2020/09/10

21世紀美術館印象派絵画の見方   
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印象派の作品はどう観る?《やさしいアートの話1》

印象派の絵画を楽しもう

こんにちは。静物です。ただの美術好きとして、Twitterで美術に関するツイートをしています。

今回は、印象派作品をみるときのオススメの鑑賞方法についてご紹介していきます。

日本国内でも人気が高く、毎年展覧会も多く開催されている印象派ですが、一見するとただ美しい風景を描いているだけに見えてしまう作品も多くあります。

そのため、なぜこんなにも印象派が人気なのかわからないという方も多いのではないでしょうか。

今回はそんな方にぜひお伝えしたい、わたくし静物が普段展覧会などでやっている印象派作品の味わい方を、3つのポイントに絞ってご紹介いたします。少しでも印象派作品を見るときのご参考になれば幸いです。

①「この世界に入りたい!」と思える絵を見つける

印象派は19世紀の後半ごろに、フランスを中心にして誕生した絵画の流れです。

それより少し前の時代は、歴史や神話の出来事をモチーフにした格式高い絵が良いとされていました。印象派の画家たちはこれとは全く異なった考え方を持っています。現実にある自然の風景を描き、光や風、人体の運動の様子などの「瞬間」を表現することに価値を見出しました。

印象派は「この世界を一瞬一瞬まで含めて描き出そうとした人たち」なのです。

そんな考えをもっている人たちが描いている作品を鑑賞するわけですから、まずは「自分が好ましいと思える世界の描き方」をしている絵画を見つけるとよいと思います。展覧会に行ったら、難しい説明文や能書きはとりあえず無視して会場をざっと見渡し、

「この世界なんかいいな」

と思える作品を見つけるのです。

これは旅行会社のパンフレットをみているときの心持ちに近いかと思います。

旅行のパンフレットを見ながら行きたい国を決めるとき、1ページ目の1文字目から読みだす人は多くはないはずです。ぱらぱらとページをめくりながら写真をみて、「この景色素敵だな」「この景色を見に行きたいな」と思うところで手を止めているのではないでしょうか。

美術館でもそれでいいのです。

入り込みたい世界(絵画)が見つかれば、しめたもの。その画家とは「いいな」と思う感性が似ているということになります。自分と感覚が近い人が描いたものだと思って作品を見つめると、その絵画に対して前のめりに向き合えるのです。

②なぜこの世界をこういう風に描いたのかを考えてみる

次に、自分と近い感性を持つこの画家が「なぜこの景色をこういう風に描いたのか」を考えてみてください。

例を挙げてみましょう。印象派を代表する画家、ピエール=オーギュスト・ルノワールの《ラ・グルヌイエール》という作品です。

ルノワール 「ラ・グルヌイエール」1869年

晴れた日の川辺の様子が描かれています。中央の舟着き場には白いドレスをまとった女性や、黒いジャケットや帽子をかぶった男性の姿が見えます。

これから舟に乗りこむところでしょうか。その傍らには、舟の船頭のような腰かけている男性と、寝転ぶ白い犬もいるようです。

ルノワールはなぜ、この景色をこの角度から、この登場人物で描こうとしたのでしょう?

舟遊びに興じる紳士淑女たちの賑わいに心が躍ったのかもしれません。あるいは、陽光にきらめく木々や川面に感激したのかもしれません。そんなことを思いながら絵を眺めていると、ルノワールが当時感じた心の揺れを追体験しているような気持ちになれるのです。

 

別の絵をみてみましょう。こちらはエドガー・ドガの《アブサントを飲む人》という作品です。アプサンとは、薬草系のリキュールのこと。描かれている男女が飲んでいるものはアプサンと考えてまず間違いないでしょう。

エドガー・ドガ 「アブサントを飲む人」 1876年

この男女の表情にご注目ください。このふたりはいまどのような気持ちでしょうか? ふたりとも目を合わせるそぶりはなく、会話もなさそうです。男性のほうはキッとした視線で外をながめています。

女性は肩を落としており、目は虚ろ。この男性と過ごす時間が憂鬱なのでしょうか。

ドガは、男女が互いに対して抱いている決してポジティブとはいえない複雑な感情を描き出したかったのかもしれません。描かれている二人の表情を観察することで画家が描き出したかったものに考えを巡らせることができるのです。

このように、自分が思うままに絵画と向き合って解釈することにこそ、絵画鑑賞の楽しさがあると私は思っています。解釈には正解も不正解もありません。

美術館に行った際にはぜひ、誰からの指図や制約もなく、自由に思索する贅沢さを味わってみてください。

③知識と絵画を照らし合わせる

とはいえ、何の知識もなく絵画を見ているだけですと考えを巡らせるにも限界があります。ここからさらに一歩踏み込んで絵画をいろいろな角度から味わうためには、印象派にまつわる知識をちょこっと取り入れるのがオススメです。

たとえばこの絵を見てください。クロード・モネの《サン=ラザール駅:列車の到着》という絵です。

これだけを見ると「ただの駅の絵か」としか思えないのですが、実はこの絵画は印象派を象徴する超有名な絵なのです。その理由を知るためには、印象派が誕生した時代背景を学ぶ必要があります。

クロード・モネ 「サン=ラザール駅:列車の到着」 1877年

印象派が誕生した19世紀、ヨーロッパは産業革命の真っただ中でした。工場が増加してパリの人口も倍増。

それに併せて誕生したのが「鉄道」です。当時の鉄道や駅は、高度経済成長するフランスを象徴する最先端のモチーフでした。

それを知ったうえで本作を眺めるとどうでしょう? これを描いているときのモネは、どのような心情だったのでしょうか。きっと高揚感を感じていたのではないかと思います。明るい駅舎や、景気よく立ち上る蒸気の活気もその心の高ぶりを表しているかのようです。

 

もう一つ作品を見てみましょう。ふたたびドガ作の《踊りの花形》という作品です。

エドガー・ドガ 「踊りの花形(エトワール、又は舞台の踊り子)」1878年頃

バレリーナが手を広げて踊っている光景が描かれています。白いドレスに白い肌、しなやかに伸びた手足が優雅さを引き出しています。バレリーナが踊る美しい光景を描いたように思えますが、当時のバレリーナという職業のことを知ると見え方がガラリと変わってきます。

当時のバレリーナは現在とは異なり、身分が低く貧しい女の子が生計を立てるためにやるものでした。観客の男性やパトロンから援助を貰いながら生活をするのが普通で、ほとんど娼婦と同じような関係性だったのだそうです。

それを知ったうえで再度作品を見てください。画面左後ろに黒い服を着た男性が立っているのがわかります。

顔が見えなくなっていてどこか不気味な印象です。彼は手前のバレリーナのパトロンの男性だと言われています。

それを知ると、バレリーナの優雅さの裏にある悲しき日常が透けて見えるように感じられませんでしょうか。

知識のない段階で見る《踊りの花形》よりも、よりいろいろな角度から絵画を味わうことができるのです。

まとめ

以上、印象派作品をみるときの鑑賞方法をご紹介しました。

ですが、この鑑賞の仕方はあくまでも私個人のやり方です。美術の味わい方は十人十色。

私のように直感から鑑賞を始める方もいれば、バッチリ予習をされてから楽しむ方もいるはずです。ぜひ色々な方の意見も参考にして取り入れながら、自らの鑑賞体験を豊かにしていっていただければと思います。

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