バンクシー現代アート
ART

ディズマランドとは?バンクシーが作った「悪夢のテーマパーク」を徹底解説

謎の覆面アーティスト、バンクシーがプロデュースした「ディズマランド」。

寂れたかつてのリゾートを絶妙に活かし、『夢と消費』の有名テーマパークのアンチテーゼとして仕立てた、期間限定の「悪夢のテーマパーク」をご存知でしょうか?

今回は、ディズマランドのコンセプトから展示品までを解説。

時代の寵児・ストリートアーティストバンクシーの「壮大な企み」を振り返っていきます。

 

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ディズマランドとは?

バンクシーの作った「悪夢のテーマパーク」

ディズマランドは、2015年の8月21日から5週間限定で開催されました。

会場はロンドンから電車で2時間半の小さな町、ウェストン=スーパー=メア 。

かつてはトロピカーナと呼ばれた海辺のリゾートプールは、閉鎖後14年間も放置され、物置場にされていました。

元々、地元の人たちは、ホラー映画のロケに使うと聞かされました。しかし完成した廃墟のシンデレラ城を見て、バンクシーのプロジェクトを知ることになります。

トロピカーナはバンクシーにとって、子供のころ夏になると家族で訪れた思い出の場所。

「町へのお返しのつもりなのさ。ヤツはトロピカーナの荒れようを知っていたんだ」

忘れ去られた街に、バンクシーはもう一度光をあてたのです。

 

ディズマランドのコンセプト

ディズマランドという名は、「不愉快」「陰鬱」という意味の“dismal” からの命名。

ご丁寧に「Amusement Park」でなく「Bemusement(困惑) Park」と銘打たれています。

バンクシーの言葉を借りると「子どもにはふさわしくないファミリーテーマパーク」。

ディズマランドは夢の国・ディズニーランドのダークパロディで、世界で一番憂鬱になれるテーマパークでした。

バンクシーがディズニーをターゲットにするのは初めてではありません。

2004年の作品『ナパーム』にミッキーマウスが登場。2006年、ビッグサンダーマウンテンの柵に囚人服の人形をくくりつけ、大騒ぎに。

ただの偶然か、ミッキーもバンクシーのトレードマークも同じネズミ。しかし両者の間には、夢と現実、光と影、資本主義の消費社会と問題まみれの現実社会という冷酷な対比が存在するのです。

壁のステンシルには、“LIFE isn’t always A FAIRYTALE”(人生はおとぎ話とは限らない)と言うバンクシーの捨てゼリフがありました。

BANKSY バンクシー リプロダクション 複製画「Napalm」

22,000円 (税込)

素材:紙,シルクスクリーン
作品本体サイズ:縦500*横700mm
作品本体重量:220kg
エディション:600

 

人々の反応

イギリスの片田舎に突如現れたディズマランド。来場者は延べ15万人に達しました。

入場チケットは1枚3ポンド(500円弱)。

1日4,000枚の販売があり、地元に30億円以上の経済効果をもたらしたそうです。

人気リゾート施設の面影はとうに失われていましたが、「久しぶりに活気が戻った」と街の人は言います。

タクシーは満車が続き、ホテルの予約がとりにくくなったほど、ディズマランドは人々を引きつけました。

ディズマランドは、バンクシーたちの主張をアピールする場としても、また“街おこし” としても大成功だったのです。

 

ディズマランドの展示を解説

全体図 

バンクシーによれば、ディズマランドは「アート、娯楽、軽いアナ-キズムの祭典。カウンターカルチャーを店頭で簡単に手に入れることができる場所」。

壊れた噴水にぼうぼうの雑草。スローなハワイアンが薄気味悪く漂う会場に、『北サマセットで過去最大の現代アートコレクション』という”The Gallerries”をはじめ、ひとくあるアトラクションが散在するアナーキーさ。

バス停の広告掲示板の壊し方の授業を行う無政府主義者のトレーニング・キャンプまで用意され、ライブイベントも行われます。

ディズマランドは現代社会への辛辣なアイロニーで満たされたエキシビションなのです。

 

入口のセキュリティ

入管・税関、保安検査の場面は漫才やオモシロCMのネタにもよく登場しますが、ディズマランドの入場ゲートは、なんとダンボール製!

ビル・バーミンスキの作品は、一見子供だましのようですが、造形に縁取りがされていて、二次元のラインアートに踏み込んだような錯覚に陥る仕掛けです。

通過しようとすると警備員がからんできて、入場者は「感じの悪い接客」の洗礼を受けます。

意味もなくその場でくるくる回転させられたかと思えば、いきなり睨みつけられ「このカバンはお前のか?本当か?」

いちいち止めるくせに、言うことはちょっとしたイヤミだけなのが、なんともブリティッシュ感覚です。

 

やる気のない警備員

場内のキャストたちは、交通整理係のような蛍光ジャケットに頭はボサボサ、うつろな目で来場者を迎えます。

ミッキー耳のカチューシャをつけていても、無愛想な表情がまったく不釣り合いです。

おもてなしも頬づえのまま『ようこそ~』と言い、キップを手渡すときに手を離さないことも。売る気がなさそうなバルーンには“I am a imbecile” (ウスノロ)の文字が。

こんなクレーム級の仕打ちのオンパレードなのに、ディズマランドでは不思議と愉快に感じてくる演出です。

 

シンデレラ城とアリエル

テーマパークのゲートをくぐると、荒れた広場と濁った池の向こうに廃墟のようなシンデレラ城

「悪夢と絶望の世界」のキャッチどおりですが、どこかで見たような気が…。

時おりニュースで流れる、バブル期に造られ経営が行き詰まった地方のテーマパークを思い起こさせます。

城の前には、ディズニー映画『リトル・マーメイド』の主人公アリエルらしき像。でも蜃気楼のように激しくゆらいでいて、画面が乱れたテレビを見ているよう。

転送に失敗してノイズが入ったようなアリエルの姿は、インターネットに頼りすぎた社会への警告にも見えます。

 

シンデレラとカボチャの馬車

シンデレラ城にかかっている看板には“Step inside the fairytale and see how it feels to be a real princess.”(おとぎ話の中に入って、本当のお姫様になった気分を味わってみて)。

バンクシーの考える「実際のお姫様」とは、おとぎ話の中の「皆が羨むお姫様」ではありません。

言うまでもなくこの作品は、プリンセス・オブ・ウェールズ=36歳でこの世を去ったダイアナ妃の事故からのインスパイア

馬車から投げ出され目も開いたままの姫さまや馬のむごい死体、その光景にストロボを浴びせかけるパパラッチが再現されています。

しかしここは「悪夢のテーマパーク」。こんな悲劇を背景に記念写真も買えるようになっています。

 

バンパー・カーに乗る死神

死神は、バンクシー作品にたびたび登場する重要なモチーフの一つ。

2013年10月のニューヨークでのゲリラ企画 “Better Out Than In”でもお目見えした“Grim Reaper Bumper Car” (死神ゴーカート)は、70年代風ディスコフロアでダッジム・コースターに乗った死神が、ビートに乗ってくるくる回転してみせます

流れている曲はビージーズの“Stayin’ Alive”。『周りに流されないで、とにかく生きようとするんだ…』という歌詞の曲です。

ダンスする死神に人生を説かれる。シニカルとユーモラス、悲劇と喜劇の境界を混乱させる演出です。

 

メリーゴーランド

一見普通なメリーゴーランドには、実際に乗ることもできます。キャストには「そんな歳でもないでしょ?」とイヤミを言われますが。

しかし近づいてみると、木馬が天井から吊るされ、食肉作業員の男が血のついたナイフを手にこちらを睨んでいます。

男が腰かける段ボール箱には「ラザニア」の文字。『100%牛肉』の冷凍ラザニアに安価な馬肉を混ぜる不正が相次いだ事件を風刺したものです。

バンクシーは2013年ニューヨークで、ぬいぐるみの家畜を載せたトラックを巡回させるパフォーマンスを挙行。動物の悲鳴を響かせ、通りの人々を驚かせました。

ディズマランド内にはピザやサンドウィッチの店はありますが、肉を扱う飲食店はありませんでした。

 

難民船の模型 

アフリカからヨーロッパへ渡ろうとする難民であふれそうな小船。

小船にすし詰めにされた人形の表情を失くした顔から、彼らがとても辛い目にあっていることが分かります。その傍らの水面には、水死体となった少年の人形が浮かんでいます。

実はこの難民船は1ポンド硬貨で動くアトラクションですが、ハンドルとボートの動きがあべこべになる仕掛けになっており、右に行くつもりが左へ。思ったように操縦できません。

バンクシーは、自分の意志ではどうにもならない難民の苦しい現実を、思い通りに動かないボートで表現したのです。

 

アヒルのおもちゃのゲーム

どこにでもありそうなセルロイドのアヒルを釣るゲーム。

しかしアヒルをみると、真っ黒な油で汚れています。しかも釣ろうとすると意地悪なキャストが棒で追いやってしまい、あ然とした客は苦笑いするしかありません。

報道で流れる、重油まみれの海鳥やマイクロダストを食べて死んだ魚、ストローが刺さったウミガメ、ゴーストネットに絡まったイルカの写真。人間が文明を享受した対価として何が起こっているのかを、来場者に思い起こさせます。

釣りを邪魔するキャストは、実は人間の横暴から傷ついた鳥たちを守っているのかもしれません。

 

鳥に攻撃される女性

ベンチでひと休みしていた女性が鳥に襲われている、ヒッチコック監督の映画『鳥』を思い出す作品がこちら。

ディズマランド開催の少し前、イギリスの海岸で何故かカモメが攻撃的になり、ニュースにもなっていたそう。これも環境破壊の影響なのでしょうか。

ベンチを見ると、被害を受けている女性の隣がしっかり空けてあります。テーマパークのキャラクターと並んで撮影するインスタポイントとして設置されているのです。

こんなところにもバンクシーのシニカルな笑いが感じられます。

 

有名アーティストの作品展示

会場中に、バンクシーは10点の作品を展示。

企画プロデューサーである彼の呼びかけに、17か国58名のアーティストが参加しました。

ダミアン・ハースト、ジェニー・ホルツァーなど名の売れた作家もいれば、無名に近い若手作家、普段はアーティストでない人の作品も。

「私が思いつく限り最高のアーティストたち」と、バンクシーが語ったアーティスト達の作品が揃いました。

 

ダミアン・ハースト「ユニコーン」

ホルマリン漬けにした動物の作品で知られる、ダミアン・ハースト

“YBAs”(ヤング・ブリティッシュ・アーティスト)と呼ばれる、イギリス現代美術家の中でも重要な存在の一人です。

彼の代表的作品群“Natural History” シリーズの『ユニコーン』がディズマランドに登場。

しかしその会場は、サーカスの見世物小屋風のテント『ギャラリー・オブ・ゲリラアート』。

足元は砂地、作品にも砂がうっすらかぶってるという、作家のネームバリューとのギャップに満ちた展示でした。

 

マイク・ロス「Big Rig Jig」

会場にそそり立ち、ひときわ目立っていたのはマイク・ロスの“Big Rig Jig”。

アメリカ・ネバダで開催される社会実験の催し、“Burning Man” でも2007年に展示されたもの。工事用クレーンを使用して作られました。

「廃車になった2台のトラックを利用し、政治、社会、環境システムに結びついている世界の石油産業に言及した」というマイク・ロス。

2台の石油トラックが熱狂的な踊りに巻き込まれる様子を描いているそう。

日が落ちると派手なライトアップがされ、さらに威圧感が増す演出です。

 

ディズマランドの閉園後 

ディズマランドは、予定通り9月27日に閉園。

施設は解体され、資材はすべてフランス北部の港町・カレーの難民キャンプ「ジャングル」へ移送され、避難所の建設に使われました。

同キャンプに収容された難民は6,000人とも言われています。

その年、バンクシーは自分の資材を使って一部が建てられた難民キャンプ「ジャングル」の壁に新作を描きました。

バンクシーシリア移民の息子

描かれたのは、難民のように大きな荷物を背負ったアップル社の創業者の一人、スティーブ・ジョブズのポートレート。

実はジョブズの父親はシリアからアメリカへ渡った移民でした。

「移民は国を枯渇させるとされがちだが、ジョブズ氏は移民の息子。アップルは年70億ドル以上の税金を納める。現在のアップルがあるのは、シリア出身の若者を受け入れたからじゃないか」

とバンクシーは言います。

ディズマランドのその後のストーリーからも、難民問題に対するバンクシーの思いが伺えます。

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まとめ

ディズマランドのコンセプトから展示品までを解説してきました。

バンクシーの考えやコンセプトがよく分かるディズマランド。日本でもバンクシーにまつわる展覧会も多いので、是非機会があったら本物の作品に出会ってみてください。

世界を驚かせ続けるバンクシーの、今後の活動に注目です。

 

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