2018/09/18

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「シュルレアリスム」とは?代表的な画家と作品を解説

シュルレアリスムとは?

シュルレアリスムは、日本語で「超現実主義」と訳される芸術の潮流の1つです。

1924年にフランスの詩人アンドレ・ブルトンが提唱したことでシュルレアリスムは始まり、ヨーロッパの絵画や文学などにおいて夢や空想のような世界観の作品を多く生み出しました。

20世紀(1900年代)の半ばまで続いたシュルレアリスムを代表する画家には、ルネ・マグリット、サルバドール・ダリ、マックス・エルンストなどがいるほか、パブロ・ピカソやマルク・シャガールもシュルレアリスムの影響を受けているといわれます。

また、画家で写真家のアンリ・カルティエ・ブレッソンや、マン・レイといった作家の作品にも、シュルレアリスムの影響が反映されています。

シュルレアリスムの発生は、18〜19世紀に絵画に新たなモチーフを持ち込んだ新古典主義象徴主義からつながっているといわれます。

同時代の20世紀前半のダダイズム抽象表現主義とならんで、シュルレアリスムは前衛的な芸術様式という評価を受けています。

活躍したアーティスト

ルネ・マグリット
サルバドール・ダリ
マルク・シャガール

 

シュルレアリスムの傑作3選

1.ゴルコンダ

 

作者  ルネ・マグリット
制作年 1953年
所蔵  メンリル財団(アメリカ・ヒューストン)


解説

集合住宅のような街並みを背景に、宙に浮かぶ無数の黒いオーバーコートの男たち。

無個性ともいえるほど明快なタッチで描かれたモチーフの組み合わせでありながら、どこか不気味さを感じさせる「ゴルコンダ」は、ベルギー出身の画家ルネ・マグリットの作品です。

絵の中の街並みはマグリットが暮らしたブリュッセルがモデルといわれていますが、作品タイトルのゴルコンダは中世に鉱山で栄えたインドの都市名です。

言葉の持つイメージと作品のつながりについて、鑑賞者に考えさせる仕掛けはマグリットの絵画の特徴でもあります。

「ゴルコンダ」の絵の中の男たちは、一見して全く同じ格好をしているようですが、よく見ると異なる特徴があり、群衆化した人間が無個性に感じられることを表現しているのかもしれません。

 

2.記憶の固執

 

作者  サルバドール・ダリ
制作年 1931年
所蔵  ニューヨーク近代美術館


解説

スペインの画家サルバドール・ダリといえば、この「記憶の固執」の溶けて柔らかくなったかのような歪んだ時計のモチーフが有名です。

「記憶の固執」では軟性を感じさせる時計とは対照的に、荒廃して見える殺風景な景色には固く直線的な地面や土台のようなものが描かれています。

3つの時計は時空が歪んだかのようにそれぞれ違う時間を指し、鑑賞者が不安を覚えるような非現実性が画面全体から感じられる作品です。

ダリの作品に多く登場する両極端な柔らかいものと固いものという対比は、意識と無意識を表しているといわれます。

ダリには、幼少の頃に亡くなった兄(同じサルバドールという名前)がおり、このことが彼の死生観や芸術的感性に大きな影響を及ぼしていると考えられています。

 

3.私と村

 

作者  マルク・シャガール
制作年 1911年
所蔵  ニューヨーク近代美術館


解説

ロシアで生まれフランスで活躍した画家マルク・シャガールは、愛や婚姻をテーマにした作品を多く制作し、「愛の画家」と呼ばれています。

シャガールの作品にはシュルレアリスムの他、キュビズムやエコール・ド・パリなどの芸術のムーブメントの影響も反映されています。

「私と村」はシャガールの初期の作品で、シャガールが幼少の頃に暮らしたベラルーシ(現ロシア)の牧歌的な農村風景と、モダンなキュビズムの技法が組み合わさっています。

夢の中やファンタジーのような世界観にはシュルレアリスムの兆しが感じられ、「私と村」以降もシャガールはこうした前衛的な作品を生み出しています。

しかし面白いことに、シャガール自身はシュルレアリスムに共感できないとして、「私をシュルレアリストと呼ばないでほしい」と語っていたようです。

芸術活動の後期には彫刻や壁画、ステンドグラスなど多様な作品を残しています。

 

「シュルレアリスム」のおすすめ関連書籍3選

『シュルレアリスムとは何か』

 

絵画に限定せずシュルレアリスムの全貌を知るためにぴったりの1冊(筑摩書房、2002年)。

詩人ブルトンやエルンストをメインとしてシュルレアリスムの在り方を説明しつつ、その非現実性に目を向けていきます。

現代の日本文化への言及もあるなど、芸術のみならず思想や文化全体の潮流としてのシュルレアリスムを理解するために読んでおきたい本です。
著者はシュルレアリスム研究で名高い巖谷國士。

価格¥1,296 筑摩書房

 

● 読者の感想

”読みやすくて良かったと感じました”
主観には客観性が無意識のうちに伴っているし、客観に裏打ちされたものが主観である。
「自己」は、既に自我の客体であり、他者と私の差異によって自己と(主観的に)規定されている。
主観の反対が客体、またはその逆と一面的な見方をするのは、まさに自我にとらわれて自己を見るようなもので、ものの本質が見えてこない。
まさに、こういった楽観的な近代意識に一石を投じたシュルレアリスムを理解しなければ、以降の現代アートは理解できなくなる。
そういった文学や美術においての重要なキーワードがさらっと書かれていたりします。

”内容はさすがです”
宇宙の果てがどうなっているかを折にふれ気にしているような思考者にとっても、たまたま地球に生まれて意識というものに目覚めてしまっている以上等閑視することができない、通過儀礼のような存在の根源に触れるシュルレアリスムの思考はかくのごとく万人に普遍の課題であると実感できる逸書となっていますね。
講義形態であるがゆえか、親しみやすさ分かりやすさは抜群です。
日頃から平明なことばで、深淵な問題をさらりと解説するこの人が魔術的です!!!

 

『ダリ全画集』

 

サルバドール・ダリの油彩画をすべて収録した画集(タッシェンジャパン、2002年)。

ダリのトレードマークでもあるピンとはねた口ひげの映った写真が表紙です。

同書では油彩画の他、デッサン、映画、ファッション、広告など、多才なダリが関わった様々なアートワークを充実した資料とともに掲載しており、ダリの創作の軌跡を知ることができます。
ダリの作品のファンなら必ず持っておきたい画集です。

価格¥7,100 タッシェンジャパン

 

● 読者の感想

”全画集だから価値がある”
今売られている版は2巻になった箱入りのハードカバー。とても重くて本屋で買って家まで持って帰るのが大変だった。本の重さを考えるとアマゾンでの購入のほうが楽。(中略)
最近暇さえあればこのダリの画集を見ている。年代順に整理されている点が非常に良い。習作を油絵と合わせて見せてくれるページは製作までの思考が見えて特に興味深い。作家の生涯にわたる作品を年代順に見てゆくと、(だからといってダリが分かりやすくなるというわけではないが、)描かれている画題の使いまわしとその描き方の変化が見えてきて非常に興味深かい。また習作と油絵の関係が鏡像のものが多数有ることが分かる。不思議だ。とにかく、見ているうちに謎がどんどんと深まってくる。
本は気に入った作家が見つかったら、とにかくその作家の全集を買えという。同様なことは絵画でもいえるかもしれない。全画集が出るような画家はそうたくさんはいない。
「ダリ全画集」を手元に置き眺めていると絵画の様々な面が見えてくる。全画集だから価値があるというべきかも知れない。値段から考えても非常にお得な本である。

”全作品が見れるのはこの本だけ”
さすが全画集というだけあって掲載されている量は他の本とは比べ物になりません。ダリの画集は上質のテキストと言われているだけあってとても参考になる一冊です。また、若い年代から順に作品が掲載されている為、作品の移り変わりも良く分かります。サイズは小さいですが、私が見たダリの画集の中でも価格、掲載量はピカイチだと思います。ただ、個人的にはもう少しダリ本人の写真を掲載してくれたら五つ星でした。

 

『シャガールの絵本―空にふわり』

 

恋人たちやバイオリン弾き、動物などが空中にふわりと浮かんでいる描写が多く見られるシャガールの名画を、絵本形式で紹介するシリーズ(小学館、1995年)。

シャガールの最愛の妻ベラとの恋の物語も織り交ぜ、同書ではシャガール作品をわかりやすく紹介しています。

子どもでも楽しめるように作られた本ですが、大人が読んでもシャガールのノスタルジックかつモダンな世界観を存分に味わえます。
シャガールに興味を持ったばかりの人にもおすすめの1冊です。

価格¥1,555 小学館

 

● 読者の感想

”スカイウォークする恋人たち”
私がマルクシャガールのとりこになったのは、この表紙の絵「誕生日」に出会ってからだ。シャガールの作品にこれ以降繰り返し現れる空を飛ぶモチーフ。
恋人ベラはこの絵についてこう回想している。「急に、あなたはわたしを床から持ち上げ、あなた自身も、床をけってわたしと一緒に跳び上がる――まるでこの小さな部屋が狭くなりすぎたというように、あなたは跳躍し、体いっぱいに伸び上がり、天井のほうまで舞い上がる。首を曲げてわたしの顔に近づけ、わたしの首もあなたのほうに向けさせる…」
子供のころから一流の魂に触れ、空を飛ぶ準備をしておくこと。その感性はきっと人生をも変える。いまでもこの絵をみると、その愛のほとばしる姿に涙がいっぱいあふれてくる。

”夢の世界”
シャガール独特の青、赤、緑の色遣い、幻想・想像の世界を子どもにもわかりやすい言葉で表現してくれています。
小学低学年の姪達もこのシリーズの本に夢中で、なかでもシャガールが一番お気に入り。愛妻が亡くなって哀しみのあまりひっくりかえったシャガールの顔、魚になって空を飛ぶバイオリン弾きなど子どもも大人も感じて楽しめる一冊です。

 

● 知っておきたい!西洋美術史の基本知識

 



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