2018/03/20

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ロマン主義とは?西洋美術史入門

ロマン主義とは?

ロマン主義絵画と聞くと、男女が睦合うロマンチックな絵画を想像してしまいそうですが、美術史における「ロマン主義」とは、18世紀後半〜19世紀前半頃に活躍した画家による、個人の思考・欲求・幻想、そして進化続ける当時の「今」を描いた絵画を指します。

ロマン主義は美術だけでなく、文学・美術・音楽といった芸術全般に影響を与えました。

ロマン主義を理解するには、まずその対極にある新古典主義を知らなければなりません。

18世紀後半に、ロココ主義の軽さや過剰な装飾性を否定し、より重厚なローマやギリシャ時代の芸術を規範として新古典主義が誕生しました。

その後、形式や主題、写実性を重んじる新古典主義に対して、各々の画家が描きたいものを描く自由を求めたのがロマン主義です。

それぞれの画家が自身の理想を追い求めているので、作品の傾向にそれほど共通性がないのもこの時代の作品の特徴です。

活躍したアーティスト

ウジェーヌ・ドラクロワ
フランシスコ・デ・ゴヤ
ウジェーヌ・ドラクロワ
テオドール・ジェリコー
ギュスターヴ・ドレ
ウィリアム・ブレイク
ジョゼフ・マロード・ウィリアム・ターナー

 

 

ロマン主義の傑作5選

 

「 民衆を導く自由の女神」

ウジェーヌ・ドラクロワ

1830年に起きた7月革命を描いたドラクロワの傑作、「民衆を導く自由の女神」。

絵の中央では、フランスを象徴するマリアンヌが国旗をたなびかせて民衆を導いています。

彼女のはだけた乳房は祖国、赤い三角のフリジア帽が象徴するのは自由や解放と、ドラクロワは彼女にさまざまな比喩を込めました。
多数の犠牲が出ても、ひるむことなく立ち上がる民衆の力強い意思が伝わってきますね。

それは或いは、ドラクロワ自身の思いであったのかもしれません。

サロンに出品された本作はフランス政府お買い上げとなりますが、政治的要素が強いと、しばらく恒常的に展示はされませんでした。

現在はルーブル美術館・ランス別館に、ロマン主義の代表作として所蔵されています。

 

● 制作年 
1830年

● 所蔵 
ルーブル美術館(フランス・パリ)

 

「アルジェの女たち」

ウジェーヌ・ドラクロワ

当時流行した東方趣味をモチーフに描かれた「アルジェの女たち」。

ドラクロワが使節団に同行してアルジェリア最大の都市アルジェに派遣された際に、伝手をたどってハーレムを訪れる機会を得、そこでの着想を帰国後に作品として完成させてサロンに出品した作品です。

怠惰で気だるげであり、どこか官能的なハーレムの様子を描いた本作は、女性たちの衣服やしどけない仕草、娼婦を思い起こさせるアヘンなど、異国情緒を感じさせる作品として評判になりました。

加えて、光の陰影とそれが与える色彩の変化の描き方に評価が集まります。
こちらの作品も国家買い上げとなりました。

後世に対する影響力も強く、印象派の画家たちやピカソがこの絵からインスピレーションを得ています。

 

● 制作年 
1834年

● 所蔵 
ルーブル美術館(フランス・パリ)

 

「我が子を食らうサトゥルヌス」

フランシスコ・デ・ゴヤ

宮廷画家として活躍し、ヌードがご法度の時代に「裸のマハ」など問題作も発表してきたゴヤですが、40代で聴力を失ってしまいます。

それでも画業を続けた彼が晩年に手がけたのが「我が子を食らうサトゥルヌス」。

ローマ神話に出てくるサトゥヌルスは土星の守護神で、農耕の神としても崇められていました。
ところが、自身の子どもに殺されると予言され、それを恐れて狂人となり、5人の子どもを頭から食べてしまいます。

その様子を描いたゴヤのこの絵は、その狂気があまりにリアリティを持って描かれていて、彼自身が持ち続けていた闇がかいま見える作品ともいえるでしょう。

本作はプラド美術館の中でも、ゴヤの晩年の、とくに黒を多用した作品を集める、通称「黒い部屋」に展示されています。

 

● 制作年 
1819−1823年

● 所蔵 
プラド美術館(スペイン・マドリード)

 

「マドリード、1808年5月3日」

フランシスコ・デ・ゴヤ

ナポレオンと結託したエジプト人親衛隊と戦闘は5月2日に起こりました。
その夜から3日未明にかけて暴動を起こしたマドリード市民を鎮圧したのは、フランス軍の銃殺執行隊でした。
そして400人以上もの反乱者が銃殺刑で命を失ってしまいます。

ゴヤはその怒りを、プリンシペ・ピオの丘で女子供を含む43人が処刑された本作に込めました。

執行者の顔が見えないのは、ゴヤが彼らを人間と認めていなかったからでしょうか。
反対にこれから処刑される反乱者たちは、怒りや恨み、恐怖など、命の終わりに対しての感情をあらわにしています。

中でも中央の白い服を着た男性は、跪きながらも、処刑者たちを責めるような強い目を向けています。
よく見ると、この人の手のひらにはキリストの聖痕に似た痕があります。

彼を以て、ゴヤはこの反乱は正しかったと主張しているのでしょうか。

 

● 制作年 
1814年

● 所蔵 
プラド美術館(スペイン・マドリード)

 

「雨、蒸気、速度――グレート・ウェスタン鉄道」

ウィリアム・ターナー

揺れる大気や、その大気に漏れる光を科学的に分析し、当時台頭していた色彩理論を用いて油彩、水彩、版画などを手がけたターナー。

その代表作、「雨、蒸気、速度――グレート・ウェスタン鉄道」には、世界最大の鉄道だったグレースト・ウェスタン鉄道の機関車が、雨と蒸気の中、石炭をくべ、赤い炎をチラつかせながら、鉄橋を猛スピードで駆け抜ける様が描かれています。

線路の前面では野うさぎが機関車から逃げようとしているのですが、この描写でターナーは機関車の速さを表現しているのです。

このように、神話画でもなく、キリスト教的、あるいは物語性も主題もない、「今」を描くというコンセプト、そしてまるでその場にいるような風景描写は、後の印象派の画家たちに影響を与えていきました。

 

● 制作年 
1844年

● 所蔵 
ナショナル・ギャラリー(イギリス・ロンドン)

 

おすすめの関連書籍2選

 

『ターナー―色と光の錬金術』

 

ルーヴル美術館の学芸員が書いた一作。

若い頃から才能を発揮したターナーは嫉妬の対象でした。
それを擁護したのが、ジョン・ラスキン。彼はターナーの絵を新しい時代の絵として評価したのです。

ターナーの展示会を見て、それぞれの絵の差がよく分からない、と首を傾げた方、ターナーがいかようにしてあの大気と陽光を渦巻かせる技法を会得したのかをこの本で学べます。

きっと次に見るときには、ワクワクしながらターナーを堪能できるでしょう。

 

価格¥3,140 創元社

 

● 読者の感想

”ターナーの生涯を、簡潔に、まとめている。
カラーページが多く、代表作も、多数紹介されている。
小1時間もあれば、読み終わってしまう。
ターナー理解の第1歩となり、肩肘を張らずに、読むことが出来る。
ターナーは、若くしてアカデミー会員になるほど優秀だったが、
展示会の直前に、ライバルの絵を見て、修正しているという興味深いエピソードを紹介している。”

”水彩の先駆者でもあるターナー。彼の偉大な功績や作品の変化に付いていけなかった時代背景。現代における評価まで満遍なくまとめられた一冊でした。”
参考

 

『ロマン主義文学と絵画: 19世紀フランス「文学的画家」たちの挑戦』

 

ルーヴルが美術館として開館し、リトグラフにより街に絵があふれ、平民だったブルジョワが芸術に興味を持つ余裕ができた時代、文学にも美術が登場するようになりました。

とはいえ、それぞれの絵画には、当時の社会における女性らしさ、男性らしさの暗喩が、それと気付かず投影されています。

そこには、女性作家と男性作家によって解釈の違いはあったのでしょうか。当時の文学作品と美術作品を比較できる大変興味深い書籍です。

 

価格¥3,024 新評論

 

● 読者の感想

”タイトルの通り文学と絵画の関係を書いている。出てくる作品は、バルザックの『人間喜劇』ゴーチエ『金羊毛』『カンダウレス王』、ヴァルモール(女性作家)『画家のアトリエ』サンド『ピクトルデュの城』など。ラファエロ、ティッツィアーノ、ルーベンスなど過去の巨匠やダヴィッド、アングル、ドラクロワ、ジロデなど同時代の画家が出てきてワクワクした。19世紀の小説の「男=エネルギー、想像力、生産、女=消極性、模倣、再生産」という二項対立。ジェンダーの視点が強かった。神話の整理が…芸術小説というジャンルも面白そう。”
参考

”芸術が大衆化した時代、絵画のイメージを作品に貪欲にとりいれながらも、「絵筆ではなくエクリチュールで」世界を描こうとした作家たちの創意を読み解く。古代から新古典主義まで図版80点収録。”
参考

 

● 知っておきたい!西洋美術史の基本知識

 



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