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怖い絵21選!意味を知ると怖い有名な作品を詳しく解説

なぜ人はこんなにも「怖い絵」に惹かれるのでしょうか?

絵の中には、ただ鑑賞しているだけでは気が付かない秘密が隠されていることも多くあります。

歴史的背景、神話、古典のシチュエーションなどを知るとより一層怖さが増すことも。

元々「怖い絵」がこんなにブームになったのは、中野京子さんのこの本がきっかけでした。

こちらは「怖い絵」シリーズの第1作目。何気なく鑑賞していた絵画の背後には思いもよらない怖さが潜んでいることを伝えてくれる一冊です。

怖い絵 (角川文庫)

748円 (税込)

出版社 ‏ : ‎ KADOKAWA
発売日 ‏ : ‎ 2016/3/25

 

今回は本で紹介されていた作品からそれ以外まで、有名な「怖い絵」を21作品解説していきます。

人間の闇を覗くことのできる絵画をお楽しみください。

 

西洋の有名な怖い絵

「レディ・ジェーン・グレイの処刑」

制作年

1833年

画家 ポール・ドラローシュ

この作品はタイトルの通り、レディ・ジェーン・グレイの処刑を描いた場面です。

目隠しをされた白いドレスを着たレディ・ジェーン・グレイは司祭に誘われて自らの首を差し出す処刑台に手を伸ばそうとしており、右の斧を持った男は処刑人、左の今にも倒れそうな女性は侍女、そして背中を向いて泣いている侍女です。

レディ・ジェーン・グレイはイギリス初の女王ですが、政争に巻き込まれたため在位わずか9日でメアリー1世によって廃位させられ、ロンドン塔に幽閉されて処刑しまいました。この時まだ16歳4か月の少女でした。

 

「オデュッセウスの杯を差し出すキルケー」

制作年

1891年

画家 ジョン・ウィリアム・ウォーターハウス  

女王然と椅子に座る女性はアイアイエ島に住む魔女キルケー。背後の大きな鏡に映っているのは古代ギリシャの英雄オデュッセウスです。

オデュッセウスは戻ってこない部下たちを探しに来たところ、その部下たちはキルケーの美貌に惑わされ、進められるまま魔酒を飲み、豚に変えられてしまいました。オデュッセウスはヘルメス神から授かった解毒薬を使ってキルケーの魔法から身を守り、部下たちも元に戻してもらいます。

そしてそのまま魔女キルケーと恋愛関係になったオデュッセウスは島で1年過ごした、ファム・ファタールを描いた場面です。

 

「オデュッセウスとセイレーン」

制作年

1909年

画家 ハーバード・ジェイムズ・ドレイパー  

キルケーの島を出たあとオデュッセウスは再び航海に出ますが、そのルートには美しい歌声で魅了する恐ろしい怪物セイレーンがいました。

キルケーの忠告により部下たちは歌声を聞かないよう蜜蝋で耳をふさいでいましたが、オデュッセウスはセイレーンの歌声が聞きたいために、帆柱に自らの体を紐で厳重に縛らせました。セイレーンの歌声を聞いたオデュッセウスは狂乱し、セイレーンのもとへ行きたいと抗っています。

セイレーンの上半身は人間、下半身は鳥の姿の怪物ですが、中世以降下半身は魚の姿で表現することが増えていきました。

 

「不幸な家族(自殺)」

制作年

1852年

画家 二コラ=フランソワ=オクターヴ・タサエール

母娘が貧しさのあまり屋根裏の狭い部屋で墨を燃やして、一酸化炭素中毒で今これから死へ向かおうとしている場面です。

ベッドで絶望的な表情で聖母子像を見つめる母、そしてすでにぐったりして母にもたれかかっている娘。

貧困による自殺者が多かった当時、第二共和政の政府は経済的に生活が難しい画家への援助目的で注文し描かせた作品です。社会への問題提起をしたこの作品はサロンで話題になり、他4点のヴァージョンがあります。

しかし二コラ=フランソワ=オクターヴ・タサエールも晩年はアルコール中毒になり練炭自殺を遂げています。

 

「殺人」

制作年

1867年頃

画家 ポール・セザンヌ

「近代絵画の父」と呼ばれ、後の時代に多大な影響を与えたポール・セザンヌ。

この「殺人」が描かれたのはセザンヌが20代後半の時、当時の小説や事件を題材にして描かれたとされていますが詳細は不明です。この時期、セザンヌは死やサディスティック、エロチックな作品を描いていました。

裕福な家に生まれながらも画家を志し、しかし美術学校にも受からず、長年サロンでも落選を続けていて評価はされませんでした。

当時のセザンヌの激情が感じられる初期の暴力的な作品は、その後画家自ら手で大半を破棄されています。

 

「切り裂きジャックの寝室」

制作年

1906年-1907年

画家 ウォルター・リチャード・シッカート

19世紀末ロンドンのイーストエンドのスラム街では娼婦ばかりを狙った猟奇的殺人が起こりました。犯行予告を新聞社に出し、劇場型連続殺人として後年までその名前が残る「切り裂きジャック」。犯人は捕まっておらず迷宮入りの事件です。

シッカートは切り裂きジャックへの異常な関心感から切り裂きジャックが住んでいたと噂される部屋を借り、この作品を描きました。

誰も犯人が分からないはずなのに、なぜこの部屋が切り裂きジャックの部屋だと分かったのか、シッカートも当時容疑者の1人に名前が挙がっていました。

 

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「夢魔」

制作年

1781年

画家 ヘンリー・フューズリ

ベッドで寝ている女性の上にはおぞましい風貌の怪物が女性の顔を覗き込んでいます。この悪魔は夢魔と呼ばれるインクブス。睡眠中の女性を襲い、悪魔の子を妊娠させる恐ろしい悪魔です。キリスト教では婚姻前の出産がタブーとされており、私生児を妊娠した女性は夢魔の仕業と言い言い訳に使っていたそうです。

この作品はフランス革命前後の不穏な空気を象徴するものと捉えられ、人気がありました。ヴァージョン違いが数点、また版画が残っています。

 

「クレオパトラの死」

制作年

1841年

画家 ゲルマン・フォン・ボーン

絶世の美女として知られるクレオパトラ。

この場面は権力争いに負け、オクタウィアヌスの捕虜となったクレオパトラの最後の姿が描かれています。

クレオパトラは美しいままの姿で死にたいと自殺を図りました。その際アスプコブラという毒蛇を使ったとされています。

クレオパトラはどのような毒を使えば美しいまま死ねるのか、奴隷を使って実験したと言われています。何人もの奴隷の命を使って実験し、美しいままに死にたいという美への執着が描かれています。

 

「イワン雷帝とその息子」

制作年

1885年

画家 イリヤ・レーピン

豪奢な部屋に、頭から血を流してぐったりとしている若い男性、そしてその男性を抱きかかえながら血が流れる若い男性の頭を押さえる老人。若い男性の前には王笏が転がっており、赤い絨毯には血が染み込んでいるのが分かります。

老人は雷帝と呼ばれた暴君イワン4世、そして若い男性は息子の皇太子イワンです。イワン4世は皇太子との諍いにより、誤って皇太子を撲殺してしまいます。

この作品からは激高したせいで自身の感情の制御が出来なくなり、取り返しのつかないことしてしまったというイワン4世の表情が表現されています。

 

「ホロフェネスの首を斬るユーディト」

制作年

1598年頃

画家 ミケランジェロ・メリージ・ダ・カラヴァッジオ

若く美しい女性が大男の首をはねようとしており、そばには召使いの老婆が控えています。

この若い女性はユーディト。シリアの将軍ホロフェルネスのアッシリア軍に包囲された町ベトゥリアを救うため、ホロフェルネスを誘惑し、酔いつぶれたところで首を切り落とす旧約聖書のユディト記の一場面です。

美しいユーディトは眉間にしわを寄せながら、今まさに首を切らんとしていますが、ユーディトはホロフェルネスから少し離れており、まるで白いドレスを血で汚したくないといった様子です。

 

「ホロフェルネスの遺体発見」

制作年

1470年

画家 サンドロ・ボッティチェッリ

カラヴァジョの「ホロフェネスの首を斬るユーディト」はユーディトが今まさに首を切り落とそうとしている場面ならば、ボッティチェッリの「ホロフェルネスの遺体発見」は夜が明けても天幕から出てこないことに不審に思った部下たちが、首を切り落とされたホロフェルネスの遺体を発見した凄惨な場面です。

作品の中ではホロフェルネスの首は見当たりません。ユーディトはホロフェルネスの首をベトゥリアに持ち帰り、ホロフェルネスを殺害したことをアッシリア軍に伝え、動揺し敗走したアッシリア軍を打ち破りました。

 

「メドゥーサの首」

制作年

1617年

画家 ピーテル・パウル・ルーベンス

髪の毛は無数の毒蛇、宝石のように輝く目は、人を石に変える力を持つギリシャ神話に登場する怪物メドューサ。ルーベンスが描いたのはペルセウスに首を切られ、唇は青緑色になり、目を見開いたままのメドゥーサ。

恐ろしい姿のメデューサですが、かつては美少女で特に自身の髪を自慢していました。しかしポセイドンの愛人となったため女神アテナの怒りを買い、醜く恐ろしい怪物の姿にされてしまったのです。

ペルセウスはメデューサの首をアテナに送ります。そしてアテナはメデューサの首を盾に付け、最強の盾としました。

 

「地獄のダンテとウェルギリウス」

制作年

1850年

画家

ウィリアム・アドルフ・ブグロー

叙事詩「神曲」の中でダンテは師と仰いでいる古代ローマの詩人ウェルギリウスの案内で地獄、煉獄、天国を旅します。

2人の男性が争っているのは「嘘つきと借金作りの潜む第八の谷」。身近な人に裏切られて誰も信用できなくなってしまった人が、死ぬまで周囲の人間を殺し続ける谷です。

喉に噛みつき、背中を蹴り上げる男の横には、すでに息絶えたように横たわる男性の姿も描かれています。案内人であるウェルギリウスもその光景に引いた表情をしています。

 

「シサムネスの皮はぎ」

制作年

1498年

画家

ヘラルド・ダヴィト

大勢の聴衆に囲まれ、一人の男性が横たわっています。3人の男性が横たわった男性を押さえつけ、左側にいる男性は横たわった男性の胸元から刃物を入れています。

この横たわった男性はペルシアの汚職裁判官シサムネス。ペルシア王カンビュセス2世に全身皮はぎの刑に処されました。すでに左足は皮をはがされています。

目を覆いたくなるような皮はぎの刑は古代よりオリエント、地中海、中国など世界各国で行われていたポピュラーな刑でした。

全身の皮をはぎとられた罪人は長時間苦しみ死に至ります。その凄惨な光景から見せしめの意味合いもありました。

 

「スザンヌと長老たち」

制作年

1791年

画家

フランソワ=グザヴィエ・ファーブル

バビロンに住む貞淑な人妻スザンナが自宅の庭で水浴していると、それを知った長老たちが水浴中のスザンナに襲いかかりました。抵抗するスザンナに「我々と関係しなければ、お前が庭で青年と密会していたと告発する」と脅します。

姦通が死刑だったこの時代、侍女を下がらせて一人で水浴していたスザンナに証言するものは誰もいなかったため、スザンナは逮捕されてしまいました。この作品には貞操の危機のスザンナの恐怖が表情から伝わってきます。

幸い、預言者ダニエルが長老たちに詰問したことにより証言の矛盾が発覚し、スザンナは無事無罪放免となりました。

 

「我が子を喰らうサトゥルヌス」

制作年

1819年-1823年

画家

フランシスコ・デ・ゴヤ

ローマ神話のサトゥルヌス(ギリシャ神話のクロノス)は時をつかさどる農耕の神。

自分の子どもの1人に殺されるという予言から、5人の子どもたちを生まれるたびに飲み込んでいった物語がモチーフです。

ゴヤの「我が子を喰らうサトゥルヌス」は丸呑みではなく、自分の子どもを頭から食い殺しています。

この陰惨な作品はゴヤの別荘、聾者の家で制作された黒い絵シリーズで全部14作残されています。誰に見せるわけでもなく自分のために制作したと言われており、当時のスペイン内乱や自身の大病による暗い気分が反映されています。

 

日本の有名な怖い絵

「返魂香之図(はんごんこうのず)」

画家

円山応挙

今でこそ幽霊は白装束で足がないイメージが植え付けられていますが、その元祖はこの「返魂香之図」と言われています。描いたのは江戸時代に円山派の祖である円山応挙。

返魂香とは反魂香とも言われ、その香を焚くとその煙の中に死んだ者が現れると言われている伝説のお香です。

「返魂香之図」の幽霊は、おどろおどろしくなく、儚げな印象を与えます。一説には亡くなった妻をモデルにして「返魂香之図」を描いたと言われており、返魂香を使って亡き妻に逢いたいという気持ちが表現されているようです。

 

「産女」

画家

月岡芳年

うなじから背中、そして腰のカーブが艶めかしさを感じる女性の後ろ姿。しかし湯文字には血がべっとりと付いています。

この作品のタイトルは「産女」。妊娠したまま死んだ女性をそのまま埋葬すると極楽浄土に行っても仏とならず、幽霊となり彷徨ってしまうと、日本各地でその伝承が残っています。別名は姑獲鳥。

色っぽく見えるこの後ろ姿ですが、小さな足が描かれており、赤ちゃんを抱いているのが分かります。この幽霊は子どもを身ごもったまま、無念の死を迎えた女性なのです。

 

「宿場女郎図」

画家

月岡芳年

江戸時代、数多くの宿場町があり旅人を給仕するために、旅籠の奉公人として雇っていた飯盛女。しかし給仕するための奉公人というのは名目で、実際は私娼で春を売る女性たちで、飯売女や宿場女郎とも呼ばれていました。

そして宿場女郎は亡くなると投げ込み寺に捨てられ、無縁仏になるのが一般的でした。

「宿場女郎図」で描かれている女性は、げっそりとした顔つきで、人を呼び込むようなしぐさをしています。病のせいで皮と骨の姿になっても、お客を引こうとする女郎の執念が感じられます。

 

「蚊帳の前に座る幽霊」

画家

菊池容斎 

行燈がともされており、夜が深けていることが分かります。

蚊帳の向こうには青白い顔をした女性が座っています。しかしよく見ると足が描かれておりません。

霧がったたような部屋に、浮かび上がる幽霊の女性。そこには冷気が漂っているようなひんやりとした空気が感じられます。

現実のものではない幽玄の世界、見るはずがないものを見てしまった緊張感が作品から伝わります。日本の幽霊画は足を踏み入れてはいけないところに踏み入れて迷い込んでしまったような、見てはいけないものをうっかり見てしまった怖さがあります。

 

「夜盲症」

制作年 2005年
画家

松井冬子

髪の長い女性の幽霊、手には羽毛をむしり取られた宙づりの鶏を手にしています。

夜盲症とは夜になると暗いところで目が慣れるころなく、視力が衰えてよく見えなくなる病気です。鳥目とも呼ばれます。

この髪の長い幽霊は日本画家の松井冬子自身と言われています。重力と一致しない情念に共通性を見出し、落ち込んだ時や精神的に傷ついた時に心が重く感じるように、情念を伴った重力感のある浮遊として幽霊のモチーフとして描いています。

 

もっと怖い絵を楽しむ本

「新 怖い絵」中野京子

「怖い絵」シリーズの2作目です。

メキシコの画家のフリーダ・カーロの「折れた背骨」をトップバッターに、歴史的名画ミレーの「落穂拾い」やゲイシーの「自画像」など人間ドラマを浮き彫りにして20作品を紹介しています。まるでミステリー小説を読んでいるような感覚になる一冊です。

新 怖い絵 (角川文庫)

858円 (税込)

出版社 ‏ : ‎ KADOKAWA
発売日 ‏ : ‎ 2020/3/24

 

「幽霊画と冥界」(別冊太陽 日本のこころ)

怖い絵は西洋絵画に限ったことだけではありません。日本には江戸時代から幽霊画という画題があります。

「幽霊画と冥界」では日本画の中ではもっとも描くのに技量がいると言われている幽霊画を紹介しています。

幽霊画以外にも妖怪や地獄絵なども掲載されており、夏にぴったり背筋がひんやりとする一冊です。

幽霊画と冥界 (別冊太陽 日本のこころ)

2,640円 (税込)

出版社 ‏ : ‎ 平凡社
発売日 ‏ : ‎ 2018/7/26

 

まとめ

怖い絵には、普段は見えにくい人の本質を覗いてしまったような魅惑があります。

絵画の歴史的背景やシチュエーションを知ると鑑賞に深みが出るもの。

見えざる者や世界への畏怖、戦争や貧困における不条理、運命に翻弄された人々など、絵画の背後に隠された物語は、私たちを魅了してやみません。

 

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