国宝歴史陶器
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「曜変天目」とは?世界に3点しかない国宝の歴史と魅力に迫る

「曜変天目」とよばれる茶碗をご存知でしょうか?

「器の中に宇宙が見える」と評されるほどの美しい輝きを放つ茶碗であり、現在では世界に3椀しか存在しない大変貴重な芸術品です。

この記事では、今もなお多くの人を惹きつけて止まない曜変天目についての解説と鑑賞のポイントについて紹介していきます。

 

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曜変天目とは?

中国・南宋時代に作られた黒釉茶碗

曜変天目(ようへんてんもく)は、中国・南宋時代(12~13世紀)に作られた黒釉茶碗の中で最上級の作品にあたります。

中国福建省の建窯(けんよう)で作られた黒釉茶碗の中でも、焼かれた際に器の内側に星のように見える大小の斑文が偶然できることがあり、その周辺に鮮やかな光彩が生じたものが曜変天目と呼ばれています。

「器の中に宇宙が見える」といわれるほど美しい作品で、日本では室町時代から中国産茶碗の中でも最高峰とされており、現在では大変貴重な作品として世界的に有名です。

 

天目の中でも特に希少な茶碗

天目とは、鎌倉時代に日本人僧たちが中国産茶碗の総称として用いた言葉です。

曜変天目はそれらの中でもかなり希少な茶碗であり、茶碗の内側に光を当てると角度によって玉虫色の光彩が生まれることから、「星の輝き」を意味する「曜」の字が当てられています。

 

現存するのは世界にたった3点のみ

曜変天目は、現存するものが世界にたった3点しかなく、そのすべてが日本にあり、いずれも国宝に指定されています。

曜変天目は南宋時代のある時期にごくわずかな数の作品が作られ、その後は二度と作られることがありませんでした。

現存の3椀は、それらが破壊されることなく奇跡的に残ったものとされています。

それだけ希少なものがなぜ中国ではなく日本にあるのか、また作者が誰なのかは未だにわかっていません。

 

曜変天目の歴史

宋の時代に建窯で作られた

曜変天目は、南宋時代に中国福建省の建窯で作られました。

当時の建窯では大量の黒釉茶碗が作られていましたが、それらの中でもごく稀に茶碗の内側に斑文が生まれることがあり、曜変天目はそのような偶然から生まれた希少な作品として知られるようになりました。

 

南宋時代に宮廷で使用されていた

研究家の間では、曜変天目は日本にしか伝来しておらず、輸出品として扱われていたという説が長い間有力と考えられていました。

しかし、中国の浙江省杭州市内では、現存の曜変天目とよく似た陶片が発見されています。

この発見された場所が、南宋時代の宮廷の近くに建てられた公的施設だったこともあり、曜変天目が宮廷で使用されていた可能性が示唆されました。

現在では、曜変天目が中国でも貴重な茶碗として扱われていたかもしれないと考えられています。

 

日本では「茶碗の最高峰」と位置付けられる

日本に存在する記録によれば、曜変天目の呼び方は室町時代から使用されていることがわかっており、室町時代前期に作られた「往来物」では、「天目」や「曜変」といった言葉が記述されていることが確認されています。

曜変天目は、当時から天目茶碗の最高峰として扱われており、宋時代の工芸品に深い関心を寄せていたといわれる徳川三代将軍足利義満の元にも伝わっていたとされています。

 

曜変天目の魅力

漆黒の地に広がる深みのある瑠璃色

曜変天目の茶碗の内側には、瑠璃色の斑紋が浮かび上がっています。

漆黒の地に広がるこの斑紋は、薄い水色から紫がかった青までのグラデーションを形成しており、天の川を連想させるような美しさが見事です。

中国の建窯で焼かれた天目は黒く艶のある色合いで有名でしたが、それらの漆黒の上に現れた煌めく瑠璃色は、落ち着いて上品でありながら非常に神秘的な輝きを放っています。

 

ランダムに広がる星紋

曜変天目には星と呼ばれる大小の斑点が群れをなして浮かび上がっています。

これらは制作過程で偶然生まれたものであるため、その配置がランダムに広がっており、星空や宇宙を強く連想させます。

曜変天目は「器の中に宇宙が見える」と評されることもあり、瑠璃色の光彩とも相俟って茶碗の中に小宇宙を形成しているといえます。

 

星紋の周囲を取り巻く光彩

曜変天目は、星のように浮かび上がる斑点を取り巻く虹色の光彩も特徴的です。

この光彩は、茶碗の中に光を当てるとその角度によって変化自在であり、七色の虹となって反射します。

光を当てる角度によって無限に変化する光彩は、観るものに常に新しい輝きと美しさを感じさせます。

曜変天目が800年以上も愛されている大きな理由であるといえるでしょう。

 

曜変天目の現代における評価

特徴である瑠璃色は自然の奇跡とされる

曜変天目の製法については未だにわかっていないことが多くありますが、大きな特徴である瑠璃色は意図して出そうとしても難しいものと考えられており、偶然が生み出したものであるという説が一般的です。

このように自然の奇跡によって成立した美しさは、鑑賞者に大きなロマンを感じさせます。

 

中国では高く評価されていない!?

中国での曜変天目の評価については諸説があります。

一説によれば、曜変天目の珍しい変色は不吉の前触れとされ縁起の悪いものと考えられていたとも言われています。

したがって、それらの茶碗は製作後に破壊され、その破壊の手を逃れた作品だけが日本に伝来したと考える研究家もいます。

 

貴族が使用していた

南宋の都が置かれ、かつて迎賓館があった浙江省杭州では、曜変天目とよく似た陶片が発見されています。

つまり、迎賓館で発見されたことから曜変天目が接待で使用されていた可能性が考えられます。

この発見によって、曜変天目が貴族の間で使用され、中国においても最高級の品として扱われていた説が有力なものへ成りつつあります。

 

再現不可能な器

製法について謎の多い曜変天目ですが、多くの陶芸家がその再現に挑んでいます。

中には曜変天目の特徴である光彩や斑文を再現に成功した事例もありますが、現存している3椀に匹敵する完成度には未だに至っておらず、現代の技術を駆使しても再現不可能な器として考えられています。

 

曜変天目を所蔵する寺院・美術館

大徳寺龍光院(京都府)

現存する曜変天目の一つは、京都府の大徳寺龍光院に所蔵されており、開創以来の400年間にわたって国宝を守り続けています。

一般の拝観は受け付けていませんが、展示会を開催していることがありますので、公式情報をチェックしてみてはいかがでしょうか。

大徳寺龍光院

開館時間:10:00~16:00

休館日:月曜日(祝日の場合は各翌平日)

入館料: 大人1300円/高校、大学生1000円/小・中学生無料

 

静嘉堂文庫美術館(東京都)

東京都世田谷区にある静嘉堂文庫美術館にも曜変天目が所蔵されています。

この作品は、もとは徳川将軍家所蔵のものでしたが、三代目将軍・家光の時代に稲葉家に伝えられて現在に至ります。

こちらも常設の展示はありませんので、展示期間をスケジュールで確認しておくと良いでしょう。

静嘉堂文庫美術館

開館時間:10:00~16:30

休館日:毎週月曜日(祝日の場合は開館し翌火曜日休館)。

入館料:一般1000円/大高生700円

 

藤田美術館(大阪府)

大阪府にある藤田美術館で所蔵される曜変天目も、もとは徳川将軍家に所蔵されていましたが、水戸徳川家を経て、1918年に藤田家へ伝わったとされています。

曜変天目を展示するための特設ルームがあり、様々な角度から曜変天目を鑑賞することができます。

2022年4月 リニューアルオープン(予定)です。

藤田美術館

開館時間:10:00~16:30

休館日:月曜日(祝日の場合その翌日)

入館料:一般800円/大高生500円

 

もっと曜変天目について知ることができる本

碗の中の宇宙―曜変天目茶碗の研究と成果

この本には、化学工業の研究者である安藤堅氏が自身の科学研究の経験をもとに、曜変天目を再現することに没頭した記録と成果が書かれています。

後半には著者が製作した曜変天目の写真も掲載されており、科学と芸術が融合した姿を楽しむことができる一冊です。

碗の中の宇宙―曜変天目茶碗の研究と成果

6,600円 (税込)

出版社 ‏ : ‎ 新風書房 (2003/10/1)

 

天目 てのひらの宇宙

こちらの書籍は、天目作品の中でも名作と呼ばれるものについて紹介しており、曜変天目についての解説も充実しています。

天目の歴史から、技法などについても詳しく説明されており、天目のファンであれば必ず持っておきたい一冊です。

天目 てのひらの宇宙

2,750円 (税込)

出版社 ‏ : ‎ 阿部出版 (2018/12/10)

 

まとめ

多くの謎に包まれている曜変天目ですが、その茶碗の中にある輝きは現在もなお多くの人を魅了し続けています。

大変貴重な作品であるにもかかわらず、幸いにも現存の作品がすべて日本に存在してい曜変天目。

これを機にぜひ実際に足を運んで実物を鑑賞してみてはいかがでしょうか。

 

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