ストリートアートの最前線 バンクシーだけじゃない!有名アーティスト13選
世界のグラフィティ事情を知れば、
アートはもっと面白くなる
スプレーの落書きをアートに変えたアーティスト・バンクシー。
ストリートアーティストと言うと、真っ先にバンクシーが思い浮かぶ人も多いのではないでしょうか。
日本でもバンクシーの作品に酷似した落書きが発見され、大きな話題を呼びました。
それら落書きの真贋はともかく、グラフィティに対する「単なる落書き」という認識は、日本でも少しずつ変わってきているように感じます。
世界にはバンクシー以外にも、アートとして認められてきたアーティストが多く存在するのをご存知でしょうか?
キース・ヘリングや、ジャン=ミシェル・バスキアなども、実はグラフィティ出身のアーティスト。
今回はバンクシーを含む、今世界から注目されている有名ストリートアーティストをご紹介します。
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1.vhils(ヴィールス)
ストリートアートと言うと、スプレーやペンキを使って壁に描くのが一般的。
vhils(ヴィールス)は今までのそうしたストリートアートの手法を覆したアーティストです。
彼はノミやドリルを用いて、壁を彫刻するように彫り出し、時には火薬で爆発させたり、彫刻的な手法を用いて壁にリアルな人物のポートレートを描きます。
ストリートアートで描かれる人物は、例えばドナルド・トランプや毛沢東など、国や国際社会を連想させる人物が多い傾向にありますが、彼が描くのは世界のニュースなどとは全く関係のない一般市民。
既に有名になった人物ではなく、その土地で出会った、人知れず苦労を重ねてきた人々を大切にしたいと考えているようです。
vhils(ヴィールス)はバンクシーとほぼ同時期に注目されたアーティストで、彼の作品がイギリスの大手新聞社「 The Times」で取り上げられると、瞬く間に波紋を呼びました。
パリ、上海、香港、シドニー、リオデジャネイロなど各都市で展覧会を開催するなど、現在も注目されているストリートアーティストです。
2.RETNA(レットナ)
ロサンゼルス在住のアフリカ系アメリカ人アーティスト、RETNA(レットナ)。
エジプトのヒエログリフやアラビア文字、書道にインスパイアされた、どこの国にも属さないカリグラフィを壁一面に描くことで一躍有名になったストリートアーティストです。
2011年にニューヨークで個展を開催すると、原始的でオリエンタルなアートが人気を呼び、瞬く間にファッションやミュージックの世界で彼の作品がフューチャーされるようになりました。
彼の制作に音楽は欠かせない要素。
ヘッドフォンから流れてくる音に合わせてその瞬間のインスピレーションによって描かれます。
容姿はストリートアーティストでありながら、筆を走らせる様はまるで中国の書家のようです。
Louis Vuitton、Nikeなどのブランドの広告作品も手がけている他、ジャスティン・ビーバーのアルバムジャケットとしても彼のアートが起用されるなど、今後も目が離せないアーティストの一人です。
3.Blek le Rat(ブレック・ル・ラット)
「ネズミ」の落書きといえばバンクシーのイメージが現在一般的になっていますが、実はバンクシーよりも先に、ストリートにネズミの落書きを普及させたのが、フランスのストリートアーティスト、Blek le Rat(ブレック・ル・ラット)です。
彼はストリートアートにステンシルの手法を取り入れたアーティストでもあり、「Father of stencil graffiti(ステンシルグラフィティーの父)」と呼ばれています。
彼は1981年からパリの街中にネズミのステンシルアートを描き始めました。
彼はネズミについて「市内で唯一の自由な動物」「ストリートアートのようにペストをいたるところに広げる」と語っています。
彼は警察に見つからずに素早く描くため、テンシルの手法を取り入れました。
まさか20年後に、同じ手法を使ったアーティストが人気になるとは思わなかったのではないでしょうか。
バンクシーがBlek le Ratの手法を意識的に真似たのかその真偽は不明ですが、バンクシーがストリートアーティストの革命児として有名になった背景には、彼の存在は必要不可欠だったと言っても良いでしょう。
4.Invader(インベーダー)
Invader(インベーダー)は、モザイクタイルを使用したピクセル画風のアートで有名な、フランスのストリートアーティストです。
彼を一躍有名にしたのは、タイトーのアーケードゲームをモチーフにした「Space Invaders」。
「Space Invaders」は、すなわち「空間の侵略者たち」という意味を表し、これまで世界中の76都市に合計3500以上もの作品が「侵略」してきました。
東京にもこれまで138体のインベーダーが襲来しており、国際宇宙ステーションISSにもインベーダーの作品が存在します。
インベーダー侵略されて場所を示す侵略マップ「World Invasion」は、インベーダーの公式ウェブサイトからも確認できます。
任天堂のマリオなど様々なゲームキャラクターを街中に登場させ、日常の風景にポップカルチャーをミックスさせたアート。
世界をキャンバスに、インベーダーはアートという侵略を続けます。
5.Lady Pink(レディーピンク)
ニューヨーク在住のLady Pink(レディー・ピンク)は、ストリートアートの世界でも数少ない女性の有名アーティスト。
それゆえ「first lady of graffiti(グラフィティのファーストレディー)」とも呼ばれています。
彼女は15歳の頃からグラフィティ活動を始め、6年に渡って地下鉄の落書きを続けました。
21歳の時に発表した初の個展で注目を浴び、彼女の作品はニューヨークのメトロポリタン美術館、ホイットニー美術館、メトロポリタン美術館、ブルックリン美術館にもコレクションされています。
彼女は女性の権利獲得を訴えるためストリートアート活動を続けているほか、コミュニティやティーンエイジャーの育成にも献身的で、アートが自己表現や地域社会との媒体としてどのように役立つか教えています。
6.Jean-Michel Basquiat(ジャン=ミシェル・バスキア)
没後から30年以上経った今もアート界で絶大な人気を誇る、Jean-Michel Basquiat(ジャン=ミシェル・バスキア)。
日本ではZOZOTOWNの代表、前澤友作氏が123億で落札したことで有名になりましたね。
彼もストリートアートの全盛期に活躍したアーティストの一人です。
バスキアは一人のアーティストとして有名になる以前、高校時代の友人アル・ディアズ(Al Diaz)とグラフィティデュオ「SAMO(セイモ)」を結成しています。
SAMOは「Same Old Shit(いつもと同じさ)」の略。彼らはローワーマンハッタンの路上をキャンバスに約2年間活動をしました。
二人はスプレーを使って、消費社会や政治に対する疑問を詩的に投げかけました。
「俺たちはただ、ゾンビのように街をひたすら歩くやつらの目を覚ましたかった。自分の足で出歩いて周りをよく見渡し、自分の鼻でコーヒーの匂いをかげよ(look around and smell the coffee)って」
アルはバスキアの死後、当時を回想してこのように語っています。
SAMOとしての活動を、テレビ番組がバスキア一人が行ったこととして取り上げたのをきっかけに、二人はタッグを解消してしまいます。
その後バスキアは一人アーティストとしての成功を収めますが、ブルジョワの世界を嘲笑っていた彼は自分自身がその世界に身を置いてしまったことに嫌気がさしたかのように、晩年はアルのもとをよく訪ねていたそうです。
7.BLU(ブルー)
ボローニャ在住のイタリア人アーティストBLU(ブルー)は、ポップでカラフルなグラフィティのイメージとは異なり、ブラックユーモアのある独特の世界観が人気のアーティスト。
イタリアを拠点にしている以外に彼の情報は明かされておらず、いまだに謎の多い人物です。
彼は壁画だけでなくショートムービーやアニメーションも作っており、壁画を描きながら撮影したストップモーションアニメ「MUTO」がYoutubeにアップされると、瞬く間に世界で注目を浴びました。
動画は現在まで1200万回再生されており、動画による収益は全てイタリアの医療機関に寄付されています。
彼はアメリカ、ヨーロッパを横断しながら各地で壁画を制作していますが、アート市場との関わりを意識的に制限し、限られたギャラリーで販売するシルクスクリーンによって生計を立てています。
アート界と一線を画す彼の戦略は、バンクシーよりも徹底していると言えるでしょう。それ故に彼は世界で多くのファンを獲得しています。
8.Shepard Fairey(シェパード・フェアリー)
「アメリカで最も影響力のあるストリートアーティスト」と言えば、Shepard Fairey(シェパード・フェアリー)。
有名な「OBEY」のポスターに見覚えのある方も多いのではないでしょうか。
有名なバンクシーに次いで今最も有名なストリート・アーティストです。
アンドレ・ザ・ジャイアントをモチーフにしたステッカー「Obey Ginat」を町中の壁に貼るというパフォーマンスが注目を集め、ステッカーを貼るという行為がグラフィティ業界で次第に広まっていきました。
2008年のアメリカ大統領選挙で使用された、オバマ前大統領のポスター「HOPE」キャンペーンも彼を有名にした大きな出来事です。
個人的な思いから自主的に制作したポスターでしたが、公式ポスターとして起用され、「Time Magazine」の表紙を飾るなど、そのデザインは社会運動を代表するアイコンとなりました。
デザイン、ファッションなど益々活躍の場を広げるシェパード・フェアリーですが、アメリカの社会運動とともに歩む姿勢は変わらず、市民のメッセージを訴えるアートを制作しています。
9.Os Gemeos(オス・ジェメオス)
サンパウロ出身のストリートアーティストユニット、Os Gemeos(オス・ジェメオス)。
彼らは双子の兄弟で、ブラジルの神話、家族、政治をテーマにした壁画を多く発表しています。
ヒップホップがブラジルで流行したのは1980年の後半。
彼らは最初ブレイクダンスに目覚めますが、次第にサンパウロの街中で壁画を描きはじめます。
ニューヨーク出身のアーティストの元でテクニックを学んだ後、彼らはブラジルの文化を融合した独自のスタイルを確立し、注目を集めるようになりました。
ブラジルらしいカラフルな色使いが特徴的な壁画は、海外からのオファーを受け、現在では世界各地でオス・ジェメオスの作品を見ることができます。
日本にも二人は訪れており、渋谷のマンハッタンレコードの裏手に作品を残しています。
10.Keith Haring(キース・ヘリング)
Keith Haring(キース・ヘリング)は、言わずと知れたストリートアートの先駆者。
1980年、彼はニューヨークの地下鉄構内にある広告掲示用の黒板にチョークで絵を描く「サブウェイドローイング」と言うパフォーマンスを開始。
シンプルな線で描かれた落書きは通勤客の間で話題となり、彼は人気アーティストとしての道を歩みはじめました。
ニューヨークでの個展をきっかけに有名となった彼は、マンハッタン、シドニー、メルボルン、リオデジャネイロ、アムステルダム、パリなど、世界中で壁画を制作しました。
東西冷戦の象徴なベルリンの壁にも、キースは壁画を描いています。
エイズ感染により、奇しくも31歳という若さでこの世を去ったキース・ヘリング。
2008年にはニューヨーク・マンハッタンの壁に描かれた1982年の作品をアーティスト有志が復元するなど、現在もストリートアートの先駆者として色褪せない人気を誇っています。
11.EDUARDO KOBRA(エドゥアルド・コブラ)
ブラジル出身のEDUARDO KOBRA(エドゥアルド・コブラ)は、煌びやかな色彩でリアルな人物画を描いた壁画が有名なアーティスト。
1980年代後半からブラジルで流行したHIPHOPカルチャーに影響を受け、12歳から壁画の制作をはじめました。
彼を一躍有名にしたのは、高さ56mのビルに描いたブラジル建築界の巨匠、オスカー・ニーマイヤーの肖像画です。
コブラはヨーロッパとアメリカを横断し、世界の各都市で壁画を制作しました。
彼が高さ51フィート、幅560フィートの壁に世界の先住民族を描いた彼の作品「Etnias(エトニアス)」は、世界で最も大きい壁画として、ギネスに登録されています。
彼の作品を代表する鮮やかな色彩について「昔の思い出のようなものを描こうとしたんだ。過去の人物の写真はモノクロが多いから、鮮やかに蘇らせるために色彩分割の方法を用いることにしたんだ。」と本人は語っています。
12.Lushsux(ラッシュ)
Lushsux(ラッシュ)は、オーストラリア・メルボルン出身の、社会を批判したコミカルな作品で知られるストリートアーティストです。
他のアーティストに比べると活動歴の浅いアーティストですが、ドナルド・トランプ、ヒラリー・クリントンなど、世界の政治家を皮肉った作品が近年SNS上で注目を集めるようになりました。
中でも彼を有名にしたのは、ベツレヘムのパレスチナのイスラエルの分離壁に描いた壁画。
エルサレムの嘆きの壁に手を添えるドナルド・トランプが「私はあなたを兄弟にします」と呟いていたり、過激な表現が災いしたのか、彼のTwitterアカウントが突如削除されるといったハプニングも起きました。
ラッシュは日本にも来日しており、初音ミクが「Ban ANIME!(アニメ禁止)」という文字を掲げる壁画を渋谷に残しています。
彼の最新作は公式Twitterに随時投稿されているので、興味のある方はぜひチェックしてみてください。
13.Banksy(バンクシー)
今世界で最も影響力のあるストリートアーティスト、Banksy(バンクシー)。
本名はおろか単一のアーティストなのか、複数のアーティスト集団なのかも判明しておらず、未だに大きな謎に包まれています。
彼はロンドンで最初に発表した、ステンシル技法を使った落書きで次第に注目を集めました。
その後も、メトロポリタン美術館や大英博物館に無許可で作品を展示したり、ニューヨーク市内で連日落書きを発表したりと、「芸術テロリスト」として活動の場を世界に広げていきます。
バンクシーの作品はその価値が高まるにつれ、ギャラリストや転売目的で作品を狙う人々によって、描かれた場所から切り離され、オークションに出品、高額で売買されるようになります。
こうした経緯からバンクシーの作品は、作品と所有者を巡る問題を大きなテーゼとして掲げることになります。
アート市場を朝笑うかのように、オークションに出品されたバンクシー作品が、額に仕組まれたシュレッダーによって突如切断されるという事件も起きました。
壁画の枠を超えて、アート界に旋風を巻き起こすバンクシー。今後も彼のアクションから目が離せません。
まとめ
いかがでしたか?
今回は、世界で活躍するストリートアーティスト13人をご紹介しました。
アメリカでhip-hopの流行とともに発展した「グラフィティ」。
日本ではまだまだ馴染みが浅いジャンルですが、バンクシーをはじめとするストリートアーティストたちの活躍によって、アートとしての価値が認められつつあります。
「落書き」はどの国でも違法行為として禁止されていますが、アートとしての価値を認められた作品や、有名なアーティストがいるかどうかによっても、それぞれの国で「落書き」に対する認識が違うようです。
社会に様々なメッセージを投げかけるグラフィティは、今後も目が離せないジャンル。
皆さんもぜひ、世界のストリートアートに目を向けてみてください。
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