出版社 ‏ : ‎ 河出書房新社 (2012/8/23)

 

まとめ

類まれなる観察眼と色彩感覚を駆使して、貼り絵をはじめさまざまな作品を精力的に制作し続けた山下清。

没後50年を経た今でも展示会が定期的に開催されるなど、その人間味あふれる作風は多くの人の心をとらえ続けています。

唯一無二の天才画家の作品にぜひ触れてみませんか?

 

 

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