2018/03/12
アート/Art

0から学ぶ西洋美術史 ~北方・ルネサンス~

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15.16世紀イタリア美術とは違う独自の発展を遂げたアルプス以北の国々の美術を総称的北方美術といいます。

国ごとに発展した芸術を紹介しますが、
なかでも15世紀にその舞台となった、フランドル(現ベルギー/フランダース(仏語)の方が日本人には馴染みが深いですね)は、

ブルゴーニュ公国の配下の裕福な市民層を母体として豊かな宗教画が生まれます。

同じ時期、イタリアではプロポーションや遠近法といった合理的な人体、空間表現が研究されていたのに対し、

ここではむしろ現実生活を視野に入れた写実表現が追求されていました。

そして、それに最も適した技法である油彩絵画が生まれます。

 

↓前回の記事はこちら↓

0から学ぶ西洋美術史~盛期イタリアルネンス編~

この時期の、アルプス以北の芸術について今回は紹介します!

 

フランドル芸術

 

15世紀フランドル芸術は、主に二人の画家を中心に展開されました。

15世紀初め、画家フーベルトとヤンというファン・エイク兄弟が、

それまで仕上げに使われていたニスに顔料を混ぜ、透明感や質感を持った油絵という新しい絵画表現を生み出します。
(それまではフレスコ画が主流でした)

弟ヤン「宰相ロランの聖母」をみてみましょう。

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幼児キリストが持つ真珠の透明感から背後に広がる都市のパノラマに至るまで、実に細密な描写がなされているのが分かります。
この作品は縦横わずか60センチの大きさであるにも関わらず、この質量は圧巻です。

このように、ファン・エイク兄弟は、徹底した写実表現を追求します。

一方で、もう一人の重要画家ロヒール・ファン・デル・ウェイデン

代表作「ピエタ(追悼)」をみてみましょう。

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特に、中央のキリストはまるで彫刻のような硬さを持ち、どんよりとした空の光が画面に重い雰囲気を与えています。

ロヒールは人物に対する正確な認識ではなく、このメランコリックな情景表現を重要視しました。
 

このように、15世紀フラドルの芸術
現実性宗教性両側面が混在して展開していきます。
ファン・エイク兄弟の弟子や、ロヒールの弟子も写実性を持ち、感覚的側面を意識した宗教画を生み出しました。

一方イタリアでは、遠近法や人体プロポーションの研究により現実的な表現が生まれていた15世紀末になっても、

フランドル芸術の表現は、油絵技法の綿密描写やメランコリックな情景を描いた感覚的側面しか重要視されませんでした。

 

ドイツのルネサンス

 

15世紀ドイツ・ルネサンスを成した北方ルネサンス最大の画家・版画家アルブレヒト・デューラーが誕生します。

代表作「1500年の自画像」をみてみましょう。

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正面からとらえたその厳かな姿と、1500年という題名からわかる通り、キリストだと思える自画像です。
頭部を頂点とする三角形の中に見事におさまった構図の妙や、髪の房の一つ一つまで丹念に描写されたその表現さることながら、

画家の姿に神のイメージをダブらせた自画像として西洋絵画史上、忘れることのできない作品です。

 

 

デューラーが生きた同時代、美術の先進国イタリアでは、レオナルド、ミケランジェロが大活躍しラファエロもそろそろ頭角を現している時代です。

イタリアと異なり北方には本来、復活すべき古代の伝統がありませんでした。
そこでデューラー自ら学んだ古代の英知を版画や絵画によって伝道し、北方ルネサンス最大の画家・版画家になったのです!

 

 

デューラと対の存在として重要な画家グリューネヴァルトを忘れてはいけません!

宗教画にイタリア・ルネサンス的な現実性を帯びた人物美を与えたデューラー
一方、グリューネヴァルトは宗教画に森の国ドイツの地域性・民族性より得た幻想性を与えた画家でした。

 

 

代表作「イーゼンハイム祭壇画」をみてみましょう。
これは、数枚の板絵を重ねた構造をしており、中央を観音開きにすると次々に絵画が現れるという代物です。

その中の「キリストの復活」です

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石棺から炎のように立ちのぼるキリストの光に照らし出され、周りの兵士たちは日常性から容易に神秘の世界へと移行しています。

次に、「聖アントニウスの誘惑」です。

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荒野で修行に励む聖人を、屈辱し脅かす奇怪な悪魔たちが表されています。
上の「キリストの復活」に比べると、そのおどろおどろしい表現に、恐怖よりも滑稽なグロテスクな印象を受けます。

光と色彩による幻想的な表現と、ドイツの地域性・民族性を取り入れた古い時代を代表する画家なのです。

 

 

 

このようなグリューネヴァルト幻想的ビジョンを受け継いだ画家アルトドルファーがいます。

「聖ゲオルギウスと竜」をみてみましょう。

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おもしろいですね
これは、聖人が竜を退治する場面を扱った宗教画ですが、まずその森の描写に目がいってしまいます

自然は時に恐怖や畏怖の念をおぼえさせます。
彼はそれに注目し、宗教画や歴史画の背景に神秘的な風景を展開したのです。

 

 

 

 

ネーデルランドのルネサンス

 

この時期のネーデルランドを代表する画家といえば、ボッスです。

ボッスは、伝統にはしばられない自由な創造力によってうみだされた怪奇な悪魔たちが印象的な作品で有名です。

「快楽の園」

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生み出された魔物たちが生き生きと描かれている一方で、人間たちは無力に描かれているのがわかります。
さまざまな悪に対する無力、ボッスは現実の中にそうした人間の堕落した本質を見抜く力があったのですね。

 

 

同時代人のレオナルド・ダ・ヴィンチ自然の謎を解明する素描を描いていた頃、ボッス人間の堕落を凝視していたのです。

 

 

 

ボッスが活躍してから約半世紀後、フランドルピーテル・ブリューゲル(父:息子も同じ名のため)、がボッスの表現を受け継ぎます
ボッスは若い頃から大人気画家であったため、似たような作風を求める注文主、同じように表現しようとする画家たちがたくさんいました。
ブリューゲルもその一人ではありました。

「悪女フリート」

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この作品からもよくわかりますよね。
しかし、ブリューゲルが数多くの模倣者に止まらなかった理由もあります。

 

「鎖につながれた猿」をみてみましょう。

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どうも単なる動物画ではなく、何か私たちに語りかけているような感じがします。

好物のハシバミにつられて鎖につなげれてしまった哀れなさるたち。

ここには誘惑に翻弄される人間の本性に対する画家の辛辣な視線が含まれているのです。

 

この作品が描かれたころ、イギリスに生まれたシェークスピアと同じく、

ブリューゲル人間の真実をユーモアと皮肉をこめて追及した偉大な画家なのです。

 

 

 

また、東京・上野にある東京都美術館にてブリューゲルの大回顧展

「ブリューゲル展 画家一族 150年の系譜」(~2018年04月01日)を開催中です!

同時代のフランドルの芸術も展示してあるようです。

ぜひ、足を運んでイタリア・ルネサンスには負けない北方美術をのぞいてみてください。

 

「ブリューゲル展 画家一族 150年の系譜」

2018年01月23日 ~ 2018年04月01日

東京都美術館

〒110-0007 東京都台東区上野公園8-36

http://www.ntv.co.jp/brueghel/

 

 

 

まとめ

このようにして、北方ルネサンスは独自の土地や文化をもとに発展していきます。
人体美・遠近法といった絵画的基礎が完成され、人々の表現はさらなる発展を遂げます。
そう、17世紀を代表する時代、バロックの始まりです。
次回はバロックと17世紀をみてみましょう!

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