SDGs環境問題
ART

環境問題へのアート業界の取り組み、オンラインへの移行など近年の動向を詳しく解説

近年アート業界では、作品輸送や販売、資金源など、作品の制作から販売にかかわるすべての過程において環境問題の解決を促すために、サスティナブルな選択をすることが重要視されており、アーティストやギャラリーをはじめとする、アート業界にかかわるすべての人々に、持続可能な方法を選択が求められています。

アート業界で当たり前になりつつある環境問題解決への具体的な取り組みについて詳しく解説します。

 

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作品輸送にかかる二酸化炭素排出量の削減

「Gallery Climate Coalition(GCC)」は、アーティストやギャラリー、アートディーラーといった業界関係者が加盟する、環境問題の解決を目的とした組織です。

2021年、ロンドンで開催されたGCCの会議では、2018〜19年にかけてのギャラリーの飛行機移動とアート作品の輸送による二酸化炭素排出量が報告されました。

 

GCCの報告書を見た多くの業界関係者は、2021年に開催された「アート・バーゼル」に、飛行機ではなく電車で行くことを選択しました。

GCCの公式サイトには、排出量を計算するページがあり、会員は自分で作品輸送にかかる二酸化炭素排出量を調べることができます。

Gallery Climate Coalition(GCC)

環境問題の解決のためのガイドラインを提供する国際的なチャリティおよび会員制組織であり、非営利団体。2030年までに二酸化炭素排出量を少なくとも50%削減することを促進している。ギャラリー、アーティスト、非営利団体、アートディーラーなどが加盟しており、国際的なネットワークとして同じ目標に向かうことで、大きな制度改革の実現可能を目指している。

https://galleryclimatecoalition.org

 

作品輸送を飛行機から船に変更

イギリスのアーティスト、ゲイリー・ヒュームは、ロンドン・ニューヨーク間の作品輸送を飛行機ではなく船に変更し、二酸化炭素排出量を95%削減することに成功しました。

ゲイリー・ヒューム

1962年、イギリス生まれ。現在はニューヨークとロンドンを拠点に活動する。
1988年イギリス、ゴールドスミスカレッジを卒業。1996年、ターナー賞にノミネートされ、1999年にはベネツィア・ビエンナーレにも出展。ミニマリスト的でシンプルながら奥深い作品が多く、ファッション界でも人気が高い。ステラ・マッカートニーやフレッド・ペリーなどとのコラボレーションも果たす。

「展示準備を入念にすれば、飛行機移動を避け、二酸化炭素削減が可能です」と、ゲイリー・ヒュームはコメントしています。

 

オンライン販売への移行

新型コロナウイルスの流行により世界中のギャラリーやアートディーラーが渡航制限の問題に直面し、アートフェアや展覧会に参加できない状態に陥りました。

しかし、それによってオンライン販売への移行も急速に早まりました。

世界の主要なギャラリー、オークションハウス、アーティストはすでにオンライン販売の継続を決定しており、飛行機での移動を避けることを新たな目標に掲げています。

国際的な展示会やアートフェアでは、現地チームを新たに雇用してリモートで指示し、作品の包装に使用するプラスチック類やエアークッションを使い捨てにしないことなども推奨されています。

 

作品管理による温室効果ガス排出量の削減

作品管理によって排出される温室効果ガスの削減にも、ヨーロッパの美術館は野心的な目標を掲げています。

パリのポンピドゥー・センターは、2030年までにエネルギー消費量を少なくとも25%削減することを目標に掲げており、そのために建物の改修も予定しています。

 

マドリードのソフィア王妃芸術センターでは、2030年までに「ゼロエミッション」を達成する目標を発表し、2019年度の半年間でエネルギー消費量を15%削減し、温室効果ガス排出量は20万キログラム減少させることに成功しました。

ゼロ・エミッション(zero emission)

廃棄物を出さない製造技術を開発する計画。ある企業・産業で排出される廃棄物を、別の企業・産業の原料として使うなどして、トータルで廃棄物をゼロにしようというもの。国連大学が1995年に提唱した。「エミッション」とは「排出」の意味。

 

テート・モダンでは2019年から、美術館の二酸化炭素排出量を削減すること、環境に負荷の少ない電気システムに切り替えること、レストランでベジタリアンやビーガン向けのメニューを増やすこと、職員の移動に電車を推奨することを目標に掲げています。

 

NFTがもたらす環境負荷への懸念

NFTアートの流行によってデジタルアートの売買が急速に増加し、NFTアートの取引で生じる環境への影響が大きな懸念となっています。

ブロックチェーン技術を活用した取引市場は盛り上がる一方ですが、取引は膨大な電力を消費します。

暗号通貨の取引にかかる電力使用量は、年間44.94TW(テラワット)時と言われており、カタールやハンガリーで消費される年間電力使用量と同等の数字です。

技術の進歩によりサスティナブルな暗号通貨の取引方法が生まれることが期待されています。

 

資金源・スポンサーを見直す動きも

さらにアート業界では、経営の資金源やスポンサーを見直す動きも活発になっています。

石油会社とその資金源である銀行または大企業、武器商人など、非人道的な手段で富を得ている億万長者がその対象となっており、多くの美術館が巨大石油企業とのスポンサー契約を打ち切りました。

サスティナブルな取り組みを行うスポンサーやパートナーシップを通じて芸術や教育プロジェクトを提供することが、環境問題の抑止に繋がり、社会に大きな変化をもたらすという考えが業界全体に浸透し始めています。

 

環境問題は、アート今後どのように社会に貢献できるかが問われる大きな課題です。

そのためアーティストだけでなく、業界に関わるすべての機関、団体、プレイヤーがこの問題に取り組む必要があります。

アート業界から今後どのような新しい取り組みが生まれてくるのでしょうか。

皆さんもぜひ自分自身の行動を振り返り、持続可能な社会のためにできることを考えてみてください。

 

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