歴史遮光器土偶
CULTURE

遮光器土偶とは?謎めいた土偶の魅力、国宝・重文指定の遮光器土偶を詳しく解説

縄文時代に作られた人型の焼き物、土偶。

中でも、ゴーグルを着けているかのような見た目が特徴的なのが「遮光器土偶」です。

博物館のお土産としても人気を集める土偶ですが、その制作意図やモデルは未だ解明されていません。

今回は、親しみやすい風貌が人気の「遮光器土偶」に隠された謎や、その魅力についてご紹介します。

 

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遮光器土偶とは

縄文時代に作られた土偶の一種

遮光器土偶は、縄文時代につくられた土偶の一つのタイプです。

縄文時代の土偶といえばこの型のものが連想されるほど有名な土偶です。

目にあたる部分がイヌイットが雪からの反射光線を防ぐために着用する遮光器 (スノーゴーグル) のような形をしていることからこの名称がつけらました。

ゴーグル説は、考古学・人類学者の坪井正五郎がロンドンの大英博物館でイヌイットの雪中遮光器を見つけたことから唱えられたものだそうです。

 

目の部分が誇張されたデザインが特徴

ほとんど目だけで覆い尽くされた顔は、現在では、遮光器をつけているのではなく、目を誇張した表現だと考えられています。

また、デフォルメされた体の表現とともに、全身に覆うように施された文様が見どころの土偶です。大きな目とは対照的に、耳、鼻、口は小さく表されています。

また、両肩の張りや、腰のくびれが誇張された胴体には、短い手足がついています。

焼く際にひび割れしないように大型のものは内部が空洞になっているのも特徴です。

 

主に東北地方から出土

遮光器土偶は主に東北地方から出土し、縄文時代晩期のものです。

一方で遮光器土偶を模倣した土偶は、北海道南部から関東・中部地方、更に近畿地方まで広がりがあります。

一番有名で、教科書でもおなじみの遮光器土偶は、青森県つがる市の亀ヶ岡遺跡から出土ました。

国の重要文化財に指定され、東京国立博物館に収蔵されています。

 

一部が壊された状態での発見が多い 

亀ヶ岡遺跡出土の「遮光器土偶」は出土した時から左足が欠けていました。

この像に限らず、完全な状態で発見されることは稀で足や腕など体の一部が欠損していたり、切断された状態で発見されることが多いため、多産や豊穣を祈願するための儀式において土偶の体の一部を切断したため、病気や怪我を直すための身代わりとするためなど、意図的に壊されたとも考えられています。

また、切断面に接着剤としてアスファルトが付着しているものも多く、豊穣祈願などの祭祀の際に、切断した部分を修理して繰り返し使用していたとも考えられています。

 

遮光器土偶の用途・役割として考えられている説

人形として穢れを落とす

「人形(ひとがた)説」です。ひとがたとは、古代から続く日本の文化で、形代(かたしろ)とも言われます。

縄文人は人に憑く「悪霊(病気や怪我)」を、身代わりになる土偶に移し、悪霊がついていると思われる部分を壊した上で、埋めたのだと考えていました。

 

多産や五穀豊穣の儀式用として使う

土偶の多くが、乳房や臀部、太ももを誇張した女性像であることから、安産、子孫繁栄のための多産の祈りのため、または五穀豊穣を祈願する農耕儀礼に使われたという説も有力です。

ばらばらになるまで粉砕された土偶はそれを大地にばら撤くことが豊穣の祈念を意味したとする説です。

 

再生への祈りを込める

再生

「再生への祈り」説もあります。縄文時代の死生観にとして「円環する命」という考え方があります。

森羅万象は山又は海から生まれ、役目を終えた時に故郷へ還っていき、時が満ちればまた命を伴って「この世」に帰ってくる、という考え方です。この死生観に則し、土偶を「命を生む(=再生させる)女性性」の象徴として捉えたのが、「再生への祈り説」です。

土偶に呪力を込めた上で、再生を祈って土の下に埋めたという説です。

 

故人の鎮魂を祈る

土偶は、縄文時代の女性の死因として、出産がとても多かったため、お産で死んだ女性のように鎮魂を必要とする者の霊を土偶に移し清める儀式をしていたのではないかという説もあります。

この説では、「奇妙な」見た目の土偶が多いのは「ハレの日(出産の日)」の特別なお化粧、あるいは入れ墨を表すからだといいます。
お化粧やタトウーは、縄文時代には呪術的意味合いが強かったと思われます。

縄文人は、新しい命が無事に生まれてくるように、母子ともに健康であるように、呪術を施したのかもしれません。
そしてその願い虚しく叶わなかったとき、鎮魂の意味を込めて土偶を作ったと考えられます。

 

代表的な遮光器土偶

亀ヶ岡遺跡出土の遮光器土偶|国宝

亀ヶ岡遺跡(青森県)から出土した遮光器土偶は、 遮光器土偶だけでなく、最も知られている土偶なのではないでしょうか。

縄文時代(晩期)前1000~前400年と推定されています。1887年(明治20年)に学会に報告され、広く知られるようになり、またこの土偶の大きな目から遮光器土偶と名付けらました。

精巧な作りの高さ34.2cmの中空土偶で、国の重要文化財に指定され、東京国立博物館に収蔵されています。

大きめの頭には水煙が立ち上るかのような王冠状の突起がのせられ、人間離れした大きな目に、張り出した両肩と腰に、短い手足が付いている点がユーモラスです。

縄文地と無地の部分とを分けることで装飾効果を高める磨消縄文手法を駆使し、雲のような入り組んだ文様を線対称や点対称に配置して体全体が飾られています。

頭の冠状の飾り(結った髪を表現したと思われる)や胸元の飾りなどの凹んだところに赤い色が残っていることから、もともとは全身が真っ赤だったと考えられています。

 

恵比須田遺跡出土の遮光器土偶|国宝

亀ヶ岡遺跡出土の遮光器土偶に匹敵する名品とされる恵比須田遺跡(宮城県)出土の遮光器土偶は、1887年(明治20年)に畑の耕作中に石囲いの中から偶然発見されたものです。

恵比須田土偶は足先を欠くものの、多くの土偶が破片として出土するなかで、ほぼ完全な形が残る希少なものです。

縄文時代、前1000~前400年頃のものと推定される高さ36.1cm、肩幅21.0cmの中空大形の遮光器土偶です。国の重要文化財に指定され、東京国立博物館に収蔵されています。

 

手代森遺跡出土の遮光器土偶

手代森遺跡(岩手県)出土の遮光器土偶は、破片の状態で発見されました。

完全に復元され、1989年(平成元年)6月12日に国の重要文化財に指定され、岩手県立博物館の所蔵となっています。

高さ31センチメートル、体幅19センチメートルです。

頭や胴の一部に弁柄が残っており、当初は全体に塗られていたと考えられています。

 

豊岡遺跡出土の遮光器土偶

豊岡遺跡は岩手県岩手町にある亀ヶ岡文化の遺跡です。

1959年に発掘が始められましたが、その前後から岩手町在住の考古学研究家高橋昭治氏によって多数の縄文土器や遮光器土偶、石器が収集され、2001年に一括して岩手県立博物館に寄贈されました。

豊岡遺跡の縄文人は土器や土偶のひび割れを天然アスファルトで接着して再利用していた形跡が見られることが発表されています。

 

泉沢貝塚出土の遮光器土偶

石巻市にある泉沢貝塚出土の遮光器土偶は宮城県指定有形文化財となっています。

1948年(昭和23年)に石巻地方をおそった台風の際に偶然発見された、高さ26.2cmの縄文時代晩期の大型の精巧な作りの土偶で、体内が空洞になっています。左脚部がわずかに壊れていますが、ほぼ完形です。

頭部には王冠状の装飾があり、目は誇張され、遮光器をかけたように大きく表現されています。肩は横に大きく張り出し、腕は短め、腰は末広がりで、太い脚は大きく開いて踏ん張った形ですが、立たせることはできません。

胴部には磨消縄文による雲形の文様が施されています。

 

遮光器土偶を所蔵する博物館

東京国立博物館(東京都)

2018年に東京国立博物館で開催された「特別展「縄文―1万年の美の鼓動」は、縄文ブームを引き起こし、その中でも東京国立博物館所蔵の亀ヶ岡遺跡出土の遮光器土偶は空前の人気を集めました。

東京国立博物館には、亀ヶ岡遺跡出土の遮光器土偶と同じく美しい恵比須田遺跡出土の国の重要文化財の遮光器土偶を始めとする複数の土偶が所蔵されています。亀ヶ岡文化の「遮光器土偶」をまねたものと考えられる北海道から出土したものもあります。

 

東京国立博物館

開館時間:9:30~17:00

休館日:月曜

入館料: 一般 1,000円、大学生 500円

 

 

東北歴史博物館(宮城県)

1974年開設の東北歴史資料館の老朽化に伴い、東北・宮城の歴史に学び、優れた地域文化を伝承しながら、21世紀における文化創造を支援する拠点として宮城県多賀城市に移転整備され1999年に開設されました。

旧石器時代から近現代までの東北地方全体の歴史を、歴史を学べる博物館です。

宮城県指定有形文化財となっている石巻市泉沢貝塚出土の遮光器土偶を所蔵しています。

 

東北歴史博物館

開館時間:9:30~17:00

休館日:月曜

入館料: 一般 460円/小・中・高校生 無料

 

 

「遮光器土偶」のおすすめ関連書籍

はじめての土偶

土偶の最大の魅力とは、一度見たら忘れられない不思議な造形です。土偶の最大の特徴であり魅力である「見た目の面白さ」から土偶の世界に入っていけるように作られた、まったく新しい土偶の入門書です。

国宝土偶をはじめ、選りすぐりの土偶たちを、大胆かつ楽しいビジュアルで紹介しています。解説は、専門用語をできるだけ用いずに、やさしく書かれています。

はじめての土偶

1,980円 (税込)

出版社 ‏ : ‎ 世界文化社 (2014/7/19)

 

縄文土偶ガイドブック

縄文土偶とは何か? 土偶はなぜ作られ、どんな種類があるのか、その奥深い世界を写真・図版を用いて丁寧に解説しています。

口絵カラー写真では全国の主要土偶を網羅し、土偶をとおして縄文人の精神世界に迫ります。『縄文土器ガイドブック』の姉妹編です。

縄文土偶ガイドブック

2,420円 (税込)

出版社 ‏ : ‎ 新泉社 (2013/12/21)

 

土偶界へようこそ 縄文の美の宇宙

 

土偶界へようこそ

ソース

この本では、土偶をより立体で見れるよう、また質感や色具合が細かい模様まで見られるよう、さまざま角度から撮影したカラー写真と美しいデザインでその魅力を紹介しています。

土偶女子と呼ばれる譽田亜紀子氏が「中日新聞」、「東京新聞」に2016年1月~2017年4月に連載された内容に新に7体を加え、一つ一つの土偶の見どころを紹介しています。

土偶界へようこそ 縄文の美の宇宙

1,760円 (税込)

出版社 ‏ : ‎ 山川出版社 (2017/7/4)

 

まとめ

ユーモラスな顔にデフォルメされた体、そして緻密な文様も楽しめる、遮光器土偶。

縄文人の卓越したデザインセンスとそれを形に表現する造形力が込められている遮光器土偶は、縄文人の祈りや想いに根ざしているからこそ、時を超えた美しさを放ち、いまもなお多くの人々を魅了しているのでしょう。

博物館に行った際には、ぜひ土偶の造形美にも注目してみてくださいね。

 

 

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