愛知県立芸術大学の卒業生・有名アーティスト7選
日本の公立芸術大学の中で、東京芸大に次いで有名な、愛知県立芸術大学。
愛知県立芸術大学、東京では「愛芸」、愛知では「県芸」の名称で知られています。
また、日本で初めて、美術学部と音楽学部を備えた公立芸術大学としても有名で、
奈良美智を筆頭に、絵画や現代アートの分野で活躍するアーティストを多く輩出しています。
愛知県芸から東京芸大の院に進む学生も多く、勢力的に活動する若手作家を多く生んできた大学でもあります。
今回は、そんな愛知県立芸術大学出身の有名アーティストを7名ご紹介。
「絵画」へのアプローチを様々な形で模索している作家さんが多く、奈良美智ファンの方や、絵画・現代アートが好きという方には、特に知って欲しいアーティストさんばかりです。早速見ていきましょう。
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1.奈良美智
現代アーティスト
ソース
やはり、著名な愛知県立芸術大学出身者といえば、奈良美智。
特徴的な「見返す人物」をモチーフにしたドローイングやアクリル絵具による絵画で知られ、国内外に多くのファンを持つ、日本を代表する現代アーティストです。
1959年青森県生まれで、愛知県立芸術大学修士課程修了した後、1988年渡独、国立デュッセルドルフ芸術アカデミーに在籍していました。
ケルン在住を経て2000年に帰国後、2001年に国内で初めての大規模な個展「I DON’T MIND, IF YOU FORGET ME.」を横浜美術館で開催しました。
Making of Nara’s Work(1990)
奈良美智の作品といえば、独特のひねた表情の子どもを描く絵画やドローイングが印象的です。
2000年中頃は、大阪のクリエイター集団grafとの共同プロジェクト「Yoshitomo Nara+graf: A to Z」を展開し、音楽を愛し、山々を望む栃木のアトリエで制作しています。
2009年2月27日午前3時すぎ、ニューヨーク市内のファースト・アベニュー駅構内で落書きをして逮捕され、市内の施設に24時間拘置された後に釈放されるという、現代アーティストならではのエピソードが残っています。
また奈良は、東京芸大からも教授としてのオファーを幾度か受けており、今までは断ってきましたが今後は就任するとの噂もあります。今後の活動がますます気になるところです。
『’Wicked Looking’ 2012 』
奈良美智 全作品集 (1984-2010)
『Yoshitomo Nara: The Complete Works』より
『World is yours』
横浜市上大岡駅の「ゆめおおおかアートプロジェクト」の一環として設置された作品です。
この特徴ある吹き抜け空間を子供の遊び場に見立てました。梁から下がったブランコにのった、ルーシーと名付けたちょっと意地悪そうな目をした女の子は、強く生きる人間の姿を表しています。またその横には、希望を表す星を釣っている男の子がいます。これは自分の子供時代を想起させると同時に、子供の多彩な表情をあらわした作品です。
2.杉戸洋
現代アーティスト
奈良美智と同じく、国内外で多くの絵画ファンの心を惹きつける作品を発表し続ける杉戸洋。
現在は東京藝術大学で准教授を勤めています。
中でも「杉戸ゼミ」は学生からの人気が高く、熱い支持を受けています。
奈良美智とも親交が深く、過去にはアンリ・シャギャーン(奈良美智)+ピエール・シャギャーン(杉戸洋)の新人作家ユニット「シャギャーン」による『シャギャーン展』(2008年)を開催した事もあります。
展示された作品はどれもセザンヌやマティス、ピカソやボナールといった近代絵画のタッチで描かれた絵画作品で、そしてどの作品にも「お尻」のモチーフが描かれているという二人のユーモアが炸裂した展示でした。
『the day going back home』
東京美術館 展覧会より
『杉戸洋 とんぼ と のりしろ Hiroshi Sugito module or lacuna』
2003年:第8回イスタンブール・ビエンナーレに参加
2006年:ヴァンジ彫刻庭園美術館で個展「April Song」を開催
2008年:第7回光州ビエンナーレに参加2009年:原美術館「ウィンター・ガーデン:日本現代美術におけるマイクロポップ的想像力の展開」に参加(2009、ドイツ、ケルン日本文化会館/2010、トロント日本文化センター、トロント、カナダ / Galeri’a Arnold Belkin: Museo Universitario del Chopo、メキシコシティ、メキシコ へ巡回)
2009年:愛知県美術館「放課後のはらっぱ-櫃田伸也とその教え子たち」に参加
2010年:国立国際美術館での「絵画の庭-ゼロ年代日本の地平から」に参加
2014年:ハウス・コントルクティヴ美術館、チューリッヒ「ロジカル・エモーション― 日本現代美術展」(クラコフ現代美術館、ポーランド、2015年 ザクセンアンハルト州立美術館、ドイツ、2015 へ巡回)
2016年:豊田市美術館で個展「杉戸洋 − こっぱとあまつぶ」を開催
一通り見ても、毎年何かアート展に参加しています。そして2017年にも東京美術館にて企画展が催されました。
次回どんなの展覧会を行うのか、企画展に参加するのか、待ち遠しいですね。
3.村瀬恭子
画家
水彩のように流動的でありながら、どこか心がざわめくような、少女や森林をモチーフとした絵画を発表する村瀬恭子。
奈良美智に憧れて自身も渡独し、現在のような、水彩画のような透明感と油絵特有の透明感を両立した独自の絵画技法を生み出しました。
流れるような浮遊感を持った絵画は、自然とその世界に吸い込まれるような世界観を持っており、見ていてとても心地の良い、また、どこか懐かしい記憶を呼び覚ますような絵画です。
巨大壁画なども制作しており、絵から伝わるエネルギーや心地よさを、ぜひ美術館で本物を見て感じて欲しいです。
現在は多摩美術大学絵画学科油画専攻の教授を務めています。
『Around the lilac rock(#3)』
豊田市美術館企画展『村瀬恭子 Fluttering far away/遠くの羽音』より
村瀬恭子さんは、1963年に岐阜県岐阜市に生まれ、1986年:愛知県立芸術大学卒業し89年に同大大学院修了します。
1990から96年に国立デュッセルドルフ芸術アカデミー(ドイツ)に在籍し、1993年にはコンラッド・クラペックよりマイスター・シューラー取得します。
1996年以降は国内外で多数のグループ展に精力的に参加します。
2009年に愛知県美術館「放課後のはらっぱ-櫃田伸也とその教え子たち」に参加、2010年:豊田市美術館で個展「Fluttering far away」を開催します。
「絵と、 」vol.3 村瀬恭子より『アザミ』
そして、2018年9月1日より、ギャラリーαMにてαMプロジェクト2018『絵と、 』の第3弾として、村瀬恭子の個展を開催されます。
4.小林孝亘
現代アート作家
「光」を内包するような線のない緩やかな画面と色使いで、それまでの具象絵画に対して革新的な作品を多く発表する、小林孝亘。
活動当初は自身を潜水艦に投影した絵画作品で注目を集め、だんだんと現在の明るい色調の作品になっていきました。
ポートレイトや身の回りの日用品、風景などを正面から描いた作品からは、「絵とは何か」「見るとは何か」という事に真摯に向き合う作家の姿勢が伺えます。
現在は武蔵野美術大学造形学部油絵学科の教授を務めています。
2014年に開催された「小林孝亘 私たちを夢見る夢」は、作品集「小林孝亘 私たちを夢見る夢」(青幻舎)としても刊行されています。
横須賀美術館「小林孝亘 私たちを夢見る夢」より『BARBED WIRE』
小林孝亘さんは、1960年に東京都日本橋生まれ。1986年に愛知県立芸術大学美術学部油画専攻卒業しています。その後、1996から97年まで文化庁芸術家在外研修員として1年間バンコクに滞在します。
1998年には、ジャパン・アート・スコープ’98派遣アーティストとしてフランス、ロット・エ・ガロンヌに滞在しますが、1999から2012年には忙しく東京とバンコクを行き来しています。
2002年に小林孝亘作品集「ひかりあるところへ」(日本経済新聞社)刊行し、2009年に愛知県美術館「放課後のはらっぱ-櫃田伸也とその教え子たち」に参加しています。
2007年東京ステーションギャラリー蔵より『Pillow』
求龍堂より出版のエッセイ『ふつうの暮らし、あたりまえの絵』
また、小林孝亘さんはエッセイも出版しており、アンティーク家具を修理していたアルバイト時代のこと、おいしい食べ物のことなど、創作につながる小さなタネについて綴られています。
5.森北伸
現代アーティスト
家や人、小鳥、生き物、植物、自然といった、私たちの日常に近い視点に寄り添うような彫刻作品を発表する森北伸。
他の作家とは絵画と彫刻で専攻が異なりますが、森北さんは絵画と彫刻を行き来するような作品を多く発表しています。
どこか懐かしさを感じる彼の作品は、絵のように私たちの生活にそっと寄り添う、そんな作品ばかりです。
『遠くからでも見える人− 森北伸 展 絵画と彫刻』より
十和田市現代美術館の不思議な常設作品、《フライングマン・アンド・ハンター》。建物と建物の間で、空を見上げて初めて見つけられる2体の彫刻です。空中浮遊しているのか、空へ向かって飛び立とうとする一人を、もう一人がつかまえようとしているのか?ユーモラスな姿で私たちに「間」や「関係」を考えさせられる。
ギャラリー百草・企画展「森北伸個展」より
森北伸さんは、1969年愛知県生まれ。愛知県立芸術大学美術学部彫刻専攻卒業しています。
2009年8月に愛知県美術館「愛知トリエンナーレ2010プレイベント放課後のはらっぱ」に参加し、同年10月、ドイツ(ドレスデン)のザクセン州立美術館にて開催された「Kami静と動 現代日本の美術」にも出品しています。
現在は愛知県陸芸術大学美術大学彫刻専攻の准教授を勤めています。
准教授を勤めながらも、2017年10月 から今年の1月まで企画展も行なっており、多くのメディアから取材を受けています。
あいちトリエンナーレ2016より『ライムライト』
6.坂本夏子
「絵画でしか表せない世界」を描きたい、自身の制作活動についてそう語る坂本夏子。
彼女が描き出す画面には、人間の目では捉えられないような、普通の遠近感では描けない世界が広がっています。
近年ではアーティスト・コミュニティ「パープルーム」にも参加し、国内各地で行われるグループ展に出品しています。
『BATH,R』
『冬(水仙)』
こちらは、熊本美術館にて開催された「高橋コレクション」のフライヤーや、フレットレスベース奏者・織原良次の2ndアルバム『間を奏でる』のジャケットにも起用された作品です。
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カラフルな色面とそれを切り抜いたり、それをひねったり、色と形の関係を平面の素材の中で探究してきた佐藤克久。
近年ではMAT, Nagoyaコミッティーメンバーも務めている他、パープルームの中心メンバー、梅津庸一との二人展「ネオ受験絵画とフラジャイルモダンペインティングにみる日本の現代美術家の苦悩」を開催するなど、今後の活動にも目が離せない若手アーティストの一人です。
『降る夜・冠/star falls (crown)』
佐藤克久さんは、1973年に広島県呉市生まれ。愛知県立芸術大学美術学部油画専攻卒業しています。活動当初は概念的な写真、立体作品を発表していたが、現在は絵画制作が中心になりつつあるようです。
2009年に愛知県美術館「放課後のはらっぱ-櫃田伸也とその教え子たち」、2016年に「あいちトリエンナーレ2016年虹のキャラヴァンサライ」に参加しています。
現在は制作活動のかたわら、和光大学の特任准教授としてコンテンポラリーアート等の講義を勤めています。2018年7月にも企画展に参加するなど、精力的にアーティストとして活動しています。
佐藤克久ゼミ『コンテンポラリーアート・絵画表現工房』より
500m美術館vol.27『絵画の現在地』より
佐藤克久さんのオフィシャスサイトはこちら
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