「ヴェネチア・ビエンナーレ2024」日本館代表作家に毛利悠子が選出、キュレーターはイ・スッキョン
2024年4月に開催が予定されている「第60回ヴェネチア・ビエンナーレ国際美術展」。
2023年6月12日、国際交流基金は日本館展示に関する記者発表会を行い、日本館の出品作家に美術家の毛利悠子、キュレーターにイ・スッキョンが選出されました。
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第60回ヴェネチア・ビエンナーレ国際美術展
2024年4月20日〜11月24日にかけてイタリア・ヴェネチアで開催される国際的な芸術の祭典「第60回ヴェネチア・ビエンナーレ国際美術展」。
ヴェネチアの市内各所を舞台とする同ビエンナーレは、1895年より100年以上にわたって開催され、美術展のほかに建築展、音楽祭、映画祭、演劇祭などを独立部門として抱えています。
国別参加方式を採用している美術展では、現代アートの動向を国際的な視点から俯瞰することができる場として、毎回世界的な注目を集め、国際的な現代アーティストの作品群が集います。
日本は1952年に初めて公式参加し、1958年に日本館が完成。
出品作家は選考委員によってノミネートされた作家から選定されており、今回の選考委員は、
片岡真実(森美術館館長)
建畠晢(埼玉県立近代美術館館長、国際展事業委員会委員長)
野村しのぶ(東京オペラシティアートギャラリーキュレーター)
松本透(長野県信濃美術館館長)
南雄介(キュレーター)
鷲田めるろ(十和田市現代美術館館長、キュレーター)
の6名で構成されました。最終選考作家には、
風間サチコ
鴻池朋子
志賀理江子
毛利悠子
百瀬文
の5名の女性作家が選出され、最終選考の結果、代表作家には毛利悠子が選出。
毛利の意向により、キュレーターにはイ・スッキョン(テートモダン シニアキュレーター、第14回光州ビエンナーレ アーティスティック・ディレクター)が選ばれました。
日本館キュレーターを外国人が担当するのは今回が初の事例になります。
美術家 毛利悠子
1980年生まれの美術家 毛利悠子は、コンポジション(構築)へのアプローチではなく、環境などの諸条件によって変化してゆく「事象」にフォーカスするインスタレーションや彫刻を制作しています。
主な出展歴としては、第14回光州ビエンナーレ(2023)、第23回シドニー・ビエンナーレ(2022)、アジア・アート・ビエンナーレ2021(台中、2021)、第34回サンパウロ・ビエンナーレ(2021)、グラスゴー・インターナショナル2021(2021)、第9回アジア・パシフィック・トライエニアル(ブリスベン、2018)、第14回リヨン・ビエンナーレ(2017)などに参加。
主な受賞歴として、日産アートアワードグランプリ(2015)、第67回芸術選奨文部科学大臣新人賞(2017)などを受賞しています。
今回の発表に対し、毛利悠子は以下のコメントを寄せています。
いつかわたしたちはみな蒸発するだろう ――オノ・ヨーコ
2022年、ナショナル・ギャラリーに展示されているヴァン・ゴッホ《ひまわり》にトマト缶をかけた環境保護団体ジャスト・ストップ・オイルによる抗議行動は記憶に新しい。
美術誌『frieze』編集長による実行者2名への取材では、「洪水で被災した3300万人のパキスタン人」への無関心と、たった2名の西欧世界からの抗議への注目という非対称性が行動理由に挙げられている。
活動家が主張したアートへの攻撃は、先進国ではまだ認識さえもされていない、地球上の多くの生態に影響を及ぼす気象危機の関心を大きく集めることになった。
2人はゴッホにトマト缶をかけた後、こう主張した――「より価値があるのはアートか、それとも命か?」
危機は逆説的に、人々に最大の創造性を与える――これは東京駅構内で起こる水漏れに日用品を用いた(不)器用仕事で立ち向かう駅員たちのフィールドワーク「モレモレ東京」を着想するに至った根幹であり、また、世界的な厄災となったコロナ禍でますます確信した私の信念だ。
2019年に「50年に1度の」洪水に見舞われたヴェネチアにて、アートの近傍で起こる世界的問題を剔抉し、創造的なヴィジョンを提示したいと思う。
キュレーター イ・スッキョン
今回、日本館の代表キュレーターに選ばれたは、テート・モダン(イギリス・ロンドン)のインターナショナル・アート部門のシニアキュレーター、イ・スッキョンです。
主なキュレーションとして、「Nam June Paik」(2019-20)、「A Year in Art: Australia 1992(2022-23)、「Richard Bell」(2023)などの主要展覧会を手がけています。
また、第56回ヴェネチア・ビエンナーレ国際美術展(2015)で韓国館のコミッショナー、キュレーターを兼任し、2023年4月7日に開幕した第14回光州ビエンナーレ(毛利悠子も出品)のアーティスティック・ディレクターも務めています。2023年8月からは、英国マンチェスター大学ウィットワース美術館のディレクターに着任予定です。
イ・スッキョンは日本館のキュレーターを務めるにあたり、以下のコメントを寄せています。
私は以前から、毛利悠子氏の表現活動を高く評価してきた。
彼女の日常にありふれた素材の選び方や空間の構成はとても興味深い。
音や音楽は、主役にならず、過剰に際立つこともなく、与えられた空間と一体化するか、或いは空間の一部になるように感じる。
第14回光州ビエンナーレに出展したのは、「soft and weak like water(天下に水より 柔弱なるは莫し)」というテーマにまさにふさわしい、静かな力強さを感じさせる意義深い作品であった。
彼女の作品を鑑賞していると、対象だけでなくそれを取り巻く環境に目が向き、意図する音だけでなく雰囲気に耳を澄まし、無音も意識するようになる。
2024年のヴェネチア・ビエンナーレ日本館にて、示唆に富む作品を生み出してくれると確信している。
世界で活躍する作家、キュレーターが一堂に集う芸術の祭典、ヴェネチア・ビエンナーレ。
日本館でどのような作品が生まれるのか、今後のテーマ発表を待ちたいところです。
第60回ヴェネチア・ビエンナーレ国際美術展
会期:2024年4月20日~11月24日
会場:ジャルディーニ地区、アルセナーレ地区ほか
総合ディレクター:アドリアーノ・ペドロサ(サンパウロ美術館 アーティスティック・ディレクター)
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