シュルレアリスム絵画の見方美術史
ART

シュルレアリスムって?初心者でも大丈夫。作品の楽しみ方をやさしく解説!《やさしいアートの話2》

 

シュルレアリスムの絵画を楽しもう

こんにちは。静物です。

ただの美術好きとして、Twitterで美術に関するツイートをしています。

 

今回は、シュルレアリスム作品をみるときのおすすめの鑑賞方法についてご紹介していきます。

ダリマグリットエルンストミロなどが主要な画家としてあげられるシュルレアリスム。

私も個人的にとても大好きな絵画の流派です。

 

しかし、「いわゆるシュールってやつでしょ?」「気持ち悪い絵ばかりだよね……」というくらいのイメージしかない方も多いのではないでしょうか?

 

そんな方にむけた、シュルレアリスム作品を面白く味わえる見方についてお伝えできればと思います。この記事をきっかけに、少しでもシュルレアリスムファンが増えれば幸いです。

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①「シュルレアリスム」の語源を知る

シュルレアリスム作品は、誰でも、今日からすぐに面白く味わえるようになります。

そのために必要なことはただ一つ。「シュルレアリスム」の語源を知ることです。

 

 

「シュルレアリスム」とは、現実主義を意味する「レアリスム」に、「超」を意味するフランス語の接頭辞「シュル」がついたものです。ここでいう「シュル」とは、「強度の」とか「過剰な」というようなニュアンスがあります。

「超える」とはちょっとニュアンスが異なっているのでご注意ください。「超える」というよりも、現実をさらに突き詰めて濃くしていったものが「シュルレアリスム」です。

訳すならば「強度な現実」「上位の現実」などということになります。

 

シュルレアリスムの描いたものとは?

「強度な現実」ってなんなのかといいますと、「無意識」や「」、心の奥に潜む「欲求」や「偶然の世界」などのことを指します。

つまり、はっきりした意識のもとではコントロールできない領域のものたちです。

シュルレアリスムはそういったものを形に表現しようとした流派だと考えていただいてOKです。

 

そして、20世紀前半は、精神分析の学問が最も盛んな時期。フロイトやユングらが、人間の心のあり方について様々な研究を深めていました。

 

フロイトによる「人間の無意識」

シュルレアリスムの芸術運動の中心人物であったA・ブルトンは、精神分析の父・フロイトの著作から多大な影響を受けたとされています。

つまりフロイトの「精神分析理論」がシュルレアリスムの芸術運動の支柱にあるのです。

 

フロイトとラカン

 

シュルレアリスムについて詳しくはこちら

これらを踏まえた上で作品を見てみましょう。

シュルレアリスムの代表的作家であるサルバドール・ダリの《秋の人肉食い》という作品を見てください。

 

サルバドール・ダリ「秋の人肉食い」 in 1936

中央の男女の顔は溶け合うようにして一体となっており、性的な雰囲気が感じられます。画面左下に見える男性側の手が女性の白い肌を握る様なんかも、とても官能的です。

この作品は人間の「欲求」を表現しようとしたのだろうかと解釈もできるのではないでしょうか。

 

次に、ルネ・マグリットの《無謀な眠る人》という作品をご覧ください。

 

ルネ・マグリット「The reckless sleeper」 in 1927

画面上には木の箱の中で眠る人物が描かれており、その下には鳥や手鏡、シルクハットなどが描かれています。

先ほど、シュルレアリスムが描き出そうとしたモチーフの中には、無意識があると述べました。

 

そのことを踏まえると画面下の鳥や手鏡などは、眠っている人物が今まさに見ている夢に出てきているアイテムなのかもしれない、そのアイテムは彼の無意識の中で、重要な意味を持つものかもしれない…。と読み解くことができます。

 

こんな感じで、「」「無意識」「欲求」「偶然」などのキーワードを照らし合わせてみると、シュルレアリスムの絵を楽しむ幅がグッと広がります

 

②トリッキーすぎる絵画技法に注目する

シュルレアリスムは、意識ではコントロールできない物事を描き出そうとしています。

 

人間が意識できないものを描こうとしているので、普通の絵の描き方では表現することができません。そのため、シュルレアリスムの画家たちは、無意識下のものを描き出すために様々な技法を発明しました

最も有名なのは「自動記述(オートマティスム)」です。

事前に構想を練らず、忘我状態の中で思いつくままに絵を描き出していくやり方です。元々は言葉を次々に出していって詩を作る手法でしたが、徐々に絵画にも取り入れられていきました。

 

これで作られたのがアンドレ・マッソンオートマティスムによるデッサン》です。

 

アンドレ・マッソン「Automatic drawing」in 1924

 

ウネウネとして線が画面いっぱいに広がっています。かと思えば、ところどころ直線で描かれた格子状のものも見られます。

一見はちゃめちゃに見える絵ですが、その筆致には迷いがなく、それ故にとてもまとまりを感じられます。

 

また、変わったシュルレアリスムの技法は他にもあります。

一つに「甘美な死骸」という技法があります。

(技法というよりも、作品制作のスタイルというようなニュアンスの方が近いかもしれません)。

 

サルバドール・ダリ/アンドレ・マッソンら甘美な死骸」in 1934

これは、1枚の紙を4つに折ってその各面を別々の画家が描いていく制作の仕方です。

前の人が描いた絵の端しか見えないようにして描きつないでいくので、それぞれの画家のバラバラなイメージが奇妙に結合した絵が出来上がります。

 

この「甘美な死骸」は、シュルレアリスムの画家たちが追い求めた「偶然」を描き出す試みです。

子供の絵遊びのように見える描き方ですが、シュルレアリストたち的には極めて真面目な、実験的な試みだったと言えるでしょう。

(とはいえ、彼らも4つに折った紙を広げて見てみるときはキャッキャと盛り上がっていたと思いますが…笑)

 

サルバドール・ダリ/ヴァランティーヌ・ユゴーら甘美な死骸」in 1934

 

ちなみに、なぜ「甘美な死骸」と言われているというと、詩人のアンドレ・ブルトンという人が同じやり方で文章を書く試みをしていたときに、

「甘美な/死骸は/新しい/ぶどう酒を/飲むだろう」

という文章が出来上がったことからきています。

 

アンドレ・ブルトン(1896-1928)

 

そのほかにも、デペイズマンデカルコマニー、フロッタージュなど、厨二心をくすぐるかっこいい名前のシュルレアリスム技法がたくさんありますので、ぜひ調べてみてください。

 

③「推し」を見つける気持ちで作品を見てみる

偶然や無意識、夢や欲求を表現することを目指したシュルレアリスムの画家たち。

 

同じような思想のもと活動を続けていた彼らですが、その表現のテイストは作家によって千差万別です。なので、私は数多いるシュルレアリスム画家の中から「推し」を見つけるようにして、作品を見ていくのをおすすめします。

 

ダリであればちょっとグロテスクで肉感的な作品が多くあります。

それとは対照的に、マグリットは一見クールなのに、ゾワっとするような奇妙さを感じさせる作品が多いです。

また海の中のような幻想的な光景を描くイヴ・タンギーや、恐ろしい夢のような世界に複数の裸婦を登場させるポール・デルヴォーなどもいます。

 

イヴ・タンギー「聾者の耳」 in 1938

 

ぜひシュルレアリスム作品一覧などをざざっと眺めてみて、心にピンとくる画家を見つけてみて下さい。

気になる画家が見つかったら、作品を眺めつつ、その人の歴史も調べてみてください。

一体どうしてこんなヘンテコな絵画を描き出すようになったのか、その経緯を知ることでさらにシュルレアリスム絵画を味わえるようになるのです。

 

ポール・デルヴォー「トンネル」 in 1978

 

シュルレアリスムって何?まとめ

以上、シュルレアリスム作品をみるときのおすすめの鑑賞方法をご紹介しました。

こちらでご紹介したのは、あくまで私が個人的に推しているやり方となります。

 

全く別の鑑賞方法をされる方もいらっしゃるかと思いますので、ぜひいろいろな方のやり方をトライしてみて、自分に合った鑑賞方法を見つけていただければと思っております。

 

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