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西洋美術史とは?年代順に詳しく解説

これだけは知っておきたい!
西洋美術史の基礎知識

有名絵画の来日などで話題になる美術展。
海外旅行では必ずツアーに組み込まれている美術館。

会社によっては内覧会に招かれたりと、美術史は大人の教養として最低限身につけておきたいものですよね。

「ピカソやゴッホの名前は聞いたことがあるけど、違いがよく分からない」

「絵は好きだけど、美術史はちょっと苦手」

そんなあなたも、大まかな流れを押さえておくだけで作品を見る楽しみがもっと広がります。

今回は、最低限知っておきたい美術史の流れをご紹介。

皆さんも美術史への理解を深めて、美術鑑賞をもっと楽しんでみてくださいね。

 

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原始美術

原始美術とは、アルタミラ洞窟(スペイン)やラスコー洞窟(フランス)などで見られる動物や狩猟画、ウィレンドルフ(オーストリア)で発見された裸体像などに代表される先史美術と、今もその時代の伝統を受け継ぐ部族美術を総称する言葉です。

文明が発達する前の美術を総称する言葉として、19世紀末に民族学的な視点から注目されるようになり、現代美術にも多くの影響を与えました。

 

文明と美術の発展

文明が発生する大前提として定住があります。

世界各地で文明が発展すると共に、そこで様々な文化様式が花開いていきました。

 

メソポタミア美術

チグリス川とユーフラテス川に囲まれた地域で育まれた複数の文明の総称です。多くの民族が興亡したメソポタミアでは、神殿や宮殿などの荘厳な建築、貴金属、装飾器、調度品などがあり、戦闘や狩猟など、権威を表す装飾を施した物が多く作られました。

 

エジプト美術

皆さんもご存知の通り、ピラミッドやミイラで有名なエジプト文明。

砂漠に囲まれた荒い土地にあるエジプトは、メソポタミアほど民族の侵入やそれによる争いがなく、エジプト美術は2500年間、ほとんど形を変えずに繁栄しました。

王の墓には多くの美術品が一緒に埋葬され、墓内の壁には美しい壁画が残されました。

有名な作品としては、アメンホテップ4世の代に栄えたアマルナ様式の最高傑作『ネフェルティティの胸像』が世界的に知られています。

 

ギリシャ美術

バルカン半島やアナトリア半島などの、古代ギリシャ人たちが住んでいた土地で発展したのがギリシャ美術。
そして、ギリシャ時代に特に最も栄えたのが「哲学」です。

哲学者たちは、長年の修行を経て得る洞察力と芸術家の直感によって制作されるものを美術とし、「見る人にどれほどの感動を与えられるか」という基準で芸術を評価しました。

 

ローマ美術

地中海地域からライン川以西のヨーロッパ、ユーフラテス川以西の近東まで広がったローマ美術。
ギリシャ美術の流れを組み、動物から風俗、神話など、テーマが多いのが特徴です。

ローマ帝国は広大な地域に領土を広げ、都市設計を発展させます。
それに伴い、パンテオンやコロッセウムのような巨大建築の建設が続々と行われました。

 

初期キリスト教美術

紀元前2〜3世紀にローマ美術を取り入れながら形成されたのが初期キリスト教美術です。

当初はまだ異端だったキリスト教。
313年ミラノ勅令によりキリスト教が認められると、多くの教会が建てられるようになりました。

教会の外観は煉瓦造りで地味ですが、建物内の壁には、文字の読めない人々のために聖書の物語がモザイクを用いて描かれました。

 

ビザンティン美術

330年、ローマの帝都がコンスタンティノポリス(現在のイスタンブール)へ東ローマ帝国として遷都。

これによりキリスト教美術にアジアやペルシアの美術が加わり、15世紀に渡る長きまで続くビザンティン美術が確立されました。

最たる特徴はイコン(聖人像)です。

これは木版や銅板などに聖人を描いたもので、皆似たような顔立ちと決まりきったポーズをしています。
モザイク画やフレスコ画もこの時代に発達しました。

 

ゴシック美術

12世紀ごろに台頭しはじめたゴシック美術。

パリ近郊のサン=ドニ大聖堂の改築をきっかけに、薄壁と高い天井を維持するためのアーチやフライング・バットレス(飛び梁)などの建築技法が開発されました。

ステンドグラスもこの頃から取り入れられています。

絵画においても、14世紀後半ごろからより写実的で動きのある作品が出てくるようになり、ヨーロッパ各地に国際的にゴシック様式が広まっていきました。

ゴシック美術の画家としては、後期ゴシック時代にイタリアで活躍したジョット・ディ・ボンドーネが最も有名です。

 

初期ルネサンス美術


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ルネサンスはイタリア語で「再生」を表すrinascitaから生まれたとされ、学術や建築など様々な分野で、ギリシャやローマ文化の復活、自然美、人間の尊厳などが再考された時代を指しています。

美術においては、ジョットによる顔や行動に動きのある壁画を皮切りに、自然な表情や動作、奥行きのある空間表現が取り入れられ、ボッティチェッリの「ヴィーナスの誕生」のように、キリスト教以外の主題も描かれるようになりました。

 

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北方ルネサンス美術


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現在のベルギーやオランダ、ドイツなどを中心に展開した北方ルネサンス。

15世紀末からのイタリアとの交流から影響を受け、宗教画の背景でしかなかった人物画、風景画、風俗画を確立させていきました。

また、絵の具の技術が進化し、ヤン・ファン・エイクによる「アルノルフィーニ夫妻の肖像」のような緻密な絵が描けるようになったのも、この時代の特徴です。

 

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盛期ルネサンス美術


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15世紀末から30年間ほどのイタリア・ルネサンスは盛期ルネサンスと呼ばれ、古代ギリシャやローマと同等といえる美術の完成期とされています。

レオナルド・ダ・ヴィンチやミケランジェロ、ラファエロが活躍したのもこの時代。

また、富裕層による個人的な注文も増え、感覚的に楽しめる作品が描かれるようになりました。

 

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バロック美術

17世紀頃、プロテスタントの台頭に危機を感じたカトリックが信者を呼び戻すため、劇的でインパクトのある作品を求めはじめたのが、バロック美術の始まりと言われています。

イタリアではカラバッジオやルーベンス、彫刻家にはベルニーニが活躍し、スペインではベラスケス、オランダではレンブラントやフェルメールなどが活躍し、暗い画面にドラマチックな光を演出的に描いた作品が多く生まれました。

 

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ロココ美術


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1710年代から1700年代後半のフランスを中心に、男女の戯れを画題にし、官能性を帯びたロココ美術が広まります。

ロココは絵画だけでなく家具や服装、装飾などにも見られるようになりました。

サロンがはじまったのもこの時代。
不特定多数の人が絵を見るようになり、美術評論家や画商といった職業が生まれます。

 

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新古典主義


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18世紀後半頃、軽快で派手なロココに疑問を呈し、再び古典を見直す動きが出てきました。

新たな古代遺跡の発見も続いたことから、ローマ・ギリシャへの憧れが再燃。
形式美や統一性に重きを置き、格調高い表現の新古典主義が生まれます。

また、フランス革命が終わりナポレオンが政治の実権を握っていたこの時代、ジャック=ルイ・ダヴィッドや、ドミニク・アングルといった画家がナポレオンの肖像画を多く残しました。

 

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ロマン主義


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新古典主義とは対を成すのがロマン主義です。

統一性ではなく個人の自由な感性や想像力を重んじ、文学や思想にも同様に広がりました。

社会体制への反発、自然や神秘的なものへの憧れ、情熱的かつ絶望的な恋愛志向など、主観的な作品が多く制作されています。

代表的な作品には、ドラクロワの「民衆を導く自由の女神」や、ゴヤの「マドリード、1808年5月3日」などがあります。

 

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写実主義


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古典主義やロマン主義では理想や非現実に目を向けていましたが、それに疑問を覚え、現実を見直そうとする動きを写実主義といいます。

写実主義の名称を世に広めたのがクールベ。

山奥の葬式に集まる名もない人々を描いた「オルナンの埋葬」を、通常なら神や英雄などを描く「歴史画」として発表し、スキャンダルとなりました。

またミレーは「種まく人」で、農民が投げやりに種をまく様子を描きましたが、それは彼らの悲惨な生活に対する社会的な抗議ではないかと、こちらも当時の美術界で大きなスキャンダルとして捉えられました。

 

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印象派


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歴史画や神話画が格上とされ、デッサンや遠近法を重視するアカデミーの基準が圧倒的な力を持っていた当時のフランス美術界に、疑問を抱く画家が多くいました。

ルノアールやモネといった、のちに「印象派」と呼ばれる画家達です。

彼らは、発明されたばかりのチューブ入り絵の具を持ち歩き、戸外で制作を始めます。

光がきらめくその一瞬を切り取ろうと努力し、1874年にサロンの嗜好とは違う自分たちの作品を発表しました。

その展覧会に出品されたモネの「印象・日の出」が印象派と呼ばれた最初の作品と言われています。

 

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後期(ポスト)印象派


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印象派の画家達から影響を受けたセザンヌ、ゴーギャン、ゴッホといった画家たちは、さらに独自の世界を貫こうと努力しました。

美術史では、彼らの作品は「後期(ポスト)印象派」に分類されます。

セザンヌは遠近法を崩し、のちのキュビズムへの足がかりを作りました。

ゴーギャンはタヒチに行き、絵画と暮らしの理想を見つけます。

ゴッホは精神を患いながら絵を描き続けました。

厚く絵の具を塗ったどこか心の奥を突く彼の絵は、今も人々を魅了しています。

 

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象徴主義


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19世紀後半頃、印象派と並行して注目されていたのが、象徴主義です。

産業革命後、科学進歩が相次ぎ、生活の色々な部分が変わりました。

世の中があまり急に変化すると、これからどうなるの? と不安になりますよね。
そういった感情を、神話や文学から主題をとって象徴的に描いたのです。

出発点は19世紀中頃のイギリス。

美術学校の生徒だったミレイが同士を集め「ラファエロ以前の自然を重視した表現に戻ろう」という考えのもと、ラファエル前派を作ります。

この動きはヨーロッパ中に広がり、フランスではモローが「出現」を、シャヴァンヌが「貧しき漁夫」を、ドイツのベックリンが「死の島」を描いています。

 

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表現主義


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表現主義は美術のみならず、たくさんの芸術分野に広がった思想です。

芸術家たちは自分の感情を作品に投影させて制作するのを良しとしました。

ドイツでは、青騎士やブリュッケといった画家グループが活動していました。

ニーチェ的思想に影響された彼らの作品には、伝統に組みするのではなく、社会の矛盾や戦争など既存のものからの脱却を図ろうとしているものが多く残されています。

 

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シュルレアリスム


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シュルレアリスムと聞くと、マグリッドやダリの作品が頭に浮かぶ人も多いのではないでしょうか。

シュルレアリスムの大元には、心理学者のフロイトがいます。

彼の理論に端を発し、夢に現れる風景などを使って潜在意識を露呈させ、自由な想像力を促そうというのがシュルレアリスム。

頭に浮かんだイメージを、そのまま描きとる。

まるで機械人形のような自動筆記といえるでしょう。そこには深い哲学的思考が潜んでいます。

 

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キュビズム


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20世紀初頭に、2人の天才画家ピカソとブラックが、それまでの常識を打ち破る画法を確立します。

それは対象を様々な角度から、けれども一枚のキャンバスの中に収めていくというものでした。

3次元をいかにして2次元にするかという主題が追求されたのです。

ピカソはアフリカの民族的装飾から、ブラックはセザンヌの絵画から、それぞれ違うルートでキュビズム絵画を確立しました。

 

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抽象表現主義

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均一的な平面、巨大なキャンパス、パフォーマンスめいた創作過程。

この3つの特徴を持つ抽象表現主義は、アメリカがはじめて世界に与えた美術的インパクトで、ニューヨークがパリに変わって脚光を浴びるきっかけとなりました。

ポイントとしては、絵はあくまで媒介物で、見る側も描く側も同じようにその絵(媒介物)を通して世界を見るということ。

また、画家が製作の際に使う身振り手振りの痕跡を残すことで、具象的なものを表す作品(アクション・ペインティング)も制作されています。

絵の存在そのものと、その絵を描く過程を重視する時代が始まります。

 

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21世紀美術

20世紀以降の美術は、それまでとは対照的に抽象的な表現や、絵画という形式に囚われない作品が増えていきます。

キュビズムや抽象表現主義の時代以降も、ダダイズム、ミニマリズム、ポップアート、レディ・メイドといった、ジャンルが確率され、美術の世界には今も革命が生まれています。

世界で注目を集める「チームラボ」のように、近年「絵画」ではないメディアミックスな美術も大きな話題を呼んでいます。

新しい形式を持ちながら、自国の伝統を組み込んだ独創的な世界をいかに作り上げていくか、という新しい段階を私たちは迎えているといえるでしょう。

 

 

 

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